Decide Zone Zero   作:犬咲夫藍

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大変長らくお待たせしました! あのDecide Zone Zeroが面白くなって帰って来たかった!

ジラーチっす。

お知らせです

・アンチ・ヘイトタグを消しました
グレースさんへの愛を叫んだ文を修正して、この作品唯一のアンチ・ヘイト部分が消失した為です。
グレースさんへの好感度の反転なんてついったーで語れば良かったですねすいません。

・少し改名しました
今まで通りイヌサフランって読みます。

前回までのあらすじ!

ホロウの中に少年が入って行くのを見た主人公クロトは、少年を追って自らもまたホロウに入る!
なんやかんやあって少年と、そして邪兎屋と合流したクロトは、少年の事情を知る! 少年の名はトリシノといい、心が壊れかけいた!それを解決したいと思ったクロトは、トリシノのメンタルケアのために行動することを選択! その結果何故か全裸になることを要求した!


一八話 九割の笑顔

「全裸になれ」

 

「……へ?」

 

俺はトリシノに全裸になるように要求した。

 

「……」(お兄さんがあっという間にエーテリアス達を再起不能にしたと思ったら、トドメを譲られた……と思ったら、全裸になるように要求されちゃった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは一体何が起きているんだろう?)*1

 

 

「……(返事待ち)」

 

 

「……(呆然)」

 

 

「……(返事待ち)」

 

 

「……(呆然)」

 

 

*2

 

 

 

 

 

 

 

変な嘘を言うなよ……。

実際には五秒しか経ってないだろ。*3

 

 

それはともかく、トリシノからの返事がない……。もしかして聞こえなかったのか?

 

 

 

【もう一度全裸になるよう要求する】

 

【目の前の幼気な少年を押し倒して……】

 

押し倒して……じゃねえよ!

何をするつもりだよ!

常識的に考えて当たり前に前者だわ!*4

 

 

「コホン、全裸になr「いや聞こえてますよ!?」食い気味だな。まあ大事な事だから伝わっていて良かった」

 

俺は自分の表情が安堵で緩んだのを感じた。

 

だが

 

「いや良くないですよ! 何を言ってるんですか!?」

 

トリシノは顔を赤らめながら大きく後ずさった。

 

くっ、もしかして母さん似の顔のせいで道行く人たちに良くない目で見られるからと、姉さん直々にしてもらったカモフラージュが意味をなさなかった?

 

なんかブツブツ言ってるけどそれ、後付け設定ですよね?

……これ以上はいけないか。

なんだか話が逸れてしまう気がするので、聞かなかったことにして軌道修正を図ろう。

 

「何って……全裸になれと言っただけだが? で、なるのか? ならないのか? どっちだ?」

 

「なるわけないですよ!?」

 

なるほど……。お前の選択はそうなんだな? それなら俺の返答はこうだ。

 

「……じゃあトドメを譲ることはできないな」

 

「くっ……まさか命の恩人のお兄さんが報酬を対価にえっちな要求する悪いプロデューサーみたいな人だったとは……! なんか辛い!」

 

まあやっぱりそう思ってしまうよな。

無理もない。俺だってお前と同じ立場なら、全裸の要求なんていかがわしい意図しかないと勘違いする。

けど違うんだ。

 

「お前は大きな誤解をしている」

 

「……え?」(誤解している……?

もしかして全裸にならなくてもいい? あの発言は僕のありのままの心を曝け出せとかそういう?)

 

「いや、脱ぐのは脱いでもらう」

 

そこはもうマジで大切なんですよ。

こればっかりは譲れへん。

 

「やっぱり変態さんじゃないですか(絶望)

というかさらっと心を読まないでくださいよ!……まさか! 心も体も丸裸ってことですか!?」

 

 

 

 

何言ってだこいつ(ン抜き言葉)

 

「ただそういう考えが目茶苦茶顔に出てたから分かっただけだぞ」

 

なんだよ心も体も丸裸って……。

それじゃあ俺がとんでもない変態みたいじゃないか。

 

「む……フォントはどんな感じでした?」

 

「丸文字」

 

「! どうやら本当に顔に出てたみたいですね……」

 

「フォントだけにな」

 

「ん? なんか言いました?」

 

「……ナンデモナイヨ

 

「そうですか……」(そうは言いますけど、なんだか顔がシュンとしているような……)

 

 

 

 

 

 

 

「ニコ、なんだか寒くなってきたわ……そろそろエーテル侵食が不味いかも」ヒソヒソ

 

「まだタイマーは鳴ってないでしょ……。ただあいつがクソつまらない事を言っただけ!」ヒソヒソ

 

「なるほどな! 通りで機械のオレにも寒気がしたワケだ!」ヒソヒソ

 

……(´・ω・`)キコエテルヨ

 

 

「……!?」(あり得ないほどシュンとしてる!? そんなに僕の裸が見たかったんですか!?)*5

 

ハッ!

いけないいけない。これくらいで挫けちゃ駄目だな。俺の目的は激うま面白ギャグ*6で笑わせることじゃなくて、俺とトリシノ、両方が納得できる円満な結末を迎えることだ。初心忘れるべからず!

 

話を戻そう!

 

俺はそう思って再びトリシノに意識を向けた

 

……あれ?

 

「なんか、お前が更に遠くなった気がするんだが……」

 

「うぇ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……気の所為です!」

 

なんか間が凄かったな……

 

「そうか? でも確かn「気の所為です」……凄い食い気味だな」

 

「もちろん気の所為ですからね。ほら、僕の目を見てください」

 

「む」

 

そう言われて見たトリシノの目は、全体的に嘘をつく人間がする目ではなかった。

 

「こんなにも全体的に嘘をつかなそうな目をした人間が、嘘をつくように思いますか?」

 

「むむむ……」

 

確かにトリシノの言う通りだ……。

こんな全体的に嘘をつきそうにない目をした人間が、嘘をつくとは思えない。*7

俺から距離を取っているように思ったのは気の所為だったか……(ガン無視)。*8

 

「ここまで全体的に嘘をつきそうのない目で言われたら信じるしかないな」

 

「そうでしょう?この全体的に嘘をつきそうにない目が口ほどにものを言うのであえて言う必要もないかもしれないですがあえて言います!(早口) 僕が遠くに行ったように見えるのは、お兄さんの気の所為です!生まれつき全体的に嘘をつきそうのない目をしててよかった……ボソッ」

 

 

トリシノは両足を肩幅より少し広くして立ち、左手を腰にやった。そして残った右手の、ピンと張った人差し指で俺を指差した。心なしか、掛けている瓶底メガネが輝いているように見える。

 

この世界が漫画なら、ドーン! という効果音が背景に浮かび上がっているぐらいの気合が入った指差しポーズだな……。こんだけ言われちゃあ仕方ない、認めるよ。俺の気のせいだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なぁ、あのトリシノってボウズ、普通に後ずさってなかったか?」ヒソヒソ

 

ええ、確かに私も見たわ。依頼対象の少年が思わずといった風に後退るのを」ヒソヒソ

 

 

かんわきゅうだいー

 

 

「話を戻すぞ。俺は何もお前の裸が見たいからこんな事を言ってるんじゃあない」

 

「……まあ百歩譲ってそれを信じるとして、どういう意味で言ったんですか?」

 

「それは」

 

「それは?」

 

「お前の覚悟を示してもらうためだ」

 

俺は真剣な顔でそう言った。

 

 

「覚悟、ですか?」

 

 

「そうだ」

 

「でも全裸になるのと覚悟にどんな関係が……あれですか、売れるためなら何でもやります的なやつですか?」

 

「……全裸と覚悟の関係について疑問があるのは百も承知だが、さっきも言った様にそんな芸能界の裏側チックなやつではない」

 

「それじゃあどういう意味で?」

 

フッフッフ! 俺の華麗な話術(笑)にどんどん引き込まれていってるな?

いい感じに主導権を握れているのを感じる! この調子で次のフェーズに入ろうか。

 

「それを説明するには今の銀河の状況を説明する必要がある。少し長くなるぞ」

 

「そんな壮大な話なんですね……」

 

トリシノは少し身構えている。どんな話が来るのか予想もついていないのだろう。だが

 

「まあそんなに身構えるな……」

 

別にそこまで複雑な話でも無いし。

 

 

「まず、遥か昔のある銀河に"ふれあい広場わんにゃんわんだーらんど★"という場所があったんだが……」

 

「ふぇ?」

 

呆気に取られた声が、辺りに響いた

 

〜二秒後〜

 

 

 

 

 

「……そうして"ふれあい広場わんにゃんわんだーらんど★"は爆散し、闇の帝王ニャニャニャーニャ・ニャーニャニャが十七の銀河を支配する暗黒期が訪れたんだ」

 

いやあ史上稀に見る激動の説明()だったな!

 

 

「いやちょっと待ってください!?」

 

必死な声が辺りにこだました。

大分大きな声だったので少し驚いたのは墓場まで持っていこう。

 

「ん? 何か理解できないところがあったか?」

 

まあ別に、俺は説明が得意な訳ではないからな。説明不足なところがあったかも知れない。

 

「理解できないというか、え!? "ふれあい広場わんにゃんわんだーらんど★"爆散したんですか!? なんで!? まだそのほんわかするような広場があったことしか言ってなかったですよね!?」

 

「……」

 

「……」(返事待ち)

 

「……」

 

「……」(返事待ち)

 

「……! ああ、そこからか!」

 

「そこしかないでしょ!?」

 

「まず"ふれあい広場わんにゃんわんだーらんど★"って名前から分かるように、犬と猫による人類の支配権を巡った、骨肉の争いが繰り広げられる戦場ってことは容易に想像がつくだろう? そんなの絶対爆散するって」

 

 

「……(呆然)」

 

 

 

 

「そんなの分かるわけないですよね!?」

 

暫くの逡巡の後、トリシノは叫んだ。

 

「そうかな?」

 

「そうでしょ!? というかそれがどう覚悟に関わってくるんですか? 意味が分からないですよ! 絶対関係ないでしょ!!」(もしかしてこの人、変なことを言ってうやむやにしようとしてるのかな!?)

 

怒涛のツッコミでハァハァと息を切らしているトリシノの瞳からは、俺への猜疑心が読み取れた。

計画通りだな。

 

しかし、ああ、ついに取り返しのつかないところまで来た。ここからは絶対に失敗出来ない。

 

俺は自分の体が強張っているのを感じながら、次の手に打って出る。

その手とは……!

 

「ニコ、お前はどうだった?」

 

他力本願だった!

 

「!?」(はぁ!? いきなり何言ってんのあんた! 私に言われても困るんですけど!?)

 

ああ、確かにお前の気持ちも分かる。観測者たる自分が、いきなり事態に巻き込まれたんだ。驚愕に塗れ、あわわわわ、あわあわあわわ、あわわわわ(愕然)となるのも無理はない……。

 

「そこまで驚いてないわよ!」

 

"びっくりした、いきなりどうしたのニコ?大丈夫?"

 

「! な、なんでもないわ……」(あんたねぇ……!)

 

 

だけどどうか頼む! いや、お願いします神様ニコ様デマラ様! トリシノの説得には貴方様の協力が不可欠なんです! ここで皆が俺の支離滅裂な言動を肯定してくれたら、あいつの疑心は自分自身に向かって行く!

ニコの一手で全てが左右されると言っても過言ではないんだ!

 

「……」

 

 

お願いします!

 

「……」

 

 

ニコ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぁ

 

 

 

 

 

 

 

 

あたし達は分かったけどね。そうでしょ?あんた達」

 

 

神は居た!

お前だぁ!

ニコぉ!!

 

「む……分かったわ」

 

「基本だね!」

 

「うん、基本だ」ザザー

 

 

 

 

 

「マジかよ? 俺は全然分からn……ハッ!」

 

「ッ!!」*9

 

「モチロンワカッタゼー!」

 

「ほら」(これでいいんでしょ?)

 

ああ! 最高だ!

 

「むぅ……」(他のみなさんは分かってたみたいだ……やっぱり僕が良くなかったのかな?)

 

ラストスパートだぜ!

 

「話を続けるぞ。それでまあなんやかんやあって舞台は現代に移り、お前は今からエーテリアスとはいえ確かに命を奪うわけだ」

 

「流れぶった切りましたね。でも、そう、か……。僕は今、命を奪おうとしてるんだ……」

 

「そうだ。だがそれだけじゃあない」

 

「え?」

 

「お前がやろうとしていたのはエーテリアスと同じだ。無責任に無感動に、ただ己の衝動に任せて命を奪おうとしている!」

 

「それは! それは……」

 

否定は出来ない、そうだろう?

 

「なので最低限の礼儀として、お前には脱いで欲しいんだ。足らない覚悟は、周囲に全裸を見せるという行動の羞恥と覚悟で(あがな)ってもらう」

 

「! 全裸に……そんなちゃんとした意味が……」

 

 

フッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正直自分でも何言ってるのか分かんないけどな!*10

全裸で覚悟証明is何?

 

別に全裸になったからって命を奪って良い訳ないだろ! いい加減にしろ!*11

何も贖えてないし!

 

 

「さあ選べ! 全裸になって命を! エーテリアスとはいえ確かな命を! 自分勝手に奪う覚悟を証明するか! 自分の行いを悔い改めて諦めるか!」

 

「……」

 

トリシノは蠢くエーテリアス達を見た。

 

「「「……!……!」」」

 

骨を折られて這いつくばり、地面に縫い付けられても尚、俺達を襲おうと藻掻いている。そこに、何を見い出したんだろうか。

 

奴らの悪虐さか、確かな命か。哀れみの可能性だってある。……あるいは全てか。だが重要なのは

 

「……僕は……どうすれば……」

 

溢れだした葛藤の言葉が表すように

 

「どう、すれば……」

 

トリシノが、さっきまで自分がやろうとしていた事を顧みることが出来るようになったことだ。

 

それと同時に、俺が俺の目標(エゴ)を達成したことになる。全てを自覚したうえでの判断であれば、エーテリアスを殺すことを選んでも、それを尊重する。

 

いやまあ……ここまでやって、"ハイ!じゃあ後は自分で決めてねー"なんて無責任なので流石に少し提案をするけどな。

 

「悩んでるんだろ?」

 

「……はい」

 

「じゃあやめようぜ」

 

「無理です」

 

「……即答だな。そうか……」

 

「はい」

 

提案その一、"やめようぜ"は駄目、と。

大丈夫、まだ手はある。次の案だ。

 

「皆と……」

 

「?」

 

「皆と話し合ってみるとかどうだ?ほら、家族を交えてさ」

 

悩んだときは人に相談、これが一番なんだぜ

 

「……! 家族……

 

 

 

 

 

 

 

 

グスッ!父さん……!」

 

泣き出したトリシノ

 

「うわ! 大丈夫?お父さんのこと思い出しちゃったんだね……」

 

慰めるボンプ(原作主人公)

 

そして

 

 

 

 

 

提案その二、"親しい人に相談しようぜ"も駄目と……。

ふむ……

 

 

 

 

どうしよ

 

やらかした俺

 

 

 

 

 

 

うっそだろお前!? うっそだろ俺ェ!?

 

いや言い訳するとトリシノがちゃんと考えられるようになるのが俺の最終目標というか! それしか頭になかったというか! ズバリ言うと、つまり、万策が尽きた! 策って言っても二つくらいしかなかったけど! くっ! あわわわわ!あわわわわわわ! 慌てるな! 狼狽えるな! ☆☆☆(みつぼし)小学生は狼狽えない!

 

 

 

 

 

んなわけねぇだろ!

小学生だぞ!

いやもう卒業して明日から中学生だけどな! ……じゃあ今の俺はなんなんだ!?

まさか……無職!?*12

 

 

いや今はそんなことどうでも……ハッ!

 

何か視線を感じるぞ……! な、なんだ?何処からだ?

 

視線を感じた俺は、辺りを見回した

そうして視線の照射元を辿った先にいたのは

 

「あんた……嘘でしょ……(唖然)」

 

ニコだった。

 

唖然として、空いた口が塞がってないタイプのニコがいた。

"ここまでやっておいて何も案を考えてなかったの!?"という視線を送るニコがいた。

 

ちゃうねん……ほんとにちゃうねん。

 

「……」ジトー

 

「……」

 

「……」ジトー

 

「……」

 

はい違いません完全にあなたの読み通りです助けてください。

 

刺すような視線に耐えかねた俺は、素直に助けを請うことにした。

 

「いいわよ」

 

「え、いいのか?」

 

思わず声に出てしまったのも無理はないと思う。こんなにあっさり承諾されるなんて予想外だった。いや本当に何で

 

疑問符が俺の頭を満たした。*13

 

ニコは自分の行動が妙に捉えられていると悟ったようで、理由を語ってくれた。

 

「あたしもあんたの計画に加担したんだから、最後までやり切るに決まってるでしょ?」ヒソヒソ*14

 

はぇ~おめぇスゲェな。

その責任感に素直に感心した。そして頼もしくなった。

俺にはこんなにも心強い助っ人がいる!

もう何も怖くない!*15

 

 

 

「僕は……どうすれば……!」

 

 

トリシノの心からの嘆きを、この世界は静かに聞いた。風の音も、エーテリアスのうめき声も、何もかもを止めて……静かに、まるで時が止まっているかのように……

 

ま、本当に時が止まってるんですけどね、初見さん。

 

 

 

 

 

【トリシノの忌まわしき記憶を、ぶん殴って消してあげる】

 

【俺がパパになるんだよ!】

 

【俺を殴れ……気が済むまでな……】

 

マミった(しまった)

フラグだった!!

 

 

 

クソッ! 上二つ……ふざけるなよ……! 特に真ん中ぁ!

殴るのも怖ぇけど、なんだよ俺がパパになるって!?

 

〜〜〜

 

「この度、トリシノの父となりました。クロト・タク、改めクロト・アルベーゼです。不束者ですがよろしくお願いします、奥さん。いや、My wife(ネイティブ)」

 

〜〜〜

 

不束者(ふつつかもの)というか不届者(ふとどきもの)じゃねえか!

あんまり選びたくないがこの中だったら一番下を選ぶしかねぇじゃん!

 

ピコン!

 

「俺を殴れ……気が済むまでな……」

 

「ちょ、あんたいきなり何言ってんの!?」

 

「! 殴る……ですか」

 

 

俺の言葉を聞いたトリシノは過去に思いを馳せたようだった。

 

やばいまたやらかしたか?

もしかして別の選択肢を選んでいた方が……いや、それはないな。

 

「……ふふ」

 

だが、恐れていたようにはならず、トリシノはなんだか穏やかそうな顔をしていた。

 

まあ何で微笑んだのかは分からんが、今度は地雷を踏まず、良い感じの選択肢を提示できたらしいな。

ああ良かった! たまには役に立つじゃねえか、選択肢!

 

「ああ……」

 

しかし、一体何を思い出しているのk「正中線……だったよね……父さん……」

 

おい待て何を思い出した

 

「はは、その後引き摺られて……」

 

本当に何を思い出した!?

 

 

「分かりました……いや、ここまでしてもらってよそ行きの態度なのも違うね……」カチャリ ファサリ

 

眼鏡とパンクな色のおかっぱ頭が外された……いやそれズラだったんかい。

 

というか口調(ながれ)変わったな……

いや、きっとこの口調(くちょう)は、トリシノ本来の口調なんだろう。

 

「「「「「!?」」」」」

 

「えぇ!?君って女の子だったの!?」

 

皆の驚きを代表した声がボンプから発せられた。

それほど顕になったトリシノの素顔は可愛らしかったのだ。金髪でショートカットのサラサラヘアーに、色白の肌にパッチリした大きな目、長いまつ毛に小さな顔が相まって、とても可愛らしい、活発な女の子のような容貌だ。

 

「ははは、僕は生まれつきお母さん似の顔だからよく勘違いされちゃうんだけど、男だよ」

 

"男の娘って実在するんだ……"

 

「まじかよ……」

 

そうして露わになったトリシノの目は全てが吹っ切れたような、いや、今から全部吹っ切る覚悟が決まったかのような清々しいものだった。

 

……この覚悟はもう全裸だろ。*16

 

「お兄さん!僕、やるよ!」

 

というかなんだろう、全てが丸く収まりそうな勢いなのに、喜びきれない自分がいるんだが。凄く嫌な予感がするんだが……さっきの呟きが怖すぎるんだが!

 

もしかして【俺がパパになるんだよ!】が最善だったりしたのか?……い、いや、いやいやいや(汗)そんなヴァカなことはありえな、……(一瞬の逡巡)あり得ない!

 

本当(マジ)にやるのか」

 

「うん!全身全霊全力全開(マジ)にいかせてもらうよ!」

 

おいなんかニュアンスが違わねぇか!?

同音異義の気配をひしひしと感じるんだけど!? しかもただの同音異義じゃねぇ! ド級の同音異義、ド同音異義だ!*17

 

俺が混乱している間にも事態は動き続け、トリシノは俺の近くまで来て構えを成立させたいた。

 

少し前屈みになって右足を後ろに引き、軽く開いた左手を相手に向けるように胸元の近くに構え、右手を左手よりも少し後ろにして構えている。そして目を瞑り、精神を統一しているようだ。

 

治安局の捜査官が犯人と対峙したときみたいな構えだな……。

 

「すぅー……ふぅ。ヨシ!いくよ!」カッ

 

すべてが整い、両眼を開いたトリシノは身体を捻って右拳を思いっきり振りかぶった。

 

その視線から、次にどこへ拳を放つのか分かった。

 

「あ、オイ待てい。お前俺の鳩尾(みぞおち)狙ってるだろ」

 

「そうですよ!(*18便乗)やぁ!!!」

 

トリシノは、なんだか可愛いらしい掛け声と共に、過去を振り切るように勢い良く思いっきり俺の鳩尾を目掛けて拳を振りかざし……!

 

「……!」

 

ポスッ

 

身構えていた俺に、直前で動きを止めて勢いを殺した拳を軽く当てた

 

「……これでいいのか?」

 

「うん!」

 

トリシノは、全ての悩みが吹っ切れたように笑っていた。だが、満面の笑みという訳ではなく、瞳に少しの涙を携えていた。

 

「ありがとう!」

 

その笑顔を見て、ああ、前を向けたんだと悟った。喪失の悲しみが消えることは無く、心にずっと残り続けるんだろう。けど、その悲しみに囚われることはもうない。それを自分の一部として受け入れ、生きていけるようになった。解放された。

 

この笑みは一割の(かなしみ)を携えた、そういう笑顔だ。

 

まあなんにせよ、良かった。

 

さて! 帰ろうか!

 

 

【このままで終われるか! やられたらやり返す! 倍返しだ!】

 

()っていいのは()られる覚悟のある奴だけだ! 思いっきりぶん殴り返してやるよ!】

 

【泣き叫ぶ】

 

やめろぉ!(建前) やめろぉ!(本音)

 

狂いそう……!

 

ちょ! えぇ!?いや……おま……えぇ!? いい流れだったじゃん! 俺の華麗な話術(笑)とニコたち……後あんまり認めたくないけどお前のお陰でトリシノは前を向けて! それで全部丸く収まる感じだったじゃん!

 

なんでそんな事するんだよ!?

泣くぞ!?

 

まあこっから本当に泣くんだけどな!!

 

つーか【上】二つ! 言葉違うだけでどっちも【反撃】じゃねえかふざけんな!

どうせならもっと行動のレパートリーを増やしとけよ!*19

 

俺はブチギレながら【泣き叫ぶ】を選んだ

 

ピコン!

 

ポタ……ポタ……

 

「「「「「"!?"」」」」」

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおあおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお(待ってこんなに泣くの!?)おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおあおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお(喉が痛いんだけど!?)おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお(ここまでくると喉が痛くて泣いてるぜ)おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん(泣)!!!」

 

ハァ……ハァ……!

よ……ようやく終わった!

喉痛ぇ!

それに意外と腹も痛い!

 

ふぅ……途中二回くらい「あ」って言ってたな。*20

それにしたって泣きすぎだろ!

 

「お兄さん……そこまで僕のことを思ってくれてたんだね……」(それにしたって泣きすぎだけど)

 

「全く、一ディニーにもならないってのに、よくやるわよねぇ……」(それにしたって泣きすぎね)

 

「あの子とっても優しいわね。それに、その一ディニーにもならない事に協力したニコも」(でもそれにしたって泣きすぎだと思う)

 

「こんな子供がいるなら、新エリー都の未来も明るいね」ザザー(それにしたって泣きすぎだと思うけれど)

 

「一件落着って感じだね! 良かったー!私もちょっと泣いちゃったよ!」(それにしたって泣きすぎだと思うけど)

 

「ボウズ! お前スゲー熱くてイイ奴だな!! ……それにしたって泣きすぎじゃね?」

 

(((((ちゃんと言うんだ)))))

 

「ま、まあ兎に角! そろそろここから出ようよ! ホロウの中は何があるか分からないしさ!」

 

ボンプのその案に反対するものは誰もおらず(まあ当たり前だが)、俺たちはこのクリティホロウから出ることにした。

 

 

ホロウから出ると、夕焼けが広がっていた。薄っすらと月が見え、まばらに点在している雲が、太陽光を通して(だいだい)色になっている。

 

昼下がりにホロウに入ったので、時間にしてみれば3,4時間程の滞在時間か……。

 

体感的にもっと長い時間が経ってると思ったぜ。色々あったからな。具体的には三カ月と十一日くらい居た気がする。*21

 

 

「うーん! ホロウの外は開放感があるわね!」

 

禿同。エーテル侵食もないしエーテリアスも出ないしな。安心感が違うぜ。

 

軽く伸びをした後、ニコはトリシノに

 

「さて、と。依頼主の下まであんたを送らないとね」

 

と告げた。

 

ああそういえば、ニコはトリシノの捜索を依頼されてここまで来たんだよな。仕事とは言えホロウまで人探しに来るなんて、お金を稼ぐって大変だな。

 

「ニコ、この子も」

 

「はぁ、分かってるわよアンビー。それとあんた」

 

「何だ?」

 

「あんたも一緒に乗りなさい。この子を依頼主の下に送った後、あんたもついでに送ってあげるわ」

 

ニコは車の鍵を見せながらそう言った。

まじかよ最高かよ。あんたには助けられっぱなしだぜ。ありがとうなニコ!

 

「"あんた"って……ったく、まあ"お前"よりはマシね……

 

タクって、どうしていきなり俺の名字を?

 

「ッ! そういう意味じゃないわ!」

 

 

「はぁ兎に角、さっさと行くわよ!」

 

「ああ」

 

「うん!」

 

 

そうしてニコの車の下に着いた瞬間、俺はとてつもない程嫌な予感に直面していた。

 

カァー! カァー!とカラスの声が木霊する夕焼けの空。どうしようもなく不吉に思えてならない。

 

なんだ? この違和感は? 何かがおかしい。何か、こう、前にも一度こういう事があったような……。

そんな違和感に苛まれていた時、衝撃的な言葉が耳に入ってきた。

 

 

「そういえばうちの車、四人乗りだったわね……」

 

ん? 四人? 俺達は膝に乗せられるボンプを除くと五人なのに?

 

あれ?

 

【ただ車に乗るなんて鍛錬にならない!俺は車と並走するぜ!】

 

【トリシノを俺の膝の上に乗せれば解決だぜ!※ただしクロトは移動中ずっと空気椅子とする】

 

あれ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれ?

 

 

 

「お兄さん! 邪兎屋の皆さん! イアスちゃん! 今日はありがとう!!!」

 

「本当に、シノを助けてくださりありがとうございました!!!」

 

俺達は無事、トリシノをお姉さんの下まで送り届けた。*22

 

「ハァ……ハァ……! ふぅ、ああ、元気で、な!」*23

 

いやぁそれにしても、移動する車の中で空気椅子はキツかったな……。ニコの運転もちょっと荒かったし。

 

「ふふん! また何かあったら私達邪兎屋を頼りなさい! じゃあね!」

 

「またな!」

 

「さよなら」

 

「ばいばーい!」

 

「じゃあね」ザザー

 

俺たちは別れの挨拶を済ませ、トリシノとトリシノのお姉さんに見送られながら、再び車に戻ることにしt「あっ、そうだ(唐突)! お兄さん!」

 

ん?

 

「絶対に、また会おうね!」

 

「?もちろんだ」

 

絶対だよ! と、念を押すように(美)少年は言った。年相応の可愛らしい、ハツラツとした笑みだった。

 

ああ、そんな笑顔を取り戻せて良かったと満足感に浸りながら、車に戻った。

 

 

 

「あら? シノちゃん、顔が真っ赤じゃない! 大丈夫!?」

 

「うぇ!? な、ナンデモナイヨキノセイジャナイカナー?」

 

カァー///カァー///*24

 

 

 

 

「ただいまー」ガチャ

 

「「お帰りなさいクロト」」

 

ニコに家の近くまで送ってもらい、別れを済ませた俺は、ようやく我が家に帰ってきた。

 

父さんがいて母さんがいる。実家のような安心感だ……。まあここが実家だけどな。

 

「遅かったね。もしかして、今日も鍛錬に励んでいたのかい?」

 

「はは、うん。まあ、ちょっとね」

 

「あらあら凄いわねー。明日は入学式だっていうのに」

 

「流石クロトだね。今日くらいはゆっくりして欲しい思うけれど」

 

「まあまあお父さん、クロトにもきっと色々あるのよ。それより二人とも、お腹がすいてないかしら?そろそろ夕御飯にしましょう♪」

 

「ああ、そうだね」

 

「うん」

 

 

 

〜食事準備中〜

 

「「「いただきます」」」

 

今日の献立は

・赤飯

・ポテトサラダ

・唐揚げ

・味噌汁

だ。

 

ちなみに入学式の一週間前から我が家の主食は赤飯になっている。

父さんが作る時も、母さんが作る時も、絶対に赤飯を出してくるんだよな……。

卒業式の一週間前もこんなだったし。

 

まあ兎に角、明日から俺は中学生。

新しい生活の始まりだ!

 

 

 

〜おまけ〜

 

トリシノが思い出したこと

 

『いいかいシノ? 人と相対した時は正中線を狙って殴るんだよ』

 

『うん!』

 

『ちょっとあなた? シノちゃんに変なこと教えないでください?』

 

『シノだけずる〜い! パパ! 私にも教えて!』

 

『ははは!』

 

そうして子供たちにバイオレンスな事を教えたトリシノ父は、トリシノ母に引きずられていった

 

*1
見たままだよ

*2
そして五年の月日が流れた

*3
おちゃめなんです

*4
そんな常識はない

*5
こっちは聞こえてないよ

*6
(笑)

*7
具体的にどういう目なんだよ

*8
おい

*9
冷たい眼差し

*10
温度差

*11
それはそう

*12
無職という言葉は人の心を抉り過ぎる……「たまねぎけんし」でいこう

*13
その言い方でデカい"?"一つで満たされるパターンある?

*14
社長の器

*15
おい馬鹿やめろ

*16
何言ってだコイツ(ン抜き言葉)

*17
ただの変なルビ振りだろ

*18
善意に

*19
貴公、既に狂っているぞ

*20
探してみよう!

*21
それ以上はいけない

*22
エーテリアスはニコ達が処理しました

*23
ホントに無事か?

*24
一般通過照れ屋カラス




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