Decide Zone Zero   作:犬咲夫藍

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ゼンゼロ世界の人達は身体能力が高いイメージがあります

比較的更新が早いって? 実は今話と前話と前前話は同じ話として投稿しようとしてて、長すぎて分割した経緯があるんですよね。なのである程度土台が出来てたんすわ!
なので更新頻度には期待しないでくださいすいません。

お知らせ:前話から、選択肢の表記を『』から【】に変更しています。『』は基本的に過去の発言の表記として用いていきます。例外もあるかも


二〇話 凋落花園と感謝の娘

Sideエレン

 

 

私には、変(態)な後輩がいる。

 

『パンツください!』

 

会うたびにパンツを要求してくる後輩、クロトが。

 

『パンツ、いただけますか?』

 

『!いさだく!ツンパ』

 

『おはようございます!いい天気ですね!共生ホロウが発生して避難中ですけど!それはそれとしてパンツください!』

 

 

本当にイカれてる。

 

特に初対面は意味不明だったね。いきなりパンツ要求してきて……。そんなのどう考えてもサイテーなやつでしょ。

 

旧都陥落でパパとママを亡くして、孤児院に引き取られて……色々追い詰められてた時期だったのもあって本当に視界に入れたくもなかった。

 

ま、旧都陥落が無かったとしても関わりたくないタイプだったけど。

 

 

でも、あいつは会うたびにパンツを要求してくる変態だけど、それだけじゃないんだよね。

 

他の子達には分かりづらいけど……というか私も結構な間気付かなかったけど、その裏には不器用な"優しさ"がある。

 

 

 

『うーでずもずも!おいサメ女!空飛んでみろよ!サメのシリオンなんだろずも!』

 

『……はぁ?』」(なんでサメのシリオンだからって空を飛べることになるの?意味分かんないんだけど……)

 

『あれれ?もしかして飛べないずもか?サメなのに?飛べないサメはただのサメずも?』

 

『もうわけ分かんない……』

 

 

 

小学二年生の時、私はある男子から嫌がらせを受けていた。名前はタツロウ。皆からは

 

"たっちゃん"

 

って呼ばれてた子だ

 

腕相撲大会でタツロウに勝ってから、嫌がらせみたいな言動を繰り返されてた。

何でも私に負ける前は腕相撲で無敗、学校最強の名を欲しいままにしていたらしい。でも私に負けて学校二位になった事が気に入らない、って感じで。本当面倒だったなぁ、アレ……。優勝賞品の十四万三千円分の飴に釣られて本気を出さなきゃ良かった。

 

 

で、日々を過ごしていたある日

 

『パンツください』

 

あいつと出会った。

 

 

『……』

 

あまりに唐突な要求に脳がフリーズした。

 

 

『ところで知っていましたか?涙の成分はほとんど血液と同じなんです。そして、悲しい時に流れる涙はしょっぱい。悲しそうな目をしている。話を聞きましょう』

 

『……』

 

あまりに唐突な雑学と優しさに脳がフリーズした。

 

 

『……ところで悲しそうな目をしt『分かったからもう喋らないで』はい』

 

いじめっ子とは違うベクトルで厄介な奴だと思ったし、それ以上何か言われると気が狂いそうな予感がしたから、取り敢えず静かにさせたけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ところでとても悲しそうな目をしている。話を聞きましょう』

 

駄目だった。

 

『……(唖然)』

 

駄目だった。

 

 

 

『駄目だったサンドウィッチですね!』

 

 

回想が話しかけてこないで(恐怖)。

 

 

コホン。こんな奴が律儀にサンド"ウィッチ"って言ってくるの嫌すぎr……じゃなくて。本当に得体が知れなくて怖かった。タツロウに続いてこんな目にも遭うのが最悪で本当に嫌で、パパとママが死んで、知らない子達と一緒に暮らして、そんな日常に少しだけ慣れてしまって、それが嫌で、そんな中変な奴らに絡まれて、ああもうどうして私がこんな目に遭わなくちゃいけないの!っていう怒りと嫌悪感と恐怖で頭の中がぐちゃぐちゃになって、思わず全力で走って逃げた。

 

今思うと結構追い詰められてた時期だったな。

 

『ところでとても悲しそうな目をしている。話を聞きましょう』

 

ま、あいつは追いかけて来たけど。

 

『来ないでよ!』

 

思わず叫んじゃうくらい恐かったね、アレ。

 

でも何より恐かったのが、あいつの目が、私にパンツを要求してきた時からずっと、悲しそうな、辛そうな目をしてたことだった。

辛いのはこっちなんですけど?

 

 

それからも学校で会うたびに

 

『パンツください!』

 

って言ってきて、その後には決まって

 

『ところでとても悲しそうな目をしている。話を聞きましょう』

 

その度に全力で走って逃げて、先生から『廊下を走るな』と注意された。そんな日々を過ごした結果、五〇メートル走で校内一位を記録し、シャトルランでは上限回数を突破しそうな程の持久力を得るまで足を鍛えられた。

 

今までは足は速い方だったけど、校内一位では無かったし、何より私にそこまでの体力は無かった。サメのシリオンは特性上エネルギー消費が激しくて、運動をするとすぐにバテて眠くなる。なのにシャトルラン一〇〇回目に突入しても、もう一〇〇回目なの?って拍子抜けするくらいには余裕があった。*1長くなるのが面倒だったからそこで終わらせたけど、去年は皆よりちょっと下くらいだったのに。*2

 

拉致が開かないと思って……そして何より、このままだと自分が何になってしまうのかという恐怖を覚えた私は、しょうがなくタツロウから嫌がらせを受けている事を話した。

 

……あの時はしょうがなくって思ってたけど、今思うと誰かに打ち明けたかったのかもね。

 

 

『かくかくしかじかー(少女説明中)』

 

 

 

 

『まるまるうまうまー(少年理解中)……成る程、かわいそうですね。俺がなんとかします』

 

『はぁ?』

 

あいつはタツロウのいる教室へ向かって行った。

 

翌日

 

『なんとかしてきました』

 

『はぁ?』

 

『腕相撲で』

 

『はぁ?』

 

その日の学級新聞は、「たっちゃん凋落!下級生に二度目の敗北!」で埋め尽くされた

 

たっちゃんへのインタビューによると「俺は最強の立場にあぐらをかいて、挑戦する事を忘れていたずも。挑まれる側だと思い上がっていたんだずも。俺の周りには俺より格下しか居ないと、思い込んでいたずも。しかし、それは間違いだったずも。我々は花ずも。その"咲き"に至るまで、絶えず成長する可能性を秘めた花ずも。俺は自身の成長が少しばかり他の花より早いだけで慢心し、見下していたずも。そうして小さく萎んでいったずも。この花園で、萎んでいったずも。まさしく……

 

 

 

凋落花園と、言ったところずもか。

 

 

しかし今回、我が(マスター)、クロト先生に思い知らされたずも。俺は未熟者であり、頂を目指す挑戦者(チャレンジャー)ずもと。皆に今までの非礼を詫びたいずも。また、俺と共に道を歩んでくれると嬉しいずも」

 

 

って。

 

本当に腕相撲しただけ?信じられないくらい変わってた。

 

けど、それからすぐ

 

『本当に済まなかったずもぉ!!!』ドゲザー

 

って、タツロウからの謝罪を受けて、嫌がらせが無くなったからあんまり気にしなかった。

よく分からないけどまあ良かった的な感じ。

 

で、そこからあいつに感謝して積極的に話しかけるように〜なんてことにはならなかったけどね。

 

相変わらずパンツ要求されて、それに一言二言返して終わり。

 

冷たい?でもしょうがないと思う。初対面でいきなりパンツ要求してきて、かと思えば何の脈絡もなくズケズケと悩みを聞いきて、追いかけ回してきて、自分には何の関係もないのに解決した。

 

"恐怖"だったね、あれは。まさに。

 

でも、転機が訪れた。それはある日の帰り道、あいつが珍しく……正直鬱陶しいくらい落ち込んでた事。タツロウの件の恩もあったから話を聞くと、自分の発言が原因で友達に嫌われたかもって。

 

それを聞いた瞬間私の中でクロトに対する認識が変わった。今までは意味不明な狂人だと思ってたけど、ただの、自分と同じように悩んだりする人間だって分かった。それも、結構繊細な方の。

 

友達との些細なやり取りであんなに落ち込むんだから、相当だよね。

 

そんな性格だからこそ、初対面で私の事を気に掛けて何とかしようと動いてくれた。何もかもが不器用すぎたけど。

 

で、それが分かってからはもっと話すように、普通に話せるようになった。

 

『パンツください!あれ!何だか寂しそうですね!どうしたんですか!?』

 

『パンツください!あれ!浮かない顔してますね!悩み事ですか!?』

 

『パンツください!あれ!パンツ由来じゃない怒りを感じますね!話聞きますよ!』

 

それにあいつは、私が悩んだり苦しんだりした時、必ずそれを察して話を聞いてきた。

 

『うんうん、それは相手が悪いですね』

 

『うわ〜、それは相手さんが悪いですよ!俺だったらそんな思いさせないんですけどね〜』

 

『大変ですね……飴食べます?』

 

『殺しましょう』

 

『可哀想に……そいつの前歯全部折ってやる……!』

 

『一緒に謝りに行きましょう!土下座でも何でも、やってやりますよ!』

 

ん?あいつあの時なんでもするって言ったよね?

 

……こほん。

 

そうして話してみるとやっぱり悪いやつじゃなくて、困った時には親身になって話を聞いてくれた。いや本当、出会い頭のパンツ要求からは考えられないくらいの気遣いをしてくるよね。雑学も言ってくるし。偶に授業で習ってない言葉とかも使ってくるし。その結果少し賢くなって、先生たちから評価が上がったのは予想外だったけど。「よく予習していて素晴らしいです!」*3とか言われて、なんか居た堪れない気持ちになった。

 

後あいつは友達のことを……確かクレタちゃんだっけ?の事をとても大切にしてるのも良いよね。クレタちゃんの事を話してる時のクロトは本当に楽しそうで、聞いてるこっちまでクレタちゃんが魅力的に思えてくるっていうか、もう胸焼けがするくらいには凄いね、アレ。はぁ……直接話したことはなくて見ただけだけど、あの子可愛いかったなぁ。何であいつはあんなに可愛い子と友達なのか。世の中って本当に理不尽。私だってあの子と友達になりたいんだけど。

 

……また話が逸れてた。

 

私を助けてくれたり、気遣ってくれたり、友達を大切にしたり……こういうことから分かるように、あいつは不器用だけど優しい奴なんだよね。そこが話してて面白いし、パンツ要求してくるくせに意外と初心なのもイジりがいがあるのも魅力(チャーミングポイント)。後意外と爪が綺麗なところとか、お年寄りの荷物持ったりするところとか、なんかヤバそうな事件に巻き込まれた時もかなり活躍したらしいところとか、思ってることが顔に出やすいところとか、逆立ちで廊下を走ってるところとかも……いや、最後のは違うか。顔は普通だけど。

 

問題点のパンツ要求は多分まあ、あいつなりのユーモアで、本質はその後の言動に現れてるでしょ。いやまあパンツ要求も大事なんだけど。こう、あれがある事で会話がスムーズになるというか、挨拶みたいなものというか。……なんでパンツなんだろう。

 

卒業してそんな後輩と一時離れる事になるってなった時は、"また会えるんだし、別に落ち込むこともないな"って思ってたんだけど。

 

中学一年生、新しい友達もできたし、先生からもいっぱい褒められたけど、なーんか足りない一年だったんだよね。やっぱりパンツ要求が……。嫌だなぁ乙女の心的にそんなの絶対に認めたくない。

 

 

一昨日入学式があって、今日からあいつとこの学校で会えるようになる。

 

「はぁ……」

 

ブォンブォンブォンジョルノ

 

 

……何、今の?

 

 

 

 

テイク2

 

「はぁ……」

 

ブォンブォン

 

尻尾が空を切る音がする。別に嬉しいわけじゃない

 

 

と思いたい。

 

ブォンブォン

 

パンツ要求が恋しくなるなんて。

 

ブォンブォン!

 

そんなの……!

 

ブォンブォン!!

 

認められない……///

 

 

 

 

「「あ」」

 

曲がり角を曲がった先に、あいつが、いた。

 

ブォンブォン!!!

 

風が私達の髪を揺らした。

 

窓が閉められた白い廊下で、何故か吹いた風。一瞬の静寂。そして

 

「パンツください!」

 

二瞬目の静寂。

 

「……ダメだけd「出ておじゃれ……隠れていても、獣は匂いで分かりますぞ」……隠れてないし、私獣じゃないんだけど……」

 

取り敢えず拒否しようとし、それを遮るように言われた変な言葉に思わずツッコミを入れた。

 

「成る程……確かにそうですね! ところで知ってましたか? (自然な話題転換)体育館のステージの、左右に垂れている赤いカーテンみたいなやつは袖幕、上の方に垂れている赤い短いカーテンみたいなやつは一文字幕って名前があるらしいですよ!」

 

「……へぇ」

 

こいつの畳み掛けるような、要求を誤魔化すかのような雑学に感心させられて。

 

(反応的にパンツをくぐり抜けたことは確定的に明らかだ!ヨシ!誤魔化せたな!)

 

「いや全然誤魔化せてないから。くぐり抜けてないから。まるっきり顔に出てるから。てかその表現辞めな?もっと変態っぽくなるよ」

 

思考が顔に出てるから何も言われてないのにツッコんで。

 

「なるほど……」

 

……なんか考え込んでるけど、もしかして雑学二つ目言おうとしてる?

もう良いから。一日一個でいいでしょ。

 

「はいはい、もう分かったから。パンツなんて言葉、全然無かったね〜」

 

「おお!」

 

しょうがないから誤魔化されてあげる。

 

"ああ、こういうやつだなぁ"って思った。認めたくないけど、本当に認めたくないけど、欠けていた何かが埋まった感じが、満たされていく感じが……ほんっとうに認めたくはないけど。

 

こういうのが私の日常d「体育館のステージの後ろに垂れてる白いカーテンみたいなやつの名前はホリゾント幕なんですよ(雑学二つ目)(鋼の意志)」

 

「へぇ……」

 

へぇ(感心)

 

「じゃなくて……。はぁ、私今言ったよね? もう良いって言ったよね? どうしてそうまでして雑学を言おうとするの?」

 

私の感慨を遮っての禁断の雑学二度打ちに感心し、正気に戻って思わずツッコミを入れた。

 

そうだね、あんたはよく分からない意地を張る時があるよね。不器用だもんね。

 

なんて、パンツ要求からの怒涛の勢いで、気がつけばすっかりパンツのことなんて誤魔化されてしまった。

 

「全く……変わんないね、あんた」

 

思わず声に出た。なんか嬉しかったから。欠けていたピースがようやく埋まった感じがして、私の日常が帰ってきたって思えた。

 

こうして私はクロトと再会した。

 

ブォンブォン!

 

暖かい風が廊下に吹き、私達の肌を温めた。

 

 

 

 

……なんで風が吹くのかと思ったら、私の尻尾が巻き起こしてたっぽいね。*4

 

「なっとるやろがい!」

 

クロトがいきなり声を上げたのでビックリした。いきなりどうしたの?

 

「……突然何言ってんの?」

 

「うぇ?……あ!なんでもないです!」

 

ま、こういうのも日常だね。

*1
エレンを除くと女子の平均は三〇回だった

*2
一年時の女子の平均は二〇回

*3
申し訳程度の勘違い要素

*4
そうはならんやろ




タツロウ君の本名は
腕我 達郎(ウデガ タツロウ)です
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