Decide Zone Zero   作:犬咲夫藍

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大変お待たせいたしました……。
おかしいな、この章は2025年内に終わらせるはずだったのにな。
執筆力弱々で済まない……。

前回のあらすじ!
クロト一行は、ホロウ実習中にデュラハン五体から奇襲を受けた! 撤退をしようとした一行だが、選択肢により強制的に戦うことに! 今、激戦の幕が上がる!

各所持武器
クロト:刀
クレタ:ハンマーと鎌
エレン:グレイブ


二五話 けひひ、お前達が敵に回したのは虚狩りだぜ?

 

 

 

俺は刀身を右横に、下段に構えて一番近くに居るデュラハンへ駆け出した。

 

地面を強く蹴り、ものの数秒で攻撃の間合いに踏み込むと、腕に力を込める。

 

その動きを見たデュラハンはブレードを構えて迎撃態勢をとりつつも、少し困惑しているようだった。

 

フッ、そりゃあそうだ。この構えではお前に刀の間合いが丸分かり。そしてそこから判断すると、この距離で刀を振っても、俺の身体じゃあどうやってもギリギリお前に届かない。そんな距離から刀を振ろうとしていることに困惑しているのだろう。

 

しかしこれが

 

「ちゃんと攻撃の間合いなんだよなぁ!!」

 

俺は刀を振り、"投げた"

 

「!?」

 

豪雪は発動していないものの、結構本気で力を入れて投げたので、かなりの速度で刀は迫る!

 

当たるまでに瞬きする間もない。

仮にそうしたら、そのまま目を瞑ってお陀仏だろう。

 

だが相手は上級エーテリアス。他のエーテリアスとは一線を画す反射神経で、ブレードを振り上げ

 

ガキン!!

 

何とか刀を弾いた。

あれ反応するの本当に何。

 

しかし

 

「〜〜〜!!」

 

「咄嗟のことで力が入り切らなかったようだなぁ!」

 

かなりの力を込めて刀をぶん投げたので、デュラハンは弾かれたように後ろに体勢を崩した。

 

これが俺の狙いだった。

 

それでも盾を身体の前に出して牽制してるのは敵ながらあっぱれというかまじ怖い。そもそもなぜ俺はこんな危険存在と戦ってるんだろうか。本来は逃げるはずだったのに。アホ選択肢がよぉ……!

 

……気を取り直して。

 

奴は盾を前面に押し出してはいるが、後ろに体勢を崩しているので少し上向いており、地面との間にかなりの隙間ができている。

 

そこにザザーっと飛び込みスライディング! 相手の身体と盾の間に入り込み、伸び切った腕に起き上がりの勢いで蹴りを食らわせる〜!

 

「別に八つ当たりとかじゃないけどふざけんなよこの野郎!」

 

バキ!(肘関節が砕ける音)

 

「〜〜〜〜!!?」

 

ここから畳み掛けるのが俺流である。すかさず痛みで怯んでいるデュラハンの後ろに回り込んで優しく抱き込んで

 

こういうの、バックハグって言うのかな///*1

 

「お前の全て……俺に委ねろよ(いけぼ)」

 

「!?///」

 

殺伐とした戦場に、突如として場違いな恋の花が咲いた。

 

Oh……BIG LOVE……

 

そして思いっきりジャンプし、"皆が見上げる"中、俺たちは空中で弧を描いていく。

 

まるで、新婚旅行の飛行機に乗っているかのような甘い雰囲気。

 

視界に広がるホロウ越しの空が……綺麗だね……。

 

「///」

 

そして突如デュラハンの脳裏に溢れ出した"存在しない記憶"

 

〜〜〜

 

今日もホロウに迷い込んだ哀れな人間どもをぶち殺して周り、疲れ果てた身体で我が家に帰ってきた。

 

同僚のデュラハン達は粗暴で、こっちにまでブレードが当たりそうになるし、血飛沫が私に降りかかる事がある。

人間たちのなかには妙に強い奴がいて、死にそうになる事が何度もあった。

 

毎日毎日、常に死の危険がある仕事。そんな心が擦り減るような殺伐とした日々の唯一の温もりが

 

「デュラ娘、おかえりなさい」

 

彼だった。

死にゆく人間の憎悪に塗れた顔は、ずっとこびり付いているけれど、彼の輝くような笑顔だけがそれを薄れさせてくれる。

 

「え? 俺にする? まだ何も言ってないよ〜笑」

 

私の冗談に、彼は"ちゃんと言わせて"と満更でもなさそうで……。

 

そんな姿を見ると、胸の奥から何かがこみ上げてきた。

 

「お風呂にする? ご飯にする? それとも……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺? ……うわっ!」

 

私は湧き上がる情動のまま彼を押し倒した。

 

体格差的に、彼の身体は私にすっぽりと覆われ、身動きが取れない。まるでオオカミに捕まったヒツジのようだ。

 

「……いいよ?」

 

少し期待するようなトロンとした眼差しに、赤みが差した頬が心を揺さぶってくる。お互いの吐息を肌で感じる程に私達は近くにいて、差し出された唇から目が離せない。

 

ヒツジは自ら身体を差し出し、オオカミに食べられる事を望んでいる。

 

もう、我慢できない。

 

私は彼が差し出す唇に近づいて……甘き蜜月の夜を始めバコン!!

 

どうも。辞世の句代行のクロトです。

思いっきりジャンプして頭からの叩き落としが決まり、デュラハンは頭からコンクリートにめり込んでいる。

 

「なんか変な妄想をされた気がするが……兎に角ジャンプバックブリーカーだ。いい夢見ろよ……」

 

恋の味はコンクリート! ってやつだね!*2

 

誰だ今の。

 

「「「「!!」」」」

 

それはともかく、俺の前に広がる四体のデュラハンは、仲間があっという間にやられたのを見て俺への警戒を高めたようだった。

 

盾を構えながら、ジリジリと俺を囲むように向かってくる。一体倒した余韻には浸らせてもらえないらしい。しかし、治安官さんに囲まれた犯罪者ってこんな感じなのかな。

 

【余裕のダンス】

 

【エーテリアスに反省を促すダンス】

 

……まじかよ。この状況で踊るか普通?

まあいいか。【下】!

 

と言いたいところだが、権利的に怖いので【上】!

 

まあ長年鍛えたこの身体能力だったら、ブレイクダンスみたいなカッコいいダンスを決めてくれるやろ( ´,_ゝ`)

 

さあ君たち! 俺のカッケェダンス、とくとご覧あれ!

 

ピコン!

 

 

 

選択した瞬間、身体が抗えない謎パワーで動いていく。

ビシッと指先を揃え、首、肘、肩、腰の関節に力が加わっていって……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウィ〜ン……ウィ〜ン……」

 

「「「「??」」」」

 

困惑と静寂が辺りを支配する中、俺の機械音声だけが虚しく響いていた。無駄に上手いロボットダンス。どうやらカッケェダンスなんてものは存在しなかったらしい。

 

"カッケェダンスを披露するなどと…その気になっていたお前の姿はお笑いだったぜ?"なんて、選択肢の声が聞こえてくるようだ。

 

「「「「……」」」」

 

クソッ何見てんだよ! 見せもんじゃねぇんだぞ……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クレタさんエレンさん! やってしまいなさい!

 

「地の底にぶち込んでやる!!」

 

「シャークトルネード!!」

 

ドカーン!

 

「〜〜〜ッ!?」

 

怒涛の展開。奴らの背後に回り込んでいたクレタとエレンの大技不意打ちが思いっきり決まり、一体がエーテルの塵と化し

 

「「「!?」」」

 

残りの三体はふっ飛ばされた。

 

誉れは浜で死にました……。

やっぱり不意打ちはサイコーだぜ!

 

「お前らが空中で弧を描く俺を見上げている間に、クレタとエレンは背後に回り込んでいたのさ!」

 

そしてそれを気が付かせず、且つ大技の準備を整えるために注意を引いてたってわけ! だからあの選択肢が出たのは幸いだった。あれがなければオットセイのモノマネをして時間を稼ぐ予定だったし……

 

〜〜〜

 

「おうおうおうおうおっうおうおっwwwwwwwwパンッパァンッパァンッ(ヒレを叩く音)おうっおうおっおうおうおうおwwwwおうっっおうおうおうおうおっwwwwwwwwパァンッパァンッ(ヒレを叩く音)おうおうおうおっっwwwwおうおうっおうっおうっwwwおうおうおうおっwww」

 

〜〜〜

 

さて、動揺している他の三体をぶちのめしに走る「ウィ〜ン!」……ぜ?

 

「「「!?」」」

 

「「!?」」

 

「これは……! 下半身は迷いなく猛々しい疾走の様相、しかし上半身はそれとは真逆のカクカクとしたロボットの動きを左右に揺らがせている。まるで何か別のものに上半身を操られているかのように。この錯覚こそ、弛まぬ鍛錬によりたどり着く身体操作の極致の証と言えよう。流石だ」

 

まるで、じゃなくて実際に操られているんですけどね雅さん。 

というかこれが身体操作の極致だとして、なんで今そんな動きをする必要があるんですか(正論)

 

というかヤバい! 今回は下半身から徐々に解けていくタイプの選択肢だった!*3

 

「ウイ〜ン……成る程」

 

おもむろに上半身だけロボットダンスを始めた雅さんに何も言えない俺がいた。

 

「ッ!」

 

「ハッ!? 危ねえ! 避けろクロト!」

 

「うぇ?」

 

この場の誰よりも冷静になるのが早かったデュラハンが、俺に剣を振り下ろしていた。

 

「あっ……ぶねぇ!?」

 

死ぬかと思った!! 死ぬかと思った!!!

 

なんとか白刃取りで止めることができたから良かったが……。

 

ん?

 

「上半身動くじゃん……」

 

【開けんかいコラァ!】

 

【オットセイのモノマネしま〜す】

 

「開けんかいコラァ!!」

 

バキィ!!*4

 

「!?」

 

白刃取りの手に思いっきり力を込めて敵の刃を砕き、ヤクザキックで胴体を蹴っ飛ばした。

 

そうして俺達とデュラハンがお互いに離れたことで場が一旦膠着する。

 

「あ、お前が投げた刀回収しといたぞ」

 

「うわすっかり忘れてたわ。ありがとう」

 

差し出された刀を手に取ると、身体から余計な力が抜けた感覚があった。やっぱり武器があると良いね。

 

「まだ戦う気なの?……まあ三体ならイーブンだし、真正面からやれるか」

 

「へへっ丁度いいな。逃げるのも不意打ちも、性に合わなかったんだ」

 

二人ともカッコよ……。俺も何か良い感じの事言いたいな。

 

【フン、下級戦士が。サイヤ人の王子の力を見せてやる……】

 

【オットセイのモノマネしま〜す】

 

何も言いたくないな(切実)

 

もうええやんけ王子の力はさぁ! 何度だよ! 後オットセイのモノマネはこのタイミングでは絶対にない! なんで発案者の俺より選択肢(おまえ)の方が乗り気になってんの? どうしてそうまでしてやらせようとするの?

 

はぁ……。まあ王子の発言は人によっては高貴な誇りが伺える普通にカッコいい発言だから【上】で良いか。

 

唯一の問題は俺が王子でもなんでもない事だが、それを除けば何の欠点もないしな!*5

 

ピコン!

 

「フン、下級戦士が。サイヤ人の王子の力を見せてやる……」

 

「いや、だから上級だって言ってるでしょ。あとあんた王子でもないし」

 

「「「……ッ」」」

 

「……嘘でしょなんであれで気圧されてんのあいつら。……もしかして本当に王子だったりすんの?」

 

エレン先輩に俺のアホなノリが移ってきてる……。

 

「んなわけ無いですよJK」

 

「いやJCだけど」

 

違くて、"常識的に考えて"の略で……。

 

これが、ジェネレーションギャップか(転生者並感)

 

さてさてところで、俺達はさっきまで慎重で卑怯な立ち回りを求められていたんだよな。デュラハンとかいう、一体でさえ精鋭のエージェント三人を退かせる事もある強力なエーテリアス。それが五体同時に襲いかかってきたんだ。数と質の暴力。普通に逃げようとしたのに選択肢のせいで……! というのは置いておいて。

 

ようやく同じ数(イーブン)になれたんだ。ここからが

 

「反撃開始、ってやつか……」

 

まあピンチになっても雅さんが助けてくれるだろうし、なんならここまでよく頑張ったなって加勢してくれるかもな。うん、安心してあいつらに挑める。けひひ、お前達が敵に回したのは虚狩りだぜ? 絶望しな!

 

ふと右を見るとクレタと目が合った。ギラついた目でニヤリと笑っている。可愛い。頷きで返す。

 

ふと左を見るとエレンと目が合った。"まあ、あんたとクレタちゃんがやりたいなら付き合ってあげるよ"って目をしている。

 

「まあ、あんたとクレタちゃんがやりたいなら付き合ってあげるよ」

 

普通に言ってくれた。良い先輩だ。頷いて返す。

 

さて

 

「「「かかって来い(来な)よ」」」

 

俺達三人の心が一致した瞬間だった。

 

「「「〜〜〜ッ!!」」」

 

奴らの雄叫びに、どこからともなくサテュロス*6とティルヴィング*7、ホプリタイ*8ホロウではよくある事だ。

 

今更そんな奴ら、物の数じゃあねえよ。戦闘再開だ!

 

 

Side雅

 

 

 

 

「「「かかって来い(来な)よ」」」

 

その言葉と共に、戦いの火蓋が再び切って落とされた。

 

まずは咆哮で呼び寄せられた総勢十五体のエーテリアス達が先陣を切る。

 

「ハッ! お前らみたいなのを烏合の衆って言うんだぜ! なあ二人とも!?」

 

ジャキン!

 

「「正解!」」

 

三人は駆け出した。

 

そして多数相手に怯むことなく、相対した敵を尽く吹き飛ばしていく。

 

「当たらねぇなぁ!」

 

クロトは振り下ろされた刃を踏みつけ、体勢を崩した所を斬りつけ

 

「……無駄!」

 

エレンは振りかざされた鎌を避け、グレイブをフルスイング。まとめて三体吹き飛ばす。

 

「意味ねぇんだよそんなモン!」

 

クレタは腕を前に構えて防御したホプリタイを、お構いなしにハンマーで吹き飛ばした。

 

そうして刃とハンマーが華麗に振り舞わされた九秒間。

 

「ふむ」

 

その後に残ったのは動かなくなった五体のエーテリアス達の身体。これはクロトがやった分で、残りの十体は二人が葬った。どうやらクロトは不殺を他者に押し付けず、己のみに留めているようだ。誉れ高い。

 

しかし混戦の最中、お互いの邪魔にならずに淀みなく相手を捌くとは。三人共全く見事な手際だった。

 

「さてと。後はお前らだけだなチキンレッグ共」

 

残るはデュラハン三体。五体に比べればまだマシだが、正規のホロウ調査員達でも、多くの場合撤退を選ぶ事が考えられる状況だ。にも関わらず三人は撤退するつもりがないと。

 

「王子、か……」

 

この言葉は、クロトの生き様と自覚があらわれたものだ。

 

王とは、全ての民を守る者。しかし、彼は自らにそれほどの力はないと自覚している。それでもいつか、全ての民を守れるようになると。諦めず、ひたすらに進み続ける。例え目の前にどのような困難が訪れようとも、立ち向かう。それが"いずれ王になる者"、即ち王子という言葉が表す彼の矜持……!

 

フッ、己が征く道こそが即ち王道ということか。皆が付いていくのも頷ける。

途轍もない傑物が生まれたものだな。

 

「お前達なら大丈夫だ。この勝負、私が手を出すまでも無いだろう」

 

私は胸を張ってそう言えた。

 

 

 

 

 

 

 

「えっ……」

 

「! まさか虚狩りのアンタからお墨付きがもらえるとはなぁ! 応えねぇ訳にはいかねえな? 皆!」

 

「えっ……」

 

「まあ、悪い気はしないね」

 

「えっ……」

 

この勝負、私は"最期"まで手を出す事は無い。安心して励むといい。お前達が新エリー都の未来を切り開く者なのだから。この程度、なんの障害にもなり得ない。

 

「フッ……」

 

ああ、なんとも晴れやかな気分だ。未来への一助となれる事を思うと、自然と頬が緩むのを感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ……」

 

 

 

 

*1
五七五

*2
通りすがりの天の声

*3
そんな中世の拷問みたいなのある?

*4
これ治安官呼んだ方が良いだろ……

*5
クソデカ欠点

*6
鎌を持った人型エーテリアス

*7
右腕が刃の人型エーテリアス

*8
腕が発達した人型エーテリアス




次話は、ほんまに直ぐ
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