Decide Zone Zero   作:犬咲夫藍

28 / 31
な、なんて更新速度なんだ……!
前回から十分も経ってない……!
凄すぎる!

まあもともと一つだったものを分割しただけなんですがね。


二六話 虚狩りを敵に回した男

Sideクロト

 

それは、まさに青天の霹靂だった。

 

「お前達なら大丈夫だ。この勝負、私が手を出すまでも無いだろう」

 

突如雅さんから繰り出された絶望の言葉。

 

「この勝負、私が手を出すまでも無いだろう」

 

イケイケノリノリでこっちのペースに持っていった時に。

 

「私が手を出すまでも無い」

 

なんて、

 

やべぇよ……

 

 

 

 

やべぇよ……泣

 

 

オイオイオイどうするんだよこれ!! 

 

どうするんだよ!?

 

一番アテにしてた雅さんから急に梯子外されたんですけど! 正直なんやかんや全部やってくれると思ってたんですけど!! だってあなた俺らを守る為に派遣されたんですよね!? お仕事として来られてるんですよね!? 普通に職務放棄ですってそれは!

 

あれか? 最初に滅茶苦茶罵倒しちゃったのを根に持たれてるのか? へへ、違うんですよ雅の旦那ァ。あれは選択肢ってやつのせいでしてね?

 

今土下座したら何とかならねぇかな。

 

そっと雅さんの顔色を伺ってみる。

 

「フッ……」

 

何やら晴れやかな顔で微笑んでいた。

 

絶対俺への意趣返しが出来て心晴れやかになってるじゃん……。*1

 

そりゃそうだよな。あの選択肢以降雅さんの様子おかしかったもん。泣いたかと思ったら急に黙りだしたり、かと思えば急に俺に質問してきて、かと思えば俺が答えきる前に遮ったり。

 

……! もしかしてそれも意趣返しの一つだったのか!?*2

 

当の俺がその意図を分かっていなかった為に、段々とエスカレートしていって……。

 

……! まさか、その後も謎に褒めそやしてたのもそういうことなのか? 上半身だけロボットダンスをした時、身体操作の極致とか言ったり、そして俺の行動を揶揄するように、彼女自身もロボットの動きをして……!*3

 

そしてそれでも察しなかった俺を、態々言葉にして見捨てた、と。

 

クッ、否定したいがあの晴れやかな顔は……まるで、"最期まで手を出すことはない"と思っていそうな顔は……!*4

 

 

 

ああ、なんてことだ。

 

 

全ての辻褄が……合う!

 

うわあごめんなさい雅さん! 俺、それを選ぶしかなくて泣

 

う、うおお……? なんだか全身が震えてきたな? 視界もグニャリって。

 

ざわ……

    ざわ……

 

なんかざわざわって声も聞こえる……何の声なのこれは泣

 

「お、武者震いってやつか、やる気だな!」

 

違うんだよクレタ。これはね、土下座の前に身体を温めてるんだ。

 

「フッ、その意気だ」

 

うぼあ\(^o^)/

 

あ、あれ? デュラハン達ってこんなに大きかったっけ? 百五十メートルくらいに思えてきた*5

 

多分雅さんの支援が無いって事実と、まさかの敵意も相まって余計に大きく……。

 

あ、ああ……さっきまでの俺の思考が跳ね返ってくる。

 

"けひひ、お前達が敵に回したのは虚狩りだぜ?"

 

う……

 

 

 

うぼあ\(^o^)/

 

ここから入れる保険はないんですか?

 

「へっ! 来いよ!」

 

「え?」

 

「ッッ!!」

 

気がつけば、さっき俺が剣を折った盾だけのデュラハンが、俺目がけて盾を構えて突進(シールドバッシュ)で迫っていた。

 

三メートルの巨体から繰り出される突進は、まるで車が真正面から突っ込んで来ているかのような迫力を醸し出す。実際威力は相違ないだろう。

 

やっべぇ全然身体を動かす気にならない。雅さん敵に回したんだもん。これも罰かもなって。

 

「やらせるか……よっ!」

 

ドガン!

 

しかしその突進が俺に到達する前に、ジャンプしたクレタが縦に一回転。その勢いと思い切りの力をハンマーに乗せ、デュラハンの盾を真上から叩くことで地面にめり込ませた。

 

「〜ッ!?」

 

盾がめり込み動きを強制的に止めさせられたデュラハンは、そのせいで自分の盾にぶつかり、俺に与えるはずだった衝撃を自分で食らった。暫く動くことを許さないだろう。

 

だが瞬間、左右から一瞬の煌めきが。

 

〜〜〜

 

脳裏に過ぎる、ある日の授業。

 

『ここで皆さんに問題です。デュラハンがある技を発動する時、一瞬光が生じますが、これはなんの光でしょう?』

 

『はい!』

 

『はいヨシコさん』

 

『デュラハンの身体から発される光は、体内のエーテルを圧縮、解放して生じた爆発の光です!』

 

『素晴らしい! 正解です! 皆さん、これはデュラハンの危険な技の合図です。なので絶対に受けないようにしてくださいね! 人一人くらいなら簡単にズタズタにしちゃいますから!』

 

〜〜〜

 

この光は、体内のエーテルを圧縮、解放することで生じる爆発である。

 

その爆発で推進力を生み、目で捉えられない程の速さで相手を斬りつける、まるで鎌鼬めいたデュラハンの必殺技の合図。

 

盾だけのデュラハンの突進は陽動。奴等の身体の向きから見て、狙いはクレタだろう。奴等は十メートルくらいの距離まで近づいているから、到達時間は一秒もあるかどうか。空中で無防備な姿を晒している今、回避は困難。

 

これ罰とか言ってる場合じゃねえわ!

 

「「やらせねぇ(ない)」」

 

俺とエレンはデュラハン達の進行方向に出る。

 

敵の攻撃に合わせて飛び出した瞬間、景色が色を失う。全てがスローになり、相手の動きが細部に至るまで理解できる。命を奪いかねない危険な攻撃にあえて身を晒す事で、死に際の集中力を引き出し発動する"極限視界"。

 

今、全てが理解できる。

俺は左から来るデュラハンを迎撃する為に刀を下段に構え、エレンは右から来るデュラハンを迎撃する為にグレイブを下段に構えた。

 

奴らの刃が間合いに入った瞬間に弾き上げてやる。

 

しかし、俺達の攻撃の間合いに奴らの刃が入るということは、コンマ数秒の後にその刃が肉体に到達することを意味する。それ程の速さ奴らは迫っているんだ。

 

猶予は文字通り刹那の刻のみ。

 

「……」

 

「「!!」」

 

迫る凶刃。

 

 

「……」

 

「「!!」」

 

 

目を逸らさない。

 

 

「……」

 

「「!!」」

 

そして

 

 

「……」

 

「「!!」」

 

 

 

刃の先が

 

 

「……」

 

「「!!」」

 

 

 

間合いに

 

 

 

「……」

 

「「!!」」

 

 

 

 

 

触れた

 

「「!!」」

 

ブオン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガキン!!

 

「「!?」」

 

 

「刹那を制したのは俺達だったなぁ!」

 

攻撃を弾き上げられた二体のデュラハンは、身体がガラ空きになった。

 

ここを何度も斬りつける!

 

おら! 袈裟斬り!

 

*6

 

 振り下ろし! からの返す刃振り上げ!

 

*7

 

 これ燕返しね! からの高速で刀を鞘に納刀してからの居合抜刀!

 

 

 

と思うじゃん?

 

俺はデュラハンと居合の姿勢ですれ違う。

 

ザザザザザン!

 

「!?」

 

そうして繰り出される五つの斬撃。

 

すれ違う瞬間に高速で相手を斬り刻む技、飛雪(ひせつ)

 

バタン! と音を立てて、デュラハンは倒れた。

 

「あ、危なかった……極限視界って実戦だとリスクデカ過ぎだよなやっぱ。普通に授業でやったVRのようにはいかないって」

 

極限視界の事を授業で習った時は感動したけど、今となってはあんまり発動するような事態にはなりたくないと思ってます。

 

エレンの方を見ると、グレイブを蹴飛ばして、まるでヘリコプターのプロペラめいた回転をさせてデュラハンをギャリギャリと削っていた。それどんな力?

 

あ、回転止めた。

 

「終わったのかn「はぁっ!」

 

エレンはグレイブの縦回転を止めた後、デュラハンの周りをぐるっと一周、その間に何度も銀光が円をなぞり、デュラハンの身体を斬り刻んだ。

 

「〜!?!?」

 

虹の塵が舞う。

 

ということは

 

「おっと、後はお前だけみたいだぜ? 盾野郎!」

 

「……」

 

後ろを振り向くと、クレタと盾だけのデュラハンが対峙していた。どうやら俺達が他のデュラハンを倒している間に、両方体勢を立て直していたらしい。

 

ついに三対一だな。

 

ははは! 数の暴力に晒される気分はどうだ?

 

「じゃあ、こっちも決着をつけるとするかァ!? まだ加勢しないでくれよ二人共!」

 

「~~!!」

 

一対一、数の暴力は無しか……。

 

その言葉に応えるように、盾だけのデュラハンはクレタに襲い掛かった。

 

巨大な盾のスイング。

 

「甘え!」

 

ガキン!

 

だがクレタは、盾に加わる力が最大限に達する前に思いっきりハンマーを打ち返した。

 

弾き上げられた盾。

 

だが、同時にハンマーをフルスイングしたクレタも、身体の捻りを戻す一瞬無防備になる。

 

「ッ!!」

 

「まじかっ!?」

 

デュラハンは弾き上げられた勢いを利用して、"刃の無くなった右腕"でクレタを殴打

 

「うらあ!!」

 

しようとしたところ、その右腕を蹴り上げられた。

 

「ッ!」

 

「一瞬マジでビビったぞ……」

 

ドスン!

 

クレタの背後でハンマーが落ちた。振り切ったハンマーから手を離すことで、素早く迎撃の為の体勢になれたんだ。あの蹴りの反動でクレタは後ろに下がった。

というかあれ? その足元にいるのは……俺が倒したエーテリアスじゃないか?

 

「やるじゃねぇか。中々面白くなってきやがった……」

 

「……!」

 

「ハンマーは結構遠くに行っちまったし、こんな鎌じゃあお前を倒せねぇ。結構ピンチってやつだよ。二人に加勢しないように言ってるしな」

 

だが、とクレタは付け加える

 

「あたしの足元が見えるか?」

 

「ッ!!」

 

 

「へへ、そうだよ。全く、本当に良い親友(ダチ)をもったモンだなぁあたしは! 足元に転がってんのは、クロトが倒したホプリタイだ!」

 

ちょうどハンマーの変わりになりそうじゃねぇか? とクレタは笑った。

 

「二対一、行くぞオラァ!」

 

「!!」

 

 

「!?」

 

 

クレタは自在にホプリタイを振り回し、デュラハンを滅多打ちにした。

 

盾で守られば盾ごと叩き、苦し紛れの殴打や蹴りも、力が入りきる前に打ち返す。そうして敵の行動を制限しつつ、ついに晒された胴体を、鎌で斬りつけてからホプリタイで叩くのを繰り返した。

 

一見荒々しい様に見えて、相手の行動の尽くを途中で中断させたり、また、鎌出斬りつけることで身体を硬直させ、衝撃を通しやすくしている。

 

良い技術だ……。

 

「……ッ!」

 

そうして滅多打ちにされたデュラハンは、ついに膝から崩れ落ちた。

 

「今だ二人も!」

 

「はい、喜んで〜」

 

「お前はもう終わりだ!」

 

「〜〜〜〜!!!」

 

Smokin'Sexy Style!

 

 

WIPEOUT!!

 

 

 

 

 

「「「イェーイ!」」」

 

パチン!

 

 

 

こうして、なんとか無事にホロウ実習を終えた俺たちだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜一週間後〜

 

 

激動のホロウ実習も終わり、俺はすっかり日常に戻っていた。

 

「ただいま〜」

 

「あらおかえりなさい」

 

帰ってきてお帰りを言ってもらう。

何でもない日常だ……。争いのない、平穏な。

 

手を洗ってリビングに行くと、夕方ワイドショーが流れていた。

 

うんうん、こういうなんでもない一時がね、戦闘と選択肢で荒んだ心を癒してくれるのよ。

 

"今日はなんと! 生放送であの星見雅様にインタビューです!"

 

「え」

 

"雅さんにズバリ質問です! あなたが今気になる人は誰ですか!?"

 

"ふむ……そうだな。実は、私が目標にしている人物がいる"

 

"な、なんと……その方は雅様よりも強いのですか!?"

 

はぇ〜そんな化物みたいな人がいるのかぁ……新エリー都は広いなぁ。

 

"そうとも言えるし、そうでないとも言える。幼い頃に会った時点で既に、彼は私よりも強かった。その心がな。実力的にはまだ伸びしろがあるが……私が強くなったノウハウを全部ぶち込んでいるので、順当に行けば私を超える実力を持つはず"

 

"な、なんと! 雅様がそこまで入れ込むとは! その方は一体!!??"

 

"ふむ……個人情報故、あまり言えることは無いが、一言で言えば彼は……王子だ。そして今後の新エリー都を守る王となるだろう"

 

"なんと!!!??? 高貴な血筋の方なのですね!!"

 

"直接ではないがそうなるな"

 

「やばすぎる」

 

期待が重すぎる。

 

その人も大変だな。

 

「今日の晩御飯はカツ丼とうどんのセットよ〜。お父さんは今日は遅いからもう食べちゃいましょうね」

 

「やったぜ。おかわりある?」

 

「ええもちろん」

 

ふふ、全く、日常ってのは良いものだぜ。

*1
違います

*2
違います

*3
違う

*4
正解

*5
デカ過ぎんだろ……

*6
「〜ッ!」

*7
「〜ッッ!?」




次章で原作開始前編完結です!
嘘だろ……まだ原作入ってないのかよ……
早く書きてぇよ……!
一応クロトの物語としては一段落つきます

ちなみにヨシコちゃんのフルネームは"アタマガ・ヨシコ"です
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。