誘拐されたクレタの居場所を突き止めたクロト達は、監禁場所に突入した!
「ンナ! ナ!?(社長! 無事ですか!?)」
「な、ビルドまで!?」
こんなところまで来てくれたのは、クロトだけじゃなかったようだ。まさかビルドまでこんな危ない場所に来てくれるなんて……。
「お前ら、クレタに何かしてないだろうな?」
クロト……
「ンナ……!(貴方達が社長を……!)」
ビルド……
「あなた達の行いは最低な犯罪だよ!」
謎の美少女……
!?
「!?」
誰だよ!
「あ、はじめまして。通りすがりの正義の味方です!」
何言ってだこいつ(ン抜き言葉)
あたしはクロトに顔を向けた。
「ああ、文字通りこいつは通りすがりの正義の味方だ」
???(宇宙猫)
「あ、何が正義で何が悪かなんて立場で変わりますからね。困惑するのも無理はないです」
そこじゃねぇよ。突然頭痛くなるような事言うな。
「俺がお前の捜索に行き詰まってた時、通りすがりのこの子が協力してくれたんだよ。呼称については……犯罪者の前で個人情報はペラペラ喋れないからしょうがない」
あ、ああ、そういうことか。この展開でマジで通りすがりの善良な市民なことあるんだな。スッと言ってくれよ。
……いや言ってたわ。とりあえずありがとう。
「えへへ、頑張って通りすがりました」
???
「ベロボーグのお友達とボンプと……データに無い子供の御一行か。まあ、貴様らの様な子供がいくら増えようが、路端の小石ほどの脅威にもならんが」
「急に余裕ぶってんなお前な。さっきまであんなに取り乱してたのに」
「……どうやら恐怖で錯乱して記憶が混濁しているらしいな。俺は取り乱さないし間違えない。全く、何を言っているのか。勘弁してほしいものだな。誘拐された人間はこれだから厄介なんだ。もっと慎みを持つべきだろう(?)
まあそれはそれとして自然な疑問を自然な間で切り出すんだが貴様らはどうやってここまで辿り着いた?」
図星すぎるだろその反応。
話題転換も不自然過ぎるし。自然な間で切り出すってなんだよ。
「あぁ? そんなの頑張ってこの場所を突き止めた後、壁に足突き刺して走ったに決まってるだろ常識的に考えて」
何でもないようにとんでもない事をクロトは言った。ふふ、流石だぜお前って奴は。いつだってあたしの想像を超えてくるんだもんな。
「何を満足気に頷いているんだ? ツッコめよ」
ふふ、やっぱり流石だ。
「おい」
ふふふふふふ
「聞けよ」
〜数分前〜
『ンナ!(ついに辿り着きましたね!)』
『道中は特に危ない事態に遭遇せず、スムーズに進めたね! 流石お兄さんと伝説のプロキシパエトーンさん!』
『えへへありがとう。けどまだ油断はできないよ。むしろここからが本番。どうやってそこまで辿り着くか考えないt』
バゴ
『ふぇ?』
グンン
『き、君何してるの!?』
『見てわかるだろ? 壁に足をめり込ませ、垂直に立ってる』
『そんなの見たら分かるよ! なんでいきなりそんな事をってこと!』
『ああ。中で連中と鉢合わせたら面倒だし、外から一気に駆け抜けて、速攻でクレタを救出したい。あんたは治安局に連絡したあと、ビルドを介して遠隔でサポートしてくれ。何かと都合が悪いだろう?』
『……なるほどね。こっちのことまで考えてくれてありがとう。分かったよ』
『ヨシ! じゃあ行くぞ二人とも。しっかり掴まってろ』
『うん!』
『ンナ!(はい!)』
バガッ
ズボァ
ドスドスドスドスドス!
『頑張ってね〜!』
〜〜〜
「……いや分からないわよ。端折り過ぎでしょ"頑張った"って。というか壁を垂直に走るって何?」
「若者特有の圧縮言語ってやつだな!
俺はいつもついていけないが! ガハハ!
だからあいつらにウザがられてないか毎日不安なんだ……」
このおっさん豪快そうに見えて繊細だな。なんかゴリラみてぇだ。
「ふん、当たり前のように意味の分からない事を言いやがって。ツッコミ担当のベロボーグもツッコミが追いついていないぞ」
そもそもあたしはツッコミ担当じゃねぇよ。
「だが現場を見られては仕方がない。お前たちに人質兼ボンプ質としての価値はない! 始末させてもらう!」
そう言うと〈
だがクロトは、自分に向かってくる足を踏みつけ、コンクリートの床にめり込ませた。そしてあまりの勢いで、〈謝らず〉の上半身まで跳ね上がる。
「!?」
「やれるものなら」
そしてその跳ね上がる上半身を迎えるように拳を引き
「やってみろよ」
そう言いながら、奴の鳩尾にめり込ませた。
「 」
決められた〈謝らず〉は、白目を剥いて崩れ落ちた。足は床にめり込んだままになっているせいで、天高くケツを突き上げた姿になっているのは滑稽だが……
「薄汚え」
そう言い放った親友の顔は、ゾッとするような冷たい目をしていた。あたしがもっとしっかりしてれば、お前がそんな顔する事も無かったってのに……!
すまねぇ。
◆
Sideクロト
「薄汚え」
そう言いながら俺は気絶させた男の頭に足を乗せ、段々と力を込めていく。
「お前らが投降するなら、この男の命は奪わない。だが、もし抵抗するなら……」
ミシミシ
「このまま頭を潰す。しみったれた臭え廃墟の床の染み。存在の汚らしさに相応しい惨めな最期だな」
「「ッ!!」」
「クロト……お前そこまで……」
「クク……」
いや、絶対そんな事しないけどな!!!(超大事)
エーテリアスすら殺せない事が多い俺が、人を殺せるわけがないんだよなぁ。
だからまあ、正直言ってこれはハッタリ。ただの脅しだ。これで投降してくれると嬉しいんだが……まあいけるだろ。一見冷徹な雰囲気を醸し出してるこいつらだが、流石に仲間を見捨てることは無いはずだ。というか寧ろこういう組織ほど仲間意識は強いはz「まあ別に良いわね。床の染みにしてやりなさい」
なん……だと……?
「……」
背中に冷や汗が伝った。
い、いや、俺の聞き間違いかも知れないな。流石に(女子中学生を集団で誘拐する凶悪犯といえど簡単に仲間を見捨てるわけ)ないだろ。恐らくムカチャッカファイヤーな俺のearが"ごめんなさい、こちらが悪かったわ。投降するからその人の命を助けて"を聞き間違えたんだろう。ぷりーずぱーどぅん。
「もう一回言ってくれ」
「ええ
存分に殺しなさい」
存分に殺しなさいじゃねぇか。
「人の心とかないんか?(ガチ焦り)」
お前らのような犯罪者って仲間意識しか人間としての取り柄がないんやないんか?
「正直、彼がどうなろうとどうでもいいのよね。実力はあるのだけれど……他の能力が壊滅的過ぎるし協調性も悪い。そのくせ任務の失敗を部下に全部押し付けて、プライベートでもみんなの悪口ばっかりで」
女が語った内容は嫌にリアルだった。大それた事をしているわけじゃあないんだが、こうやって積み重ねで嫌われていく奴いるよねって。
「……」
けどもっとこう、なんというか手心と言うか……。ほら、必ずしも降伏してこいつを助けてなくても良いんだぞ? 俺に襲いかかって無理やりに助けたりさ(?)
「まあ、わざわざ殺したいってほどでもないのよ? でも死ぬならどうぞご勝手にって感じで」
男の態度といいあんたの反応といい、さっきから妙にリアルなのやめろください。こういうの聞くとちょっと胃がキュッてなるから。自分の振る舞いがどう思われてるか怖くなっちゃうから。
「ッフ、ザマァないわね〈謝らず〉。いっつも皆に言ってたままの状況になって」
ん?
「確か、"もしお前が人質になったとしたら俺は見捨てる"だったわね」
!?
「人質に取られているのはあなた自身だけれど」
男はまるで道端の小石でも見るかのような目を向けられていた。これまでの話を聞く限り、こいつは所謂"ホンモノ"ってやつだったのだろう。こいつに比べれば、俺が今まで出会った奴らはフェイクなのかもしれない。
「ガハハ! 手厳しいな
俺も同じ意見だ」
あんたもかい。てか女のコードネームカッコ良。呑気に脳内ツッコミしてるけど、別にこの状態から何かできるわけでもないのよね俺。ヤバイな、マジでどうしよう。このままだと本当に頭を踏み潰しちゃうかもしれない。
【このまま頭を踏み潰す】
【現状維持!】
現状維持だわバカ!
ピコン!
「……」
……あれ? まだ時間が止まったままなんだけど。
【小粋なトークで場を和ます】
【お茶で相手をもてなす】
畳み掛けるねぇお前は。てかマジで? 場を和ませる小粋なトークって
──俺、そいつらの仲間の頭バリバリ踏んでるんですけど?
もう何を言っても緊迫感だろ。
無理だ無理!
でもだからって
【お茶で相手をもてなす】
っていうのも出来ないんだよな。そりゃそうだ。お茶が無いんだから。
だから多分、これ選んだらこの建物からお茶を探し出すんだろうが……普通に犯罪者達と同一空間にクレタ達を放置して良い訳がないだろ。危険が危ない。
となると小粋なトークに賭けるしかないのか。正直嫌な予感しかしないが……やるしかねぇ!
頼んだぜ!
ピコン!
上を選んだ瞬間、俺の口が勝手に動き始めた。
「っふ、これは俺の知り合いのシリオンの話なんだけどな」
「「「?」」」
どんな話になるんだろうな
〜小粋なトーキング〜
「〜でさ。つまり、その部屋に最初から窓なんて無かったんだよ」
「「「……」」」
俺の口に主導権が戻った後に残っていたのは、沈黙だけだった。当然だろう。人の頭を踏みつけている人間が突然怖い話をしたんだから。シリオン特有の鋭敏な聴覚と窓を活かした怪談を展開したと思ったら、その大元の窓が無かったなんてオチをつけやがって。どうすんだよこの空気。今制御戻されても困るんだけど。小粋なトーキングどころか壊滅的なブレイキングじゃねぇか。
何も上手くねえよ何言ってんだ俺。
ガチャ
「「「!?」」」ビクッ
そんな絶対絶命の状況の最中、突如として鍵が開いたような金属音が部屋に響いた。怪談の後なので皆ちょっとビックリしててなんかごめんね!
けれどその音が表すのは
「拘束が解けたよお兄さん!」
本当に鍵が開いた音なのさ! 良くやったぜシノ! この瞬間を待っていたんだ!!
「ヨシ! パエトーンPlease!!」
「よし来た! 建物から出て直ぐの分かれ道を右に向かって!」ザザー
【立ち向かう】
【逃げる】
「ハハッ! 逃げるんだよ〜!!」
「「!?」」
人質が無意味だったのは驚いたし唐突な怪談も想定外だったがそう、これが本命の狙い。俺が奴らの気を引いてる間に、シノにクレタの拘束を解いてもらう!
そして逃げる!
あの建物にいた奴らは、クレタ達を守りながらだと豪雪を使わないと危ないかもしれないレベルの実力があったからな。背中を見せるわけにはいかなかったんだ。けど豪雪使うと勢い余って殺してしまうかもしれないし。
「構成員全員に応援要請! 人質が逃げた! 絶対に逃がすな!」
はっ残念だったな! こっちには伝説のプロキシパエトーンの道案内があるんだよ! お前らなんかに絶対捕まらないね!
「特殊EMP起動!」
うん?
◆
「もう逃げられないわよ」
「坊主の頑張りは認めるが、おとなしくベロボーグを渡してもらうぞ」
「残念だったな」×100人
俺達はかなり開けた広場で逃げ道を塞がれ追い詰められていた。(即落ち二コマ)
「いやお前ら練度ヤバない??」
「まさかEMP的な何かでパエトーンさんとの通信を絶たれるとは……そして相手は普通に通信ができるとは……そんな技術、この僕の目をもってしても!」
そんなん誰も相定できねぇよ……。
「ふふ、こういう時の為に〈謝らず〉が発信機をつけていたのよ。人質に対してね。結果オーライね」
チクショウ。
こっちの人数四名の内一匹と一名は非戦闘員だし、もう一名は約一日以上の監禁状態から解放されたてホヤホヤの誘拐被害者で、戦わせていいわけがない。パエトーンとは連絡がつかないし、そもそもあの人達は戦闘員じゃない。はは、ふあっく!*1
「ふふ、良い機会だから教えてあげる。私達の名は"《
カッコいいコードネームの女は勝ち誇ったのか、なんか唐突に語り始めた。
いや俺達はまだ負けてないが? まだ幼気な三人の子供と一匹のボンプが、百人近い犯罪者から囲まれてるだけなんだが? ふっ!
命だけは助けてください。
ついでに自首もお願いします。それに賠償も。あとできれば謝罪してもらえれば助かります(強欲)
「ハ、《根絶し難い邪悪》!? それって、六六六人で構成される反乱軍じゃ……!」
どうやら敵は、名前に負けず劣らずのヤバい組織らしい。まあ練度的にも凄いもんね。つーかなんでそんな奴らがクレタを狙う必要があんの? お前らだけで十分だろ、秩序の破壊。
「しかし全く、いらん手間をかけさせてくれたなぁ坊主。知名度の低い中小企業の小娘を誘拐して、その特許技術をもらうだけの楽なシゴトだったんだが。知能重機ってのはいい戦力になるからな」
「!」
「従業員の多くがホロウに入る資格を持ったクマのシリオンなんだから、知能重機くらい譲ってくれても良いじゃない。どうしてそう抵抗してくるのかしらね」
──不意に、昨日の帰り道でのクレタの言葉がフラッシュバックした。
『なによりお前がグレースを手伝ってくれたお陰で、うちの規模が大きくなれたんだからな!』
そもそも、原作では聞いたこともない展開だった。クレタが誘拐されるなんて。
『お前がグレースを手伝ってくれたお陰で、うちの規模が大きくなれたんだからな!』
けどじゃあ、なんでこんな事が起きたかと言えば、それは
『お前がグレースを手伝ってくれたお陰で』
つまり
『お前が』
──俺が、存在したから……?
「あら? ようやく隙を見せたわね」
その動きは、やけにスローに見えた。女が懐から銃を取り出し、俺に向けて引き金を引く動きが。けれど、身体が動かない。
大きな破裂音と共に、弾丸が胸元まで迫ってきた。そして、この弾丸は「危ない! うっ!!」
突然俺の前に出たシノに当たった。
「おいっ! 大丈夫か!?」
「ンナ!(シノさん!)」
「シノ!!! なんで……!」
「お兄さんが無事で、良かった……」
「ッシノ!!!」
どうしようどうすればいい?まだ助かるはずだ病院に連れて行かなければまた俺のせいでこんないやEMPを解除させてパエトーンとの通信を復旧じゃあそのために見せしめに首をいくつか捻りきっていやそんなでも……ああ落ち着け!
混乱している間にも刻一刻とリミットが迫ってるんだ!現にこうしてシノの小さな身体から体温が失われて……
「うぅ……」
失われ……いや、別にずっと温かいな。というかよく見ると撃たれた箇所から血が出ていない。全然生きてる! 良かった!!! 生きてる!!!
「この……
このサドルが僕を助けてくれたッ!!! うぅ……グスン……この、サドルが……」
シノは胸元から、弾丸がめり込んだサドルを取り出した。どうやら俺が渡したサドルが、弾丸を食い止めたらしい。そういえばあげたねそれ。ナイス過去の俺! けどそんな映画みたいな展開ある?
「ん? それクロトのサドルじゃねぇか。なんで持ってんだ?」
「まあカクカクシカジカでな」
でもなんで命が助かったのに泣いてるんだ?
弾丸の衝撃が痛かったのか?
「マルマルウマウマなる程な。けどなんで泣いてんだ? もしかして衝撃であばらが折れてるんじゃ……」
!
その可能性を見落としてたぜ。どちらにしろ早く病院に連れて行かなきゃ
「いや別に痛くないよ」
良かった。でもなんd「けど……!」ん?
「僕の宝物が……!!! お兄さんの日常と汗の結晶が! こ、壊れっ……まだ一回も舐めてないのに!」
シノ……お前、そこまで……。
「そのサドルの事、そんなに思ってくれてありがとうな。それだけ愛してくれたら、そのサドルも、俺の日常も報われるよ」
「お兄さん……」
フッ
「でも舐めるって何???」
「あ……」
「……」
え、何この沈黙。俺何か不味いこと言ったかn「あううううぅ!!」!?
「ど、どうした!」
「やっぱりあばら折れてた!!かも……」
( ゚д゚)!?
シノの口から衝撃の言葉が飛び出した。
くっ、何ということだ! 早く病院に連れて行かなくては!
「いや、その子は別になんともない気が「あんたは黙っとれ!」えぇ……?」
「ったく、にしてもてめぇらは許せねぇな。あたしだけじゃなく、他の奴らにまで危害を加えやがって……」
「ふん。そんな矮小な命、知ったことじゃないわよ」
クレタの怒りに、女は舐めた口を返した。許せぬ。俺達のことも侮辱してきた。許せぬ。
「矮小、な。……小学生の頃の夏休み、クロトは自由研究で知能重機の完成手伝ってくれたんだ」
「? いきなり何を」
「そして『ただの自由研究ですよ? お金なんていりません。普通にグレースさん達の研究に使って下さい』って、何でもないように言ってくれたんだよ……。会社の悲願に大きく貢献してくれたってのに、何も気が付いていないふりをして。より多くの人を助けるためにその金を使って欲しいって……」
「……」
「クロトだけじゃねえぞ。この技術はな、親父がいなくなっても会社に残ってくれた、姉貴達の努力の結晶なんだ。それを人を傷つける為に使うだなんて、そんなの絶対許さねぇ」
「……へぇ」
「ハッハッハッ! 威勢が良いなぁお嬢ちゃん! けどどうするつもりだ? お前一人じゃあこの人数を相手にできないだr「うるせぇよゴリラ野郎」……なに?」
「何人だろうが関係ねぇ。
『凄い機械だろうクレタ! パパはな、この技術が誰かにとっての大切な人の……パパにとってのクレタの安全を守るものになると信じているんだ』
「……皆の想いを踏みにじられたんだ。
お前ら全員、地の底にぶち込んでやる!!!」
クレタ……。
「……ク、ククク! ハハハハハハハ! いきなり俺のコードネームを言い当てたのには驚いたが、お前一人に何ができる?」
「「「合流完了!」」」
!?
「ふふ、ようやく幹部を除く全員が揃ったようね」
「もう一度聞くぞ……この数相手に、お前達二人で何が出来る?」
「チッ……」
……ん? なんか聞こえるな。
「おおおおおおおおお!!」
「なんだ? 何か聞こえてくるような……」
音のする方向を見ると、空から何かが高速で、こっちに飛来してくるのが見えた。まるでミサイルみたいな勢いで飛んでくる! っていうかあれは!
「ギガントドリルミサイルゥゥゥウ!!」
ドカン!!
「「「ぐあああああ!!」」」
「待たせたな! 社長! 兄弟!」
やはり空から飛んできたのはアンドーさんだった。俺は何を言ってるんだ! でも事実だ。一体どうやってそんな……
「お前は! 白祇重k」ドカーン!
「「「ぐああああ!」」」
「!?」
白祇重工の知能重機が突如乱入してきて、反乱軍達をぶっ飛ばした。
「お待たせ! おチビちゃん達!」
「社長! クロト! 無事だったか!?」
グレースさんとベンさんまで! くく、どうやらパエトーンの連絡が間に合ったようだな!
「ったく大勢の前でその言葉で呼ぶなよ……」
「まあまあ細かい事はいいじゃないか……っと、どうやら治安局も追いついたようだね」
姉妹のじゃれ合いの最中サイレンの音が響き、続々とパトカーが到着した。
「治安局だと!? こりゃあ千人は……クソっ誰が通報しやがった!?」
「こちら治安局です! 大人しく投降しなさい!」
形勢逆転。数的不利も覆った。奴らはもう袋のネズミだろう。だがまあ、このまま大人しく降参するような奴等なら、そもそも反乱軍になんてならないだろう。
「ふん、誰がするか! 丁度良いてめぇら全員ぶっ倒して、新エリー都の歪んだ秩序を正してやるよ!」
かくして《根絶し難い邪悪》と治安局との大規模戦闘が始まった。
「始まったね。さて……ベン! ハンマーを!」
「ああ」
ドスン
「じゃあこれ、置いとくから。二人とも、これ食べて元気になったらおいで」
グレースさんはクレタに栄養補給ゼリーおハンマーを託した。
「ったく、そこは"休んでおいて"って言うところじゃねぇのか?」
「まさか。そんなこと言われて大人しくする君達じゃないだろう?」
「それこそまさかだ」
「「はっはっはっ」」
「……お帰り」
「……おう」
「じゃあ社長、兄弟! 待ってるぜ!」
「まあ二人はこう言ってるが、あんまり無理はしないでくれ」
「さあさあ行くよ! 非殺傷設計にしてあるはいえ、子供達だけに人を傷付けさせるわけにはいかないからね!」
「ンナァ!(あっ、ボクも行きますよぉ!)」
そうしてグレースさん達は戦線に参加した。
「……なあ、どうしたんだ? あの女との会話で急に落ち込んで」
戦いの喧騒の中。栄養補給をしているクレタが話しかけてきた。
「……俺がいなければ、お前が誘拐される事も無かっただろう」
「……」
「俺がいなければあんな奴等に目を付けられる事もなかった。白祇重工は健やかに成長していった。クレタがこんな目に遭うこともなかった。だから……
ごめん」
「……」
「ったく、勘違いすんなよ」
え?
「あの日……お前が初めて話しかけてくれたあの日まで、あたしはずっとひとりだった。親父が消えて、社員達も殆どいなくなって、姉貴達はみんな苦しそうな顔をしてて、周りは親父の悪口ばっかりで」
「……」
「それを変えようと気張ってたが、あたしは無力だった。学校でも腫れ物扱いで孤立して、なんならこっちから遠ざけてた。けど」
けど?
「そんな時に話しかけてくれたのがお前だ。道を示して、ダチになってくれて、姉貴達も事業も助けてくれて……。そっからは毎日が楽しくて……なんというか本当に、兎に角ずっと楽しくて最高だった」
……そんな風に、思ってくれてたのか。
「別に、お前がそんな事する義理はなかった。無視しても良かった。でも、わざわざ話しかけてくれた。だからよ、ありがとな。
──あたしに話しかける事を選んでくれて」
ッ!
その笑顔は、まるで太陽のような輝きに照らされていた。いや、まさしく太陽なんだ。この輝きが、俺の夜を明かしてくれた。だから
「……ああ。こちらこそありがとう」
本当に、好きだ。
「へへ。……てか、なんか光ってねぇか?」
「え?」
……うん、まるでというか、普通にクレタの顔が何かに照らされてるわ。まるで日光のような何かに。でもホロウってそういう光源無くね?
何が光って……
俺達は共に何かが光る方を向いた。
「「なん、だと……」」
光源を見るとそこには、全裸になって光り輝いているシノがいた。
そうはならんやろ。
「あ、気にせず続けてよ! 戦闘面じゃ役に立てなさそうだったから、取り敢えず全裸になって奇襲を防いでるだけだから!」
"これでも実技の成績は上位だったんだけどね"と、自分の実力を恥じるようにシノは言った。
いや恥ずかしがるのはそこじゃねぇだろ。
全裸の覚悟(ガチ)やんけ。覚悟キマり過ぎだろこいつ。というか何で光ってんだよ。いや漫画とかアニメでそういう演出あるけど。
「そういうものだからね!」
そうですか。
「お前……」
おっとこれには流石のクレタもドン引きか。いや、シノは偶にぶっ飛んでるだけで本当は良い子で
「お前男だったのか!?」
ラブコメか。
「コホン……。あー、それにあたしの居場所を見つけられたのもお前の人脈があったからだろ。ビルドとかこの……シノ? ってやつとか。こうして援軍が到着したのもそうだ」
「あ……」
シャークトルネード!
ズモォォォォォ!
いつのまにか達郎先輩も戦っていた。ほれにしれっとエレンも戦線に混じってるし。メイド服の姿で。*2
「つーかそもそも、狙ってきたあいつらが100%悪いだろ。こっちはお前の助けも得て想定より早く新技術を確立できた。けどそれが、うちの技術を狙っていい理由になるか?」
「いや」
「その技術を持ってる会社の社長が中学生だからって誘拐してくる犯罪者の方がおかしくないか!?」
「そうだな……!」
「法律を守って皆と協力して生み出した、色んな人を助けるための新技術と、それを悪用する為に違法に……強引に奪い取ろうとする奴ら。悪いのは協力した皆か!?」
「そんな事はないな!」
「だろ? だからあいつらぶっ飛ばそうぜ!」
「ああ!」
全くなんということだろう。クレタの言葉によって全部の迷いを吹き飛ばされてしまった。これが社長のカリスマというやつか……。
「ちなみにあたしはあのゴリラをやる。なんか口調同じだし。お前は?」
そんな理由で狙われるゴリラさん可哀想。でもないな。てかうーむ。倒せる奴は全員倒したいが、一番ぶっ飛ばしたい相手となると
『そんな矮小な命、知ったことじゃないわよ』
「あのカッコいいコードネームの女だな」
俺、やっぱ許せねぇよ……。自分が有利な状況になったくらいで有利ぶりやがって……!*3
「よし!」
まあ素手というのはちょっと心許ないが、大勢の味方が一緒に戦ってくれているのが現状だからな。乗るしかないこのビッグウェーブに。
「師よ、こちらをお使いくださいずも」
「え? ああどうも」
いつの間にかこっちまで来てた達郎先輩から刀を受け取った。……これ、H.A.N.D隊員が使うちゃんとしたやつじゃん。なんで?
「伝手で借りてきましたずも」
さいですか。"では"という言葉と共に先輩は戦線に戻った。
「うーん……」
幸いなことに武器を入手できた俺は、あの女を探そうとざっと戦場を見回した。けど、いなかった。もしかして逃げたのか? ずる賢そうだしある得るな。
【女を追う】
【戦場で大暴れする】
【腕相撲しようぜ!】
当たり前に一番上です。
なんだかんだ心配でここまで戻ってきてるパエトーンよ! 我を導き給え!
「バレてたんだ……」
物陰から、オレンジのスカーフが特徴的なボンプが出てきた。
ここは一つ、よろしく頼む……。
◆
「……まさか追いつかれるなんてね」
はい、パエトーンの協力のお陰で十分で見つけました。時速190キロのリアルタイムナビとか、伝説のプロキシ凄すぎるだろ……。
〜〜〜
「お、お兄ちゃん、あとは頼んだよ……ガクッ」
「リンーーー!!!」
〜〜〜
「全く、逃がすわけないだろ蛆虫共が」
「あら怖い。けれどこちらは総勢百一人、それに対してあなたは一人。誰にも言わなければ見逃してあげてもいいわよ?」
スッと女が手を挙げると、百の銃口が俺に向いた。通常百の射線を一人に通すのは難しいが、うつ伏せ、片膝立ち、中腰等各々が姿勢を工夫することで成功している。やるやん。けどなぁ
「有利な状況になったくらいで得意気になる、お前の数多い欠点の一つだ」
「はぁ? ッ!?」
刀を抜いた瞬間、敵全員が少しぐらついた。各々が自分の手足を困惑しながら見つめている。
「どうした?
自分の手足が無事なのがそんなにおかしいのか?」
「ッ……! 撃てぇ!!!」
百の銃口からの一斉射撃。一発の速度は約マッハ2、一秒間に十発射出され、装弾数は三十発。一発でも当たれば人が死ぬ、合計三千の音速の死の雨が振りかかる。
だか星見は武芸百般。当然、銃術にも精通している!
旧文明から現代に至るまでの、膨大な銃撃戦のデータ。これを分析した結果、敵対者の幾何学的な配置は統計学的に予測できる事を発見した天才がいた。そして、その配置から繰り出される弾道も統計学的に予測。こちらの攻撃は当たり、相手の銃撃は当たらない。発展したVR技術によってその精度と範囲は飛躍的に上昇し、百の弾道にさえ対応できる。
その
《
ちなみに銃術とついてるが、必ずしも銃を使うじゃない。
「……行くぜ!!」
極限まで高まった動体視力により、俺に銃口を向けている敵全ての配置を把握した。そして、その弾道の交差と、どの銃弾がいつ俺に到達するかを確認。最適な型の連携を導き出す。脳がその情報量と演算にカッと熱くなるが、気合で耐えた。
ジャキン!
最初に到達した弾丸を斬った後、鞘と蹴りも織り交ぜながら、弾丸を斬り裂いていく。振る角度と速度を調整し、一度で多くの弾丸を斬れるように工夫する。
その際の風圧で、切られた弾丸が弾き飛ばされ、別の弾丸に跳弾。そうして軌道が変化した別の弾丸が、さらに別の弾丸を弾き飛ばしていく。
カキンカキン!
その跳弾の輪は広がり、どんどん弾き飛ばして……つまり、俺の手が増えていく訳だ。これぞ銃撃戦に対して無類の強さを誇る、星見流銃術の絶対防御!
さらに、跳弾し続けてエネルギーを失った弾丸も、追加で発射された弾丸に当たって再びエネルギーを得る!
約三秒間の死の雨を凌ぐその技の名は!
《星見流銃術(刀)奥義:千手門》
「で、俺が生き残れたってわけ」
「化け物ね……。けれどやはり、この数相手では分が悪いでしょう? 流石にあなたも消耗しているはず。大人しくしていれば今回のところは見逃してあg「チッチッチッ……見てみな」……ッ!?」
✕
「弾丸が!? そんな余裕が」
「フッ」
偶然だよ凄えな俺。
【敵を倒す】
【百鬼夜行をぶった斬る】
どっちも同じじゃねぇか。装飾されてカッコいいかの違いしかない。けど、どっちを選ぶかなんて、んなもん決まってるよなぁ!
「百鬼夜行をぶった斬る!!!」
「「「!!」」」
突然だが、星見流の刀術にはいくつか派生がある。
俺が修めているのは、居合抜刀を主に扱うものと、鞘と刀の二刀で戦うもの、そして、抜き身の刀一本で戦うもの。
前者二つはエーテルエネルギーを属性に変換する装備や音動機が無ければ本来の力が発揮できないが、三つ目は頑張れば人力で属性を代用できる。勿論完全にとはいかないが。
だから、刀しか持ってない今の俺が使うのはその派生。
刀身に、星の流れる渦を纏う。その名は
「銀河一刀流の剣技
とくと味わうがいい!」
刀を右手に構え、100人の軍勢へ走り出した。
100
俺を迎撃しようと、三人の歩兵がジャンプスライディングキックで飛び込んでくる。
「「「ぐああっ!」」」
刀身に風を纏った横一文字の一振りで、地面に着く前に意識を刈り取った。
097
そして止まらずに敵陣を走りながら、振り抜いた後の姿勢から返す刀で左横一文字に一閃
「「「ぐはっ!」」」
094
からの振り下ろす袈裟斬り!
「「あべしっ!」」
092
振るう刃を途中で留め、すぐに左上に構え直して斜めに一閃振り下ろす
「「かはっ!」」
090
そして足を止め、斜めに斬り上げる
「「「ぬわぁ!」」」
087
こうして敵を回りに密集させたところを、回転斬りで一気にぶっ飛ばす!
「「「「「「「うわぁ!」」」」」」」
080
「くっ、化け物め……」
「お前らそれしか語彙がねえよな」
より深く敵陣に入り込んだことで、敵に四方から囲まれている。しかし奴等は迂闊に動けない。迂闊に攻撃すれば仲間に攻撃が当たってしまうかもしれないからな。ということでまだまだ突き進んで行くぜ!
俺はまた走り出し、左から一文字に一閃
「ぐっ!」
079
からの止まらず返す横一文字!
「「「うぼぁ!」」」
076
走りながら一回転して勢いをつけ、そこから左一文字!
「「「「ぎゃあ!」」」」
072
瞬時に右上に構えて一気に袈裟斬り
「「「「はうっ」」」」
068
からの!
その勢いを殺さず、円を描くように刃を左に上げ、横に一閃!
「「タコスっ!」」
066
回転して一文字
「ああっ」
65
「「「「せいっ!!」」」」
四人から一斉に、左右からナイフを振りぬいた。その鋭さもさることながら、全ての刃が同時に俺に当たるように息を合わせている。恐ろしいまでの練度だ。だが
ガキン!
刀で受け止め、力で弾き飛ばして左一文字の一閃を喰らわせた。
「「「「ひでぶ!」」」」
061
そのまま腕の勢いに全身を預けて回転し、四方の敵を牽制。
回りきった直後に刀を右上に構えて、戸惑ってる奴を袈裟斬りにする。
「なぐわぁ!」
060
そして振り下ろした腕の勢いを利用して瞬時に左上段に構え直し、左袈裟斬り!
「にぐわぁ!」
059
「!」
そうして俺が刀を振り下ろした直後、背後から敵達が迫ってくるのを感じた。
即座に振り向き、振り下ろされていく奴等の腕の下に一筋の銀光を走らせる。
「「「「ぬぐわぁ!」」」」
055
そしてまたまた瞬時に振り向きざま横一文字!
「「「「「ねぐわぁ!」」」」」
050
次に返す刃で左一文字!
と見せかけて右上に構え直して袈裟斬り!
左一文字がくると今までの動きから予想し、スライディングをしながら迫ってきた奴を叩きのめす!
「のわぁ!」
049
「……」
敵が俺を警戒し、暫くの間が開いた。その内に構え直し、態勢を整える。
……さっきの奴、"のぐわぁ"じゃないのかよ。ってか途中、"タコス"って言ってる奴等いなかった?……まあいいや。
思考も整える。
「ふぅー……」
「ッ」
その隙を突こうと踏み出そうとしてる奴が一人。
ズシン!
「がっ!?」
許しません。横蹴りを喰らわせます。
これまで刀を振ってたから予想外だったはずだ。
048
地面に足を着けた直後、動揺している隣の奴を、左足を軸に回し蹴り!
「あうっ!」
047
からの回転の勢いを活かした左一文字の連携!
「「「がふっ!」」」
044
真上に構え直してからの振り下ろす真っ向斬り!
「あがゃあ!」
043
「「「……ッ」」」
もはや、走り続けて狙いを撹乱する必要もないようだ。奴等は完全に攻撃のタイミングを見失っている。
「……ッ!」
そんな膠着状態の中、一人が痺れを切らして突撃してきた。瞬時に右に刀を構え、横一文字で銀閃を描く。
「かぐぇっ!」
042
「ッ!」
だが、刃を振り切ってから構え直すまでの隙が生じると踏んだもう一人が、あらかじめ飛び込んできていたようだ。無言での合理的な連携。やはり恐ろしい程の練度。しかし
「ふん」
手首を返し、刹那の銀閃をなぞった。
「なn」
041
からの刀を上に構えて袈裟斬り!
040
その勢いを活かした回転斬り!
030
「はっ! 随分と数が少なくなったなぁ?」
「「「……くっ」」」
挑発をして、敵の攻撃性を高めた。こんなガキ一人に大人数でいいようにされたかの状況だ、大分効くだろう。
そうして大勢から攻撃させることで密集させ、一気にケリをつける!
「!」
敵の背後からの一撃を振り向きざまに弾き上げ、その隙にそのまた背後から迫って来た奴らを袈裟斬りの風圧でぶっ飛ばす!
「「「あだぁ!」」」
027
背後からナイフを構えて迫って来た奴ら相手にも振り向きざまに左袈裟斬りの風圧!
「「「「「「「あらぁ!」」」」」」」
020
からのまた振り向いて袈裟斬り!
「「「あびゃあ!」」」
017
これで全方位均等に、円状に密集するように整ったな!
決めるぜ!
右足を軸に回転斬り!
からの連続回転斬り!
これぞ《纏星雲渦斬》……
『そのカッケェ技の名前はハイパー100裂斬りだろ! あたしには分かるぞ!』
改めハイパー100裂斬りだぜ!
「「「「「「「「「「「「「「「「「タコス!」」」」」」」」」」」」」」」」」
5
4
3
2
1
000
「これで、後はお前だけだぞ」
「くっ……皆の手足が捻れて、その痛みに悶えて。まるで蛆のように……。はっ! そんな、まさかあなた、
なんだよそのクソキショい称号。身に覚えがねぇよ。
「おらっ!」
「う……」
顎先に峰を掠め、女は意識を失った。へっ雑魚が。動揺してればこんなもんよ。
「はあ〜」
俺は流石に座り込んだ。我ながらよくやったもんだよ本当に。何となく、痛みに悶えている《根絶し難い邪悪》の構成員達を見つめる。
「……ありがとう、か。フフッ」
こうして、治安官千人と有志の民間人複数を巻き込んだ一連の事件は終焉を迎えた。
◆
春、それは出会いと別れの季節。
春風が桜を散らし、褪せた茶色の幹を剥き出しにする。だからこそ、肌にあたる陽光の、仄かな暖かさが鮮明に感じられた。俺はついに、高校生になったんだ。
『ンナ(改めまして皆様、卒業おめでとうございます。この三年間の学校生活で培った力を元に、悔いのない選択をしてください)』
ふと、中学の卒業式で校長が言った言葉を思い出した。
選択、か。
思えば選択肢という不条理に散々……本当に散々振り回されてきた人生だったな。その結果は良かったり悪かったりどっちでもあったり様々で。正直辛いことの方が多かった。
「皆さんご入学おめでとうございます」
"選択"
それが、俺が出来る唯一の事だった。
人生とは選択の連続だ。自覚の有無にかかわらず、与えられた選択肢から己の運命を選択していく。その選択が、自分にとって都合がよくても理不尽でも。
そんな、どうしようもない不条理と可能性。その波に、自分が飲み込まれないようにすること。それが選択だった。波に揺れながらも、流されずに、溺れないように。理不尽だけで終わらせない。波に自分を組み込み、自分の道を進む。俺を生きる。
迷い揺れながらも抗って、自分を貫く。
そんな
『
そんなロックンロールこそが選択なんだろう。だから俺は、選び続けるよ。そして、第二の人生を隅々まで生き抜くんだ。
「と、いうわけでオリエンテーションはここまで。明日からは本格的に授業が始まっていきます。それでは皆さんさようなら!」
◆
授業が始まった初日、俺はエレンと再会していた。
「はいはいパンツはあげないよ。てかさ、バイトとか興味ない?」
「はぇ? いや、別に……」
【あります!】
【んなもんねぇよ!】
いやまあ興味は無くはないか……。特に金には困ってないからなぁ。でもエレンのバイトって多分ヴィクトリア家政関連だよな。執事、かあ。知らない世界だなあ。ちょっと怖いが
『存分に楽しめよ! 離れてても心は繫がってっからな!』
……ここは一つ、やってみようか。
ピコン!
ついに原作開始前完!!!