Sideクレタ
「パンツをくれるなら遊んでやらんこともない」
「は?」
い、いきなり何を言ってるんだこいつは!
あたしの名前はクレタ・ベロボーグ
新エリー都の建設会社 白祇重工の次期社長だ。
凄い将来が約束されてるように見えるが
、5年前にあたしのオヤジが会社の金を持って夜逃げしたせいで従業員はほとんどいなくなって、世間からも大バッシングを受けて倒産しかけてて、少ない社員達と頑張って経営している会社の次期社長だ。
オヤジが失踪してからの日々は地獄だった。
会社に残った社員達は、オヤジがそんな事するわけないってアタシを励まそうとしてくれた。
自分たちだって動揺してるはずなのにな。
勿論あたしだってそれを信じたかったさ……。
でも、誰にも言ってない秘密がある。オヤジが失踪したあの日、この目ではっきりと見たんだ。
オヤジが金を持って何処かに行ってしまう所を。
周りの多くの大人は言った、
お前の父親はクズだと。
信頼している人たちが言った、
あんたの父親はそんなことしないと。
もう誰を信じればいいのか分からなかった。心ではオヤジを信じたかった。でも事実をみると、オヤジは金を持って逃げたとしか言いようがない。
心がグチャグチャだった。
あたしはそのモヤモヤが晴れないまま小学生になっていた。
その頃のあたしは尖っていた。
傾いている会社を継ぐという重圧、
モヤモヤとしたどうしようもない感情。
それでもまだ会社に残ってくれている皆んなのために、次期社長として会社を立て直すことを決心し、社長として舐められないような荒っぽい態度をとり、社長として必要な能力を高めるために日々勉強していた。*1
もちろん、そんなヤツに話しかける子どもなんていない。
チビのくせに生意気だとか怖いとか言われてひとりぼっちだった……。
子供が大人に舐められないようにする態度なんてそんなものだ。
先生からもまるで腫れ物のように扱われた*2
まぁ、そのおかげで勉強に集中できてよかったんだけどな!*3
けど2年生になってクラスが変わったとき、転機が訪れた。
1年の頃とは違う子たちがクラスメートになったが、そいつらはあたしのことを知っていて、怖がったり嫌ったりして結局誰も話しかけてくれなかった。
ああまた一人ぼっちだ、なんて思ってた頃に一人、話しかけて来るやつがいた。
それがこいつ、クロト・タクだ。
初めのこいつに対する印象は案外普通のやつなんだというものだった。
同じクラスになって初めて見たが、こいつの存在自体は学校中で噂になっていたので知っていた。
曰く、女子に出会い頭にパンツをくれと要求する
曰く、休み時間に逆立ちでグラウンドを5周していた
曰く、休みの日には町内を逆立ちで一周している
曰く、たまに廊下を逆立ちで歩き?(この表現であってんのか分からんが)先生に怒られている
曰く、逆立ちで移動しないと死ぬ変なマグロの亜種(魚に手はないだろうが えーーーっ)
曰く、学校で2番腕目に腕相撲が強いたっちゃんに腕相撲をして勝った(たっちゃんって誰だよ、てか一番じゃねえのかよ)
曰く、地図上のとある国を鉛筆で塗りつぶしたところ、後日その国で台風が発生した(ほんとかよ)
曰く、童貞(なんだよ童貞って)*4
そんな噂があったもんで、あたしはてっきりとんでもない筋肉モリモリマッチョマンの変態で、イカれた雰囲気を纏っているヤツなんだと思っていた。
だからクラスが変わってみんなの自己紹介が始まったとき、こいつがあのクロト・タクだと知って驚いた。
ただの平凡な男の子にしか見えなかったからだ。
身長120、髪は黒だが、筋肉モリモリマッチョマンの変態ではなかった。
多少筋肉質だったが、自分の自己紹介が終わった時に安心したように胸を撫で下ろしていたのをみて、所詮噂は噂なんだと思った。
そしてみんなの自己紹介が終わり、各々が友達と話す中、あたしは1人だった。
別に寂しくなんてなかった。
社員たちから心配されていたが、孤独であればある分、勉強に集中できると思ってたからな。*5
でも、あいつはそんなあたしの姿を見かねたのか、こっちに向かって歩いてきた。
その時の光景は今でも忘れられない。
あいつの進路上にいたやつらがあいつを認識した瞬間、バッと道を譲ったんだ。
まるでオヤジが教えてくれた、
モーセという人間が海を割ったという伝説のようにな。
あたしは目の前の光景に圧倒された!
さっきまで普通だと思っていた男の子が、まるで伝説上の人間のように、こっちに向かってきたからだ。
そしてあたしを含めたクラス中の皆が思わず息を呑んで*6あいつの行動を見つめていた。一歩、また一歩と、あいつはこっちに向かってきて、ついにあたしの目の前まで到達した!
正直に言おう、あたしはビビった!
さっきまで平凡だと思っていた男相手に!恐怖した!
一体何をされちまうのか、いつでも
反撃できるように身構えているとあいつは口を開こうとしてしていた。
"もしかして口からビームでも出すのか!?コイツに殺されてしまうのか!?姉貴、みんな、オヤジ、ごめんな……"
ギュッと目を瞑ったがヤツはビームなんて出さず、ある意味それよりも強烈なことをしでかした。
「オンドゥルルラギッタンディスカー!?」
「は?」
公判へ続く