石堂シュウ「私が…初星学園のプロデューサー…?」 作:のーば
TELLLL...
「すみません、石堂です。実は、折り入ってご相談がありまして」
「ええ、ああ……それは関係ない、個人的なものです」
「はい、これを頼めるのはあなたしかいない、と」
「ありがとうございます。では、明日そちらへお伺いします」
──星元市 SKIP星元市分所前
「……ふう」
私は今、かつて私が常駐した、SKIPの星元市分所がある雑居ビルの前にいる。
なぜ、私がわざわざここを訪れているのか。もちろん、先日ユウマくんと再会した際にまた顔を出しに行く、と約束したのもあるが……今回はまた別の「事情」がある。
しかし、数ヶ月前まで毎日のように通っていたのに、今では入るのにも緊張する。おそらく、私が初めてここを訪れた時よりも緊張しているのではないだろうか。だが、いつまでもここにいても仕方がない。
息を整え、私はビルの中へと入っていった。
──星元市 SKIP星元市分所
「シュウ!久しぶりだね!所長から話は聞いてるよ!」
SKIPのフロアへとやってきた私を出迎えたのは、自律AI搭載型サポートロボ・ユピーだった。
「ユピーも久しぶりですね。お邪魔します」
「何言ってるのさ、シュウは仲間なんだし、そんな他人行儀にしなくていいんだよ?」
以前、星元市から引き上げる際にも似たようなことを言ってもらえた記憶が呼び起こされる。こんなユピーの優しさに触れるのも久しぶりだ。
「少し気恥ずかしいもので。所長……ヒロシさんは?」
「デスクにいると思うよ!呼んでくるね!」
「いえ、そのまま私も行きましょう」
ユピーに連れられ、久々にSKIPのオフィスの扉を開ける。
「おお、石堂さん!待ってましたよ」
早速、ヒロシさんが出迎えてくれた。
「ご無沙汰してます、と言ってもこの間話したばかりですが」
「ハハッ、会うのと電話じゃ違いますよ。ユウマとも会えたんでしょう?」
「はい、その通りですね」
実際、会ってみると安心感が段違いだ。段々と初星学園がホームになってきていると感じるが、だとしても「ここ」の安心感には優らない。
「それで、今日は相談があるって言ってましたけど……」
「ええ、私としてもとても重要なご相談です。仕事には関係のない、個人的な」
「石堂さんにそう畏まられると緊張するなぁ……今日はリンも外回りですし、ユウマは非番ですが、一応あちらで話しますか」
所長は応接室を指差す。
「ええ、お願いします」
「……あれ、ユピーはどうすればいいんだろう?」
──SKIP星元市分所 応接室
「どうぞ、コーヒーです」
「ありがとうございます。もしやこれは……」
「ええ、石堂さんが置いて行ったコーヒーメーカーで淹れたものですよ」
「使っていただけてるんですね!?」
「まあ、たまに……ですけどね」
たまにでも、使ってくれているのか。なんと嬉しいことだろうか。
「それで、相談というのは」
「実は……とても、とても話しにくい、それも恥ずかしい話なのですが……」
所長に、これまで起きたことを話せる範囲のみで伝えた。天川市の常駐に際し、初星学園で情報収集をしていること、そこで立場上特に関係の強い生徒と出会っていること。さすがにプロデューサーをしているなんてことまでは言えないが、ほとんどのことは説明した。
「なるほど……また、すごい環境で仕事してますね」
「それで、本題に入りますが……お恥ずかしいことに、年齢が離れた、それも女の子とのコミュニケーションに悩んでいまして」
「ブッ……な、なるほど」
所長は飲みかけのコーヒーを吹き出しそうになっていたが、寸でのところで踏みとどまった。無理もない。自分のキャラでないことは自分が一番理解している。
「ヒロシさんは、高校生の娘さんがいましたよね。それで、何かコミュニケーションの御指南をいただけないかと」
「コミュニケーションって言ってもなあ……私もあんまり上手くいってる方では無いですよ?」
「いえ、構いません。お願いします」
………………
「……と、うちでは、そういう感じです」
「なるほど……勉強になります」
所長が話してくれたことは、あまりにも有意義な話だった。
簡潔にまとめるのだとしたら、「サポート役に徹すること」と、「味方であることをしっかりと行動で示すこと」が重要とのことだ。自分自身でも気をつけていることなのだが、普段からそういった接し方に勤しんでいる所長の言葉は重い。所長は照れ臭そうにしているが、所長の苦労を思うと、曖昧な理由で悩んでいる自分が恥ずかしく思えてくるものだ。
「あまり力になれた気はしないんですが……それに、大真面目に頷かれると、結構恥ずかしいな……」
「いえ。大真面目に勉強になりました」
「……まあ、力になれたなら何よりですよ」
しばし雑談を交えながら、所長の子育てエピソードを聞き入っていると、SKIPへ誰かが入ってくる音が聞こえた。
「戻りました〜って、ユピー?どうしたのそんな聞き耳立てた感じ出してるけど」
「ああ、リン!おかえり!実はね……」
「おや、リンさん。お久しぶりですね」
「石堂さん!?」
外回りから戻ってきたリンさんにも、事情を説明することにした。
「……確かに、石堂さんちょっとデリカシーない時ありますからね」
「そんなことは……すみません、ないとは言えませんね」
自分は以前、リンさんに関しては特にデリカシーが欠如した発言をしてしまったことがあるので、強くは言えない。むしろ、あの経験があるから不安なのだ。
「でも、今の石堂さんならあんまり細かいことは気にしなくてもいいような気がしますけど」
「そうでしょうか」
「相手をちゃんと見て、誠実に行動していればいいだけだと思いますよ。多分ユウマに聞いても同じ事を言うと思います」
「同感だな。石堂さんには石堂さんらしいやり方がある。そう思いますよ」
「ユピーもそう思う!」
「あくまで誠実に、か……わかりました。みなさん、ありがとうございます」
相手を想い、誠実に接する。当たり前の事だが、これが一番ということだ。みんなのおかげで難しく考えすぎていたことに気づくことができた。
自分にできることは、あくまで背中を押すこと。それだけだ。
「それより……所長の子育てエピソード、私も聞きたいな〜」
「ええっ……いやあ、流石に……」
「ユピーも聞きたい!」
「いや、ユピーは聞いてただろ!」
「もう一回だよ、もう一回!」
なんだか懐かしい騒がしさに包まれながら、自分の決意を確かなモノした。
……レッスンが再開したら、話してみよう。より強固な信頼関係のために。そして、清夏さんのために。
続く