石堂シュウ「私が…初星学園のプロデューサー…?」   作:のーば

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書いてる途中に怒涛の供給が降り注ぎました
STEP3清夏スタートで震えています


第8話「課外授業」

 

──初星学園 プロデューサー室

 

 シャゴンの出現から一週間。防衛隊の配備も無事に進み、安保体制も整ったことで、本日からプロデュース活動も本格的に再開することとなった。

「おはよー、Pっち」

「おはようございます、早速来てくれましたね」

「え〜、1日目だから必ず来てくださいって言ったのPっちじゃん」

「それはそうでしょう。流石に何度もサボらせません」

 再開初日ということもあるが、今日は清夏さんに来てもらわなければ困る事情がある。故に、サボらず来てくれただけでも上出来と言って差し支えないだろう。

「では、早速。今日はレッスン再開日ですが、レッスンではなく、少し出かけましょう」

 プロデューサー室に来た清夏さんに、自分はいきなりレッスンの予定の変更を告げた。

「へ、いきなりどうしたの?」

「課外授業です」

「課外授業?なんかダルそうな響きだけど……」

「今日はサボらせませんよ。ほら、行きましょう」

「え、ちょっと、Pっち!」

 

──初星学園 大講堂前

 

「ここって……」

「大講堂です。よくご存知でしょう?」

 連れてきたのは、大講堂だ。今日は、生徒のアイドル活動再開を広くアピールするため、星南さんが企画したライブが開催される。本来は行くつもりはなかったのだが、星南さんが「この間のお礼」として招待してくれたのだ。

 まだ自分が初星学園生徒のステージを実際に見たことがないのもあるが、何よりも「今の清夏さん」にこのステージを見せたほうがいいと判断し、観覧させてもらうことにした。

「いやいやいや……だって今日は会長のステージでしょ!?どうやってチケット取ったの!?」

 どうやら、星南さんのステージのチケットはいつも争奪戦になるらしい。あとから知ったことだが、大講堂でのライブは普段は自由入場だそうだが、星南さんだけはファンクラブによる抽選があるらしい。改めて彼女の人気の高さがうかがえる。

「招待してもらったんですよ。私と清夏さん、ちゃんと2人分あります」

 2人分のチケットを見せると、清夏さんは目を丸くした。

「すご……Pっち、本当に何者?」

「ただのプロデューサーですよ。さ、行きましょう」

 

──初星学園 大講堂

 

『──♪』

 ライブが始まると、清夏さんはとても楽しそうに聞き入り、ペンライトを振り、盛り上がっている。

 かくいう自分自身も、はじめて初星学園、ひいてはアイドルのステージを初めて観覧しているが……確かに、多くの人が魅力を感じるのも頷ける。星南さんの他にも何人かがステージに立っていたが、やはり星南さんは飛び抜けて歌もダンスも上手い、と思う。彼女のことを知れば知るほど、尊敬の念を抱くほかない。

「きゃ〜!!」

「ねぇPっち、今こっち見たよね!?」

 楽しそうでなによりだ。正直、こんなにはしゃぐ清夏さんを見たのは初めてかもしれない。

「……いいなぁ」

 ライブ終わりにふと、清夏さんが呟く。その様子はどこか寂しそうで、辛そうだった。やはり、彼女は───

 そうこうしているうちにライブが終わり、清夏さんとはぐれないように講堂を出る。

「っすごかった〜!」

 清夏さんは終始夢中になりっぱなしだった。相当楽しかったのだろう。この様子だけで、連れて来て正解だった。

「楽しんでいましたね、清夏さん」

「そりゃもちろん!やっぱいいよね〜、ライブは」

「ええ、私としても素晴らしい経験をさせてもらえました。星南さんには感謝しないといけませんね」

 自分も、多大に勉強になった。本来の目的とは別だが、今後のプロデュースを進めていく上で、現場の空気を知れたのは大変満足している。

「ライブを見ている時も思いましたが、やはりというか……清夏さんは、アイドルが好きなんですね」

「まあ、そりゃね。じゃなきゃここに入らないって」

「確かに、こんな話をスカウトの時にもしましたね」

「思えばPっちも粘り強いよね〜。そろそろ諦めるかなって思ってたけど」

「まさか。今日のおかげで、より諦める気が失せましたよ」

「へえ、それはなんで?」

 若干バツの悪そうな顔をする。

「私が今日、清夏さんを連れてきたのは、理由があったんです」

「理由?」

「尤も、ほとんどはリフレッシュしてレッスンに臨んでほしい、という理由ですが……一度、確かめたかったんです。アイドルを見る清夏さんが、どう思うのか」

「あたしがアイドルを見る様子から、何がわかるの?」

「少なくとも、あなたがアイドルに憧れてこの学園に入って、今もその憧れが消えてはいないことはわかりました」

「そんなの……そうでしょ」

「では、なぜ諦めてしまったんですか?」

「……Pっちには関係ないじゃん、そんなの」

「いえ、関係あります。私はあなたのプロデューサーですから」

 関係ない、と言われたらその通り。このプロデュース契約による関係だって、自分から言い出していることだ。

 しかし、これはずっと気になっていたことで、これを解決しないことには、自分も先に進めない。

「……」

 清夏さんは言い出したくなさそうに、こちらを睨む。

「正直、この話をするか迷いました。何度かそれとなく聞こうとしても、はぐらかされてしまう。よほど話したくないことなのだろうと、私も理解しています」

「ですが、今日のあなたを見て、純粋にアイドルに憧れの眼差しを向けるあなたの姿を見てしまった。だから、私もどうも諦めがつかなくなってしまいました。できることなら、あなたがアイドルになるための障害を取り除きたい。そう、考えています」

「……Pっちにはわかんないよ」

「ええ、わからないと思います。私はあなたではありませんから」

「ほら、だから言ったって」

「ですが、それでいいんですか?」

「……何が言いたいの?」

「誰にも伝えない痛みは、自分ひとりで抱えるしかありませんよ。私も覚えがあります」

「だからって、言えばなにか変わるわけ?」

 清夏さんの怪訝な態度は、より刺々しく、心に距離を作っていくのがわかる。だが、ここで退くわけにはいかない。

「変わるかどうかは、やってみなければわかりません。ですが、まだきっと貴方は誰にもそれを明かしていないでしょう。ご学友……それこそ、リーリヤさんには特に」

「なっ……なんでリーリヤの名前が出るの!?」

 清夏さんを担当しようと決めた時、彼女は何故かホッとしたような表情を浮かべていた。あとから分かったことだが、彼女はずっと清夏さんが心配だったのだろう。だから、自分がプロデュースを引き受けると伝えた時、ああいった態度をとったはずだ。

 親しい人間にほど明かせないこともある、ということに関しては、自分も思い当たる節がある。それこそ、ユウマくんはずっとその気持ちを抱えながら星元市を護っていたのだ。

「親しい人間に明かせないこともある。それは、誰しもあることです。ですが、その痛みを誰にも伝えられず苦しんでいるのなら、その痛みに寄り添うことはできるはずです。何より、貴方はまだ諦めていないのだから」

「あたしが、諦めてない……」

「清夏さんが本当に諦めているのなら、私も手を引きます。ですが、ほんの少しでも諦めたくない気持ちがあるのなら……話してくれませんか、貴方のことを」

「……………」

 葛藤。長い沈黙がその場を支配する。

「……あたしは、あたしは」

 その静寂から、少しずつ清夏さんの言葉がこぼれ落ちていく。

「……何なの、ほんとに。どうして、こんな……諦められそうだったのに」

 ……やはり、彼女の本心はまだ諦めていない。しかし、それでも拒絶するほどの葛藤が彼女の中にあるのは間違いないようだ。

 正直に言うと、なぜ自分がここまで彼女の「諦められない気持ち」に寄り添おうと考えているのか、はっきりと言葉にはできない。

 だが、やはり。かつての自分のような誰にも明かせない痛みがあるのなら、それに寄り添いたい、と思う。

「清夏さん。私は、貴方の味方です。貴方のことを決して笑わないし、もし私が力になれるのなら、どんなことでも惜しみません」

「っ……!あーもう!わかった!そこまで言うなら、付き合ったげるよ」

 なんとか、折れてくれたようだ。

「その気になってくれて、なによりです」

「ここまで言わせたんだから、ちゃんと覚悟してよね」

 ……まずは、一歩前進だ。さあ、清夏さんの話を聞こう。

 

続く

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