石堂シュウ「私が…初星学園のプロデューサー…?」 作:のーば
──少し前 天川市市街地
「〜♪」
今日は新作ゲームの発売日。有名アーケードの移植作品ではあるものの、何度か延期していて……ようやく家庭版をプレイできるということもあって、私、葛城リーリヤは上機嫌だ。
もちろん通販でも購入しているけれど、店舗限定特典が豪華なこともあり、ついショッピングモールに足を運んでしまった。
いつもならショッピングモールから初星学園への帰り道は長い大通りの一本道を進むだけ。
でも、今日の私は少し急ぎ気味。そんな時、すぐに帰れる"近道"を、ことねちゃんから教わっている。
「たしか、こっちの道を横切るんだよね」
大通りの途中で、山岳部側を回ることで、10分程度短縮できる。もちろん少し急ぐ必要はあるけど、信号無しで帰れるのが魅力らしい。
「えっと、あとはこの道を……」
しまった、右か左か思い出せない。間違えたら近道の意味がないので、学園の位置を地図アプリで確認しようとしたら、異変に気がついた。
「あれ、携帯の充電、ない……?」
学園を出たときには充電は100%だったはず。それに、ショッピングモールまではかかっても30分程度。すぐにゲームコーナーへ向かって購入して戻ってきているので、1時間も経っていないはずなのに……
故障?もしくは買い替え時?そんな事を考えていられたのは、たった一瞬だった。
鳴り響いたのは、強い地響き。そして、眼前には……さっきまでいなかったはずの、大きな"それ"が、見上げたすぐにいる。
その巨体は、角らしきものを震わせていることがわかる、けどそれ以上は直視するのも悍ましいような感覚が襲う。
確かに、テレビ越しで何回も見たことがある。元々住んでいた地域でも怪獣はいたし、避難の経験だって、この間が初めてじゃない。
一つ、本物の怪獣を前にすると、声も出ないほど恐怖してしまうということだけを理解し、私の意識は途切れた。
──天川市 市街地
「みなさん、こちらです!」
避難誘導は順調に進み、ほとんどの住民の避難が完了した。あとはネロンガがどうなるか、なのだが……
「にしても、動かないな……」
通常、ネロンガは捕食時に満腹になればどこかへ去ることが多い。大概暴れるのは空腹時か、攻撃など刺激を与えられた場合がほとんどだ。
実際、捕食活動中にしても、静かすぎるのも妙。まるで、周囲から勝手に吸い取っているかのような……
そうだ、シュウさんに避難完了の連絡をしなければ。
無線機のスイッチを入れ、シュウさんに
「シュウさん!周囲の避難、完了しました!」
一通り報告を終え、通信を切る。
「……」
シュウさんにも無線で伝えたが、どうにもネロンガの行動が不可解だ。本当にあれはネロンガなのか……?
ネロンガを訝しげに睨んでいると、ふと、ネロンガと目が合ったような気がした。
『──』
「……いや、気のせい、かなあ」
目が合ったというより、こちらを凝視しているような……
……いや、気のせいじゃない!ネロンガはこちらを見ている。こちらを見ながら、ただただ静止している。
「人を見ている、いや、違う……」
まさかとは、思うが……アークに、気づいている?その上で、アークを待っているという可能性はないだろうか。
だとしたら……アークが出てこなければ、アークを目当てに暴れる可能性も考えられる。しかも、こちらを凝視しているということは、僕がアークであることも把握しているということになってしまう。早とちりだと思いたい。
一度冷静になろう。まずはシュウさんのところに戻って、態勢を──
「誰か、いる?」
ふとネロンガから目を逸らすと、ネロンガの足元に人がいることに気づいた。倒れている……!
走り出すのに、さほど時間はかからなかった。倒れていたし、こちらのエリアは人も住んでいなかったから気づけなかったのか!?
しかし、それがネロンガを刺激したのか。
『──!』
ネロンガが、身体を震わせる。
「!?」
迷っている時間はない。僕は走りながら、アークアライザーにキューブをセットし、天に掲げた。
──天川駅前 防衛隊臨時対策室
「ネロンガが動いた!?」
ユウマくんの帰りを待たず、ネロンガが動き出した。
そしてそれと同時に……アークが姿を現す。
「(ユウマくん……!)」
アークは出現と同時に、真っ先にネロンガへと駆け寄り、突進した。
『ギ、ァ─!』
ネロンガはそのまま倒れ込み、その隙を突いてか、アークは足元に手を伸ばすと、そのまま一時離脱した。
アークが向かっているのは、避難所になっている初星学園付近。手を伸ばしたことを鑑みるに……ユウマくんが救助のために変身した、といったところか。
『ギャァァァ──!』
しかし、結果的にネロンガの怒りを誘発してしまったようだ。初星学園付近へ降り立つアークを目がけ、移動を開始した。
自分にとってもただの避難所ではないこともあり焦りを隠せなかったが、アークはもちろんそのリスクを理解していたように、立ち上がりすぐにネロンガの下へ走る。
『ヘァッ…!?』
ネロンガを抑え込もうとしたアークだったが、ネロンガの勢いが強く、ジリジリと押し返される。やはり、通常のネロンガよりも強力な個体なのは間違いないようだ。
『ギャァァァ──!』
ネロンガがアークを押し返し、そのまま伸し掛かる。そのまま、角を震わせ始めた。
『へ、アッ、ワァッ……!』
それと同時に、アークが苦しみ出す。ネロンガが電撃を放っている様子はなく、単に重さに苦しんでいるわけでもないようだ。
「まさか、アークのエネルギーを吸っているのか!?」
だとしたら、この状況は危険だ。アークはこの体勢では完全に逃げられないのだ。
危機的状況で、アークは……
続く