石堂シュウ「私が…初星学園のプロデューサー…?」   作:のーば

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※初星学園の制度や防衛隊について、一部独自解釈を含みます。


第1話「新米プロデューサー・石堂シュウ」

 天川市に発生する謎の周波数の原因調査のため、初星学園に潜入することになった私・石堂シュウは、なぜか学園長の計らいで、常駐の所属先としてアイドルのプロデュースを行う「プロデューサー科」の学生ということになってしまった。

 学生から積極的に情報を得られるポジションなのは間違いないが……一体、どうなってしまうのだろうか。

 

---

 

「……以上が、プロデューサー科の簡単な説明になります。基本的には学生と同じ扱いにはなってしまいますが、私や学園長も全力でサポートしますので!」

「すみません、色々と……ありがとうございます、亜紗里先生」

 彼女は、根緒亜紗里さん。初星学園プロデューサー科の担当教諭である。つい先程まで、プロデューサー科でのカリキュラムやルールについて、オリエンテーションという形で説明をしてくれていた。

「それにしても……話を聞く限りでは、私の扱いはかなり異例なのではありませんか?」

 先程から受けていた説明によれば、初星学園のプロデューサー科にはいくつかの試験が存在し、一般人がおいそれとなれるようなものではない。

 一般大学生のカリキュラムに加え、アイドル、プロデューサーのコンプライアンス管理にプロデュース論……現状でも整理できていないほどの情報量で、正直追いつけていないところだ。

「私も初めてのことなのでなんとも……学園長、思いつきでこういう事をしちゃうことがたまにあるんです」

「……なるほど」

 思いつき……で、いいのだろうか。私が言うのも変な話だが、これだけ難しい条件をクリアしている人間と同じ扱いを、一般人である自分に与えていいものなのだろうか?疑問は尽きない。

「そもそも期限付きの所属なのに、この短期間でプロデュース業務は難しいんじゃ、と私は思ってますが……引き受けて良かったんですか?」

「ええ……せっかくのご提案ですから。それに、私は防衛隊です。どんな状況下でも、仕事はしっかりこなさなければ」

 しかし、学園長にプロデューサー科としてやってみないか?と問われた私は、自分でも驚くほどあっさりと了承した。

 確かに、理解は今でも追いついていないが……この学園の生徒の安全が懸かっているかもしれない以上、どんな条件であろうと断るわけにはいかない。

「流石は防衛隊ですね……わかりました、なにか困ったことがあれば何でも相談してくださいね!」

「ええ、よろしくお願いします」

 

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 一通りオリエンテーションを終えた私は、早速()()()()()のために、用意を始める。

 プロデューサー科の一般座学については、私のキャリアを考慮し免除となった。その時間をたっぷりと調査に充てられるため、この状況はかなり有り難いと言っていいだろう。

 調査機器をアタッシュケースに詰め、エネマガンを携帯し、まずは天川市を散策することにした。

「……のどかな街だ」

 商店街も賑わっているし、どこか星元市と似たような空気感を覚える。直近で暮らしていたからだろうか?

 周囲の周波数はやはりデータ通りのものだが、発生源となるような場所が特定できるわけではない。もう少し詳しい調査が必要だ。長引くかもしれない……

 そんなことを考えながら散策をしていると、ふと視線に一人の少女の姿が映る。どうにも見覚えのある服装だが、もしや……初星学園の生徒か。

「ひとりだけ……仕事中ではなさそうだ」

 どこか浮かない顔をしていた少女は、学園とは逆の方向へと向かっていく。なんとなく放っておいてはいけないと感じた私は、少女のことを追ってみることにした。

 少女は急いでいるような様子はなく、すぐにでも追いつけそうだ。見たところ目的があるわけでもないし、おそらくサボタージュ中のようだが……声をかけるべきか。

 こんな時、ユウマくんならどうするだろうか……迷わず声をかける、か。

 意を決して、私は声をかけてみることにした。

「君!もしかして、初星学園の生徒ではないですか?」

「ん?あたしのこと?」

「ええ、あなたです。今の時間は授業中なのでは?」

「なんであんたがそんな事知ってんの?っていうか、あんたは?」

 腰ほどまで伸びたオレンジのロングヘアーの少女は、怪訝な顔つきで私のことを睨む。

「失礼しました、私は石堂シュウ。プロデューサー科のものです」

 そう言って私は、先程亜紗里さんに用意してもらった名刺を差し出す。

「……マ?すっげー、初めて見た」

 名刺で私のことを理解してもらえたのか、警戒されている様子は消えた。

「で、プロデューサー科の人がなんでこんなところに?」

「学園から遠ざかった方向へ歩くあなたが気になりまして……もしかして、サボりですか?」

「んー……まあ、そんなとこ。ダルくて」

 彼女の言葉に嘘はない。本当にサボタージュなのだろう。

 だが、何故だろう。どこか言葉の裏に何かを隠しているような……いや、詮索するのはやめておこう。

「まず信じる」。私がSKIPで過ごした日々で学んだ大切なことだ。

「なるほど。そういう気を抜きたい日もあるかもしれませんね」

「へー、咎めないんだ?」

「私にそんな権利はありませんよ。ただ、どこか思い詰めていそうでしたから、声をかけたに過ぎません」

「……そんなふうに見える?」

「ええ、なにか悩みがあるのではないかと」

「流石はプロデューサー科、かあ。でも、別にホントにダルくてサボってるだけだよ」

「……なら、それでいいのですが。あまりサボりすぎては成績に響きますからね」

「はいはい、わかってますー」

「では、私は学園に戻りますので。それでは」

 ……やはり、なにか事情がありそうだ。プロデューサー科もそうだが、初星学園の門は全国有数の狭さ。一般の高校受験よりも難度が高いことを考慮するなら、「ダルいから」なんて理由でサボタージュをするようなモチベーションで入学するとは考えにくい。

 ……なぜだろうか。どうしても気になってしまう。もしかしたら、なにかアイドルをする上で重大な傷を抱えてしまっているのではないだろうか。

 心に少し蟠りを抱えながら、私は学園へと戻った。

 

──初星学園 職員室

「生徒について調べたい?」

 学園に戻った私は、早速亜紗里さんのもとを訪ねた。先程の少女について調べるためだ。

「ええ、所属生徒について、気になる事柄がありましたので」

「わかりました、名前はわかります?」

 ……そういえば、自分から名乗っても、名前を聞いていなかった。

「すみません。聞きそびれました……顔は覚えていますので、名簿を見せていただければ」

 亜紗里先生に持ってきてもらった生徒名簿を眺め、先程の少女の姿を探す。

「…….いた。紫雲、清夏」

 紫雲清夏。アイドル科、1年1組。この娘だ。

「見つかりましたか?」

「ええ。こちらの方のデータをいただけますか?」

 

──石堂シュウ 自室

「……事前情報はこんなところでしょうか」

 紫雲清夏。中学時代にバレエで世界的に活躍した過去を持つ。入学後より授業やレッスンを度々欠席しており、成績は芳しくない。

「もう少し調査が必要な気もしますが……まずは、本人とちゃんと話してみましょうか」

どうしても、彼女のことを放っておいてはいけないような気がする。本来ならば、いち調査員の私が干渉するようなことではないが……今の私は、プロデューサー科でもある。

 初星学園のプロデューサーとして、()()()()()()()だ。

「……スカウトに、行きましょう」

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