石堂シュウ「私が…初星学園のプロデューサー…?」   作:のーば

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第13話「見上げるヒーロー」

 

──初星学園前

 

「うう……」

 目が覚めたら、私は初星学園の前に倒れていた。

 ついさっきまで、私はゲームを買った帰り道で、学園の近くにはいなかったはず……

 朦朧としていた意識を取り戻し起き上がると、すぐに意識がなくなる前に、目の前に怪獣が現れたことを思い出した。

「そうだ、怪獣……!」

 立ち上がり、辺りを見渡すと、やはりすぐ近くに怪獣の姿が見えた。

「それに、あれは!?」

 怪獣の足元で苦しみ悶えているのは……ウルトラマンアーク!?

 ついさっきまで私が倒れた場所で、アークが戦っている!だが、見たところアークは苦戦しているように見えた。

「頑張れ、ウルトラマンアーク……!」

 今の自分には願うことしかできない。それでも、この想いが届くと信じて──祈るのだった。

 

 

『ィョヮ……』

 ネロンガにのしかかられながらエネルギーを吸われ続け、追い詰められたアークの胸の光が赤く点滅を始める。これはアークのエネルギーが尽きかけている合図。このままネロンガにエネルギーを吸われて尽くしてしまう……とはいかなかった。

 突如として、アークの頭から一筋の光が差し、それと同時にアークの全身が光り輝く。その光の衝撃か、アークの輝きと同時に、ネロンガは後方へと倒れ込んだ。

 立ち上がったアークは、太陽のようなオレンジ色の鎧をまとっていた。

 あれは、ソリスアーマー。アークが追い詰められた時に使用する、ウルトラマンアークの四つのアーマーの一つで、太陽のような胸の意匠と、炎を想起させるオレンジ色の鎧と拳。そして、炎を纏って戦う姿から、直球ながら「太陽」を冠する名がつけられている。自分とユウマくん(張本人)と考えた名前だ。

 アークの形態変化に戸惑ったのか、ネロンガは逃げるように身体を透明化させる。しかし、しっかりとネロンガを見据えていたアークの前では無力であった。

 アークは自らの武器──アークアイソードを出現させると、アークアイソードに炎を纏わせ、そのまま振りかざす。

 纏った炎は広範囲へ広がる斬撃のように、周囲へと拡散した。ソリスソードエクスプロージョンと呼ばれるソリスアーマーの必殺技の一つの応用だろう。

『ギャァァァ!!』

 姿を消しても、攻撃そのものを防げるわけではない。ネロンガは確かに付近におり、攻撃が命中したのか唸り声をあげた。

 そして、透明化することが無駄だと判断したのか姿を現したネロンガは、怒りに任せて雷撃をアークに放つ。

『ギャァァァァァァ!』

 強烈な一撃だが、虚しくアークの鎧に弾かれる。防御力を持ち味とするソリスアーマーの前では、強力なネロンガの雷撃も通用しない。かつてパゴスと同時に相手をしてもなお破れなかったソリスアーマーの強固さが輝く。

『ハァッ!』

 その隙を逃さず、アークがネロンガへ駆け寄ると、ソリスナックルでの一撃を喰らわせる。ネロンガは大きく仰け反り、そのまま倒れ込む。

 その隙を逃さず、アークはそのままネロンガの尻尾を掴み、空中へと投げ飛ばす。

 そしてソリスアーマーの装着を解除すると、ネロンガを目掛けて両手で円弧を描く。

『──ハァーッ!』

 そのままアークファイナライズを放ち、おそらく命中したであろうネロンガが爆散する。

「よし!」

 思わずガッツポーズを取ってしまった。

 周囲を見渡し無事を確認すると、アークはそのまま飛び去っていった。アークの勝利だ。自分たちも、すぐに安否確認に奔走するとしよう。

 

 

──初星学園付近

 

「やった、アークが勝った!」

 願いが通じたかのように、アークは華麗に逆転し、見事怪獣を倒した。

 間近で見るアークの戦いは、臨場感というにはあまりにも緊迫していて、たしかに怖かったけど……それ以上に、手に汗握った。

 それに、アークが飛び立った瞬間、空に浮かんだ円弧……

「……カッコいいなあ」

 カッコいい。今までいろんなものにその気持ちを抱いてきたけど、間近で見届けたウルトラマンアークの戦いは、幼い頃から見てきた、まさにアニメの主人公のようであった。

 きっと、私をここまで助けてくれたのも、アークなのかもしれない、なんてことを考えながら、空を見上げる。

 少し経って、警備員の人が自分に気づいて話しかけてくるまで、私はずっと円弧の浮かぶ空を眺めながら立ち尽くしていた。

 当然だけど、清夏ちゃんにはすっごく怒られた。花海さんが嗜めてくれたけど、花海さんにもしっかり注意された。

 本当に、自分でも死ぬかと思ったから、反省している。アークがいなければ、私は今頃……

 ……そういえば、どうして私は学園の前で目を覚ましたんだろう?

 

──天川駅前 防衛隊臨時対策室

 

 戦いを終えたユウマくんから連絡があった。少しエネルギーを持って行かれた分の疲労はあるものの体調面は問題なく、すぐに戻るとのことだ。

 やはり、彼のウルトラマンとしてのバイタリティには畏敬の念を感じざるを得ない。そしてそれ以上に、自分の不甲斐なさが悔しい。

 そもそも、アークが戦わずとも済むようにするのが防衛隊の理想だ。尤も、防衛隊上層部、ひいては宇宙科学局もアークを「人類の味方」と認識しているが、それでもなお、依存してはならないという見解は変わらない。

 自分の個人的な感情としても、頼りきりではいけないと強く感じているので、今回も結局……いや、今は考えるのはよそう。

 少し経ち、ユウマくんが撤収を始めた臨時本部へ戻ってきた。

「シュウさん、戻りました」

「お疲れ様です。飲み物どうぞ」

 まずは労いのコーヒーを手渡す。本当ならばこだわりのものを渡したいところだが、緊急時なので仕方がなくペットボトルのコーヒーだ。

「ありがとうございます」

「また戦わせてしまいましたね」

「いや、そんな!……実は、僕も本当はそんなつもりなかったんです。ネロンガの足元に人が倒れていたので……」

「(……そういえば、アークが学園前に人を運んでいましたね)」

 どうやら、人命救助を優先した変身という見立ては合っていたようだ。

「……それで、少し気になったことがあって」

「……気になったこと、ですか」

 ユウマくんは少し声を細めつつ、他の人に聞こえないように話し出す。

「あ、いえ……もしかすると、あのネロンガ、アークを待っていたのかもしれません」

「アークを?」

「あのネロンガ、確かに僕のことを見てたんです。それで、僕が足元の人に気づいた瞬間に動き出して……」

「……なるほど」

「気のせい……じゃないと思います。一応、それだけ」

「わかりました。いずれにせよ、あのネロンガが不可解だったのは確かです。より警戒を強めていく他ありませんが……例の件に関係するかもしれません。また時間を空けて話しましょう」

 確かに、今のユウマくんの話が本当ならば、アークの正体を知っている者が、ネロンガを操っていることになる。

 今は事態の収束を優先する他ないが……この街での戦いは、もしかすると……水面下で想像以上の不穏な影がひしめいているのかもしれない。

 

続く





※余談ですが、このネロンガの個体の見た目のイメージは怪獣バスターズに登場するネロンガ変異種がモチーフです。
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