石堂シュウ「私が…初星学園のプロデューサー…?」 作:のーば
──初星学園 アイドル科1-1教室
「ねえ」
「ん?どしたの手毬っち」
二匹目の怪獣──ネロンガがアークに倒されてから、数日。前回よりも早く、あたしたちは日常に戻っていた。
「リーリヤ、見てない?」
「あ〜……次のレッスン、リーリヤと組むんだっけ?」
レッスンもすっかりいつも通り。翌日の授業が休講になったりはしたけど、レッスンだけはすぐに再開されるようになった。そして、今日にはもう完全にいつも通りだ。
明日はペアで行うダンスレッスンがある。たしか、リーリヤと手毬っちが組むことになっていた。
ちなみにあたしは、気を回してくれたトレーナーがペアを組んでくれる予定である。表向きはサボりの監視ってことになってるけど、昨日プロデューサーとトレーナーが話しているのを盗み……たまたま聞いた。
「今日なんかずっと変だったし。授業終わったと思ったらそそくさと出ていったけど、紫雲も知らないの?」
「そうなんだよね〜、授業以外でもあんな感じで困っててさ」
「どういうこと?」
「この間の怪獣が出てからずっとなんか上の空っていうか……」
実際、ここ数日のリーリヤは少し変だ。
話しかけても、ずっとボーッとしている。何度か話しかけると気付くが、少し経つとまた戻ってしまう。
確かにこの間、リーリヤは危険な目に遭った。目の前で怪獣が現れたなんて、生きていたのが奇跡に近い。
その奇跡の理由が、おそらくウルトラマンアーク。連絡と心配でそれどころじゃなかったけど、プロデューサー曰く、怪獣と戦う時にアークが人を初星学園の前に運んでいたように見えたらしい。リーリヤは気づいたら学園の前に倒れていたって言ってたから……多分、リーリヤはアークに助けてもらったんだろう。滅多にない経験がたくさんあったから、上の空なのも仕方ないかな〜……と、個人的には思う。
「ついにやる気無くした?」
「いや〜それはないんじゃない?毎日ランニングは続けてるし」
多分、手毬っちなりにリーリヤが心配なんだろう。実際のところ、自分も心配だ。
「どうだか……」
「連絡しとこっか?手毬っちってチャット繋がってたっけ」
「知らないなら別にいいよ。自分で探す」
……繋がってないんだ。あとで連絡先渡してあげよう。
「オッケー。一応連絡しとくね」
「そういえば、昨日はサボってなかったね」
「ああ、あたし?」
急に自分の話になって少し声が裏返る。流石、手毬っちはよく見てるなあ。
「……このままいなくなるかなって思ってたけど、どういう風の吹き回し?」
「まあ、ちょっとね〜」
ああも用意されちゃあ、後に引けない。ただそれだけなのだ。
「ふーん……まあ、いいけど。それじゃ」
「うん。じゃあね〜また明日〜」
本音を言えば、まだプロデューサーのことを信用したわけじゃない。
ただ、あの人がどこまで本気なのかを見極めたくは、なってる。颯爽と現れて、自分の気づかれたくないところまで気づいて。リーリヤだったら、「王子様みたい」とか言うのかな。
実際プロデューサーは、この間のやりとりも人気がないところを選んでたし、”秘密”が関わる話は、周りに漏れないようにしている。
この間は連絡読んでなかったりしたけど、相談の連絡はすぐ返してくれるし、昨日のトレーナーとの話だって、自分に気を遣ってくれたのはわかるし……
……よくよく考えたら、あたし、ちゃんと心打たれてない?
「いやいや、そんなことないから!」
考え始めた邪念を振り払おうと頭を振る。そうだ、まずはリーリヤに連絡しないと。
いくら様子がおかしいとはいえ、自分からの連絡ならほぼ読むだろうし。
それにしても、相当様子がおかしいのは事実。なんたって──
──昨日 初星学園寮 リーリヤと清夏の部屋
「ふぅ〜、早めにシャワー復活してよかった〜」
前回の怪獣災害のあとは、しばらく防衛隊が設置してくれた簡易シャワーでしばらく生活することになったけど、今回は比較的早めにライフラインが復活した。そのおかげで、まだちょっとしか経っていないのに、寮のシャワーが浴びれてありがたい。
「……」
「おーい、リーリヤ?」
「……」
返事がない。リーリヤはただ机に座り、考え事に耽っている。
「この時間アニメ見るんじゃないの〜?」
いつもなら、この時間のリーリヤはテレビの前に張り付いている。最近始まった……なんだったか覚えてないけど、頭身が小さいロボットのアニメを見ていたはず。
「おーい」
あまりにも気づく気配がないので、リーリヤの肩に手を置く。
「わあっ!?どうしたの、清夏ちゃん」
「どうしたのって……さっきから呼んでたけど」
「そ、そうなんだ。ごめんね、ボーッとしてて……」
「この時間アニメ見るんじゃないの?ほら、あのロボットのやつ」
「へ、まだ……もうこんな時間!?」
ずっと考え事をして時間が経過していたことに気づいたリーリヤは、慌ててテレビをつける。
……これは重症かもしれない。
授業中、レッスン中もボーッとしてトレーナーに注意されてたし……変なのは自分じゃなくてもわかるだろう。リーリヤは、大丈夫なんだろうか。
「『手毬っちが探してたよ〜、連絡先共有としとくね』っと」
一応連絡を入れたけど、ランニングしてたら読まないだろうし……あたしも探そうかな。
やっぱり心配だなぁ。リーリヤのこともなんとかしたい。でも、自分もそれどころじゃないのは確かだし……
プロデューサーに相談してみようか。それもいいかもしれない。頼りになるし。
……すぐ頼りになる人としてプロデューサーが選択肢が入ることには、あえて知らないふりをしよう。
※一応の補足
時系列的には、1-1が親睦会をしたタイミング(1年1組のアイドルたち)より少し後、定期試験よりは前くらいです。
手毬は清夏と打ち解けるのに少し時間かかってそうですよね。本来だったら咲季がすくい上げた後だったんでしょうかね?