石堂シュウ「私が…初星学園のプロデューサー…?」   作:のーば

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第15話「心配どころではない」

 

──初星学園 プロデューサー室

 

「……ってことがあって」

「なるほど。確かに心配ですね」

 リーリヤさんは、先日の一件がかなり尾を引いているようだ。今日のペアレッスンの際も、クラスメイトとトラブルになりかけた……と。

「衝撃的な体験でしたし、怪獣災害がトラウマになってしまう人も少なくないでしょう」

「うん……実際、あたしも目の前で怪獣が現れた事考えたら、普段みたいには振る舞えないと思う。だからこそ、そこら辺素直なリーリヤが心配なんだよね」

 本心の心の傷を隠して、日々を過ごす二面性を持つ清夏さんならではの寄り添い方だ。以前ならこういったことも一人で抱え込んでしまっていただろうことを考えると、相談してもらえるのはありがたい。

 何せ自分の本来の仕事は、そういった人々への精神的ケアも含まれる。学園とも連携できる自分への相談は、実はベストな相談なのだ。それを当人に明かせないのが欠点だが。

「そういった事案、実は私も心当たりがあります。何か手を回せることがないか確認してみましょうか」

「え?そういうこともできるの?」

「事情が事情ですし、トレーナーさんも気にしてましたから。私からも声をかけておきます」

「……流石って言いたいけど、ホントにPっちって何者?」

「ハハ、ただのプロデューサーですよ」

 疑われてしまうのは仕方ないが、実際清夏さんに対してはただのプロデューサーでいたい、と思う。

 いち早くこの事態を解決し、清夏さんが何の気兼ねもなく、過去の傷を乗り越えられるようになるのが理想である。微力ながら、その手伝いはしていきたいのだ。

「ところで、清夏さん。合間を縫った形になってしまいましたが、先日のカウンセリングはどうでしたか?」

「あ〜……うん、色々助言してもらったよ。正直に全部話せたし」

「それは何よりです。ここだけの話ですが、私も過去にお世話になったんですよ」

「え?ってことは、Pっちもトラウマとかあったの?」

「ええ……今は克服したつもりですが、ね」

 レポ星人によって刻まれたトラウマは、そう簡単に消えやしない。星元市で、アークたちの活躍によってレポ星人が倒されたとしても……あの日の傷は、まだ自分のなかに強く残る。

「そっか……ごめん、深堀りしないほうが良かったよね」

「いえ、話を振ったのは自分ですから。アドバイスを貰ったのであれば、それを実践していきましょう」

 自分の記憶が確かであれば、まずは目標を立てずに、ゆっくりと普段の生活へと戻る様々な提案がされる。彼女が安心できる状態にするのが1番なのだが、何せ怪獣災害が起きているのが痛い。いっそ、休学して療養することはどうかと提案したのだが……

『それは、最後の手段にとっておきたいな〜。できることは全部試して、それでもダメだった時にそうする……じゃダメかな?』

 と断られた。彼女にそれだけの熱意があるなら、自分ができることは……

「メンタルケアに努めるのは大前提ですが…… 少し、目標を立ててみましょうか」

「目標?」

「ええ、まずは……人前で踊れるところを目指しましょう」

「いきなりハードル高いな〜…」

 確かに、これまで無理だったことをいきなり目標にするのは難しい。だが、それを乗り越えない限りは、アイドルへの道は遠いままだ。

「そういえば、定期試験が近いですね」

 アイドル科の定期試験では、パフォーマンスを披露することになる。審査員となる先生たちに見せるのはもちろん、成績上位者は実際に一般公開でライブを行うことができるとか。

「……Pっち、まさかとは思うけど、定期試験でライブできるくらい成績上位狙おう、とか言い出さないよね……?」

 咄嗟の思いつきだが、これはまたとないチャンスだ。定期考査で上位に残ることを意識した日頃のレッスンと、本番を想定したメンタルケア。この両側面を目標とすることができるではないか。

「清夏さん、これはチャンスです。確かに、いきなり本番を想定して進めるのは難しいかもしれない。ですが、これをクリアできるなら……上のステップも目指せる」

「それはそうかもだけどさ〜……」

「実際、今の清夏さんはサボりのツケが溜まっていますし、恐らくですが……定期試験で結果を残さなければまずい状況です」

「げっ……痛いとこ突くねPっち」

 出席数……つまりサボりの分について、亜紗里先生にも相談はしている。しかし、やはり無断欠席はあとから事情を説明しても取り返すには重く、まだ清夏さんには伝えていないが、今のままだと夏休みを使っての補習になる可能性が高いらしい。

 そうなってしまうと、本来順調にステップアップして、アイドルとしての仕事などを入れられる可能性が高い夏休みのほとんどを補習に費すことになるため、他の生徒達と比べてもさらに大きな差が出てしまう。それはいけない。自分がいつまで彼女を支えていられるかもわからないのだから、やれるべきことはやっておきたい……と、考えているのが自分の正直な考えだ。

「あくまで目標ですから。確実に実現しよう、というよりは「こうなったらいいな」程度に考えていただければ」

「うーん……まあ、やるしかないのは変わんないよねぇ……」

「頑張りましょう、私もできることは協力しますから」

 なかなかに無理を言っている自覚はある。だがしかし、これでなあなあ続けていても、道は拓けない。

「わかった。あたしも頑張るから、リーリヤのことよろしくね」

「ええ、お任せください」

 堂々と「任せろ」と伝えられるようになったのは、自分がプロデューサーらしくなってきたという証左だろうか。

 ……明日声を掛けるとしよう。

 

続く

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