石堂シュウ「私が…初星学園のプロデューサー…?」   作:のーば

27 / 32
第18話

 

──1週間後 初星学園内

 

 ユウマくんがリーリヤさんの監視を始めてから1週間が経過した。この1週間、試験に向けての清夏さんのサポートが主だった活動になったが、恐ろしいほど平穏な日々だった。(自分の忙しさは考慮しないものとする。)

 宇宙人の侵略行動の可能性に視野を絞り調査を続けているからというのもあるが、ネロンガ以降ピタリと怪獣災害が止まっていることもあり、防衛隊としての仕事が少し減っている。そのおかげで、実際はほんの少し穏やかな日々を過ごせている。

「ここでターンして……こう!」

 今は、自主練をする清夏さんに『今週の成果を見てほしい』と頼まれ、見学中だ。最近特にレッスンに帯同できていなかったので、いい機会をもらえた。

 ……確かに、プロデュースを始めたときより遥かに良くなっている。ダンスレッスンを再開してから考えても、表情も良くなってきた。まだ心から楽しく、とはいかないだろうが、これなら少なくとも、試験で内心の諸々を悟られることはないだろう。

「っと……!どう?結構やれるようになったでしょ」

「ええ、お見事です。ダンスもさることながら、表情も1週間でかなり仕上がりましたね。これなら試験も安心できそうですが……無茶してませんか?」

「大丈夫、ちゃんとダメなときはすぐ休んでるって」

「なら良いのですが。試験が間近に控えていますからね、明日は予定通り休日にしましょう」

「ん、オッケー」

 何にせよ、来週には試験を控えている。順調なのはいいことだが、しっかりと休みを入れておこう。

 レッスンを終え、清夏さんと別れる。今日はこの後、ユウマくんと落ち合う予定だが……少し時間が空く。どうしようか。

 ……久々にリフレッシュの時間を設けるのもいいかもしれない。最近は稼働し続けて、日課の日記も書けていない。メモ書き程度もしていなかったな……と、今思い出した。疲れが溜まっている自覚はある。そうしよう。

 コーヒーを淹れて、デスクで一息つくと同時に、着信が鳴り響く。

 誰だろうか?鳴ったのはプロデュース用の携帯。となると、清夏さんか星南さんか亜紗里先生の3択だ。

 画面を見ると、星南さんからだ。珍しいな。

「もしもし、石堂ですが」

『こんにちは、星南です。急でごめんなさい』

「いえ、驚きましたが……何かありましたか?」

『それが……少し調べてほしいことがあるの』

「調べてほしいこと、ですか」

『ええ……今日どこかで時間取れるかしら』

「ええ、今からでも構いませんよ」

『わかったわ。じゃあ、生徒会室で待ってるわ』

 ……調べてほしいこととは、何だろうか。

 

──初星学園 生徒会室

 

「お待たせしました」

「ごめんなさい、わざわざ来てもらって」

 生徒会室へ向かうと、そこには星南さんと、もう一人……どこかで見たような、華奢な少女がいた。

「失礼ですが、こちらの方は」

「ああ、紹介するわね。こちら、篠澤広さん。アイドル科の1年生よ」

 篠澤、広……篠澤広!?

「篠澤広って、まさか……ヒロ・シノサワですか!?」

「おー。やっぱり前の私のこと、知ってる?」

 ヒロ・シノサワ。齢14でアメリカの大学を飛び級で卒業した神童。彼女が在学中、何度か宇宙科学局にも協力してもらっていたという話を聞いたことがある。あまりにも非現実的な存在すぎて印象に残っていたが、まさかその本人が初星学園でアイドルを目指しているとは。夢でも見ているのか?

「失礼、取り乱しました。卒業後の足取りまでは知りませんでしたが、まさか初星学園にいたとは……」

「一番向いてないことに挑戦したかったから。わたし、運動できないし、体力ない、から」

「なるほど、それでアイドルに……」

 自分の知っている逸話がすべて本当なら、この年齢で達観してしまっているところがあるはず。あえて無謀なチャレンジをするというのは、納得ではあるが……アイドルか。世界は広いな……

「それで、なぜ篠澤さんが?」

「実は……」

 篠澤さんは、級友と様々な体験をするにあたり、学園付近を冒険と称して探索したりすることがよくあるらしい。そして、その中で不審なものを見つけた、ということだ。

「それが、これ」

 篠澤さんが写真で見せてくれたのは、謎の工具の写真だ。レンチのようだが、一般で使われている工具ではないようだ。とは考えにくい。

「学園裏で見つけたそうよ。落とし物かもしれない、と職員室に届けてくれたそうなんだけど、どうにも不審物だから、一度学園長に相談しようとしたら……」

「……盗み聞きするつもりはなかった」

「石堂さんがこの学園にいることまで聞いちゃったものだから、折角なら目撃者として情報を共有しよう、となったの」

「……理解しました。当事者の、しかも宇宙科学局の勝手を理解していただけている方なので、私としては歓迎です」

「……ここ最近の怪獣騒動もあるし、少し心配。まだ大丈夫だけど、この学園に何か起きるのは見過ごせない。その為だったら、どんなことでも協力する、よ」

「ありがとうございます。心強いです」

 かのヒロ・シノサワが味方につくのは、大きな進展だ。

「……ちなみに先程の工具、裏の山で見つけたんですよね?今この目で見た程度で考えても、山に落ちているものとは考えにくい……とは思います」

「その場では言わなかったけど、わたしもそう思った。その付近でなにか工具が必要そうなものはなかった、よ」

「なる、ほど……」

 自分の頭の中にあるのは、ひとつの可能性。

「初星学園の裏山に、何かが潜んでいる……」

「その可能性を示すのがこの工具ってことかしら」

「ええ。これだけでそうだと言うには、少々根拠が弱いですが」

 だが、初星学園は隠れ蓑にするにはうってつけだ。敷地も広く、一見人が多いように見えて、敷地内と森林が密接に繋がっている。その気になれば潜伏も容易だろう。

 だが、そんなことは先刻承知している。なんなら、初日に調べたくらいだ。それで見つかっていないのだから、あまり考えにくいと思っていたのだが……

「……篠澤さんになら伝わるかもしれませんが、宇宙人など潜伏していた場合、潜伏先と思われる場所の人間全員を調べる必要があります」

「聞いたことある。厳密には、潜伏が発覚した時点での1ヶ月間の来訪者全員へのヒアリングを行う、かな」

「概ねその通りです。まずはそれを行いましょう」

「全員、となると……かなりの数になるわね」

「それに試験も近い。あまり時間を使いたくない生徒は多いでしょうが……ここは手分けして進めましょう」

 悪意ある宇宙人を見過ごしてしまえば、それこそ初星学園全体に危機が及ぶ。それだけはなんとしても避けたい。

 突発だが、宇宙人調査を行うのが一番早い。と、言うよりも。これしか選択肢はない。

「星南さんは、なるべく宇宙人潜伏について伏せて、怪獣災害の聞き取り調査という体で情報を生徒に流していただけますか?職員側にも連絡をしてくれるとなお助かります」

「ええ、構わないけど……」

「あまり時間はないですが、取り返しがつかなくなってしまっては遅いですし……私は防衛隊に報告後、現地調査に向かいます。篠澤さんは、私が現地調査する間調査協力をお願いできますか?」

「わかった。任せて」

 ユウマくんにも連絡しなければ。アークを狙う存在とイコールの可能性もある。

 ……どうやら休むことは許されなさそうだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。