石堂シュウ「私が…初星学園のプロデューサー…?」 作:のーば
──同時刻 初星学園 中庭
「〜♪」
今日と明日は休み。試験は近いけど、少しずつ嫌な気持ちが減ってきた今、無理に練習しないほうがいいってプロデューサーの配慮のはずなので、じっくり羽根を伸ばそうと決めた。
最近行けてなかったし、カラオケでも行こうかな?
「……?」
ふと、生徒会室の前を通ると、会長とプロデューサーの姿が見えた。
「(会長と……Pっち?どういう組み合わせなんだろう)」
どんな話をしてるんだろう。想像もつかない組み合わせだけど……
思えば、あたしはプロデューサーのことを何も知らない。勿論自分のことを支えてくれていることも、そのために色々走り回ってくれてるのも知ってるけど……『石堂シュウ』という人がどんな人なのか、全然知らない。
突然現れて、いきなり自分に声をかけて、最初は戸惑ったし、なんであたしなのかとか、全部わからなかったけど……あたしのために本気になってくれるプロデューサーのことを、信頼しているのは確かだ。
絶望のどん底にいた自分を救ってくれたヒーローのようなものだ。つい先日まで信頼していいのか、だなんて思っていたけど、杞憂だった。
もしかすると、今も試験のこととかで対策をしているのかもしれない。会長以上の生徒なんていないんだし。
……でも、今度しっかり聞いてみよう。ずっとなあなあにしてるけど、あたしにもプロデューサーのことを知る権利はあるはずだし!
「清夏ちゃん」
「あ、リーリヤ。リーリヤも寮戻るとこ?」
「うん。先生に、今日はまっすぐ帰れって……」
「また練習しすぎで怒られたの?」
「ううん。なんだか、職員室が騒がしくて……何かあったのかな」
職員室が騒然としてるなんてそれこそ珍しい。事件の匂いがする。
「……確かに、何かあったっぽいね」
思い返せば、さっきから先生とかトレーナーさんたちが慌ただしくしてた。試験前だからだと思ってたけど……多分違うってことだよね。
「帰ろう、清夏ちゃん」
「……そだね」
プロデューサーならなにか知ってるのかな?
──初星学園 裏山
「はぁ、はぁ……ここで、間違いないですか?」
「うん、間違いない」
すぐに現地へと赴こうと篠澤さんを連れて裏山に来るはずが……校舎から出た程度で、既に篠澤さんがダウンした。その華奢な身体に見合った体力の無さだが……先日はどうやってここまで来たんだ。そしてこの体力でアイドルを志しているのか。
色々思うところはあるが、結果、疲労困憊の篠澤さんをおんぶして、ここまで歩いてきたことになる。華奢な分軽いとはいえ、人一人抱えて歩くには険しい道だった……。
「もう下ろしていい、よ」
「はぁ……助かります」
篠澤さんを下ろし、一息つく。確かに、ここまでの道のりを考えるとちょうどいいハイキングにはなりそうだ。
調査キットを使い周囲を探索すると、確かに例の周波数がしっかりと感知されている。感知、されている……
「どうした、の?」
「確かに、篠澤さんの見立ては当たっているかもしれません」
このエリアは、自分がここ─天川市にやってきたすぐに調査をしている。その時点では、このエリアにはここまでハッキリとした検知はされていなかった。
「……ビンゴだった?」
「……想像したくない方向へ話が向かっているかもしれません」
周波数が感知できる方へと少しずつ進む。篠澤さんを庇うように、恐る恐る足を進めると……
「足跡……あからさまな」
人間サイズの足跡。それも木陰の奥、何かが潜んでいそうな場所へと続いている。どう考えても罠だ。
「篠澤さん、ここで待っていてもらえますか」
「わかった」
罠だとわかっていても、進まなければならないこの状況に言葉にならない不快感を覚える。
木陰の奥、洞穴のようになっているところへと進むと……
「な、何だ、これは……!」
目の前には、両手足を拘束具で縛られ、口を塞がれた人型の何かが倒れ込んでいた。
十中八九宇宙人だろうが……しかし、なぜ縛られているのか。
「……ンーッ!」
縛られている宇宙人はこちらに気づいたのか、助けを求めるようにこちらを見ながら身を捩らせる。
……どうする、ここで助けることが罠だとしたら。自分一人ならともかく、篠澤さんが待っている。罠であれば……
昔の自分だったら躊躇いなく射殺していただろう。だが私は、大切なことを仲間に教わった。
「『まず、信じる』か……」
口だけならば今解いても問題ないだろう。何かあっても身動きが取れるわけではない。何かあればすぐに処理しよう。
縛られている口を解放する。
「……お前、地球人だな」
口を解放すると、宇宙人はこちらを見ながら喋り始めた。
「ええ。宇宙科学局です。ここで何が?」
「俺はペダン星からやって来た、所謂宇宙人だ」
「宇宙人というのは、でしょうね。それで、なぜここに」
「お前たちは騙されている。俺は、奴がお前のような事情を知る者をおびき出すための罠だ」
「……なんだと?」
「……飲み込めていないな。俺はとある宇宙人にハメられたんだ」
「とある宇宙人?誰だ」
「奴の名はガッツ星人。奴は俺が造ったキングジョーを使い、アークの力を狙っている」
ガッツ星人……過去にデータがあったはずだ。怪獣を操り地球侵略を企む、指定危険宇宙人にも名を連ねる宇宙人のはず。
「それをなぜお前が私に伝える?キングジョーとはなんだ」
「お前たちも狙われているからだ。キングジョーは俺達ペダン星人が開発した巨大ロボット兵器だが、俺に地球を攻撃する意図はない。だが奴は違う」
「ロボット兵器……」
「急いで戻ったほうがいい。お前は、アークの正体を知ってるだろう」
「待て、何故それを……!」
「俺は元々この地球に遭難した身だ。キングジョーも、本来であれば宇宙航行のために使っていた。だが地球に不時着し、故障してしまった。最初はなんとか地球にあるパーツで復活を試みたが、どうにも上手くいかなかった。諦めていたところに修復の手筈を整えてやる、と誘惑してきたのが奴だ。だが奴は、地球侵略のために俺を利用した……奴は俺のキングジョーを使って侵略活動を行うつもりだ。そして、用済みになってこのザマだ」
「言いたいことはわかった。それで、今そのガッツ星人は」
「恐らく学園内だろう。奴どころか、俺もお前たち宇宙科学局がこの街で正体不明の周波数を追っていたことも、アークの正体が地球人の青年であることも知っている」
「……だから戻れと」
「そうだ。奴がキングジョーを使って好き勝手に暴れるのはゴメンだからな」
「……わかった。聞きたいことは山ほどあるが、まずはその言葉を信じます」
立ち上がり、すぐに走り出す。今の話が本当なら、ユウマくんが危ない!
「どうだったの……って、行っちゃった」
洞穴近くで待っていた篠澤さんに目も暮れず、学園校舎へと急ぐ。
無事でいてくれ、ユウマくん……!