石堂シュウ「私が…初星学園のプロデューサー…?」 作:のーば
──初星学園内
自分は無力だ。
……清夏さんにも申し訳ないことをした。自分が守らなければならなかったのに。
何も果たせなかった。そんな絶望が、心を支配していく。
……胸が痛い。だが、今抱えているユウマくんはもっと苦しいはず。だから立ち止まれない。だから、自らの胸に赤黒い光のような……闇が浮かんでいることにも、気づかなかった。
徐々に赤黒い闇は収束し、自分でそれに気づく頃には、その光はまるでアークのキューブのように……その闇を形作る。
……朧気ながら、その光を掴むと、ユウマくんの身体から謎のアイテムが出現した。
不思議と、何をするのか無意識で理解できた。光をアイテムに装填し、回転させる。
赤黒い闇が全身を包む。そして同時に、その闇へと意識を手放した──
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──初星学園 講堂前
避難のために寮から離れ、理解が追いつかないままにあたしとリーリヤは会長に連れられて講堂へとやってきた。
現れた巨大ロボットは幸運にも初星学園へはその攻撃をあまり向けず、むしろ避難する人を狙って街を攻撃しているようだった。
目を覆いたくなるような状況で、それは現れた。
「あれは……!」
「ウルトラマンアーク!?」
ウルトラマンアーク。この危機的状況でも、アークは現れてくれる。でも、少しいつもより黒いような……
「いや、違う……!」
「身体の色が黒い……いつものアークじゃない!?」
いつものアークと違う?そういえば、さっきの怪物は『アークの力』みたいなこと、言ってたような……ああ、もう何もわかんない!
『ォアァッ……』
苦しむように現れた黒いアークは、苦しそうにうめき声を上げる。
「あれは、アークじゃない……!」
「アークじゃない?どういう事?」
「上手く言葉にできないんですけど、なんというか……!」
「……見た目だけではなく中身も違う、と」
「感覚でしかないですけど……!」
二人の会話がまるで頭に入ってこない。
何故プロデューサーはあの怪物から守ろうとした人のことを知ってるのか。そして怪物は何故その人を狙っていたのか。そして、何故この状況で自分たちを置いて逃げたのか。ひとつもわからないままにただただ流されている。
「(ホントに、どこ行ったのPっちは……!)」
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「何、アークの力はここにあるはず……!なぜアークが現れる!?」
先遣の報告では、あんなアークの姿は報告になかった!奴は……!
『──!』
黒いアークは、荒れ狂いながらも、このキングジョーへと向かってくる。
ペダン星人の技術力によって生み出され、私の策略によってアークの力を得たこのキングジョーは無敵だ。負けるものか。
キングジョーで、黒いアークへ交戦する。
『──!』
黒いアークはそのままこちらの応戦に俊敏に反応し、回し蹴りを喰らわせてくる。
しかし、ペダニウム合金で作られたこの機体、早々やられることはない。しかし、衝撃は予想していたより大きい。
「ぐうっ……!」
こいつ、なりふり構わないのか……!
当初の予定では、このままこの初星学園の生徒を人質にして、周囲を殲滅する予定であったというのに、この黒いアークは気を配っている気配はない。
偶然周囲が森林部で、偶然黒いアークの正体が背後が校舎になっているから人的損害が出ていないだけで、"ウルトラマンアーク"の行動としては考えられない。
だが、黒いアークは攻撃の手を緩めない。応戦を試みようとするたびに、苛烈な攻撃によって押し込まれてしまう。
「アークのエネルギーがあってこれか!ええい!」
こちらにダメージはない。だが勢いで負けている。ならばこちらにも手がある!
「デスト・ レイ照射!」
デスト・レイ。胸部装甲から放たれる超光熱線。今全力で放てば自分にも損害があるが、アークだけを狙えばこちらのダメージは抑えられる。
『──ァ!』
キングジョーが胸部から光線を放つと、黒いアークに直撃。黒いアークはその場に項垂れた。
周囲から悲鳴が聞こえる。初星学園生徒のものだろう。
しかしその悲鳴が、黒いアークの原動力となってしまったのか、再び黒いアークが立ち上がる。
このまま戦闘を続けてもジリ貧か……予め用意していた作戦は通用しなかった。ならば、ここは一時撤退をするべきだ。
黒いアークが行動に移す前に、キングジョーを飛行させ、逃走を図る。
『──!』
しかし、黒いアークは空中のキングジョーめがけて光線を放ってきた。
「おのれ、しつこい……!」
アークの光線は、的確にキングジョーの関節部を狙い撃ってきたを
いくらペダニウム合金とはいえ、関節部は脆い。駆動にエラーが出ている。尚の事撤退すべき状況だ。加速とともに、アークが補足できないようにジャミング電波を流し、その場を後にした。
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──初星学園 裏山の洞穴内部
「ロボット、飛んでいっちゃった、よ。黒いアークも消えちゃった」
「……そうか……」
宇宙人……ペダン星人は、明らかに落胆している。仕方ない。自分の物を横取りされたままなのだから。
「すまない。見たところお前は無関係だろう、先程の男に連れてこられたのはわかるが」
「わたしが連れてきたし、置いてかれちゃったから、ね。気にしなくていい」
「置いていかれたもの同士というわけか」
「ふふ、そうかも、ね」
少なくとも、この宇宙人に敵意がないことはわかる。さっきの調査員に話してたらしいことも今全部聞いたけど、本当なんだろう。勝手に推し量るのはよくないけど、あまりにも不憫だと、思う。
そして不憫なのは自分もそう。電波は繋がらないし、ここから自力で帰るには、些か難易度が高い。星南と……避難してる千奈たちは心配してるかな。
果たしてどう帰ろうかと思った時、一つの案が浮かんだ。
「あなたのこの拘束、外せる?」
「俺からは外せないな。外からは外せるようだが」
ペダン星人は手と足を謎の器具で拘束されている。拘束具には液晶のようなものがあり、そこを操作することで解錠できるようだ。
興味本位で、液晶に触れる。画面が点灯したが、解錠にはパズルを解く必要があるらしい。
……へえ、パズル。
「おい、どうする気だ」
「わたしの体力だと、たぶん学園まで戻れない。だから、助けてもらおうかなって」
「……正気か」
「断然正気。あなたが悪い人じゃないのはわかる」
宇宙科学局にマークされているような宇宙人だから、疑うほうが自然なのは間違いない。でも、ならさっき調査員に『戻れ』なんてきっと言わない。根拠は、それで充分。
「ん、手の方は終わった」
「……おいおい、嘘だろ」
信じられない、といった顔をしている。この動いてる部分が顔で合ってるなら。
「足もすぐやる。だから、わたしのことを学園まで運んでほしい」
「それは構わないが……」
「契約成立だ、ね」
もう一つの拘束もてきぱきとパズルを解く。宇宙人が作問したパズルとはいえ、すぐ解けてしまうのはつまらない。
「できたよ」
「ああ、助かる……が。さてはお前、普通の人間じゃないな」
「ううん。満足に運動もできないだめだめ人間」
「……そういうことにしておこう」
「話が早くてうれしい。それじゃ、よろしく」
「どうすればいいんだ?抱えて山を下ればいいのか?」
「うん。一応だけど……人間への擬態はできる?」
「可能だが。そうか、擬態していたほうが都合がいいな」
「そういうこと。それじゃ、れっつごー」
「(こいつ……本当に何者なんだ……)」