石堂シュウ「私が…初星学園のプロデューサー…?」 作:のーば
──初星学園内 臨時救護テント
目を覚ますと、見慣れたようであまり見慣れない天井がそこにあった。見たところ、防衛隊のテントの中か。
「……ッ」
下腹部が痛む。どうやら起き上がれるような状態ではないようだ。
「意識を失っていたのか……」
意識を失う前の記憶が曖昧だ。確か、宇宙人とユウマくんが戦っていて……
「目覚めたか、石堂」
「……班長!?」
目覚めたすぐ目の前にいたのは、なんと丹生谷班長だった。
「負傷したと報告を受けたからな」
「……申し訳ありません、宇宙人を取り逃しました」
「巨大ロボットが出現したらしいな。細かいことはまだ聞いていないが、例の件関連か?」
「……ええ。そのあとすぐに意識を失ってしまったので、その後の動向は班長の方が把握しているかもしれません」
「出現したロボットは、続けて現れた黒いアークと交戦後、逃走した。そちらについては現在捜索中だ。資料は枕元に置いてある」
「黒い、アーク……」
黒いアーク。かつて夢で見たことがある、あのアークのこと……だろう。
「まずは静養することだ。それまではこちらで預かろう」
「……すみません」
とにかく、今の自分は動きようがない。このまま静養するしかないか……
……そうだ。清夏さんたちは!
「……SKIPの彼も、この期間お前が預かっていた生徒も無事だ。石堂が科学局の人間とまでは知られないように、SKIPの彼がいろいろ気を回したらしい」
「そう、ですか……」
「ここのスタッフにもお前の正体は隠すように伝えてある。あとでここに来ても、問題はないはずだ」
……何から何まで、頭が上がらないな。ユウマくんにも、班長にも。
「……随分入れ込んでいたようだな、あの生徒に」
「……ええ」
「それが原因で疎かになったとは俺も思わないが……報告書にも書かれていたな。それほど価値があると判断したか」
「……いえ。そんなんじゃありませんよ」
「そうか。お前は責任感も強い。程々にな」
「……はい」
班長はやれやれ、といったポーズを取りながら、そのままテントから去っていった。
……気がかりなことは、2つ。
1つは、どうして負傷して気絶していたのか。これは、ユウマくんが来たら確認すればいい。
重要なのは、『黒いアーク』だ。
……実を言えば、また不思議な夢を見ていたような気がしていたのだ。あの、レポ星人の件と同様に。
自分の気絶したタイミングだけ黒いアークが現れ、その時に同じように夢を見ているのは、やはり……
だが、まずこうしていても仕方がない。このまま病院に搬送されて動けなくなっても困る……何とか立ち上がろう。
それにしても、この下腹部の痛み。火傷のようなものだろうか。少なくとも裂傷ではないはずだが。
ひとまず、班長の発言的にも、ユウマくんたちは無事だったようだ。あの言い方だと、清夏さん、リーリヤさんも無事だろう。
まずは情報を……
「大人しくしてたほうがいいと思う、よ」
「!?」
「無事でよかった」
誰かと思ったら、篠澤さんか。そうだ、裏山に置いていってしまって……
「すみません、先ほどは……」
「気にしないでいい。緊急事態だったから」
「まさかあそこから一人で?」
「ううん。あんなところから一人で帰ったら、遭難間違いなし。だから助けてもらった」
「助けてもらった?」
……まさかとは思うが、例のペダン星人か?
「それも含めて、作戦会議がしたい」
「作戦会議……わかりました」
「じゃあ、また明日?」
「はい。明日以降、改めましょう」
──初星学園 避難所
プロデューサーが無事に目を覚ましたらしい。怪我はそこまで深刻じゃ無いらしいけど、しばらくは安静にしたほうがいい、と会長が教えてくれた。
携帯は壊れてしまったらしいから、直接会いに行くべきだと思って会長にもお願いしてみたんだけど、ダメだった。
やっぱり、さっきの宇宙人を知ってそうだったことと何か関係があるのかな。
思い返せば、生徒会室で会長と話してたのも、もしかしてそれ関係だったのかもしれない。
なら、プロデューサーって何者?
今までも、何度かプロデューサーが何者なのか考えたことはあった。でもその度に、『自分のことを助けてくれることに裏はない』からと考えるのをやめてきた。
……怪獣災害に関係した仕事をしている人なのは、間違いない。けど、それ以上は……やっぱり、本人に聞いてみないと納得がいかない。
咲季っちにもこれ以上心配かけられないし、まずは行動しよう。プロデューサーがいる場所を探さないと。
「清夏、大丈夫?会長と話してたけど」
少し離れたところで自分を気にかけてくれて、感謝しかない。
「……ごめん、もう大丈夫。Pっち、怪我はしてるけど無事に目を覚ましたって」
「良かったわ……なら一安心ね」
「咲季っちも、心配かけてごめんね」
「気にすることないわよ。私でも同じ状況なら気が気じゃないもの」
「……そっか」
普段はストイックな咲季っちでも、そう思うんだ。というか、そうなるだろうな、と思わせるほどに自分が憔悴してたんだろうな。
「……咲季っちはさ、もし自分にプロデューサーがいたとして、自分に秘密で危険な目に遭うかもしれないことをしてたらどうする?」
直球な質問を無意識に投げかける。
「急に変なこと聞くわね。でも、そうね……できればちゃんと説明は欲しいわね。でも、自分に話さないってことは、自分に知られたくないってことでもあるじゃない?」
「それは……」
「多分、プロデューサーとなにかあったんでしょう?何があったかまでは聞かないけど……『知られたくないことがある事』は『その人を信じてない』ってわけじゃないんじゃないかしら?」
「……!」
その一言で、心の内を見透かされた気がした。まるで自分の考え全てがわかっているかのように。
「私だって佑芽に知られたくないことは山ほどあるけど、佑芽のことを信じてないわけじゃないわ。そういうものじゃないかしら?」
何か思うところがあるのか、咲季っちは少し複雑な表情を見せる。
……確かに、その通りだ。自分だって、みんなを信じてないからトラウマのことを話せなかったわけじゃない。
心配かけたくなかったとか、不安で心が押し潰されてたからとか、理由はたくさんあるけど。これを知られた時、相手の反応がどうであれ、自分の存在が重荷になってしまうことが怖いからだ。
ふと、以前のプロデューサーが言っていたことを思い出す。
『誰にも伝えない痛みは、自分ひとりで抱えるしかありませんよ。私も覚えがあります』
『本心では、夢を諦めたくない。しかし、トラウマに対して乗り越えられず鬱屈としている自分を許せずにいる。そんな状況に置かれている人間を笑うなど、とんでもない』
プロデューサーはどこか腹に一物を抱えているようなタイプだったけど、自分の秘密に対してはかなり繊細だった。
それは多分、プロデューサーも同じような経験をしたことがあったんだと思う。その言葉全てに嘘はなかったし、自分はかなりそれに助けられてきた。それは彼の素性がどうであれ、変わらない。
「……だね、その通りだよ」
さっき別れた時のプロデューサーの顔は、自分への無念みたいなものがあった。本当に、あたし達を巻き込みたくなかったんだろう。
「ありがと、咲季っち」
「……何か吹っ切れたみたいね」
「うん、おかげさまで」
咲季っちには頭が上がらないな。ここまで助けれくれたんだ、いつか咲季っちにも筋を通さないといけない。
……その前に、まずはプロデューサーに会わないと。