石堂シュウ「私が…初星学園のプロデューサー…?」 作:のーば
諸々の手続きを終え、ようやく日課のコーヒータイムだ。
今日は激動の1日だった。簡潔にまとめれば、早速アイドルのプロデュースをすることになったのだ。
プロデューサー科という立場は、本来私からしたら調査のために用意された仮の立場に過ぎない。だからこそ、アイドル科の生徒とプロデュース契約をする必要は全くない、はずだ。だが、昨日出会った清夏さんは、このまま独りにしてはいけない、そんな気がしたのだ。
初星学園は、アイドルになりたいという夢を叶えるためにその門を叩く生徒が大半のはずだ。そのために難関な試験を突破するのだから、「友達と一緒に入る」というだけで易易と入れるものではない。
今日話した時も感じたが、彼女は何か事情があってアイドルというものを避けているように感じる。リーリヤさんとの約束になにか関係があるのかもしれないが、そこについては詮索するべきではないのだろう。
しかし、彼女がこのまま何かから逃げるように初星学園での3年間を過ごしてしまうことを想像してしまい、つい彼女のプロデュースがしたい、と思ってしまった。
心の傷があるのなら、その痛みに寄り添い、前を向けるように支えるのがプロデューサー……と理屈をつけてみたが、つまるところ「放っておけない」のだ。
私自身にも、何かから逃げるように日々を過ごしていた時期はある。木内さんの件があった時だ。
なんとか乗り越えたように見せかけていたが、現実から逃げるように彫刻に打ち込んだ日々は間違いなく、私の心は病的な状態だった。
それから私は流されるままに星元市へと向かい、SKIPのみんな──ユウマくんと出会った。彼らは直接的ではないが私の痛みに寄り添い、前を向く力をくれた。あの日々があったからこそ、私は今こうしていられると言っても過言ではない。
そんな経験もあるが故に、このまま「アイドル」から逃げ続けて、大切なものを失ってしまうかもしれない清夏さんを放ってはおけない。何よりも、彼女の目が、アイドルへの情熱を捨てきれていないのだ。
本来の任務を忘れるわけでは決してないが、今私にできることにしっかり向き合って、全力で取り組むつもりだ。
プロデュースの件は以上とし、以降は調査の進捗について書くつもりだったが……プロデュース契約の手続きに追われ、今の今まで書類をまとめていたため、現時点の進捗無しとして、この後夜間調査に出かける予定だ。
調査とプロデュース活動の両立……なんとかやり遂げてみせよう。そのためにも、コーヒーを味わい、自分の思考を整理する今の時間を大切にしたい。