石堂シュウ「私が…初星学園のプロデューサー…?」 作:のーば
──天川市 石堂シュウの自室
清夏さんのプロデュースをはじめてから、2週間くらいが経った。相変わらず授業もレッスンもサボりがちな彼女だが、先生方曰くこれでも頑張っている方らしい。やはり、心の面で何かあるのだろうか……。
そして今日はレッスンも授業もない、所謂オフの日。
といっても、私自身は調査のためにオフの日も出かけているので、あまり意味のない休日だ。清夏さんも今日はリーリヤさんと遊びに行く、と言っていた。休みは気分転換にもなる。こういう時にしっかり羽根を休めてくれればいい、と思っている。
しかし、調査の結果をまとめる時間まではなかなか取れていない。今日は一度、天川市の調査結果を簡潔にまとめていこう。
まず最初に感じたのは、K-DAY以前、そして現在の星元市の地形条件とかなり似通っている点だ。
私が今拠点とする初星学園があるのは、駅からは少し離れた山岳付近だが、この山岳地帯も獅子尾山付近とかなり地形条件が近い。詳細な地質調査まで行っているわけではないが、シャゴンのような地中からの怪獣災害のリスクが高いことが想定される。現に、ここ数週間で地鳴りのような現象が観測されたという情報もあるため、要注意ポイントだろう。
そして、調査の原因となった謎の周波数の正体だが……これについては、まだ詳細がわかっていない。
天川市で生活している今も、この原因不明の周波数は街全体を覆うように発し続けている。明確な発生源のようなものが見つからないこともあり、調査は難航中だ。私の個人的な見立てでは、宇宙人がらみの案件なのではないかと睨んでいるが……確たる証拠が出るまでは地道な調査が必要だろう。
それこそ、ユピーのような広域調査が出来る、SKIP星元市分所のみんなのような人手が恋しい……と、これは贅沢な話だ。私は相当星元市の日々に執着があるらしい。
とにかく、この概要をまとめて丹生谷班長へ送信しなければ。今のところ定時連絡しかできていないので、そろそろ本格的な報告をしに一度本部へ戻る必要があるかもしれない。
『TELLL.....』
おや、電話だ。私の携帯電話は滅多な事では鳴らない。ということは、自ずと相手が限られてくるが……番号を見ると、清夏さんのようだ。
「もしもし、石堂です」
『もしもし、Pっち?オフなのに連絡してごめんね』
「いえ、構いませんよ。何かありましたか?」
『実はちょっと手伝ってほしいことがあって……駅前に来てほしいんだけど』
「駅前ですか、すぐ用意します」
『ゴメンPっち〜、ホント助かるよ!急がなくて大丈夫だから、待ってるね〜』
電話が切れた。
手伝って欲しいこと……一体なんだろうか。だが、清夏さんが私を頼るのは初めてだ。大切な用事かもしれない。
私はすぐに外出の準備を済ませ、天川駅へと向かった。
──天川駅
「いや〜……本当にごめんねPっち、荷物持ちなんか頼んじゃって」
「い、いえ……このくらい、お安い御用です」
「本当にごめんなさい……まさか清夏ちゃんがプロデューサーさんにお願いしてたなんて……」
電話を受けてからすぐに準備し、駅に辿り着いた私を待ち受けていたのは、持ちきれない荷物を前に項垂れている清夏さんとリーリヤさんの姿だった。どうやら、2人でショッピングを楽しんだはいいものの、持ちきれなくなってしまったらしい。
そして現在、私はその荷物の半分を持って寮へと向かっている途中だ。
「それにしても……こんなによく買いましたね。見たところ、どれも服でしょうか」
「清夏ちゃんがあれもこれもって言ってるうちに、こうなっちゃってて……」
「いや〜……ショッピングなんて久々だったから、つい」
「そういえば、気になっていたのですが。リーリヤさんはスウェーデンから日本へ渡り、初星学園へ入学したそうですね」
「はい、そうです」
「あくまで興味ですので、お答えしなくても良いのですが……清夏さんとは、どのように?」
「えっと、それは……」
リーリヤさんが応えようとした瞬間、地面に揺れを感じる。
「じ、地震!?」
地震と云うよりは、地響きに近い。これは、まさか……!
そうあってほしくない、とつい先程考えたばかりだったが……悪い予感は的中した。
『ギャアアアアアア!』
地響きと共に、街のはずれから50mほどの巨大な獣……怪獣が姿を表した。
「あれ……まさか、怪獣……!」
鎧甲殻獣シャゴン。地中で生活し、獲物を求めて地上へ現れ、農作物や動物を狙う獰猛な怪獣だ。
シャゴンは咆哮と共に、市街地の方へと歩みを始める。
「ウソ……こっち向かってきてるじゃん!」
「……急ぎましょう。初星学園は広域避難所でもあります。幸いあと少しで学園ですし、このまま学園へ向かって避難するほうが安全です!」
「は、はい!」
「う、うん……急ごう、リーリヤ!」
そうして、3人で荷物を抱えつつ初星学園へと走る。本来なら真っ先に防衛隊へ連絡し、現着部隊と連携しなければならない立場だが、今は清夏さんとリーリヤさんの安全を確保しなければ!
──初星学園 校門前
「みなさん!慌てずこちらへ避難してください!」
校門前に到着すると、学園前は既に避難民でごった返していた。初星学園の生徒が避難を誘導しているようだが……住民含め避難の導線が崩れかかっているように見える。奥の方で誘導できているならばいいのだが……そういうわけでもないだろう。手伝う必要がありそうだ。
「すみません、お二人はこのまま避難を。見たところ、寮の方までは避難を誘導していません。怪獣の進路はこちらに向かっていないので、そのまま寮の自室に戻って荷物を置いてからでもいいかもしれません」
「わ、わかった!けど、Pっちはどうするの!?」
「避難誘導を手伝ってきます、怪獣災害は経験がありますから。持ちきれない荷物はこのまま私が持っておきます」
「なら私達も手伝ったほうがいいんじゃ……」
「いえ、このまま避難してください」
本当なら人手があったほうがいいのだが、リーリヤさんたちも避難誘導などは経験がないはずだ。ならば、ここは避難してもらったほうが、混乱も起きにくいはずだ。
「……行こう、リーリヤ」
「清夏ちゃん、でも……!」
「Pっち、あとでちゃんとPっちも避難してよ!」
「わかりました、必ず!」
リーリヤさんの手を引き、清夏さんは寮の方へと向かっていく。おそらく、向こうでも先生方が避難を誘導しているだろう。
私はそのまま校門の前で避難誘導をしている生徒のもとへ向かう。やはり、避難経路がズタズタになっている。
資料等でも確認していたが、この地域ではK-DAY以降も怪獣災害とは縁遠い地域だったようだ。迅速な避難のためにも、こちらに来て正解だった。
「お疲れ様です、避難誘導を手伝わせていただいても?」
避難誘導を主導している生徒へ声を掛ける。
「あ、えっと……助かります!貴方は……?」
「プロデューサー科のものです、今はとにかく一人でも多く避難を進めましょう」
生徒と連携し、避難誘導を進めていく。おかげで少しは導線を整えられた、のだが……
『ギャアアアアアア!』
シャゴンは初星学園に人が集まっていることに気づいたのか、進路を初星学園側に変更する。
「まずい、こっちに来ますよ!?」
防衛隊も出動しているはずだが、このままでは避難が進んでいる初星学園に被害が出てしまう。不味い、どうすれば……!
そんな時、眩い光が視界を覆う。思わず手で光を塞ぐと、その光の正体にすぐに気がついた。
忘れるわけがない。幾度となく我々の危機を救ってきた、あの光は──
「ウルトラマン、アーク……!」