石堂シュウ「私が…初星学園のプロデューサー…?」   作:のーば

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第5話「アークの戦い」

「ウルトラマン、アーク……!」

 光の巨人、ウルトラマンアーク。かつて星元市を襲い続けた怪獣災害を救った謎の巨人。しかし、私はその正体を知っている。

「(ユウマくん……来ていたのですね、天川市に!)」

 かの巨人の正体は、遥か遠い宇宙の戦士・ルティオンと、SKIP星元市分所に所属する飛世ユウマくん……私の大切な友人である。

 彼がなぜ天川市にいるのかはわからないが、アークの参戦はこの状況を間違いなく好転させてくれるはずだ。

「……折を見て私達も避難しましょう、私は残りの誘導を済ませます。先に行っていてください」

「わ、わかりました!」

 避難誘導を主導していた生徒と分かれ、避難誘導をしつつ無線機に接続し、チャンネルを現地部隊のものに合わせる。

「連絡遅くなりました。天川市にて調査を進めております特別調査班の石堂です、状況把握のために連絡しております」

『こちら現場部隊!たった今シャゴンとウルトラマンアークが交戦を開始!状況見つつ、アークの援護に周ります!』

「ご共有ありがとうございます。こちらでもアークの出現を確認しました、この周囲は怪獣災害に慣れていない地域なので、特に被害に警戒をお願いします」

『了解!』

 防衛隊側とも連絡がついた。避難誘導もあらかた整理がついた。清夏さんたちも無事に避難できているといいが……

 考えている暇はない。まずは私も避難所へ向かおう。

 

──初星学園 体育館

 

 Pっちの機転で寮に戻ったあたしとリーリヤは、寮の入口に荷物を放り投げ、そのまま避難所になっている体育館へと走った。Pっちと正門で誘導をしてた寮長の麻央っち先輩のおかげかな、すんなり体育館に避難できてラッキー……だけど、ずっと緊張しっぱなし。

 怪獣がこっちに向かってるような気がして、怖くて……そしたら一瞬眩しくなって。

「リーリヤ、あれ……!」

「あれが、ウルトラマンアーク……!」

 ウルトラマンアーク。怪獣災害のヒーローってことくらいしかあたしは知らなかったけど……実物は初めて見た。

 元々あたしは怪獣災害と縁遠い生活を送ってた、と思う。地元で怪獣は出てなかったし、スウェーデンにいた頃も同じ。だから、本格的に怪獣を見たのは多分、今日が初めてだ。

 帰り道に怪獣が現れて、今の今までずっと震えてる。Pっちとリーリヤの前で弱いトコなんて見せられないから飄々としたフリしてるけど……やっぱり怖い。

 でも、あの巨人、ウルトラマンアークが見えた瞬間。心の底で少し安心できた気がする。

 ニュースで見てた存在だから?わからないけど、今は自分よりも残って避難誘導をしてるPっち……石堂さんが心配。ちゃんと後でお礼を言わないと。

 

──初星学園 体育館前

 

 アークとシャゴンの戦いは続く。しかし、アークが優勢な状況だ。

 流石はアーク、といったところだろう。これまでの多彩な戦闘経験もあってか、完全にシャゴンを封じ込めている。

『ヘァッ!』

 アークは組み合っていたシャゴンを突き飛ばす。突き飛ばされたシャゴンがすかさず電撃を放つと、アークギガバリアーを展開し、防御する。

『ギャァ!?』

 アークが防ぎきると同時にギガバリアーを叩き割り、シャゴンに突き立てる。まるで私が初めてアークを見たあの日の再現のようだ。あの日よりも更に研ぎ澄まされた鮮やかなる攻撃の連続に、最早シャゴンは反応すらできていない。

 狼狽えるシャゴンに、アークがトドメの一撃を喰らわせる。

『──ハァーッ!』

 アークは両腕で円弧を描くと、十字に腕を交差させ、光線を放つ。これまで数多の怪獣を倒してきたアークの必殺技……アークファイナライズが放たれたのだ。

 アークファイナライズはシャゴンの頭部を貫き、そのままシャゴンを爆散させる。

 見事。アークの完全勝利だ。

 周囲から歓声が聞こえる。おそらく、避難した人たちだろう。出来ることなら「これこそがアークの戦いです」と自慢して周りたいところだが、今やるべきことは避難した人たちの安全確認だ。

 体育館の入口前に向かうと同時に、アークは空へと飛び立った。

「……また、助けられてしまいましたね」

 誰にも聞こえない声量で、そっと礼の言葉を発する。全く、ユウマくんには助けられてばかりだ。

「調査員さん!無事だったのね!」

 体育館の入口には星南さんがいた。どうやら、先程共に誘導した生徒から話を聞いていたらしい。

「すみません、避難誘導に手間取りました」

「麻央から話は聞いていたけれど……無事で良かったわ、私自身もどうすればいいかわからなくて……」

 星南さんも怪獣災害は初めてだったようだ。生徒会長という立場から弱みは見せられないのか、気丈に振る舞っていたようだが、小刻みに身体が震えている。それに、口調も先日よりも砕けていることも、余裕がなかったことを感じさせる。

「いえ、このくらいはさせていただくのが当然ですから。体育館内の方は大丈夫でしたか?」

「……ええ、体育館だけだと人が収まらなくなってしまって、一部は講堂に避難させたけれど、大きなトラブルは」

「ならば良かったです。アークが来てくれなければ危なかったかもしれませんが」

「ウルトラマンアーク……確か、数ヶ月前の星元市を救ったと聞いていたけれど……私達も助けられました。あの巨人が姿を現したことで、パニックも少し収まったから」

 アークの登場は、それだけで大きな希望となりうる。星元市で充分に実感していたが、いざ別の地でもこの状況に対面すると、改めてその存在の大きさに感服する。

「アークのおかげで、被害も最小限に留まっているはずですが……少し様子を見て、被害状況の確認を進めることになると思います。学園の皆さんのことはお願いします」

「ええ、勿論。任されたわ」

 星南さんに伝えた通り、この後すぐに防衛隊と合流し、被害状況の確認をしなければならない、が……まず先に、やらなければならないことがある。

 

──初星学園 体育館

 

「Pっち!!」

 体育館へ入った瞬間、すぐに清夏さんが駆け寄ってきた。

「清夏さん、無事に避難できたようで良かったです」

「それはこっちのセリフだよ!心配したんだから!」

 清夏さんは私の胸を力なく叩く。心配をかけてしまったことは、きちんと詫びなければ。

「すみません」

「……無事だったからいいよ」

「リーリヤさんも無事に?」

「うん、今はあっちで避難してる人たちの安全確認を手伝ってる。やっぱリーリヤは真面目でカッコいいよ」

「清夏さんも手伝っていたんでしょう?とても素敵だと思いますよ」

 清夏さんが駆けつけてきたのは教師陣たちがいたところからだった。おそらく、何かしらの手伝いをしていたのだろう。何より、ただ避難による疲弊とは思えない肉体的疲労が表情からも見える。普段はおちゃらけたようで、こういう非常事態の際に率先して行動ができる事実が、彼女が本当は誠実な人間なのだろうと思わせてくれる。

「は、はぁ!?ウッザ!変な事言わないでよ!」

 私は至って真面目に褒めただけなのだが……。

「と、とにかく!あたしもリーリヤも無事だよ」

「わかりました。私はこの後、防衛隊の方々を手伝って街の安否確認をしてきます。清夏さんもお気をつけて」

「へ?防衛隊?どうしてPっちが?」

 ……しまった。防衛隊の名前を出すべきではなかったか。

 私が防衛隊の所属であることは、亜紗里先生と学園長、星南さんにしか明かしていない。と、いうよりも……明かすわけにはいかない、が正しい。特に担当アイドルとして面倒を見る清夏さんには、今後のプロデュースに支障が出てしまうばかりか、気後れさせてしまう可能性が高い。秘密調査員という機密性以上に、この立場を知られるわけにはいかないのだ。

「……先程の避難誘導中に人手が足りないとのことで、私が手をあげたんです」

 咄嗟にだが、嘘をついた。尤も、人手が足りていないであろうことも、私が率先して行動することも嘘ではない。

「へぇ……やっぱ真面目だね、Pっちは」

「そうでもありませんよ。目の前のことに翻弄されてばかりですから」

「……そんなことないよ。やっぱり、あたしにはもったいないくらい」

 清夏さんが俯く。私からもそんなことはない、と言いたいが。あえて私も口を噤んだ。

「……ゆっくり休んでください」

 ただ一言だけ残し、私は体育館を後にした。

 

──天川市内 市街地

 

「……では、あとはよろしくお願いします」

 全体的な支援業務はすぐに片付いた。シャゴンが暴れた地域山岳部だったこともあり被害があまり多くないこと、アークが被害を最小限にとどめたことが幸いし、物損などの被害はほぼなく、行方不明情報などは自治体の仕事なため、私の仕事は殆どなかったと言っていい。

「……ふう」

 防衛隊員に差し入れられた缶コーヒーを飲み、一息つく。あまりにも激動の1日だった。未だ整理がついていない。

 ここ数ヶ月全く目立たなかったはずの怪獣災害がなぜこの天川市で起きたのか。間違いなく周波数の件と関連しているはずだが……

「シュウさん!」

 熟考していると、私を呼ぶ声が聞こえる。私のことを『シュウさん』と呼ぶのは、ただ一人。

「……ユウマくん」

「お久しぶりです、シュウさん」

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