ハイスクールD×D 終焉に抗う暁の太陽   作:ドラゴン大好きT

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リアスの婚約話が可哀想と思ってしまうのはやはり少数派なんですかね……。


第12話 婚約者の登場です

 

 

深夜。帰宅した俺は自室のベットに寝転び、今日の出来事を思いだしていた。

 

眷属になったばかりのアーシアに悪魔の業務を教えるため、先日からチラシ配りが始まった。

彼女はまだ魔法陣を介したジャンプもできず、自転車による移動もできないということで、警護と手伝いという名目で一誠が同行していた。

 

アーシアが心配な一誠の気持ちは理解できる。

それゆえ、二人の夜のデートを邪魔しようとする部員はいなかった。

さらにアーシアは今日の夜に早速、召喚に応じて契約を取りに向かっていった。魔力も豊富に持っているとのことなので、今後も活躍が予測される有望株といったところだろう。

 

ただ、気になることもあった。

ここ最近、部長が何かを考え込むようにボーッとしていることが多い。チラシ配りから帰ってきた一誠とアーシアが声をかけるまで、二人が戻ってきたことにも気づけていなかった。

 

あとは相談を聞いてくれた祐斗の反応だ。最後に一瞬だけ見せた顔が、どうにも頭から離れない。

二人とも、何かしらの悩みがあるのだろうか。

 

部長は一誠と俺を助けてくれた命の恩人だ。

祐斗は友達だし、今日は悩みも聞いてくれた。

励ましの言葉も送ってくれた。

 

「もし俺に何かできることがあるのなら、してやりたい気持ちはあるんだけどな……」

 

電気も消した真っ暗な部屋で俺は一人、天井を見つめてぽつりとつぶやいた。

時刻はすでに深夜すぎ。明日のことを考えればもう寝るべきだが、アーシアが先に風呂に入っているため、俺はまだシャワーも浴びていない。

そして、隣の一誠の部屋がやけに騒がしい。寝たくとも寝れない状況だった。

 

「チッ、うるせーな。静かにしろ!」

 

学園での質問攻めを思いだし、その元凶に対して内心苛立ちもあったのだろう。

俺は舌打ちをして壁を叩き、一誠に聞こえるように注意する。しかし、注意に反して隣の部屋から漏れ聞こえる一誠の声は騒がしさを増す。

 

というか、よく聞けば誰かと話してるのか?

こんな時間に電話しているとなると……松田か元浜の悪友だろうか。

 

どちらにしろうるせえ!苛立ちがピークに達した俺は部屋から出る。そのまま一誠の部屋の扉の前に立つと、扉を叩いて怒鳴り声を発した。

 

「うるさいって言ってるだろうが!誰としゃべっているのか知らねえけど、声を落とせって──」

 

そこまで言った瞬間、一誠の部屋の扉がゆっくりと開き始める。俺が扉を叩いたから開いたわけではない。なかにいる人物が扉を開いたんだ。

 

部屋のなかには、ほぼ全裸の部長と半脱ぎ状態の一誠がいた。部屋の扉を開けてくれたのは、メイド服を着た銀髪の美女だ。

 

銀髪の女性は表情の乏しい顔を俺に向けていた。

 

「な、はあ?どういうことだよ……」

 

あまりに予想外な光景を目にして、俺は動揺する心情を表すように一歩引き下がっていた。

メイドさんは床に落ちた上着を部長にかけると、俺と一誠に見えるように頭を下げる。

 

「はじめまして。私は、グレモリー家に仕える者です。グレイフィアと申します。以後、お見知りおきを」

 

美しい銀髪を三つ編みにしたメイドさん。

もとい、グレイフィアさんは丁寧にあいさつしてくれる。

 

──って、グレモリー家に仕えるメイドぉ!?

 

「なんで上級悪魔に仕えるメイドさんが俺たちの家に上がり込んで……。というか、部長も何をやっているんですか!?」

 

「事情があったのよ。それも邪魔されてしまったけれどね」

 

俺の問いに部長は不機嫌そうな様子で答える。

それを見たグレイフィアさん──いや、さまか。

彼女は銀色の瞳を呆れたように閉じて、部長は脱ぎっぱなしにしていた服を着直す。

 

「ゴメンなさい、イッセー。さっきまでのことはなかったことにしてちょうだい。シュージも夜遅くに騒がしくしてしまって迷惑をかけたわね」

 

「イッセー?まさか、この方が?」

 

「ええ、兵藤一誠。私の『兵士(ポーン)』よ」

 

「……『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』、龍の帝王に憑かれた者ですか……。ではそちらの方は?」

 

異質なものでも見るような目を一誠に向けていたグレイフィアさまが、今度は俺に視線を移した。

 

「あ、えっと……自分は兵藤秀次です。そちらの兵藤一誠の双子の弟で、リアス・グレモリーさまの『戦車(ルーク)』をやらせてもらっています」

 

「なるほど。お嬢さまの二人目の『戦車』の方でしたか。聞いた話ですが、あなたも神器(セイクリッド・ギア)を宿しているそうですね。よろしければ見せていただけませんか?」

 

グレイフィアさまは静かな声でそう言う。有無を言わせない圧が漂っている気がする……。

俺は目の前の女性に内心警戒しつつ、神器を出現させる。額に生えた角を見て、グレイフィアさまは訝しげに瞳を鋭くさせる。

 

「紫水晶の角……炎と水を操る神器(セイクリッド・ギア)。まさかとは思いますが……本当に……?」

 

「あの……俺の神器(セイクリッド・ギア)が何か?もしかして、これのことを知っているんですか?」

 

「……いいえ。申し訳ありません。あいにく私は神器(セイクリッド・ギア)に疎いものでして。基本的なことしか知りません」

 

なんだ。グレイフィアさまも知らないのか。

部長たちも俺の神器を調べてくれているのだが、現在に至るまで何の情報もない。名前すら不明でわかっているのは能力くらいのものだ。

 

神妙な顔つきで話し合っていた部長とグレイフィアさまは、正式な話し合いをするためにこの場所から去ろうと準備を整え始める。

 

去る間際、部長は一誠のもとへ歩み寄っていき、頬に口づけをした。

 

「今夜はこれで許してちょうだい。迷惑をかけたわね。明日、また部室で会いましょう」

 

別れを告げた部長はグレイフィアさまと共に魔法陣の光のなかに消えていった。

 

「俺、部長にほっぺにチューされた……」

 

「結局、何がなんだかさっぱりだな。一誠は早く服を着ろよ」

 

「俺、部長にほっぺにチューされた……」

 

それはもういいって……。呆けている一誠に若干苛立ちを感じながらも、俺は明日に備えようと一誠の部屋から出ていった。

 


 


 

次の日。早朝のトレーニングは中止にされ、俺と一誠とアーシアは三人で一緒に通学した。

なぜか一誠は朝から疲れた様子だし、アーシアはそんな兄を心配しているし、学園に着くなり松田と元浜は一誠にプロレス技を仕かけていた。

朝から凶行に及ぶ彼らを俺は不思議に思ったが、その理由は一誠にあったようだ。

昨日、嫉妬に狂った二人は女の子を紹介しろと一誠に迫ったらしいのだが、紹介された相手はあの「ミルたん」だった。さらに似たような漢たちが集まっていて地獄の集会だったと。

話を聞いた俺は兄の性格の悪さにドン引きした。普段の素行が悪い彼らではあるのだが、今回ばかりは俺も素直に同情したし、一誠がボコボコにされても自業自得だと見逃したほどだ。

 

「部長のお悩みか。たぶん、グレモリー家に関わることじゃないかな」

 

部室に向かう道すがら、ここ最近の部長の様子を聞いた俺たちに祐斗はそう答えた。

グレモリー家に仕えるメイドが来たってことは、そういうことだよなあ。昨日のことを一誠はまったく話そうとしないし……厄介事かな。

 

祐斗は昨日の様子とは一転して、にこやかな笑顔で生活している。

こちらも何か事情を抱えていそうだけど、訊くのは気が引けるし……。なんてことを考えながら、部室の扉の前に到着したときだった。

 

祐斗が何かに気づいたように立ち止まり、顔を険しくする。

 

「……僕がここまで来て初めて気配に気づくなんて……」

 

一誠が気にせずに扉を開けると、部室にはすでに俺たち以外のメンバーが集まっていた。

静かに立っているグレイフィアさま。機嫌が悪そうな部長。いつもの笑顔でありながら、冷たい雰囲気を感じさせる副部長。黙り込む三人のお姉さまたちによって、部室の空気は張りつめていた。塔城は部屋の隅の椅子に座っているが、今日の三人とはあまり関わりたくなさげだ。祐斗も緊迫感のある顔となっていて、ただ事ではない雰囲気に怯えたアーシアは一誠の近くに寄る。俺も部室内の空気に当てられ、自然と閉口していた。

全員が集まったことを確認すると、部長は硬い表情で話し始めようとする。

 

「全員揃ったわね。では、部活をする前に少し話があるの」

 

「お嬢さま、私がお話ししましょうか?」

 

グレイフィアさまの申し出を手を振って断り、部長自らが話を進めようとした瞬間──部室の床に描かれた魔法陣が光りだす。

魔法陣の紋様はグレモリーのものではない。炎を象ったような見たことがないものだ。

 

「──フェニックス」

 

魔法陣を目にした祐斗がつぶやくように言う。

転移してくるのがグレモリーではないことは薄々察していた。だけどフェニックス?それって不死鳥のことじゃなかったっけ?

 

訝しげに頭を傾けていると、室内を眩い光と炎が包み込む。舞い散る火の粉がうっとうしい。

炎が振り払われると、室内に金髪の男が現れた。見た目は若く整った顔立ちだが、着ている赤いスーツの胸元は派手に開かれている。

 

「ふぅ、人間界は久しぶりだ」

 

着崩したスーツや男の態度から、粗野な雰囲気を感じ取ったのは俺だけではないだろう。

男は退屈そうな目で部屋を見渡していたが、部長を発見した瞬間に口角を上げる。

 

「愛しのリアス。会いに来たぜ」

 

……部長にずいぶんと馴れ馴れしい男だな。

旧知の関係なのかと一瞬思ったが、対する部長は敵を見るような視線を返している。

しかし、男は気にもせずにズカズカと近づいていって、部長の腕を掴んだ。

 

「さて、リアス。さっそくだが、式の会場を見に行こう。日取りも決まっているんだ、早め早めがいい」

 

「……放してちょうだい、ライザー」

 

怒りの声を発して部長は男の手を振り払う。部長は完全にキレているようだが、ライザーと呼ばれた男はそこまで気にしていないようだった。

そして、この男の登場によって怒りの感情を抱いていたのは部長だけではなかった。

 

「あんた。部長に対して無礼だぞ。つーか、女の子にその態度はどうよ」

 

眉根を吊り上げた一誠が鋭く指摘した。

ぶっちゃけ、それは俺も思っている。仲間も主を無下に扱われていい思いはしていないはずだ。

まあ、普段から女の子にわいせつ行為をしている一誠が言えたことではないとも思ったが……。

 

「あ?誰、おまえ?」

 

「俺はリアス・グレモリーさまの眷属悪魔!『兵士(ポーン)』の兵藤一誠だ!」

 

「ふーん、あっそ」

 

男はどうでもいいものを見たような目で、適当に一誠をあしらった。

あまりに興味のなさそうな反応をされた一誠はズッコケるが、すぐに立ち直って訊く。

 

「つーか、あんた誰だよ」

 

「……あら?リアス、俺のこと、下僕に話してないのか?つーか、俺を知らない奴がいるのか?転生者?それにしたってよ」

 

「話す必要がないから話していないだけよ」

 

「あらら、相変わらず手厳しいねぇ」

 

部長の反応に男も思うところがあったのか、目元を引きつらせて苦笑いしていた。俺もあんたのことなんて知らないけど。

結局、この男はどこの誰なんだと思っていると、グレイフィアさまが説明してくれる。

 

「この方はライザー・フェニックスさま。純潔の上級悪魔であり、古い家柄を持つフェニックス家のご三男であらせられます」

 

へぇー、部長と同じ上級悪魔なんだ。色々な悪魔がいるんだなぁ。

 

「そして、グレモリー家次期当主の婿殿でもあらせられます。リアスお嬢さまとご婚約されておられるのです」

 

……は!?ご婚約だと!予想を上回る事実に俺と一誠、アーシアは驚愕する。部長や他の部員たちは硬い表情で視線を落としていた。

 

「ええええええええええええええッッ!!」

 

「うるさい」

 

叫ぶ一誠に俺は拳骨を落としていた。

 


 


 

部長の婚約者──そう紹介された男はふんぞり返ってソファに座り込み、部長の肩を軽々しく抱きながら、副部長が淹れたお茶を飲んでいた。

男はいやらしい手つきで部長の髪や肩、手を触り続けている。太ももをさすろうとした際は、怒った部長が手を叩いて止めていたが、見ているこちらまで気分を害される。

 

「シュージくん、目が怖いよ」

 

「いつもと対して変わらないと思うが」

 

祐斗の注意を受けても俺の目つきが和らぐことはなく、さらに鋭く細められていく。普段なら直そうと努力するけどな。それに注意をしてきた祐斗だって、普段の笑顔が消えているぞ。

お茶を出した副部長も張り付けたような笑みを浮かべていて、その目は不快の色に染まっていた。塔城も軽蔑の視線を男に向けている。

 

「あれって、主への不敬とかを理由にして、追い返せたりしないのか?」

 

「難しいだろうね。相手は部長と同じく『七十二柱』にも数えられるフェニックス家の男児だよ。立場もだけれど、実力も相当なんだ」

 

祐斗が言う『七十二柱』というのは、爵位を持った悪魔の総称だ。

大昔の戦争でほとんどが消滅してしまったが、グレモリーとフェニックスは現在まで生き残っている悪魔の一族というわけだ。

 

「昨夜、グレイフィアさまと部長と私が話し合って今日の予定を取り決めたのですが……やはり性急すぎる判断だわ。部長の気持ちは一切考慮されていませんもの」

 

「……両方のお家が勝手に話を進めたのかも」

 

主を無下に扱う相手に、俺たちのフラストレーションも溜まりつつある。

真っ先に怒りをあらわにした一誠は──口の端から涎を垂らして、だらしなく笑っていた。

 

「あ、あの、イッセーさん。何か楽しいことありました?」

 

「……卑猥な妄想禁止」

 

「一誠の野獣っぷりは今日も健在か」

 

「イッセーくん、とりあえず涎を拭いたほうがいいよ」

 

「おまえら!どっちも余計なお世話だ!」

 

平常運転の一誠に皆で呆れていたときだ。

 

「いい加減にしてちょうだい!」

 

部長が怒鳴り声をあげて立ち上がった。

激昂している部長の鋭い視線を浴びてなお、男はすました顔でソファに背中を預けている。

 

「ライザー!以前にも言ったはずよ!私はあなたと結婚なんてしないわ!」

 

「だが、リアス、そういうわけにはいかないだろう?キミのところの御家事情は意外に切羽詰まっていると思うんだが?」

 

「余計なお世話だわ!私が次期当主である以上、婿の相手ぐらい自分で決めるつもりよ!父も兄も一族の者も皆急ぎすぎるわ!当初の話では、私が人間界の大学を出るまでは自由にさせてくれるはずだった!」

 

「その通りだ。キミは基本的に自由だよ。大学にいってもいいし、下僕も好きにしたらいい。

だが、キミのお父さまもサーゼクスさまも心配なんだよ。御家断絶が怖いのさ」

 

やはり、今回の婚約話は政略的なものなのか。

先の大戦で純潔の上級悪魔は大勢亡くなったことは俺も聞かされている。それによって、いくつもの御家が断絶してしまい、悪魔社会は昔ほどの力と軍勢を持っていないということも。

純潔の悪魔が滅ぶことを避けるため、御家を断絶させないために、部長は結婚を強いられている。グレモリー家の次期当主だからという理由でだ。

 

俺たち眷属が横から口を挟める話じゃない。

だから、悶々としつつも黙って二人の言い争いを見ているわけなのだが……。

 

「私は家を潰さないわ。婿養子だって迎え入れるつもりよ」

 

「おおっ、さすがリアス!じゃあ、さっそく俺と──」

 

「でも、あなたとは結婚しないわ。ライザー。私は私が良いと思った者と結婚する。古い家柄の悪魔にだって、それぐらいの権利はあるわ」

 

なるほど。それが部長の決定か。なら眷属の俺たちは従うだけだな。

だが次の瞬間、こっぴどくフラれた男が大きく舌打ちし、明らかに機嫌が悪くなる。

 

「…俺もな、リアス。フェニックス家の看板背負った悪魔なんだよ。この名前に泥をかけられるわけにもいかないんだ。こんな狭くてボロい人間界の建物なんかに来たくなかったしな。というか、俺は人間界があまり好きじゃない。この世界の炎と風は汚い。炎と風を司る悪魔としては、耐えがたいんだよ!」

 

フラれたことで初めて怒りを見せた男の周囲に炎が上がり、火の粉が室内に舞う。

火の粉が当たった物が焦げたことを確認して、俺は即座に一誠とアーシアの前に移動した。肌に当たる火の粉が本当にうっとうしい。

 

「俺はキミの下僕を全部燃やし尽くしてでもキミを冥界に連れ帰るぞ」

 

男の視線が部長から俺たちに移される。

明確な殺意と敵意にさらされ、一誠は苦しそうに口を噛みしめていた。アーシアも怯えて震えながら一誠の腕に抱きついている。

祐斗と塔城、副部長は震えてこそいないが、臨戦態勢に入ってもおかしくない雰囲気だ。

部長も一気に瞳を鋭くさせ、紅い魔力のオーラを全身から薄く発し始めた。

そして、俺は──表情が死んでいた。

 

「ならおまえは焼け死ね」

 

低い声を発した直後、俺は神器を発動して敵に片手を向けていた。

角からは橙色の光と高熱が発され、向けた手のひらには炎の塊が生み出されている。

次の瞬間、目を見開いて驚いている敵の顔面に向かって火球が撃ち出される。男は真正面から俺の攻撃を受け、室内に爆炎と煙が広がっていく。

 

俺の突然の凶行に、その場の全員が唖然とした表情で動きを止めていた。




主人公に最後まで名前を呼ばれることもなく、炎をぶつけられた可哀想なライザーでした。
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