ハイスクールD×D 終焉に抗う暁の太陽   作:ドラゴン大好きT

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評価がつけられていて嬉しい一方で、初めての社会人生活に苦しめられて小説が全然書けない…。


第13話 炎と屈辱

 

 

紅蓮の花弁が狂い咲き、部室内に黒煙が広がる。

秀次が放った炎はライザーの顔面に直撃し、頭を吹き飛ばしていた。

 

「シュージ、あなた……」

 

「な、何やってんだよ!?」

 

あまりの暴挙に彼の仲間も唖然としている。

ライザーに対して直前まで激昂していたリアスと一誠ですら、秀次の暴挙に大きく驚いていた。

 

秀次は片手を突き出したまま、微動だにしない。

切れ長の瞳をさらに鋭くさせ、煙の先を黙って見つめている。

 

黒煙の向こう側──首から上で炎を踊らせる人影が立ち尽くしていた。

 

「おいおい、リアス。これはいくらなんでも手荒すぎるぞ。キミの下僕は立場をわきまえることもできない愚か者ばかりなのか?」

 

直後、焦げた匂いと煙を振り払って、無傷のライザーが彼らの前に現れる。

秀次が放った炎が直撃した顔に傷はなく、服も身綺麗なままだった。

 

──フェニックス。不死鳥の名前で知られる聖獣なのだが、ライザーは悪魔でありながら同じ特性を持っている。

 

つまり、不死身であった。

 

名前を聞いたときからその可能性は秀次の頭にも浮かんでいた。

だが、自分の炎を真正面から受けて無傷のうえ、ダメージもないという事実をまざまざと見せつけられ、秀次は相手への認識をわずかに変える。

 

厄介な敵から、油断ならない侵略者へと。

 

「ガキ、おまえは誰だ」

 

「……俺にとって、一誠は唯一無二の兄貴だ。普段から迷惑をかけてくるし、性欲に頭が支配されてるから馬鹿なことばっかりする。そのくせ、大切な誰かのためなら自分の危険も考えずに突っ込むから、俺はいつも心配してる」

 

「俺が上級悪魔、フェニックス家の者だと知ったうえで攻撃するとはな。この下級悪魔はよほど焼け死にたいらしい」

 

「ホームステイ中のアーシアはもう俺にとっても家族みたいなもんだ。祐斗は友達だ。悩んでいる俺の話を聞いてくれた。副部長はたまに怖いけど普段は優しいし、おいしいお茶を淹れてくれる。塔城は無愛想でなまいきだけど、後輩で仲間だ」

 

「ッ──貴様」

 

睨みを利かせるライザーに対して、仲間への想いをつらつらと語った秀次。

 

「この場にいるヒトたちは、もう俺にとっても他人じゃない。部長に対してもふざけた態度を取りやがって……トドメのあの発言だ。あれは害意ある敵対宣言だった」

 

「下級で下僕の悪魔のくせに、上級悪魔の俺の問いを無視するとはいい度胸だ」

 

両者がまとう空気が再び熱を帯びていく。

二人の苛烈な視線は交わらず、言葉を発してこそいるが会話にすらなっていない。

 

ただ、目の前の相手を無視はできない。

 

「命を奪う覚悟はまだないが、仲間を傷つけようとする奴に容赦するつもりもない」

 

「調子に乗るなよ、クズ悪魔が!不死鳥フェニックスと称えられた我が業火で骨すら残さず貴様を灰にしてやろう!」

 

激怒するライザーの背中から炎が噴き出し、一対の翼が形成される。

 

「グレモリー眷属『戦車(ルーク)』、兵藤秀次。身命を賭して、敵を討ち滅ぼす」

 

秀次も獣が牙を剥くように口を開くと、火の粉を口元に漂わせる。額から生えた角や鋭く細められた瞳も相まって、いまの彼はドラゴンのような印象を周囲の人物に思わせた。

 

伝説の不死鳥フェニックスと火を吹く角の悪魔。

 

怒りの感情を燃え上がらせ、自らの炎で相手を消滅せんとする両者。

彼らによって部室内の空気はさらに熱を上げ、緊張感がピークに達する──。

 

「シュージ!やめなさい!」

 

慌ててリアスが制止の声をかけるが、秀次は口を大きく開けて火を吐き出そうとし、ライザーも両腕にまとわた炎を撃ち出そうとする。

 

二人の激突は避けられない。部室内の誰もがそう思った瞬間だった。

 

「おふたりとも、落ち着いてください。これ以上やるのでしたら、私も黙って見ているわけにもいかなくなります。私はサーゼクスさまの名誉のためにも遠慮などしないつもりです」

 

冷静な声を発するグレイフィアだが、彼女が言葉と共に解き放った圧は尋常ではなかった。

ライザーは身にまとっていた炎を消し去って深く息を吐き、秀次は顔中から汗を噴き出して体を小刻みに震わせている。

先ほどまでの緊迫した状況と暑さによって汗をかいていた一誠でさえも、二人の反応から彼女がただ者ではないと理解した。

 

「……最強の『女王(クイーン)』と称されるあなたにそんなことを言われたら、俺もさすがに怖いよ。バケモノ揃いと評判のサーゼクスさまの眷属とは絶対に相対したくはないからな。……ガキ、命拾いしたな。次はない」

 

「っ……グレイフィアさま、申し訳ありません。ご迷惑をおかけしました……」

 

ライザーの捨て台詞に睨みを返しそうになるが、怒りを飲み込んだ秀次は無視して、この場を収めてくれたグレイフィアに頭を下げていた。

謝罪を済ませた秀次は顔をうつむかせながら仲間たちのもとまで戻る。

途中、主であるリアスと目が合うと、彼は悔しげな表情になって再び頭を下げる。

 

「すみませんでした。俺のせいで部長の立場がますます悪くなったかもしれません……」

 

「……主として、止めなければいけないところを止められなかった私にも責任はあるわ。とにかく無事でよかった。いまは下がりなさい」

 

「っ──はい」

 

勝手に暴走し、主の命令に背いた結果はあまりに情けないものとなった。

屈辱に歯を食いしばりながら、秀次は今度こそ主の命令に従う。彼の様子に仲間や一誠は心配していたが、声をかけることはできずにいた。

 

すると、室内の全員に落ち着きが戻ったタイミングでグレイフィアが口を開いた。

 

「予想外のトラブルが起こりましたが、おおむね旦那さまやサーゼクスさまやフェニックス家の方々が想像していた通りの結果になりました。

正直に申し上げますと、これが最後の話し合いの場だったのです。これで決着がつかない場合のことを皆様方は予測し、最終手段を取り入れることとしました」

 

「最終手段?どういうこと、グレイフィア」

 

「お嬢さま、ご自分の意志を押し通すなら、ライザーさまと『レーティングゲーム』にて決着をつけるのはいかがでしょうか?」

 

グレイフィアの意見にリアスは言葉を失う。

レーティングゲームとは、爵位持ちの悪魔が下僕同士を戦わせて競い合うチェスを模したゲームのこと。

 

ただし、成人した悪魔のみ参加できるというルールがあり、まだ成人前のリアスや彼女の眷属たちは参加できないはずだった。

しかし、純潔悪魔同士の非公式なものであれば、ゲームを行える。その場合の多くが身内や御家のいがみ合いによるものだ。

今回のゲームもリアスが婚約を拒否する可能性を踏まえた父親──グレモリー家の現当主が考えた策であった。これにリアスは腹を立てながら、起死回生の好機を見た。

 

ゲームに勝てば今回の婚約話を白紙にすると。

 


 


 

提案されたレーティングゲームの話に、リアスとライザーは異を唱えることなくすぐに了承した。

リアスが勝てば婚約話は解消。ライザーが勝てば即座に結婚するという内容でだ。

ゲームを取りまとめる立会人はグレイフィアが担当することになった。

 

勝ち気な態度で睨み合う両者だが、この勝負は最初からリアスに不利なものとなっている。

なにせライザーは成人している悪魔のうえ、公式なゲームを何度も経験している。さらに勝ち星も多いというのだから。

 

ライザーの有利性はそれだけにとどまらない。

彼はリアスの眷属に視線を向けて嘲笑う。

 

「なあ、リアス。まさか、ここにいる面子がキミの下僕なのか?」

 

「だとしたらどうなの?」

 

「これじゃ、話にならないんじゃないか?キミの『女王』である『雷の巫女』ぐらいしか俺のかわいい下僕に対抗できそうにないな」

 

余裕の笑みを浮かべるライザーが指を鳴らすと、フェニックスの紋様の魔法陣が輝きだす。

まもなく現れたのは総勢十五人の女性。鎧を着た騎士のような女性、ローブを着た魔導士の女性、他にも着物やドレスを着た女の子もいれば、顔半分を妙な仮面で覆った女性もいる。

自己紹介がなくても、彼女たちがライザーの眷属であることをリアスたちはすぐに察した。

 

(眷属の最大人数は十五人……あっちはフルメンバーで揃えられているうえに全員がゲームを経験している。こっちは数も経験も不利か……)

 

ゲームに負ければリアスはライザーと望まない結婚をさせられてしまう。

主を奪われるわけにはいかないと、秀次は考えを巡らせながら真剣に相手を観察していた。

 

一方で一誠も真剣な顔で彼女たちを見つめる。

次にライザーへと視線を移すと、彼は感動のまなざしとなって涙を流し始めた。

 

「お、おい、リアス……。この下僕くん、俺を見て大号泣しているんだが」

 

「その子の夢がハーレムなの。きっと、ライザーの下僕悪魔たちを見て感動したんだと思うわ」

 

心中を当てられた一誠はうなづいているが、周囲の反応はあまりよいものではない。

ライザーは引いた表情となり、ライザーの眷属たちも蔑みの視線と言葉を送っている。

リアスも困り顔で額に手を当て、秀次を筆頭に仲間たちも肩を落としていた。

 

「これに懲りたら少しは性欲を抑えてくれ……!

普段からの言動も改めてくれよ」

 

「うぐっ!けど、うらやましいものはうらやましいんだよ!だってハーレムだぞ!俺の夢がいま、目の前にあるんだ!」

 

「ダメだこいつ……。早く何とかしないと……」

 

眉間をつまんで顔をしかめる秀次。

一誠の性に対する欲求には長年苦労してきたがそれは今後もだろう。まさに頭痛の種であった。

すると、一誠の夢という発言に反応して、ライザーがにやりと笑う。

 

「そう言うな、俺のかわいいおまえたち。上流階級の者を羨望の眼差しで見てくるのは下賤な輩の常さ。あいつに俺とおまえたちが熱々なところを見せつけてやろう」

 

そう言うと、ライザーは眷属の一人を抱き寄せて熱烈なキスを始める。

 

「はぅはぅはぅぅぅ……」

 

「ありえねえ。マジありえねえ」

 

「……前が見えません」

 

「いまは見なくていい。馬鹿が感染るぞ」

 

刺激的な光景に赤面するアーシアと普段通りの無表情な小猫の視界を秀次は手で覆い隠す。

舌を絡ませてキスをするライザーの眷属は官能的な喘ぎ声を出し、リアスと秀次はドン引きの表情となっていたが、さらにライザーは別の眷属ともキスを始める。

しばらくすると満足したのか、ライザーは眷属とのキスをやめて一誠を嘲笑った。

 

「おまえじゃ、こんなこと一生できまい。下級悪魔くん」

 

「俺が思っていること、そのまんま言うな!ちくしょう!ブーステッド・ギア!」

 

嫉妬と怒りに身を任せて一誠は神器を出現させ、ライザーに指を突きつけて物申す。

 

「おまえみたいな女ったらしと部長は不釣合いだ!」

 

「は?おまえ、その女ったらしの俺に憧れているんだろう?」

 

「うっ、うるせぇ!それと部長のことは別だ!そんな調子じゃ、部長と結婚したあとも他の女の子とイチャイチャしまくるんだろう?」

 

「英雄、色を好む。確か、人間界のことわざだよな?いい言葉だ。まあ、これは俺と下僕たちとのスキンシップ。おまえだって、リアスに可愛がってもらっているんだろう?」

 

「何が英雄だ!おまえなんか、ただの種まき鳥野郎じゃねえか!火の鳥フェニックス?ハハハハ!まさに焼き鳥だぜ!」

 

「焼き鳥!?こ、この下級悪魔ぁぁぁぁ!調子こきやがって!さっきの奴といい、どいつもこいつも上級悪魔に対しての態度がなってねえぜ!」

 

一誠の発言でライザーの怒りが再燃する。

ついでのように名前を挙げられた秀次は黙って目をそらしていた。

彼なりに直前の勝手な行動を反省しているため、これ以上の介入は慎むつもりだった。

 

「焼き鳥野郎!てめえなんざ、俺のブーステッド・ギアでぶっ倒してやる!ゲームなんざ必要ねぇさ!俺がこの場で全員倒してやらぁ!」

 

「ミラ。やれ」

 

「はい、ライザーさま」

 

ライザーの命令を受けた少女が一誠の前に立ちふさがった瞬間、秀次の瞳がスッと細くなる。

一誠は神器を出現させた左腕を前に構え、対するライザーの下僕は長めに持った棍を構えた。

小猫と同じくらいの背丈と童顔の少女が相手ということで一誠は少しばかり尻込みするが、棍を叩き落とそうと一歩前に踏み込んだ。

 

刹那、ライザーの下僕が一誠の腹部にめがけて棍を突き出す──寸前、ドンッと雷が落ちたような轟音が室内に響き渡る。

 

「またおまえか」

 

秀次が力のかぎりに床を踏み抜いていた。ミラと呼ばれた少女は邪魔をされたと不満そうな視線を彼に送り、ライザーも呆れた声を発する。

 

秀次は何も答えず、腕を組み、壁に背中を預けるようにして立っている。彼は一貫してライザーと話すつもりはないらしい。

あまりに無礼千万かつ、目に余る態度にライザーの眷属少女たちは秀次を睨み続けていた。

 

「兄弟なんだってか?よほど兄貴を傷つけられたくないらしいな。ならおまえも、おまえの兄貴もゲームには参加しないほうがいいんじゃないか?腰抜けの臆病者がやっていけるほど、悪魔の世界は甘くないんだよ」

 

「おまえ!俺だけじゃなく、シュージのことも馬鹿にするのかよ!シュージの炎を避けることもできなかったくせに!」

 

ライザーの嘲りの言葉を聞いて、一誠も挑発的な言葉を返した。

だが、ライザーは呆れたように肩をすくめて首を横に振る。彼の言動がとにかく気に入らない一誠はさらに苛立つが、ライザーは嘲笑を浮かべて彼の顔に人さし指を突きつけた。

 

「じゃあ聞くが、おまえはさっきのミラの攻撃が見えたのか?」

 

「──っ」

 

「ミラは俺の『兵士(ポーン)』だ。俺の下僕では一番弱いが、少なくともおまえよりも実戦経験も悪魔としての質も上だ。ブーステッド・ギア?

──はっ、笑わせるな。確かにそれは凶悪で最強の無敵神器(セイクリッド・ギア)のひとつだ。やり方しだいじゃ、俺どころか、魔王も神も倒せる。おまえの他にも過去に使い手は数えるぐらいだが、存在した。

だが、いまだに魔王退治も神の消滅も成されたことはない。この意味がわかるか?」

 

一誠と真正面から顔を突き合わせ、ライザーは彼の左腕を掴み上げる。

 

「この神器(セイクリッド・ギア)が不完全であり、使い手も使いこなせない弱者ばっかりだったってことだ!おまえも例外じゃない!こういうとき、人間界の言葉ではなんて言ったっけかな。……そうだ、『宝の持ち腐れ』、『豚に真珠』だ!おまえのことだよ!リアスの『兵士』くん!」

 

ライザーの蔑みの言葉が一誠の心を深く抉る。

屈辱的な仕打ちを受けながらも、彼は歯を食いしばって言い返したい気持ちを必死に抑えていた。

ライザーの言う通り、まだ一誠は弱い。

秀次が足を踏み鳴らし、気を取られたミラが攻撃をやめていなければ、一誠はまともに攻撃を食らっていただろう。

眷属の攻撃すら見えなかったのだから、さらに強いライザーに挑んでも勝ち目はない。

 

「だが、少しでも使いこなせるようになればおもしろい戦いができそうだな」

 

一誠の腕を離すと、ライザーはリアスたちへのハンデとしてゲームまで十日の猶予を与えた。

自分や眷属の勝利を信じて疑っていない彼の余裕をリアスは腹立たしく思ったが、自分たちの経験不足は事実だ。怒りに身を任せてこの申し出を断ることは、勝利を手放す行為に等しい。

一誠や秀次と同様に、リアスもまた屈辱に耐えながらライザーの申し出を受け入れていた。

婚約者の聡明さをうれしく思う一方で、ライザーは悔しげな顔をしている一誠を見る。

 

「リアスに恥をかかせるな。リアスの『兵士』、おまえの一撃がリアスの一撃なんだよ」

 

先ほどまでの挑発や蔑みの言葉とは違う。

ライザーはリアスのことを軽んじていない。

同じ王として、歴史ある上級悪魔として、リアスのことを心から想っての言葉だった。

眷属の恥は主の恥にも通ずる。そのことをライザーは暗に教えてくれていた。

 

「おまえもだ。リアスの『戦車(ルーク)』。おまえはリアスの眷属だろうが。一番に守るべき相手を間違えるような奴は下僕失格だぜ」

 

「……部長のことも守るさ。一誠のことも、仲間のことだって守る。グレモリー眷属の(ルーク)として」

 

「フン。どんな神器(セイクリッド・ギア)を持っていようがな、すべては使い手しだいだ。あとな、リアスの下僕を燃やし尽くすと俺は言ったが、あれは冗談みたいなもんだ。──おまえの火と同じでな」

 

ようやく会話を成立させた二人。ライザーの言葉を聞くと、秀次は伏せていた顔を上げる。

ライザーの青い瞳と秀次の切れ長な目が初めて真っ向から見合う。

 

「──次は本気で当てにこい」

 

「わかった」

 

互いに短すぎる一言だったが、意志は伝わった。

ライザーと下僕たちは再び魔法陣が放つ光のなかに消えていった──。

 


 


 

ライザーが去ったあとの部室は静かだった。

それぞれ思うものがあるなかで決められたゲームとそれまでの猶予。

十日という短い期間でどれだけ自分たちは強くなれるのか。下僕たちを強くさせられるのか。

不安や焦燥といった感情が全員の顔を硬くし、部室内の空気を重くさせる。

普段は明るく振る舞っている一誠も、先ほどのライザーの言葉が原因で黙り込んでいる。自分の弱さが情けないと、不甲斐ないと思っていた。

そんな彼を心配したアーシアがおろおろと顔色をうかがっていると、リアスが口を開く。

 

「ひとまず今日は解散よ。悪魔の仕事も中止。朱乃は残ってちょうだい。ゲームに向けて作戦を考えるから手伝って」

 

「はい、部長」

 

リアスの指示を受けて彼らも動き始める。

といっても、残るように指示された朱乃以外は帰り支度を整えるだけであったが。

 

「シュージには、あのミラっていう『兵士』の攻撃が見えてたのか?」

 

鞄を持った秀次が部室から出ていこうとしたそのとき、慌てた様子の一誠が話しかけた。

部室の出入り口で立ち止まった彼は振り向き、部室にいる全員の視線を浴びながら告げる。

 

「まったく。何も見えなかった。ただ何となく、一誠がふっ飛ばされると思ったから足を踏み鳴らしただけだよ。あれで止まってくれてこっちも助かった」

 

「……でも、ライザーも言ってたじゃないか。次は本気で当てにこいとか、俺の冗談とおまえの火は同じだとか」

 

「それは……」

 

ライザーの含みのある口ぶりを一誠は思いだし、指摘された秀次も言いよどむ。

何かを思案するように瞳を伏せた直後、小さく息を吐いて彼はあの凶行の真意を話し始めた。

 

「あれは……威嚇のつもりで放ったんだ。皆を傷つけようとするあいつを許せなかったのは本当だけど……。脅しのつもりだった」

 

「脅しで火を放つなよ……」

 

「誰だって火の玉が顔に向かってくれば怖いし、避けようとすると俺は思ってた。──けど、ライザーはそうじゃなかった。怖がるどころか避けもしなかった。理由はわかりきってる」

 

弟の暴力性に呆れる一誠であったが、秀次は自分の両手を見つめて言葉を続ける。

 

「ライザーは自分の不死性──フェニックスとしての特性に圧倒的なまでの自負を持ってる。

だから俺の攻撃をわざと受けたんだと思う。でもそれは言い換えれば奴の傲りだ。俺たちが勝つチャンスはそこにあると思う」

 

そこまで言うと、秀次はしゃべりすぎたと恥ずかしそうに頬を掻く。

同じように焦りを感じているのだと思っていた一誠は存外冷静な弟に言葉を失い、他の部員たちは秀次の理知的な一面に感心する。

だからこそ、リアスは聞きたくなってしまった。

 

「シュージ、どうしてあなたは私たちのためにそこまで戦おうとするの?私は主であなたは下僕。それはわかってる。けど、まだ私たちは出会ってそこまで長い月日を共にしていたわけじゃ……」

 

「そんな悲しいこと、言わないでくださいよ」

 

リアスの突き放すような発言に秀次は本当に悲しそうな顔で答えていた。

リアスから見た秀次はおとなしめな印象が強い。

たまに負けん気な一面も見せるが、一誠ほどの情熱は感じられない。良く言えば冷静。悪く言えば淡泊な人物だと思っていた。

だが、今日の彼は自分たちと仲間であることに強く固執しているような気がした。

 

「確かに一誠に比べると、俺の情は薄いかもしれませんが、これでも俺はオカルト研究部で過ごす時間を気に入っているんですよ。悪魔としての仕事も楽しいです。俺にとってもここは……かけがえのない居場所になっています」

 

先ほどの悲しさにあふれた声とは一転、今度は温かな喜びに満ちた声音で秀次は言う。

リアスも彼の真意に触れられたような気がして、その温かな心根に小さく笑った。

 

「だからこそ、俺の大切な居場所に土足で踏み入って、荒らしたライザーが俺は許せない。もう誰にもいなくなってほしくない。主も、友も、家族も、俺から奪う奴は等しく敵だ」

 

温かな心根──に潜む秀次の暗い感情。

リアスに対する忠誠心が。

仲間と家族を傷つけるといった脅しを冗談だと笑った男への怒りが。

自分の弱さによって味わうことになった屈辱が。

 

彼の深海のような瞳に冷たい光を宿していた。




よく考えると、この場にレイヴェルもいるのか。原作ヒロインたちからしたら印象はかなり悪いような気もするけど…はたしてどうなるか
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