ハイスクールD×D 終焉に抗う暁の太陽   作:ドラゴン大好きT

18 / 42

前回の投稿から二週間以上経ってしまった。読者の皆さま、お待たせして申し訳ない……。


第18話 もう一人の不死鳥

 

一誠、秀次、小猫はライザー眷属の『戦車』と『兵士』たちを相手に優位に立っていた。

小猫は近接戦闘で棍使いのミラを終始圧倒し、一誠も合宿中に会得した技──『洋服破壊』で双子のイルとネルの服を吹き飛ばして無力化。

『戦車』の雪蘭も秀次に脚を折られ、地に膝をついていた。相手していた秀次は無傷とはいかなかったが、戦闘続行不可能になるほどの負傷は受けていない。

初戦を有利に進めたことで程よく緊張感が抜けた彼らであったが、秀次は額に手を当てた険しい表情で一誠と向かい合い、小猫は二人から少し離れた位置で冷めた視線を送る。

 

「おまえさ、アレはないよ……。なんで魔力の扱い方を学んで、女子の服を剥ごうなんて技を思いつくんだ!」

 

「それはもちろん、俺の妄想力の賜物だぜ!シュージだって、女の子の服を吹き飛ばして裸を見たいと思ったこと、一度はあるだろ?」

 

「ねえよ!そんなこと!」

 

戦場には似つかわしくない会話が繰り広げられるなか、グレモリー眷属三名のもとに主のリアスからある連絡が入る。

朱乃の準備が整ったという連絡。それすなわち、彼らの作戦が問題なく進んでいるということだ。

リアスからの指示を受けて、一誠と秀次と小猫の三人は体育館の出入り口へと走り出す。

 

「逃げる気!?ここは重要拠点なのに!」

 

ライザーの眷属による驚愕の声も無視して、彼らは脇目も振らずに体育館を出た。

瞬間──空気を斬り裂く雷鳴が鳴り響き、巨大な雷の柱が体育館へ降り注ぐ。

 

撃破(テイク)

 

雷が落ちた体育館は木っ端微塵に消し飛び、黒煙上がる地面にも巨大なクレーターが生じていた。

体育館を吹き飛ばした雷。それを繰り出した朱乃は悪魔の翼を生やして空に浮かんでいる。

『雷の巫女』。ゲームに出場したのは今回が初めてだが、すでに通り名がつけられているほどに彼女は眷属随一の雷の名手であった。

 

『ライザー・フェニックスさまの「兵士(ポーン)」三名、「戦車(ルーク)」一名、戦闘不能!』

 

フィールド中にグレイフィアの声が響く。

今回のゲームにおいて、体育館は旧校舎と新校舎を繋ぐ重要拠点だった。グレモリー側もライザー側もそれは周知の事実。

ゆえに、リアスはあえて体育館を捨てた。重要拠点を押さえようと動く一誠たちを倒しに来たライザー眷属もろとも体育館を破壊する。乱暴かつセオリーから外れた策であったが効果は抜群だ。

ライザー眷属は四名全員が戦闘不能。対してグレモリー眷属は一名も欠けることなく戦闘続行可能な状態にある。敵を抑える役目を果たした一誠たちと、攻撃を最大にまで溜め込んだ朱乃の連携による戦果であった。

 

「やったね、小猫ちゃん」

 

喜び合おうと一誠は小猫の肩を軽く叩こうとしたが、彼女はさらりと避ける。

 

「……触れないでください」

 

「当然の反応すぎる。これに懲りたら、もうあの技を使うのはやめような」

 

「嫌だよ!俺が『洋服破壊(ドレス・ブレイク)』を使えるようになるまでどれだけ妄想を重ねて、鍛えたのかシュージは知らないだろ!それに大丈夫だって。俺、味方には使わないから」

 

自信に満ちた顔で言う一誠に秀次は肩を落とし、小猫は冷えきった顔で距離を置いた。

 

『皆、聞こえる?朱乃が最高の一撃を派手に決めたわ。これで最初の作戦はうまくできたわね』

 

グレモリー眷属が耳につけた通信機器から聞こえてきたのは喜びに満ちたリアスの声。一誠と秀次と小猫は次の作戦に向けて行動を開始する。

別行動を取っている祐斗と合流し、運動場に向かおうとする三名。

 

「……シュージ先輩って、武道の経験はないみたいですけど、戦うことに関しては素人じゃないですよね」

 

「え?いやあ、そんなことはない……」

 

ずっと気になっていたことを質問した小猫。彼女の問いに秀次は微妙な顔になって言葉を濁す。

小猫は合宿中も秀次と何度も組手をしており、その最中にも彼の片鱗は見えていた。才能かとも思えたがそれともまた違うようだ。

武の経験がないことは知っている。だが、戦いに関しては素人ではない。どこかちぐはぐな印象が見受けられる。そして、先ほどの戦闘を見て小猫の疑念はより強くなった。

その答えを口にしたのは秀次ではなく、彼をよく知る兄の一誠であった。

 

「あれ?小猫ちゃんは知らないのか。てっきり、知っているもんだと思ってたけど」

 

「何のことですか?教えてください」

 

「おい、一誠。余計なことは言わなくていいからな。つーか、黙っとけ。塔城も食いつくなよ」

 

秀次は何も話すなと釘を刺したが、一誠はニヤリと笑う。普段から何かと口うるさい弟の秘密をバラすことで、意趣返しをするつもりであった。

 

「おほん。実はね、シュージは中学生の頃、けっこうなヤンチャをしてたんだよ。学校でも有名な不良になるくらいにね」

 

わざとらしい咳払いをして話しだした一誠を秀次は半目になって睨んでいたが、小猫は興味と疑念の入り混じった目で彼を見る。

 

「不良……先輩がですか?」

 

「あの頃は喧嘩もたくさんしてたよなー。授業もサボるから、先生にも目をつけられてたよ。でも二年の終わりぐらいからは普通の生徒に戻ってたかな」

 

一誠が語った秀次の過去。それを聞いた小猫は表情こそ特に変化しなかったが、内心では少なからず驚いていた。

確かに言動が荒っぽいことは何度かあったが、彼が不良だったというのはにわかに信じがたい。

現在の秀次は授業をサボったりしないし、怒りっぽいところはあるが殴り合いに発展するような喧嘩もしていないからだ。

 

「ヒトの過去を勝手に話しやがって……!ゲームが終わったら覚えておけよ」

 

不機嫌そうに言葉を吐き捨てると、秀次はスタスタと早歩きでその場から離れていく。

 

そのときだ。ドォォォンッ!と謎の爆発が突然起こり、一誠と小猫は爆風と衝撃から体を守ろうと咄嗟に防御の体勢を取る。

だがその一瞬、二人は見てしまった。爆発に巻き込まれた秀次が空中で踊る姿を──。

 

「シュ、シュージ!」

 

「っ……!イッセー先輩、待ってください!」

 

受け身も取れずに地面に落下した秀次。制服はボロボロになり、全身から煙が上がっていた。

焦った一誠は倒れた彼に駆け寄ろうとするが、険しい表情の小猫がそれを制止する。彼女の鋭く細められた目は空に向けられている。

 

撃破(テイク)

 

甘ったるい女性の声が聞こえ、一誠が小猫と同じように見上げると、魔術師の格好をした女性が悪魔の翼を生やして空に浮かんでいた。

ライザーの『女王』──ユーベルーナ。最強の下僕の登場に一誠は激しく動揺する。

 

「ふふふ。獲物を狩るとき、獲物が何かをやり遂げた瞬間が一番隙だらけとなっていて、狩りやすい。こちらは多少の駒を『犠牲(サクリファイス)』にしてもあなたたちをひとつ狩れば十分。ただでさえメンバー不足なのですもの。それだけで大打撃でしょう?どうせ私たちを倒してもライザーさまは倒せないんですもの。あがいても無駄よ」

 

彼女の言う通り、一誠たちは作戦を無事に成功させたことで油断してしまった。敵のいるただ中で会話に意識を割いてしまったのだから。

 

「ちくしょう!降りてこい!俺が相手だ!シュージの、弟の仇を取ってやる!」

 

「ふふふ、うるさい『兵士(ポーン)』のボウヤね。そう、あれはあなたの弟だったわね。だったらあなたも弟のように爆発してみる?」

 

激昂する一誠を嘲笑うユーベルーナの手元に魔力の輝きが集まる。

彼女が得意とする魔力を用いた爆破。その猛威が振るわれようとした──そのとき。

 

「血は──炎」

 

「ッ!まさか!」

 

ユーベルーナに向かって複数の炎の塊が飛来し、彼女は面食らいながらも身を翻すように避ける。

炎が飛んできた方向に目を向ければ、秀次が手に炎を発生させながら立ち上がっていた。

 

「ちっ、当たっておけよ」

 

「シュージ!?無事だったのかよ!」

 

一誠は驚きながらも駆け寄り、弟の無事を素直に喜んでいたが、声をかけられた秀次は渋い顔でボロボロになった上着を脱ぎ捨てる。

 

「無事じゃねえし。制服だってこのありさまだ。ったく……ゲームが終わったら弁償してもらえるんだろうか」

 

「……気にするところはそこじゃないと思いますけど。ケガのほうは大丈夫ですか?」

 

「体は動くし、このくらい問題ない。それよりもむかっ腹が立ってしょうがねえよ。作戦がうまくいったからって油断した自分のバカさ加減に腹が立つ……!」

 

心配する小猫に答えながら、秀次は本心から苛立ちをあらわにしていた。

体に受けた傷は確かに深くはない。だが、浅いわけでもなかった。

爆破による火傷に擦り傷。全身に黒ずみを残しながら彼は宙に浮かぶユーベルーナを睨む。

 

「……『戦車』ということも込みで爆破したのだけれど。神器(セイクリッド・ギア)の影響で炎や熱に耐性でも持っているのかしら。ライザーさまへ無礼な態度を取ったあなたをまず初めに落としたかったのに」

 

「皆さん、祐斗くんのもとへ向かいなさい。ここは私が引き受けますわ」

 

ユーベルーナから三人を守るように入る朱乃。

彼女の言葉を聞いた一誠と秀次は迷う。

朱乃はこちら側にとって最強の下僕。だが、それは相手も同じこと。

もしも朱乃が倒されるようなことがあったらと不安を抱く二人に声をかけたのは小猫だった。

 

「……朱乃先輩は強いです。私たちのなかで誰よりも」

 

合宿で見せられた朱乃の力。対策を立てるために何度も見た相手の『女王』の実力。

正直なところ、彼女たちが全力で戦った場合、どちらに勝利の天秤が傾くのかその場にいる全員がわかっていない。

ゆえに、秀次が信じたのは小猫の言葉だった。

まだ知り合って間もない自分たちの不安よりも、仲間として長く苦楽を共にしてきたであろう小猫の朱乃への信頼を彼は信じた。

 

「……わかった。副部長にここは任せる。俺たちは作戦の遂行を優先するぞ」

 

「で、でも!」

 

「俺たちが残っても副部長の邪魔になるだけだ。それに、さっきの攻撃で俺もそれなりにダメージを負った。だから手伝ってくれ、一誠」

 

「──ッ、朱乃さん!頼みます!」

 

目を真っ直ぐ見つめて想いを伝えてくる弟に一誠も言い返すための言葉が見つからず、迷いを振り切るように運動場に向かって走り出した。

秀次と小猫も一誠のあとを追うように走る。

 

「そう簡単に合流させると思って?今度こそ、全員まとめて吹き飛びなさいな」

 

「っ──シュージくん!」

 

「血は炎ッ!」

 

走る彼らの背に伸ばされたユーベルーナの手。

朱乃の叫びに近い呼び声に反応して、秀次は自分たちの背後一帯を炎で吹き飛ばした。

揺らめく炎。爆破によって舞い散る粉塵。それらが勢いを弱めていったときにはすでに、彼ら三人の姿は消えていた。

 


 


 

それは一誠、秀次、小猫の三名が運動場へ移動中のことだった。

 

『ライザー・フェニックスさまの「兵士(ポーン)」三名、リタイヤ』

 

校内アナウンスによって伝えられた戦果。

一誠たちは移動中、朱乃は相手の『女王』と戦闘を繰り広げており、リアスとアーシアは本陣で待機しているとなれば必然的に相手の『兵士』三名を倒したのは一人だけだ。

走る三名が林を抜けて運動場に出る寸前、一誠の手を何者かが掴んだ。

 

「なんだ、おまえか」

 

身構える一誠の手を掴んでいたのは敵『兵士』を倒したばかりの祐斗。

優雅に微笑む彼にぶっきらぼうな反応をしつつ、一誠も仲間の無事に内心では安堵していた。

 

「祐斗、よかった。無事だったんだな。それに『兵士』三名を一人で倒すだなんて……最高だ」

 

「……さすがです」

 

「うん。三人と合流できて僕も安心したよ」

 

称賛と共に微笑みを送ってくる秀次と小猫に祐斗も笑みを返していた。

しかし、制服を脱いで全身に傷を受けている秀次を見ると、祐斗は痛ましそうに目を細める。

 

「シュージくん、その傷は……」

 

「……相手の『女王』にやられてな。情けない話だが、油断した隙を突かれた。だけど戦闘は続行できる。これ以上、足を引っ張るつもりはない」

 

「足を引っ張るって……わかった。無茶はしないで欲しいけど、シュージくんは言っても聞かなさそうだしね」

 

苦笑する祐斗に一誠と小猫は無言でうなづき、秀次は訝しげに首を傾げた。

一誠たちが訪れるまで、祐斗は体育用具を入れる小屋の物陰から運動場の様子を窺っていた。

合流した彼らは現在までに知り得た状況を事細かに伝え合う。

 

「朱乃さんは相手の『女王』と戦ってる。そっちは『兵士』をやったんだよな?」

 

「まあね。運動場の部室棟は重要なポイント。敵が多くなるのは当たり前。なんとか、見回りの『兵士』だけを集めて一網打尽にしたんだけど、ここを任せられているボスが冷静でね、まだ挑発に乗ってこないんだ。というよりも『兵士』を使って僕の攻撃を見ていたのかな」

 

「相手は犠牲前提の策を好むらしい。長期戦になることを初めから想定していないんだろうな。味方を故意に減らしてでも、こんなゲームはさっさと終わらせたいって意図が見え透いてる」

 

「……そもそも私たちは数からして不利です。相手もまさか負けるとは思っていないのかと」

 

総論として、やはりライザー側はグレモリー側を完全に舐めている。負けることはまずないと考えているうえに、短期の決着を望んでいるようだ。

 

「運動場の敵兵力はどんなもんだ?」

 

「ここを仕切っているのは『騎士(ナイト)』、『戦車(ルーク)』、『僧侶(ビショップ)』が一名ずつ。合計三名だよ」

 

「……すげえ厳重じゃないか」

 

相手陣地への目ぼしい侵入ルートのうち一つが潰されたことで、ライザー側も運動場の守備に力を注いでいる。おそらく体育館以上の激戦になることだろう。

先ほどの『女王』の不意打ちもあって一誠は不安を感じるが、そんな彼の様子に気づいた祐斗がにこやかに問いかける。

 

「緊張しているのかい?」

 

「あ、当たり前だ!こちとら戦闘経験なんて無いに等しいんだぞ。それでいきなり本番だ。戦闘経験豊富そうなおまえに比べたら俺は雑魚もいいところさ」

 

図星を突かれた一誠が赤面して言葉を並べ立てると、祐斗は自分の手を見せる。

 

「イッセーくんは僕を戦闘経験豊富だと言ってくれる。確かにそれは本当だ。でも、レーティングゲームに参加するのは初めて。悪魔同士の本気の戦い。今回が特別だとしても、本気だということは変わらない。いずれ、僕たちは否応無しに悪魔同士の競技に参加していく。これがそのファーストゲーム。油断も隙も見せられない。これは部長の眷属悪魔としてのすべてをぶつけ合う勝負なんだよ。今後のすべてにも繋がる大事なものだ。僕は歓喜と共に恐怖も感じてる。僕はこの手の震えを忘れたくない。この緊張も、この張り詰めた空気も、すべて感じとって自分の糧にする。お互いに強くなろう、イッセーくん」

 

祐斗の考えを聞いた一誠は目を見開いて言葉を失っていた。同時に過度な緊張感が抜けていき、気合いと活力がみなぎってくる。

 

「二人とも、やる気が凄まじいな」

 

「シュージは普段と変わんねえよなあ。爆発で吹き飛ばされたってのに」

 

他人事のように話す秀次に一誠は横目を送る。

『女王』の不意打ちを受けて自らに対する怒りをあらわにしていたときとは打って変わって、どこか淡泊な反応をする弟。

祐斗でさえもあれほどの熱意を見せてくれたのだから、もう少し前のめりになってくれてもいいのにと一誠は思う。

 

「それじゃ、そろそろ勝負を仕掛けに──なんだありゃ?」

 

物陰から運動場の様子を窺っていた秀次だが、何かを視界に映した途端、訝しげな声を発する。

彼が目の当たりにしたのは甲冑を装備した女性。

 

「私はライザーさまに仕える『騎士(ナイト)』カーラマイン!こそこそと腹の探り合いをするのももう飽きた!リアス・グレモリーの『騎士』よ、いざ尋常に剣を交えようではないか!」

 

ライザーの『騎士』カーラマイン。

そう名乗った彼女は野球部のグラウンドの中心に一人堂々と姿を現し、手にした西洋剣を地面に突き立てて敵の登場を待っている。

無防備とも豪胆とも取れる彼女の言動に秀次も一誠も小猫も面食らった。陰から狙い撃ちにされても文句は言えない行動だからだ。

だが、勝負を申し込まれた祐斗だけは戦意をにじませた笑いをこぼす。

 

「名乗られてしまったら、『騎士』として、剣士として、隠れているわけにもいかないか」

 

祐斗は用具小屋の物陰から出ていき、そのまま真正面からグラウンドに歩いていってしまう。

意気揚々と真っ向勝負を申し込んだカーラマインとそれを素直に受け入れた祐斗。

正直、秀次としては不意打ちでもしてさっさと倒してしまいたい気持ちもある。いまは少しでも敵の数を減らしておきたい場面だ。

だが、二人の決闘を邪魔するつもりはなく、むしろ清々しい好感のようなものすら抱いていた。

 

「あのバカ」

 

「そう言いつつ、本心ではカッコイイとか思ってるだろ」

 

「う、うるせえ!」

 

「……私たちも行きましょう」

 

小猫の言葉に同意して一誠と秀次も用具小屋の物陰から出ていく。

グラウンドに姿を現した五名は真っ向から顔を向かい合わせた。

 

「僕はリアス・グレモリーの眷属、『騎士(ナイト)』木場祐斗」

 

「俺は『兵士(ポーン)』の兵藤一誠だ!」

 

「……リアス・グレモリーさまの下僕、『戦車(ルーク)』の塔城小猫」

 

「同じく、『戦車(ルーク)』の兵藤秀次」

 

「リアス・グレモリーの眷属悪魔におまえたちのような戦士がいたことをうれしく思うぞ。堂々と真正面から出てくるなど、正気の沙汰ではないからな」

 

グレモリー眷属たちの名乗りを聞いて、カーラマインの瞳に熱が入る。正気の沙汰ではないと口では言いつつ、正面から出てきた相手たちに思わずうれしさが込み上げてくる。

両陣営の『騎士』が望むのは一対一の斬り合い。カーラマインと祐斗が互いに剣を抜く。

 

「『騎士(ナイト)』同士の戦い───待ち望んでいたよ。個人的には尋常じゃない斬り合いを演じたいものだね」

 

「よくぞ言った!リアス・グレモリーの『騎士』よッ!」

 

戦意を爆発させたカーラマインが斬りかかる。

相対する祐斗も剣で受け止め、金属と金属がぶつかり合う音が辺りに響く。つばぜり合う両者の剣から火花が散った。直後には二人の姿が消え、高速での斬り合いが始まった。

『騎士』同士の戦いということで、目では追えない速さで斬り合っている。つばぜり合った直後には無数の斬撃が飛び交い、フォローに回るような無粋も許されないほどの神速の剣戟。

残された一誠と秀次と小猫はただ傍観するしかないかと思われたが……。

 

「……敵、二人です」

 

「ふむ、バレていたか」

 

いち早く敵の接近に気づいた小猫が警戒を促し、続いて聞こえた声の主を一誠と秀次は見る。

顔の半分を奇妙な仮面で覆った女性。ライザーの『戦車』イザベラ。

さらに彼女のすぐ横にもう一人が姿を現す。

 

「まったく、頭のなかまで剣剣剣で塗りつぶされた者同士、泥臭くてたまりませんわ。カーラマインったら、『兵士(ポーン)』を『犠牲』にするときも渋い顔をしていましたし、主である『(キング)』の戦略がお嫌いなのかしら?しかも、せっかくかわいい子を見つけたと思ったら、そちらも剣バカだなんてついてませんわね」

 

西洋風のドレスに身を包んだ少女。

金色の髪に青い瞳。頭の両側をドリルのような縦ロールにした特徴的な髪型。かわいらしい顔立ちをしているが、ぶつくさと文句を言う姿から典型的なお嬢さまのような雰囲気が強い。

一誠と秀次を値踏みするような目で見ると、少女は理解できないといった口ぶりで言う。

 

「そちらがリアス・グレモリーさまの『兵士』でもう一人が『戦車』よね。正直なところ、あの方の殿方の趣味は理解できませんわ。『兵士』は標準的な顔立ちだし、『戦車』はそれなりに見た目は整っているけれど、目つきが悪すぎます」

 

「な、何この子……かわいい顔してるけど毒舌キャラかよ!」

 

「似たようなのがうちにもいんだろ。それよりもいまは戦闘に集中だ」

 

「……いまは聞き流しますが、ゲームが終わったら覚悟しておいてください」

 

似たようなのがうちにもいるという発言に小猫が半眼で睨むと、秀次はしまったと口を押さえた。

 

目の前の少女はライザーの『僧侶』だ。

他にも重要な情報を秀次から伝えられていたような気がするが、一誠が覚えていたのはそれくらいであった。相手は二名でこちらは三名。

数では有利だと一誠たちは戦闘の構えを取るが、『僧侶』の少女はやる気なさげに嘆息する。

 

「私、あなた方のお相手はしませんわよ」

 

「は?どういうことだ?」

 

「そのままの意味ですわ。泥臭い殴り合いなんて好みではありませんの」

 

「……戦闘の意志がない?でも敵である以上は倒しに行く」

 

「やれやれ……私を倒すなんてあなたたちでは最初から無理ですのよ。だって──」

 

「不死身だもんな、あんたも」

 

戦闘に興味を示さない少女であったが、言葉の続きを奪った相手に目を向ける。

 

「不死身って……」

 

「あいつの名前はレイヴェル・フェニックス。相手側の『(キング)』ライザー・フェニックスの実の妹。つまり、あれも不死鳥の家系ってことだ」

 

秀次はただでさえ切れ長でつり上がっている目をさらに鋭くさせ、緊張感を強くさせる。

彼が今回のゲームで警戒していた者たち。そのなかで『王』のライザー、『女王』に次いで厄介な存在と認識していた相手──

 

もう一人の不死鳥と相対したことで、秀次の内心に確かな焦りが生じ始めていた。




神器のおかげで熱や炎に耐性がある主人公。
勝てるかは別としても、実はライザー眷属との相性は悪くないんですよね。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。