ハイスクールD×D 終焉に抗う暁の太陽   作:ドラゴン大好きT

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まーた投稿遅れちゃったよ。楽しみにしてくれている読者さまには申し訳ないかぎりです……。


第19話 最初の犠牲者

 

 

明かされた少女の素性──それを聞いた一誠はポカンとした顔で呆気に取られる。

そして、驚きを表すように口を大きく開けると、レイヴェルを指差しながら叫んだ。

 

「え、ええええええええええッ!!この美少女ちゃんが、焼き鳥野郎の妹ぉぉぉぉぉ!?」

 

「そうだよ!てか、ゲームが始まる前にもちゃんと説明してただろ!?」

 

一誠の叫び声に秀次は耳を押さえながらも、レイヴェルたちから視線を外そうとはしない。

 

「でもなんで妹がライザーの眷属悪魔になってるんだよ?」

 

その疑問については秀次も気になっていた。

不死鳥対策を立てているときから彼女の存在は知っていたが、なぜ実の妹を眷属に引き入れているのかまでは知り得なかった。

すると、一誠の問いにイザベラが答える。

 

「ライザーさま曰く、『妹をハーレムに入れることは世間的にも意義がある。ほら、近親相姦っての?憧れたり羨ましがる者は多いじゃん?まあ、俺は妹萌えじゃないからカタチとしての眷属悪魔ってことで』だそうだ」

 

イザベラが話した内容に兄弟はそれぞれ両極端な反応を示す。

 

「──うわぁ」

 

「あの鳥は本当の変態でバカだったのか!でも、妹をハーレムに入れたいってのは十分に理解できるぜ!」

 

秀次は心の底から呆れたように顔をしかめ、一誠は罵倒しながらも理解を示した。

普段から意見の食い違いが目立つ二人ではあるのだが、それは今回もであった。

 

「おまえは……言っちゃ悪いけどさ、ライザーと同レベルだぞ。一誠は思考が下半身に行き過ぎなんだよ」

 

「なんだと!?俺をあの焼き鳥野郎と一緒にするんじゃねえ!シュージだって、妹が欲しいって思ったことくらいはあるだろ!」

 

「俺はいまの家族だけで十分だ。にしても……」

 

噛みつく一誠をほおっておき、秀次はレイヴェルに視線を向ける。

普段はキツく鋭い目つきの秀次が、眉根を下げて哀れむような目で彼女を見ていた。

 

「前々から悪魔の倫理観について理解できないものをいくつか感じてはいたが、今回のはそれの筆頭かもな。あいつもかわいそうに……」

 

「かわいそう?なんで?」

 

「だって、近親相姦に憧れている奴に対する自慢で眷属に引き込まれたんだろ?──そういう趣味を持たない普通のヒトからの印象は最悪だと思うけどな。妹ってことは今後いつか家を離れる可能性だってあるだろうに。その先で『あいつ、兄に手を出されてたんだぜ』なんて噂も立つかもしれないのにな」

 

「……そこまでひねくれた考え方をするのはおまえくらいなもんだろうけどな」

 

秀次の意見に引いた目線を送る一誠。だが実際、そういう意見を持つ者だっているのだろう。

さしもの一誠とて、可愛い妹がいたらと思うことはあれど、肉体関係にまで及ぶとなると話は変わってくる。

交際も含めてそういった行為は愛し合う男女だからこそ許されるものだと彼は信じている。

 

「あなたたち……」

 

そのときだ。一誠と秀次の会話を黙って聞いていたレイヴェルが震えた声を発する。

こめかみに青筋を立て、ロールの髪が怪しくざわめくその姿。

にじみ出る怒りのオーラを感じ取り、一誠たちはわずかにたじろいだ。

 

「黙って聞いておけば好き放題に言ってくれましたわね!私だってあんな理由で眷属にされたことについては思うところがありました。けれども!ここまでの侮辱を受けたのは初めてですわ!」

 

「おい、どうすんだよ。おまえの発言であの子、めちゃくちゃ怒っちゃったじゃねえか!」

 

「思うところがあったなら、眷属にならなければよかったじゃん……」

 

憤慨するレイヴェル。秀次の淡泊な反応がさらに神経を逆撫でする。

激情冷めやらぬといった様子の彼女が指をパチンと鳴らすと、複数の女性が姿を現した。

 

「……これは」

 

「まさか、相手の眷属全員揃い踏みかよ!?」

 

新たに現れた敵側の増援。小猫も目を鋭くさせて警戒し、一誠は焦りを隠せずにいる。

祐斗から事前に聞いた話では、運動場を仕切っているのは『僧侶』、『騎士』、『戦車』が一名ずつのはずだったが……。

 

「ユーベルーナが奇襲をかけたというのに、撃破のアナウンスが入らなかった。ならば生き残った敵は合流して攻めてくる。当然ですわね。だからこそ読みやすい。ならばこちらも戦力を集結させて迎え撃たせてもらいますわ」

 

「集結させて迎え撃つだと……?」

 

レイヴェルの言葉に訝しげな秀次は辺りを警戒するように見回す。

先ほど一誠は相手の眷属が全員揃ったと口にしていたが、目の前にいるメンバーだけでは敵の数が合わない。『騎士』があと一人足りない。

 

では、残る『騎士』はどこにいるのか──。

 

「っ──上か!」

 

思案する秀次の足元。──自分の影を覆い隠すようにさらに大きな影が伸びてきた。姿を現さなかった敵の居場所を把握し、秀次はその場からすぐさま飛び退く。

刹那、触れるくらいの距離を大剣が通り過ぎる。

振り下ろされた剣は地面を斬り裂き、発生した風圧が秀次の体を叩いた。

地響きと共に土ぼこりが舞い散り、目にゴミが入らないように顔をガードする秀次であったが、そんな彼の腹部に向かって蹴りが飛ぶ。

 

「ちっ!」

 

「シュージ!」

 

「っ……問題ない!」

 

蹴りをまともに食らった秀次は地面を転がって衝撃を受け流し、すぐに立ち上がってみせた。

彼の鋭く細められた目が、レイヴェルのすぐ側に控える『騎士』シーリスに向けられる。

 

「手負いにしては反応がいい。お嬢さま、どのような手はずで?」

 

「そうねぇ……。イザベラ、あなたはブーステッド・ギアの『兵士』を。ニィとリィ、美南風とシーリスは『戦車』の二人を相手にしなさい」

 

レイヴェルの指示を受けて、それぞれ相手の前に立ち塞がるライザー眷属たち。

対する一誠たちは数の差による不利を感じ取り、緊張感が背筋を伝う。

 

「さすがにこの状況がかなりマズいってことはわかるようになってきた……」

 

「気張れよ、一誠。ここが正念場だ。塔城もサポート頼んだ」

 

「……わかっています」

 

一誠は左腕にブーステッド・ギアを装着し、秀次は紫水晶の角を出現させ、小猫は拳を構える。

両陣営が戦闘の構えを取った直後のこと。まず初めに動いたのはイザベラだ。

 

「では、いくぞ!リアス・グレモリーの『兵士(ポーン)』よ!」

 

「こ、こい!」

 

真っ直ぐ一直線に向かってくるイザベラ。

小さく引かれた拳が突き出されると想定し、一誠が躱そうと意識していたとき。

 

「む!?」

 

紅蓮の炎が吹き荒れ、イザベラを飲み込もうと襲いかかる。

炎を放ったのは秀次。両手に炎を発生させている彼を睨みつけてイザベラは憤慨する。

 

「貴様、私たちの勝負に水を指すつもりか!」

 

両腕に炎をまとわせて、言葉を返すこともなくイザベラへと向かっていく秀次。

だが、そんな彼の眼前に獣耳の少女二人が立ち塞がる。逆に動きを抑えられる側になってしまった秀次は炎をまとった腕で防御の構えを取った。

 

「彼女たちは獣人の女戦士。体術は、それはそれは大したものですのよ?」

 

レイヴェルの自慢げな言葉の通り、ニィとリィは素早い動きで秀次の間合いに侵入する。

 

「にゃ」

 

「にゃにゃ」

 

拳を前に構えていた秀次はジャブを放って迎撃するが、ニィは体勢を低くして避けて空いた脇腹に鋭い拳の一撃を刺す。同時にリィもローキックを放ち、秀次の顔が痛みに歪んだ。

 

(速いな、こいつら)

 

一方が上半身を叩き、もう一方が脚を狙う。

徹底したコンビネーションと獣じみたしなやかな動きに秀次も翻弄されていた。

フォローに入ろうとしていた秀次が『兵士』たちと戦い始めたことで、邪魔者がいなくなったイザベラは一誠との戦いを再開する。

 

「とりあえず、これは避けられるか!」

 

「うおっと!」

 

イザベラの拳打を顔の動きだけで避ける一誠。

祐斗や小猫、秀次とのスパーリング、リアスから教えられた回避術が役立った。そのまま乱打戦にもつれ込む二人。

経験の差もあってイザベラが優勢だが、一誠も負けじと食らいつく。

仲間たちと過ごした十日間の修行で彼は確実に成長していた。

 

「ゆくぞ、グレモリー眷属の『戦車』」

 

「……負けません」

 

拳を構える小猫にシーリスが斬りかかる。彼女が振るう身幅の広い剣はたとえ『戦車』であっても真正面から受ければ大ダメージになりうる。

ゆえに小猫は迎撃ではなく回避を選ぶ。

体を横にして斬撃を避けると、力を込めた渾身の拳を腹部に向かって叩き込もうと──。

 

「させるか!」

 

「ッ……!」

 

シーリスは足を跳ね上げ、砂塵を撒き散らすことで小猫の攻撃を防ぐ。

 

「彼女はカーラマインとは違って、騎士道うんぬんにはこだわりませんわ。相手を必ず倒す。それだけです」

 

砂による目潰しを嫌って、小猫は一度下がった。やりづらい相手だと認識し、苦戦を強いられている仲間たちのためにも早く倒さなければと、表情の変わらない小猫の内心に焦りがよぎる。

 

一方で、祐斗とカーラマインの斬り合いにも変化があった。祐斗の光を食らう魔剣がカーラマインの炎剣に砕かれてしまった。

 

「残念だが、私に貴様の神器(セイクリッド・ギア)は通用しない」

 

「──では、僕もこう返そうかな。残念だね。

僕の神器(セイクリッド・ギア)はこれですべてではないんだ」

 

祐斗の不敵な言葉にカーラマインは訝しむが、直後には彼の真意を目の当たりにした。

砕かれた闇の刀身の代わりに、氷の刃が新しく柄から生えたのである。

新しく生み出された祐斗の得物にその場にいる多くの者が驚きを隠せずにいる。

祐斗と相対するカーラマインもその一人だった。動揺した彼女は横薙ぎに炎剣を振るうが、祐斗の氷剣に受け止められると凍りついて砕ける。

得物を失ってなお、彼女は攻撃の手を止めずに腰に携えていた短剣を抜き放つ。

 

「我ら誇り高きフェニックス眷属は炎と風の命を司る!受けよ!炎の旋風を!」

 

巻き起こる炎の渦によって氷の刃は溶かされる。しかし、それでも祐斗の顔色は曇らない。

刀身が失われた剣を突き出すと、また新しい刃が出現する。円形の特殊な刃の中心には黒い球体が渦巻いており、カーラマインが生み出した炎の竜巻が吸い込まれて消えていった。

祐斗は複数の神器を所有しているわけではなく、多種多様な魔剣を創り出すことができる神器を所有していた。その名も──

 

「『魔剣創造(ソード・バース)』。僕は任意に魔剣を創り出せる。それが、僕が持っている神器(セイクリッド・ギア)の本当の能力であり名称だ」

 

祐斗が地面に手のひらを向ければ、グラウンドから複数の魔剣が一斉に飛び出した。

カーラマインはなんとか短剣で攻撃を防ぐも、明らかに劣勢に追い込まれている。

そのときだ。戦線には参加せず、傍観していたレイヴェルが鶴の一声を発する。

 

「シーリス!あちらの『騎士』さんが予想以上の力を発揮しましたわ。──あとはわかるわね?」

 

「御意」

 

レイヴェルの指示を受けたシーリスは小猫との戦闘を放棄してその場から駆け出す。

向かう先は祐斗とカーラマイン。一騎打ちの最中であったがそれも終わりということだろう。二人がかりで祐斗を討ち倒すつもりだ。

 

「……させません」

 

当然、小猫もシーリスを追って走り出す。

足の速さで『戦車』は『騎士』には敵わないが、見過ごしては祐斗が倒されるかもしれない。

しかし、相手の目的は祐斗ではなかった。

 

「……え?」

 

突如として体が重くなった小猫は戸惑いの声を発する。次第に重さを感じるだけでなく、体がぴくりとも動かなくなった。

まだ戦闘で大きなダメージを負っていない小猫からすれば理解不能の現象。

彼女の動きを停めたのはレイヴェルと同じくこれまで戦闘に参加していなかった『僧侶』。両手を小猫に向けて呪文を唱えている。

 

「彼女はお兄さまの正式な『僧侶(ビショップ)』。美南風は相手の動きを停めたり、邪魔したりする術が得意ですのよ」

 

小猫はしまったと顔を強張らせる。

なぜなら、祐斗に向かって走っていったシーリスが踵を返すように走って戻ってきたからだ。

 

「終わりだ。グレモリーの『戦車(ルーク)』!」

 

祐斗を狙うように見せかけて、深追いする自分を倒す算段だと小猫も気づく。

しかし、遅すぎた。シーリスはすでに大剣を振り上げて飛びかかってきている。さらに美南風によって動きを封じられ、防御も回避もできない。

 

「小猫ちゃん!」

 

「よそ見をするな!」

 

状況に気づいた一誠が慌てて呼びかけるが、イザベラの拳が彼の横っ面を殴りつける。

リタイヤがほとんど確定してしまった状況で小猫は悔しげな顔になって、まもなく訪れるだろう痛みに備えるしかなかった。

 

「……わりぃな」

 

「にゃ?──ちょ、何するつもり!?」

 

そのときだった。ニィとリィのコンビネーションによって防戦一方に回っていた秀次。

リィがローキックを放った直後、秀次は彼女の足を受け止める。足首を両手で掴むと『戦車』の腕力に物を言わせて、彼女を乱暴にぶん投げた。

風にさらわれた木の枝のようにくるくると宙を回って飛んでいくリィ。

 

「にゃ〜!?」

 

「馬鹿者!邪魔だ!」

 

彼女が投げられた先には、小猫を斬り伏せようと大剣を振り上げているシーリスがいた。

仲間ごと斬って捨てるわけにはいかず、シーリスは剣を横にして盾のように構え、リィも獣のような反射神経で大剣の腹に着地する。

そのままリィを投げ返そうとシーリスは腕に力を込める。リィも足に力を込めて飛び出そうとした刹那──彼女たちは見た。

自分たちに向けて口を大きく開け、喉奥に紅蓮の炎を溜め込む秀次の姿を。

まもなく吐き出された炎は彼女たちを包み込み、その意識と体を燃やし尽くす。

 

『ライザー・フェニックスさまの「兵士(ポーン)」一名、「騎士(ナイト)」一名、リタイヤ』

 

グレイフィアのアナウンスがフィールド中に響き渡ると、秀次は息を荒らしてうつむく。

二人を焼き払ったところまではよかったが、自分で吐き出した炎に焼かれたのか喉を押さえ、苦しそうに咳き込んでいた。

 

「ッ……よくもリィとシーリスを!許さないにゃあっ!」

 

怒りに目と牙を剥くニィ。相方を利用して仲間を倒されたとなれば黙ってはおけない。

体勢を低くして駆け出し、秀次の顎を撃ち抜こうと拳を下から突き上げる。

だが、秀次はボクシングのスウェーのような動きでニィのアッパーを避け、続く拳による連打も体捌きだけで躱してしまう。

 

(悪魔になってから感じていた違和感。鈍っていた勘を取り戻したのか?)

 

悪魔になると身体能力が飛躍的に向上する。

しかし、いきなり引き上げられた力に秀次は微妙な差異を感じていた。日常生活に支障をきたすほどではなかったが、こと戦闘においては体の動かし方にも影響があるように感じられた。

人間だった頃と比べて力が増した現在。悪魔になって得た強さがようやくなじんだ。気のせいかもしれないが、不思議とそんな気がしていた。

回避に努めていた秀次が攻勢に出る。怒りで単調な攻撃を繰り出していたリィの首を掴んだ。

 

「離せ、にゃぁ……っ!」

 

体ごと持ち上げられたリィは首を掴んでいる秀次の右腕に爪を突き立てて抵抗する。じたばたともがきながら何度も腹を蹴っていた。

しかし、そこは『戦車』の防御力。秀次は怯みもせずにそのままリィを地面に叩きつけた。

後頭部から地面に激しく打ち付けられたリィは白目を剥いて体を痙攣させた直後、光りに包まれてフィールドから消えていく。

 

「なっ!?一人でリィたちとシーリスを倒すだなんて!」

 

敵の予想外の強さに驚愕するレイヴェル。

秀次は両足から炎を噴き出すと、小さく爆発を起こしてその場から飛び出した。

 

「血は炎──発破!」

 

狙いは小猫の動きを封じている美南風。

彼女の顔に向かって飛び蹴りを食らわせようと足を蹴り出すが──、

 

「ありゃ!?」

 

「ひうっ!?」

 

慣れない空中機動に体が思うように動かず、空中で独楽のように秀次は回転する。美南風のかわいらしい悲鳴が風切り音と共に聞こえてきた。

体の内側で五臓六腑が激しく揺らされ、目も回った最悪の気分で秀次は地面に着地。

──もとい、受け身も取れずに落下した。

 

「……慣れないことはするもんじゃねえな……。

世界が回ってやがる……きもちわるぅ……」

 

「なにやってんだ、あいつ……」

 

ふらふらとした足取りで立ち上がる秀次。

揺れる視界を元に戻そうと頭を押さえていると、彼のすぐそばに近づく人影が一つ。

 

「……助かりました。シュージ先輩、ありがとうございます」

 

強襲を受けた『僧侶』が怯んだことで術が解け、小猫は動けるようになった。

助けられた感謝を伝えながら小猫は驚いていた。十日間の修行があったとはいえ、まさか三名の敵を一人で倒してしまうなんて。

同時に敵の罠にあっさりと引っかかった自分への苛立ちや、迷惑をかけてしまったことへの申し訳なさを感じていると、レイヴェルたちから視線を外すことなく秀次は言葉を返す。

 

「気にすんな。助けられたから助けただけだし。それよりも目の前の相手をどう倒すかだ」

 

「……はい」

 

「シュージが三人も倒したんだ。俺もがんばらねえとな!」

 

弟の奮闘に焚きつけられた一誠。籠手に覆われた左腕を掲げて力を解き放つ。

 

「ブーステッド・ギア!爆発しろっ!」

 

『Explosion!!』

 

「ッ──!キミから感じる重圧がさらに増した。いまのキミは我々にとって十分脅威だ。ゆえにここで確実に倒させてもらう!」

 

倍化した力によって一誠の身体能力が爆発的に上昇する。

彼の変化を感じ取ったイザベラも本気になって拳と蹴りのラッシュを繰り出すが、一誠はガードを固めてやり過ごすとカウンターの左拳を放った。

彼の重い一撃がイザベラのガードを崩し、激しく後退させる。

そして、イザベラの体に触れたということはあの技の発動条件が揃ったことを意味していた。

 

「弾けろ!『洋服破壊(ドレス・ブレイク)』!」

 

「なっ!なんだ、これは!」

 

服を弾き飛ばされて裸になったイザベラは咄嗟に体を抱きしめて肌を隠そうとするが、間髪入れずに一誠は魔力の塊を撃ち出す。

 

「いっけぇぇぇぇ!ドラゴンショットっ!」

 

「くっ!いやぁぁぁぁああ!」

 

赤い閃光がイザベラを包み込む。一誠が放った魔力の塊──ドラゴンショットは地面を抉り、前方に広がるテニスコートを消し飛ばしていた。

当然、そんな攻撃にのみ込まれたイザベラが無事で済むはずもなく、彼女の体は光となってフィールドから消えていった。

 

『ライザー・フェニックスさまの「戦車(ルーク)」一名、リタイヤ』

 

「よっしゃぁぁぁぁぁぁっ!」

 

相手を倒したことで歓喜の叫びを上げる一誠。

『兵士』が『戦車』を倒したのだから大金星といってもいいはず……なのだが。

 

「女性の服を弾き飛ばすだなんて……最低な攻撃ですわ!」

 

「酷い技だな。いや、恐ろしい技と言うべきか」

 

「破廉恥よぉ!」

 

一誠の『洋服破壊』を見たライザー眷属の女性陣は自分の身の危険を案じる。同時にその技を繰り出した相手への非難も忘れない。

 

「いやー、面目ないね。僕も今日のいままで知らなくて……うちのイッセーくんがスケベでゴメンなさい」

 

「技っていうか、業?うちの野犬が申し訳ありませんでした……」

 

「……サイッテーです」

 

「木場ぁ!シュージぃ!なぜにおまえたちが謝るんだよ!?複雑な気分になるだろうが!あと小猫ちゃんはそのマジで引くわーみたいな目で俺のことを見ないで!」

 

苦笑して頭を下げる祐斗と心の底からの謝罪を示すように腰を曲げる秀次。

小猫は極寒の視線を向けていて、さらに距離を置かれた一誠は涙目になっていた。

 

「しかし、数奇なものだ。私は魔剣といい、特殊な剣を使う剣士と戦い合う運命なのかもな」

 

戦闘中とは思えない独特な空気が漂うなか、カーラマインがふいにそんなことを口にした。

相対する祐斗は爽やかな笑顔のまま、どこか興味深そうな様子で訊く。

 

「僕以外の魔剣使いでもいたのかな?それともまさか──」

 

「魔剣ではない。──聖剣だ」

 

「……その話、詳しく訊かせてもらおうか」

 

カーラマインの一言を聞いた瞬間、祐斗の様子が一変してしまった。

普段の爽やかな笑顔は見る影もなく、息を呑んでしまいそうになるほどに冷たい表情。尋常ではない殺気と敵意を放ち始めた相手にカーラマインも剣を握る手に力を入れ直した。

 

「ほう、どうやらあの剣士は貴様と縁があるのか。だが、剣士同士、言葉で応じるのも無粋。剣にて応えよう!」

 

「……そうかい。……口が動ければ、瀕死でも問題ないか」

 

殺気が込められた瞳でカーラマインを睨む祐斗。明らかに普通ではない彼の様子に一誠は動揺し、秀次は訝しげな顔で現状を見定めようとする。

唯一、彼の事情を知る小猫でさえも口を出すことができない。それほどまでに緊迫した状況。

──だが、彼らのもとに空気を一変させるような情報がまた一つ届けられる。

 

『リアス・グレモリーさまの「女王(クイーン)」一名、リタイヤ』

 

「なっ……!嘘だろ!?」

 

「ッ!?」

 

「ッ──朱乃先輩」

 

「まさか……」

 

フィールド中に響くグレイフィアのアナウンス。一誠も祐斗も小猫でさえも自身の耳を疑った。

朱乃はグレモリー眷属最強の下僕であり、自分たちにとって頼れる先輩の一人なのだから。負けるはずがない。そう信じきっていた。

秀次にとっても朱乃の敗北はショックだった。

だが動じるよりもまずは確認しなくてはいけないことがあると、彼は慌てて周囲を見渡す。

 

そして──発見した。

 

自分たちの頭上に浮かぶ小さな孤影を。

 

「ッ──祐斗ぉっ!一誠っ!塔城ッッ!ここから全員、離れろぉぉぉぉおおおおっっ!!」

 

普段発することのない秀次の叫び声。怒鳴り声とも違う緊急時に上げる大声。

秀次が避難要請を指示した直後──グレモリー眷属四名を中心に紅蓮の花弁が散った。




ひとまず無難な展開に着地しつつある現状。
次回、進みの遅い展開に変化はあるのか!?
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