ハイスクールD×D 終焉に抗う暁の太陽   作:ドラゴン大好きT

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よーやっと今後の大まかな展開がまとまった気がします。細かいところはまだだけど…。投稿期間も頑張って元のペースに戻していきたいなぁ。


第23話 歓喜と反省です

 

 

レーティングゲームから数日が経った。

ライザーとの戦いで俺は激しく痛めつけられ、リタイヤしてすぐに治療施設に転移した。

蓄積したダメージは相当に重く、命の危険に差し迫るほどに危険な状態だったらしい。

 

まあ、なにせ首を焼き切られかけたからな。

目覚めたときは全身を包帯ぐるぐる巻きにされ、指先一つ動かせない状態になっていたよ。

 

冥界の治療技術とアーシアの神器による回復で一命を取り止めたのち、俺は丸二日くらい寝ていたらしい。

 

 

起きてすぐに動き出そうとした俺を冥界の医者は驚きながらも止めようとしたが、特に不自由なく動いている俺を見ると驚愕していた。昔から傷の治りは早いんだよね。

 

俺が起きたと聞いたことで皆はすぐに病院に駆けつけてくれた。

部長はホッと胸を撫で下ろししてくれ、他の皆も安心したようだった。一誠とアーシアは泣きすぎだと思ったけど。

 

そんなことがあった三日後の今日。俺たちオカルト研究部の部員は部室に集まっていた。

部室は祝いの飾り付けがされ、俺を含めた皆が飲み物の入ったコップを持っている。部室の中心には大きなテーブルが用意され、その上には色とりどりの料理たちが置かれている。

 

皆の期待のまなざしを一身に受け、俺たちの部長リアス・グレモリーは高らかに宣言する。

 

「それでは皆──今回のゲームの勝利を祝って、乾杯ー!」

 

『乾杯ー!』

 

そう、祝賀会だ。

 


 


 

リアス・グレモリー眷属VSライザー・フェニックス眷属のレーティングゲーム。

 

ゲームに勝ったのは──俺たちグレモリー眷属!

 

部長とライザーの婚約も破談になった。病院のベットの上で部長の口から直接そう聞かされたときは本当に安心したもんだ。

 

「しかしまぁ……勝ったのか、俺たち」

 

「実感がないかい?」

 

飲み物を口にしながらそうこぼした俺に、普段通りにこやかな祐斗が訊いてくる。

 

「まあ、な……。作戦自体は成功したけど、最後の最後でリタイヤしたからさ」

 

聖水と落とし罠を使った水責め作戦。あれが決まったときは勝った!……と思ったんだけどなぁ。

 

ライザーは聖水によるダメージ。さらに俺の追撃を受けてもなお、立ち上がってきた。

 

ぶっちゃけ勝った気がしない。というか立ち上がられた時点で作戦では負けてた。それでも俺たちグレモリー眷属が勝てたのは──。

 

「なにしおらしい顔してんだよ。シュージもこんなときくらいは素直に喜べって!」

 

ゲームのことを思い出していると、テンションの高い一誠がそう言ってきた。

 

一誠が今回のゲームの勝利を掴んだ立役者だ。

立ち上がってくれることに期待してフェニックスの涙を渡したとはいえ、まさかあの土壇場で復活してくるとは思いもしなかったぞ。

 

ただ……犠牲もあった。一誠はライザーに勝つために禁手という力を使ったらしい。その代償に左腕がドラゴンの腕になってしまった。

 

俺が、ライザーにやられたせいで……。

 

「……左腕、大丈夫なのか?」

 

「え?ああ、おう……。まさか、俺の左腕のことを気にしてたのか?」

 

「気にするだろ、普通。俺が倒れていなければ、一誠が腕を犠牲にする必要はなかった」

 

「そうかあ?ライザーは強かったし、シュージがやられてなくてもピンチな状況に変わりはなかったと思うんだけど……うーん」

 

俺の言葉を聞いた一誠が考え込むように唸る。

その間、俺や皆の視線が一誠に集中した。

 

「確かに不便に思うことはあるよ。でも、俺みたいに才能のない奴が腕一本を犠牲にするだけで部長のために戦えた。弟を守れたんだ。だから後悔はしてないよ。それに、いまは部長や朱乃さんのおかげで普通の腕に戻ってるしな」

 

左腕を見せながら一誠は笑顔でそう言う。

一誠のために部長や副部長は懸命にドラゴンについて調べてくれたらしい。

その結果、ドラゴンの力を数日毎に散らすことで日常では普通の腕で生活できている。

 

「だから気にすんなって。シュージの作戦があったから俺たちはライザーに勝てた。それにシュージがフェニックスの涙を持ってきてくれたから、俺は最後に立ち上がれたんだ。俺だってシュージに助けられた。つまりお互いさまだ」

 

……。そう言われると俺は何も言えないなあ。

 

すると、黙り込んでいる俺の肩に手が置かれた。

手を置いた人物に顔を向けてみれば、にこやかな顔の祐斗が俺を見つめていた。

 

「イッセーくんの言う通りだよ。シュージくんの作戦がなければ僕たちの勝利はなかった。ライザー氏を倒したのはイッセーくんだけれど、追い詰めたのは間違いなくシュージくんだ」

 

「作戦だけではありませんわ。ゲームの内容でもシュージくんは多くの相手眷属を撃破している。初めてのゲームとしては十分すぎる活躍です」

 

「シュージさんが駆けつけてくれたとき、私すごく安心したんです。私やイッセーさん、部長さんを守ってくれてありがとうございました!」

 

「……グッジョブ」

 

ちょ、そこまで褒めちぎらなくていいから!

皆からの素直な賞賛の言葉に戸惑い、俺は恥ずかしさから顔を赤らめる。

 

……でも、家族や友人以外の誰かから認められたのはこれが初めてかもしれない。

 

「──わかった。なら俺も気にしない」

 

一呼吸置くと、俺は表情を和らげてそう言った。

 

……本当は気にしてるけど。いつまでも引きずっていたら一誠の気持ちを無下にしてしまいそうだしな。表面上は気にしない。

 

俺たちは心機一転して祝賀会を楽しもうとする。テーブルに並べられた料理は部長と副部長の二人が腕によりをかけて作ってくれたらしい。

 

「シュージくんはイッセーくんの心配をしていたけれど、僕たちはキミのことが心配だったよ」

 

「悪いな。心配かけてよ」

 

現在、俺の首には包帯が巻かれている。傷は治ったけどまだ一応というやつだ。

皆も大きなダメージは治っているようだが、小さい傷は少なからず見受けられる。無傷なのは最前線に立たなかったアーシアくらいなものだろう。

料理を口に運んでいたそのとき、祐斗が俺に視線を向けてきた。

 

「──『女王』と戦っていたときのシュージくんは凄まじい強さだったけど、同時に理性を失っていた。なんとか無事にゲームを終えられたからよかったけど、あれはいったい……?」

 

「……さあな」

 

俺は昔から周りの奴らよりも力が強かった。まあ別に負けなしの強さってわけでもなかったが。

だが、悪魔の世界に足を踏み入れたことで俺の強さは通用しなくなった。

 

「あのときは結界みたいなやつに閉じ込められて出る方法もわかんなくて焦ってた。そのあとの記憶はあやふやで、気づいたらあの始末だ」

 

「そっか……。僕もすぐにフォローに回れなくてゴメンね」

 

「俺のほうこそ悪かった。……いや、止めてくれてありがとうか」

 

祐斗に感謝を伝えている最中も、俺はゲーム中に起こった謎の暴走のことを考えていた。

 

暴走中の記憶はある。だが、それに付随する感情だけが思い出せない。そもそもあのときの俺は何を考えてあんなことをした?何も考えることなく人を傷つけ、殺そうとしていたのなら、あのときの俺は疑いようもなく──。

 

「ハッ、まさに怪物か」

 

自嘲気味にそう言葉を漏らし、俺はジュースの入ったコップを呷る。

 

冗談じゃねえ。制御の利かない力なんて何の役にも立たねえんだよ。

それに、今回は一誠がいたから最終的にチーム全員の勝利で終われたが、俺個人の力はライザーにはとても及ばなかった。

もっと強くなってやる。強くなって、今回のようなことは二度と起こさせない。

 

「皆、少しいいかしら」

 

そのときだった。俺たちに声をかけた部長がその場で静かに立ち上がる。

 

「イッセー、シュージ。それに皆も。改めて私からお礼を言わせてもらうわね。ありがとう。皆のおかげで私はライザーに勝つことができた」

 

柔らかな口調で礼を伝えてくる部長。

しかし、その顔にはどこか陰りのようなものが感じられる。

 

「私は、今回のゲームで痛感したわ。私はまだまだ弱い。それは力でも心でも。皆が私のために戦ってくれていたのに、私は真っ先に諦めようとしてしまった。不甲斐ないかぎりだわ」

 

部長は悔しげに拳を固めながらそう言う。さっきまでの俺も含めて、もはや祝賀会というより反省会みたいな雰囲気になってきた。

 

「シュージに喝を入れられたからなんとか戦えたけど、そのシュージがライザーに殺されかけたときも、私は泣き叫ぶことしかできなかった……。

下僕の命が危険に晒されても、私は絶望に打ち負かされて何もできなかった。私は、王失格だわ」

 

「部長!そんなことは──」

 

卑下する部長にフォローの言葉をかけようと、立ち上がって声を上げる一誠。

だが、そんな一誠に部長は「待ってちょうだい」と手のひらを向けた。

まだ言いたいことがあるということなのだろう。一誠も俺を含めた皆も黙って傾聴する。

 

「それでも、私はあなたたちの王なの。だからこれからはあなたたちに見合うような『(キング)』になれるように、これまで以上に努力するわ。だから皆も私に協力してほしい。──これからも皆の王でいさせてください」

 

部長は俺たちに頭を下げてそう締めくくった。

最後の言葉の重みは王である彼女だけのものだ。だけど、その心根は俺たちにもよく伝わった。

 

「もちろん、部長に俺たちはついていくっスよ!部長は最高の主です!」

 

皆の総意を一誠が口にしたことで、俺たちもうんうんと頷く。全員の反応を見た部長はうれしそうに笑みを浮かべていた。

 

「あっ、それとね──今度から私、リアス・グレモリーはイッセーたちのお家に住まわせてもらうことにしたから。皆にも一応伝えておくわね」

 

…………。いま、何とおっしゃりましたか?

 

唐突に、それもさらりと信じがたいことを部長は告げてきた。あまりの聞き捨てならなさに体の動きが止まってしまったぞ。あ、周りを見てみたけど皆も同じようなことになっている。

 

「あの部長、何がどうしてそんなことに……?」

 

「シュージが寝ている間に色々とね。イッセーの左腕の責任は主である私にもあるわけだし、その責任は取らなくちゃと思って……」

 

「いや、何もそこまでしなくたって──」

 

「シュージくん、それ以上はきっと野暮というものですわ」

 

部長の言い分に困惑していると、副部長がそんなことを言ってきた。野暮?ますますわからん。

 

「えっとね、シュージくん。状況的には、イッセーくんは部長のために身を挺してライザー氏を倒したということになるんだ」

 

「それはそうだな。それで、どうして俺たちの家に住むなんて話になる?」

 

「……リアス部長も女の子です」

 

「???」

 

祐斗に続いて塔城も説明してくれたが……結局どういうことなんですか?部長が女の子?んなことは一目見ればわかるよ。バカにしてます?

塔城と副部長は残念なものを見るような目で俺のことを見てくるし……。

すると、祐斗がすぐ近くまで寄ってきて、俺の耳元で小さく結論を伝えてきた。

 

──部長はイッセーくんのことが好きになってしまったみたいなんだ、と。

 

「え……ガチか?」

 

仲間たちからの説明を受けてようやく理解した俺は口をあんぐりと開けて部長と一誠を見る。

部長は頬をほんのりと赤らめているし、一誠はおそらくこの状況についていけていない。

 

「そ、そういうわけだから今度、イッセーたちのお家にあいさつに向かわせてもらうわ。シュージとアーシアもよろしくお願いするわね」

 

「は、はぁ……よろしくお願いします……」

 

「部長さんまでイッセーさんのお家に……うぅ」

 

部長も大胆だなぁ。アーシアが一誠に好意を寄せているのはさすがの俺でもわかるってのに。

同居人が増えることよりも、一誠に好意を寄せる女性が増えたことに戸惑う俺だったが、部外者が何を考えようとも無駄だと結論づけて俺は再び料理を口に運び始めていた。

 

……いや、待てよ?俺だってあの家に住んでいるんだから部外者ではないか。

 

「──あ、そうだ。塔城」

 

「……はい?」

 

あることを思い出した俺は祝賀会の前に買いに行った物を塔城の前に差し出す。

女子が好みそうな可愛らしいデザインの箱。中に入っているものは──ケーキだ。

 

「これって……駅前のケーキ屋の?」

 

「約束しちまったからな。祝賀会の前に買いに行ってきた」

 

「……約束では『先に倒れたほうが奢る』って話でしたよね?私が先輩に奢るんじゃ──」

 

「あのとき、おまえが手を掴んでくれなきゃ先に倒れてたのは俺だった。だからこれで貸し借りはナシ。約束もちゃんと果たしたからな」

 

ったく、言わせんな恥ずかしい。だいたい俺もなんであんな約束をしちまったのか……。

はぁ、とため息をつく俺に塔城は目をパチクリとさせていた。

 

「あんだよ?」

 

「……いえ、なんでも。いただきます」

 

そう言って塔城はケーキを食べ始める。若干微笑んでいるように見えるのは、買ってきたケーキがよほど美味しいのだろう。

 

人が美味そうに食ってる姿を見てると、自分も食べたくなってしまうのが人の性だよな。と、俺も自分用に買ってきたケーキを食べ始めていた。

 


 


 

オカルト研究部の面々が祝賀会を楽しんでいるのと時を同じくして──。

 

悪魔たちが住む冥界──それもグレモリーの本家にて複数の悪魔が集まっていた。

彼らの装いは平民のそれではなく、貴族のなかでもことさら高貴な衣装に身を包んでいる。

グレモリー夫妻とフェニックス夫妻。つまり、今回の御家騒動に関わる両家が集まっていた。

そして、リアス・グレモリーの実兄にして現魔王──サーゼクス・ルシファーまでもがその場に姿を現していた。彼の『女王』でありグレモリー家のメイドのグレイフィアもそばに控えている。

 

全員が揃って席に座るなか、グレモリー家現当主──ジオティクス・グレモリーが口を開く。

 

「フェニックス卿。今回の婚約、このような形になってしまい、大変申し訳ない」

 

「謝らないでください。グレモリー卿」

 

まずは謝罪をするジオティクスに対して、フェニックス家の現当主は首を横に振る。

 

「二人は互いに条件を飲んで戦い──そして、リアス嬢が勝利した。ならばこれは正当な結果だ。それに対して文句を言うような真似はしません。純血の悪魔同士、いい縁談だったことは確かでしたが、我々もいささか性急がすぎたようだ」

 

「そう言っていただけると幸いです。それで、あのゲーム以降、ライザー君の様子は……」

 

「お恥ずかしい話ですが……塞ぎ込んでしまいました。まさか負けるとは思っていなかったのでしょうが、息子は一族の才能を過信しすぎるきらいがあった。今回のゲームは息子にとってもいい勉強になったと私たちは判断しています」

 

「レイヴェルにもいい薬になったと思っております。あの子たちはまだまだ若い。今回の敗北を乗り越えてさらに成長してくれることを願っておりますわ」

 

フェニックス夫妻は自分たちの子が敗北したという事実をきちんと受け止めていた。

フェニックス家とは往年の付き合いだ。当然のことだが、今回のゲームの結果だけで仲違いするような心配はジオティクスもしていない。

 

「ゲームの内容も実に興味を惹かれましたな。まさか悪魔が聖水を使うとは。上級の、それも純血の悪魔では到底思いつかない策でした。これも新たに眷属入りした彼らの影響ですかな?」

 

「ええ、そのようで。──まさか、赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)を私の娘が拾うとは、考えもしなかったものですが」

 

「赤い龍……ならばそう遠くないうちに、白い龍も姿を現すのでしょう。大戦の最中に大きく戦場を乱した二匹の忌々しい龍。あの二匹の争いが我らに何をもたらすのか……いまはあまり考えたくはありませんね」

 

柔和な表情で話していたフェニックス卿。

 

しかし、次の瞬間──彼の表情が一変する。

 

「──なにせ、それ以上の問題をあなた方は抱えてしまったのだから」

 

「っ……」

 

感情をまるで感じさせない無表情。細められた目はジオティクスを真っ直ぐ見つめていた。

すると、フェニックス卿は黙り込むジオティクスからある人物へと視線を移す。

相手は魔王サーゼクス・ルシファー。今回のことをなあなあで済ませたくないフェニックス卿は魔王に直接意見を求めようとする。

 

「魔王ルシファーさま。あなたはあの少年のことをどうなさるおつもりなのですか?あなたさまのお考えもぜひ聞かせていただきたい」

 

「あの少年──つまり、赤龍帝ではないもう一人の少年のことですね。フェニックス卿」

 

「紫水晶の双角に、突発的な凶暴化。よもや見間違えるはずもありません」

 

フェニックス卿の話す内容はゲーム中、ある少年に起こった変化のことだ。

本来格上の相手である『女王』を一方的に叩きのめし、不死鳥の姫君に恐怖を与えた存在。

 

「──アレは危険分子だ。いまはまだ未覚醒なのでしょうが、いずれ悪魔に厄を振り撒く天災となります。いまのうちに処分してしまうべきではありませんか?」

 

「処分──つまり殺すべきだと。そうおっしゃるのですね。それがたとえ、リアスの眷属であったとしても」

 

「申し訳ありません、魔王さま。失礼を承知で続けさせてください。リアス嬢は確かに才能のある悪魔だ。同時にまだまだ若い悪魔の一人。

彼女にアレを制御することは不可能だ。それに、あまりに酷な話でしょう。彼女には彼女の未来がある。アレを任せるということは、その未来を潰すことになりますよ」

 

否定的な意見を口にするフェニックス卿。だがその顔に侮蔑的なものは一切ない。

むしろ、心の底から心配していた。それは子を持つ親の目線であり、悪魔という種の存続を願う一人の純血悪魔としての本心だった。

 

「フェニックス卿、あなたの優しさは十分に理解しました。ですが、それでもやはり処分は待っていただきたい。彼に宿ったものは確かに危険だ。それでも、何の事実も知らない少年をただ宿ったものが危険だからといって処分すれば、我が妹も黙ってはくれません」

 

「……直前に私は若さを理由にリアス嬢にはアレの制御はできないと言いましたが、アレを制御できる存在がこの世にいくらおりましょうか。中途半端な優しさは彼女を余計に苦しめることになるのでは?」

 

処分をしないというサーゼクスの判断に、フェニックス卿は少しばかり眉をひそめる。

ゲーム中、件の少年は暴走した状態でレイヴェルを殺そうとした。ゲームなのだから戦闘は当然のことだが、親としては思うところも当然ある。観戦していた当時でさえ、なぜ中断しないのかと内心では怒りの感情を抱いたほどだ。

だからこそ、次にサーゼクスが口にした言葉にフェニックス卿は驚く。

 

「もっともな話です。フェニックス卿。ですからリアス・グレモリーとその眷属。そして、『紫水晶の双角』所有者──兵藤秀次の管理は私に任せていただきたい」

 

「ッ──魔王さま自ら、アレの管理を行うと?」

 

「表向きはリアスの妹ですから、目立った行動は控えるつもりです。ですが、場合によっては兵藤秀次の状況をリアスに説明して身柄を拘束し、封印処置を施すことも考えています。これならばリアスも納得するでしょう」

 

「そうですね。リアス嬢の眷属の一人は現在、封印処置をされていますし……」

 

魔王自らが管理をする。悪魔にとってその言葉はとてつもなく重いものだ。さしものフェニックス卿も納得せざるをえない。

 

それでも、不安が完全に消えたわけではない。

兵藤秀次を生かすという判断が、どのような厄災となるのか──それすらもわからないのだ。

フェニックス卿が真っ先に処分という最終判断をサーゼクスに仰いだのもそれが理由だろう。

 

なにせ、あの神器に封じられた存在は。

 

あの神器が宿ってしまった者は──

 

「おまえと同じだな、サーゼクス。リアスにもやはり才能があった」

 

「どういう意味ですか?父上」

 

「巡り合い──人を引き寄せる才能。おまえたちはどちらも異常なものを呼び寄せてしまう。まったく、容姿だけでなくあまり似てほしくないところまで似てしまったか」

 

「ははは、褒め言葉として受け取ってましょう。ですが……そうですね。本当に……」

 

父親ジオティクスの皮肉に笑いを返しながらも、サーゼクスの顔に笑みはない。

 

愛する妹の未来に待ち受ける者たち──。

 

そこに、黒の双影が見えた気がした。

 

 




次回、使い魔話。その次からエクスカリバー編に入っていく予定です。長らくお待たせしてしまったのでね、どうぞお楽しみに〜。
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