ハイスクールD×D 終焉に抗う暁の太陽 作:ドラゴン大好きT
エクスカリバー編始動。
ヒロインたちのホームステイが決まるほど、オリ主の肩身は狭くなっていくんだろうなと。
第24話 友達の異変
夢を見ている。
呆然とその場にへたり込む白。
大きな黒は大の字になって、ガラス玉のような目が虚空を見つめていた。
そのガラス玉に映り込んだのは──。
地面に広がる赤を見つめる小さな黒だった。
あの日から、ずっと見続けている。
***
目覚めの気分は最悪。それはいつものことだ。
そんなわけで、俺の朝は早い。最近は日課となった朝のトレーニングをこなす毎朝だ。
ライザー・フェニックスとのゲーム。あの戦いで自分の無力を知った俺はさらに強くなるために特訓量を増やして、毎朝のトレーニングを一人でやるようになった。
トレーニングを一人でやるようになったのは特訓量を増やした他にも理由があるが……。
「いただきます」
色々と思い悩んでいたら朝食の時間だ。
ライザーとのレーティングゲーム以降、俺の意識意外にも変わったことがある。
それは、部長が我が家に住むことになったこと。アーシアに続いて二人目のホームステイだ。
「いやー、リアスさんは和食まで作るのが上手なんだねー」
「ありがとうございます、お父さま。日本で暮らすのも長いものですから、一通りの調理は覚えましたわ」
今日の朝食の何品かは部長が作ってくれた。
これがまたうまい。今日は和食だが洋食から中華まで幅広く作れるらしい。さらに部長は炊事だけでなく洗濯掃除まで完璧にこなしている。
元々一人暮らしをしていたのだからある意味必須なスキルなのかもしれないが、上級悪魔のお嬢さまからは想像できないほどに家庭的だ。
両親も彼女の料理の腕に大満足の様子で、朝から和やかな雰囲気と化している。
(全員が穏やかな気分ってわけでもないが)
膨れっ面のアーシアを見て俺はそう判断する。
アーシアが不機嫌な様子の理由。それは部長ことリアス・グレモリー先輩に嫉妬しているからだ。
彼女たちは一誠に恋心を寄せている。つまり恋のライバルなわけだ。
女心がさっぱりな俺からすると、美少女の二人が一誠の何に惚れたのかよくわからない。
まあ、変態性やそれに付随する事案に目を瞑れば一誠は悪くない男と言える。二人とも一誠に助けられたりもしたし、惚れることもあるだろう。
ただ……兄貴を巡って二人の美少女が争う光景は弟の俺としては複雑なものだ。
(悪魔はハーレムOKらしいが……だからといって不誠実なことに変わりはねえ。一誠はそのあたりのことは気にしないんだろうけど、二人の仲を保てる甲斐性がこいつにあるんだろうか……)
長年一誠と兄弟として過ごしてきた俺は兄の良いところも悪いところも知っているつもりだ。
だがもし、一誠の悪いところを知った彼女たちが一誠を嫌いになってしまったら……俺は三人の仲を取り持てるだろうか。
(──無理。絶対に無理。いまの三人の輪に入ることもできない俺には無謀すぎる!)
昼ドラ寸前の三角関係を見ながら過ごす朝は素直に言わせていただければ苦痛です。
──主に胃が。朝っぱらから胃もたれしそう。
朝のトレーニングを三人と一緒にやらないのもこれが理由だ。三人がいると俺が集中できない。
俺が割って入るのもなんか違う気がするし、雰囲気的にそもそも入りづらい。あと普通に面倒。
というわけだ。一誠、なんとかしろ。
そう念じるように一誠に視線を注ぎながら朝食を食べていると、父さんが話しかけてきた。
「どうしたんだ、シュージ。朝から目つきが鬼のように悪いぞ」
「……なんでもない。あと鬼のように悪いとか言わないでくれないかな」
「そんなしかめっ面じゃ女の子も近寄りがたいでしょう。シュージももう少し表情が柔らかくなったらいいんだけどねえ」
悪かったな!女の子が近寄りがたい顔でよ!
両親から下された顔評価の不満をぶつけるように俺は朝飯をかっこんでいった。
その日の放課後。普段は部室に集まるオカルト研究部の面々が──
「で、こっちが小学生のときのイッセーなの!」
「あらあら、全裸で海に」
「ちょっと朱乃さん!って、母さんも見せんなよ!」
「……イッセー先輩の赤裸々な過去」
「小猫ちゃんも見ないでぇぇぇぇぇ!」
今日はなんと、
理由は旧校舎の掃除のため。
業者に頼んで掃除してもらうと両親には建前で説明しているが──実際は使い魔に掃除してもらっている。
俺もイトに任せてきた。ちなみに俺の使い魔アイトワラスとの契約で、仕事をさせる報酬としてイトにはオムレツをあげている。普段はチラシ配りなんかもさせているし、働いてくれた分の報酬は俺としても支払わせてもらう。
今日集まった本来の目的は会議のはずだったが、母さんが茶菓子と共に持ってきたアルバムですべての予定が狂ってしまった。
(まあ、一般人の母さんがいるなかで悪魔の話をするわけにもいかないしな)
俺と一誠が悪魔になっていることや皆が悪魔なことを話すつもりは──たぶん一生ないだろう。
俺たち悪魔の世界はあまりに危険だ。両親を関わらせるつもりはない。皆も二人をこちら側に引き込むつもりはないだろう。
そんなことを考えていると、アルバムをめくっていた塔城が怪訝な様子で手を止めた。
「一誠の赤裸々な過去がまた見つかったか?」
「……いえ、そうではないんですけど」
「まさか俺の赤裸々な過去を見つけたとか?勘弁してくれ……」
「……このアルバム、何か変だなと思って。でもその違和感の正体がわからないんです」
塔城は手に取ったアルバムを訝しげに何度も見返していた。
いくつかのアルバムを見回ったのちに塔城は違和感の正体に気づいたのか俺に視線を向ける。
「……シュージ先輩の写真がまったく見つからないっていうか、ないんですけど」
「あらそういえば。イッセーくんのことはよく見かけるけどシュージくんは見かけませんわね」
塔城の発言に副部長も頷く。確かにここにあるアルバムのなかに俺の写真は一枚もなかった。
皆がその事実に気づき始めたと同時だった。母さんと一誠の様子がおかしくなる。
「えっ……それってどういうこと?まさかイッセー、シュージ、あなたたち──」
「ここにあるアルバムに乗ってないだけだ。母さんと俺で探してくるから、少し待ってて」
母さんの腕を掴んで俺は部屋を出ていく。
……。部屋を出て廊下を歩いている最中、俺の冷や汗は止まらなくなっていた。
「……塔城は勘が鋭いな。まさかアルバムで疑われることになるなんて……」
「シュージ、あなた……まさかリアスさんたちに話していないの?」
…………。その問いに俺は立ち止まり、振り返って母さんの双眸を見る。
母さんは……とても悲しそうな顔をしていた。
俺が無言の肯定を返すと、母さんは俺の両手を取って謝ってきた。
「ゴメンね。私はてっきり、皆にはもう話しているものだと思って……。アーシアちゃんやリアスさんはあなたにも普通に接していたから」
「……俺のほうこそ伝えてなくてゴメン。皆に知られたらと思うと……いや、皆が知っていないからこそ、甘えているんだ」
「シュージ、それは……」
母さんは一瞬何かを言いかけたが、言葉を飲み込んで物置部屋のほうに行ってしまった。
わかってる。この状況がよくないことくらい。
でも知られて。おまえなんかいらないって、皆に言われたら?また拒絶されたら?
初めて部室に行ったときのことを思い出す。
部長は俺を眷属にした理由を「優しい」からと言ってくれた。だが本当の俺は違う。優しさの対極にいる存在と言っていい。
この状況が長く続くとは思っていない。いつかはきっと知られるのだろう。
部長は学園の裏の支配者だ。生徒のことくらい調べようと思えばいくらでも調べられる。
それまでは……それまではせめて……。
「皆の『
弱々しい声で俺はぽつりと呟いていた。
それからしばらくして母さんがアルバムを抱えてやってきた。母さんもそれ以上を追求することはなく、二人で一誠の部屋に戻った。
戻ってきた俺に皆は戸惑いの視線を向けてくる。拒絶じゃなくてよかったと心底安堵しつつも、俺は居心地の悪さに皆から顔を背けてしまった。
「お、おまたせしました!このアルバムならシュージの写真もあるからね」
「よ、よー待ってた!待ってたよ二人とも!」
一誠おまえ、ごまかしかた下手くそかよ。俺が言えたことじゃないが……。
冷や汗だらだらの兄に目を向けると、「大丈夫!言ってない!」と口パクで伝えてきた。本当かどうか怪しいが信じるとしよう。
俺は窓際の椅子に座るとそのまま口を閉ざした。下手に追及されたら何も言えないからな。
──と、そのときだった。
(あ、なんだ?)
アルバムをめくっていた手を止めて祐斗が何かを食い入るように見ている。
気になった俺が覗き見ようとすると、同じく祐斗の様子に気づいたらしい一誠と同時のタイミングでその写真を見ることになった。
写っていたのは園児時代の一誠と同い年くらいの男の子とそのお父さんらしき人物だった。
「あー、この子覚えているぞ。近所に住んでいたからよく遊んでたんだ。確か親の転勤だかで小学校にあがる前に外国に行っちゃったけど」
あー、俺もなんとなく覚えている。すごく元気な男の子だったはずだ。遊んだことも少しはある。
で、この写真の何に祐斗は興味を示した?疑問を抱く俺の目の前で祐斗は写真に写る男の子の父親のほうをゆっくりと指差す。
正確には父親が持っていた──剣だった。たぶん模造品だと思うが、父親は古びた西洋剣を持って一誠と男の子と共に写真に写っていたんだ。変な男だとは思うが……これがどうしたよ?
「これ、見覚えは?」
「うーん、いや、何分ガキの頃すぎて覚えてないけどな……」
声を硬くさせて真剣な様子で訊く祐斗だったが、一誠は知らなかった。
続いて俺にも訊くつもりなのか顔を向けてくる。その顔は真剣さを通り越して熱気すら感じる。
「……シュージくんは?さっき何かあったみたいだけど、まさかコレとは関係ないよね?」
「知らないな。さっきのこととも関係ない」
俺はこんな写真があったことさえ知らなかった。この頃は俺もそこらにいる普通のガキだったし、写真に写っていないのはたまたまだろう。写っている男の子と一誠ほど頻繁に遊んでいなかったことも理由かもな。
それよりも……祐斗の様子が変だ。まるで獲物を見つけた獣みたいな目をしてやがる。
「こんなことがあるんだね。思いもかけない場所で見かけるなんて……これは聖剣だよ」
聖剣。そう告げた祐斗の瞳は憎悪に濡れていた。
一誠が天野夕麻に殺されたと知って、復讐に走った俺はなんとなく察するものがあった。
祐斗は聖剣を憎んでいる。
聖剣に、復讐を誓っているのだと──。
それから数日後のこと。我らがオカルト研究部はまたも部室とは別の場所に集まっていた。
旧校舎裏の草の生えていない少しだけ開けた場所で俺たちは野球の練習をしていた。
「オ──ラァッ!」
気合いが乗った声と共に振るわれた金属バット。芯で捉えた野球ボールは空の彼方へ吹き飛ぶ。
オカルト研究部なのに野球の練習とはまさに意味不明に思われるかもしれないが、これにはちゃんとした理由がある。
もうすぐ学校行事の球技大会が駒王学園で行われるからだ。野球、サッカー、バスケ、テニスなど球技と名の付く競技を一日使って楽しむ行事。
種目はクラス対抗戦、男女別競技、そして部活対抗戦がある。
部活対抗戦は文化部も体育会系も関係なしに参加させられるうえ、種目も当日発表だ。直前まで何をやるかわからない以上、球技全般をまんべんなく練習する必要があるんだと。
「ぶっちゃけ、不公平すぎんだろ、と!」
カキーンと甲高い金属音を響かせながら、俺は部活対抗戦の不満を口にした。
だって、体育会系と文化部ごちゃ混ぜだぜ?それで種目も当日まで伏せるとか……文化部が勝てる要素を潰してるようなもんだろう。
我らがオカルト研究部も文化部だが、内情は人間よりも身体能力が高い悪魔だ。負けることはまずありえない。むしろ、一般生徒と混ざって参加するのだから手加減必須だな。
「バッティングの練習はこんな感じでいいわね。四番打者は小猫か秀次、どっちにしようかしら」
「……俺は辞めておきます」
家での部活日以来、俺はオカルト研究部の面々との会話にぎこちなさを感じていた。
俺が何かを隠していることは薄々皆も察しているだろうし、俺も皆に隠し事をしていることに多少なりとも罪悪感を抱えている。
でも、そんな俺に皆は何も聞いてこない。皆は俺が自らの意思で話すことを待っているのか。
──それとも、もう知ってしまっているのか。
皆は同じ部活に所属し、同じ主を担ぐ仲間。
なのに、そんな仲間のことを俺は疑っている。
(……俺はこのヒトたちのことをまるで信じられないんだな)
過去を知られたら拒絶されるという不安と、隠し事をしながら皆と過ごす後ろめたさが、締め上げるような痛みとなって気分を悪くさせる。
でも、それを表に出すことはない。
弱音を吐いたり、弱みを見せることで皆を不安にしたくない。
大丈夫だ。こういうのは慣れてる。一人で抱えることなんて昔からずっとやってきたんだから。
そうこうしているうちに今度はノックの練習が始まった。憂鬱な俺とは真逆で部長の調子はとても良さそうであった。
前回のライザー戦以降、部長は以前よりもさらに勝利に固執するようになったと思う。元々こういう遊び事を好む性質もあるが、その気合いはオカルト研究部のメンバーでも群を抜いていた。
「次、祐斗!行くわ!」
部長は意気揚々とボールを打ち出す。狙い通り祐斗の頭上へ高めに飛んでいった。
祐斗の身体能力は眷属内でもトップクラス。
なんてったって最速の騎士さまだからな。問題なくキャッチするだろう。そう思っていた。
しかし、祐斗は呆けた様子で動こうとせず、そのままボールは頭に直撃した。
「お、おい……大丈夫かよ?」
「木場!シャキっとしろよ!」
「……あ、すみません。ボーッとしてました」
練習とはいえ使っているボールは硬式用。それが頭に直撃したから俺は思わず心配したが、悪魔の頑丈さゆえに怪我をすることはなかった。
だが、祐斗の様子はどう見てもおかしい。一誠の声かけでようやく状況に気づき、ノロノロとした動きで部長にボールを返球する。
「祐斗、どうしたの?最近、ボケっとしてて、あなたらしくないわよ?」
「すみません」
ぼんやりした様子で謝罪する祐斗に部長もため息をつくばかりだ。
祐斗は最近、クラスでもあんな感じだ。部活の定例会議でもどこか物思いにふけっている。女子からすればあの憂いのある顔も良いみたいだが、俺としては心配や混乱の気持ちしかない。
「祐斗、本当に大丈夫か?調子が悪いなら休ませてもらったほうがいいんじゃないか?」
「僕は大丈夫だよ」
ぎこちない笑みで大丈夫だと答える祐斗。俺も部長たちとの距離を測りかねて変な調子だが、祐斗のはあからさまが過ぎる。やはり写真に写っていた「聖剣」とやらが原因なのだろう。
(俺に何かできることは──いや、自分の過去を隠している俺に祐斗が抱えているものをなんとかできるはずもない、か……)
友達の異変に俺は気づきながらも何もできず、歯がゆいものを感じるだけに留まってしまった。
オリ主は自分が過去を隠していることもあって、相手の過去に躊躇なく踏み込むような真似はしないだろうなと考えながら描いています。