ハイスクールD×D 終焉に抗う暁の太陽   作:ドラゴン大好きT

29 / 42

ついに購入したPS5とモンハンワイルズ、その他ゲームを楽しんでいたらですね…前の投稿から一ヶ月以上経過していた…ごめーん!


第28話 白熱する決闘

 

 

グレモリー眷属とイリナ、ゼノヴィアの聖剣使いは旧校舎近くの空き地に移動していた。

一誠とイリナ、祐斗とゼノヴィアが向かい合い、彼らの周囲には紅い魔力の結界が張られる。

秀次を含めたグレモリー眷属の他のメンバーは結界の外から四人の動向を見守っていた。

 

「では始めようか」

 

イリナとゼノヴィアはローブを脱ぎ捨て、その下に着ていた戦闘用の黒いボディスーツを衆目にさらす。さらに彼女たちの手には聖剣エクスカリバーが握られていた。

向かい合う一誠は緊張した面持ちとなり、祐斗は憎き聖剣を目の前に憎悪をより強くさせる。

口論が激しさを増した結果、殺し合いに発展しかねないほどに最悪な空気となった会談。

すると、口論を激しくさせた張本人である秀次がゼノヴィアたちにある提案を申し込んだ。

 

「このまま引き下がったら互いに腹の虫がおさまらねえだろ?だが殺し合いは今後のことを考えれば互いに避けたい。だから勝負しようぜ。ルールは一対一(タイマン)で相手を殺す以外はなんでもアリ。相手を戦闘不能にするか、相手が降参した時点で終了だ。まあ、おまえらがおとなしく帰ってくれるなら俺はそれでいいけど」

 

秀次の挑発的な態度にゼノヴィアたちは苛立ちを加速させながらもそれを承諾。

眷属たちが先に喧嘩を売ったことで対応に困っていたリアスも納得し、球技大会の練習に使っていた空き地で勝負が行われることになった。

だが、突如として決まった決闘に一誠は困惑気味になっていた。言いたいことを言った時点で彼の怒りはすでに冷めていたのだ。

だが、エクスカリバーに憎悪を燃やす祐斗や喧嘩腰の秀次のせいでやりたくもない決闘に巻き込まれたと現在は肩を落としている。

 

「イッセー、ただの手合いとはいえ、聖剣には十分気をつけなさい!」

 

「は、はい!」

 

リアスの激励に一誠は返事をするが、実のところ身震いするほどにビビっている。

理由は決闘の前に見せられたビデオであり、聖剣を持った者と上級悪魔の一戦を録画したものであったが、聖剣に斬られた悪魔は傷口部分が消えてしまっていた。

悪魔を滅する聖剣に対して一誠は恐怖し、祐斗は憎しみの対象に殺気立ち、ゼノヴィアは口論をしていたときとは一転して冷静になり、イリナは信仰心から妙な方向にやる気を出している。

そして、結界内で立ち合う四名とは別に、結界の外でも向かい合う者たちがいた。

 

「私は言ったはずよ。絶対に手を出さないでと。なのにあなたはケンカを売り、さらに挑発を何度も繰り返した。どういうつもりなのかしら?」

 

「すみませんでした。申し開きもありません」

 

質問に対して何度も謝罪を返してくる秀次にリアスは呆れたように息を吐く。

 

「自分の苛立ちを発散するために皆を危険に巻き込むようなことをあなたが進んでやるとは思っていないわ。──あの聖剣使いの敵意をイッセーとアーシアから自分に向けさせることで二人を庇おうとしたのね?」

 

「……でも、失敗しました」

 

「褒めるわけにはいかないけど、今回にかぎってはあなただけを責めるというのもね。だけどあそこまで執拗に挑発をする必要はなかった。最悪、殺されていたかもしれないのよ?」

 

リアスも目の前の下僕のことが少しずつ理解できるようになってきていた。

この下僕は不器用で無鉄砲──そして、身内の安全を守るためなら自分の身を差し出すことに少しの躊躇もない。

それは秀次なりの優しさだと思いたいが、同時に言いしれない不安をリアスは抱く。

 

「二人の勝負が終わったら、あなたも戦うことになるわ。教会の信徒である彼女たちの信仰をあなたは真っ向から否定した──あれだけのことを口にした以上、彼女たちも本気で倒しにくるはず。もちろん、シュージを殺そうとしたら私たちは全力で彼女たちを止めるけれど」

 

「部長は俺があいつらに負けると思っているんですか?」

 

「……勝つ自信があるの?」

 

「あいつらの実力を見るまで断言はしませんが。でも俺は負けると思って勝負に挑むようなバカではないですよ」

 

リアスとしては下僕たちが無事に戦闘を終えられればそれでいい。

特に現在の祐斗はとても冷静には見えず、大事に至らないかリアスとしては心配しきりなのだ。

だが、アーシアを──可愛い下僕をあちらの都合で身勝手に処断しようとした彼女たちに対して腹を据えかねているのも事実。

 

(できることなら、勝ってほしいわね)

 

リアスがそう密かに願った直後のこと。一誠がブーステッド・ギアを起動し、驚いたイリナとゼノヴィアが気を取られた隙に祐斗が動く。

ゼノヴィアを斬りつけようと振るわれた魔剣は彼女の聖剣に容易く受け止められる。

 

「『魔剣創造』に『赤龍帝の籠手』。さらにアーシア・アルジェントが持つ『聖母の微笑』。我々にとって異端視されている神器ばかりだ。悪魔になったのも必然と言えるのかもしれないな」

 

「僕の力は無念のなかで殺されていった同志の恨みが生みだしたものでもある!この力で、エクスカリバーを持つ者を打ち倒し、そのエクスカリバーを叩き折る!」

 

祐斗の過去を知らない秀次でもこれまでに出てきた数少ない情報から推察はできる。

エクスカリバーと祐斗の同志との間でなんならかの事件があったのだろうと。

 

「こちらもいくよ、イッセーくん!」

 

イリナも斬りかかっていくが、一誠は攻撃も防御もせずに回避のみに集中する。

彼のブーステッド・ギアは倍化すれば強力だが、倍化中は無防備になるうえに時間も要する。

相手との力量差もわからないのでとにかく回避に専念し、上げられるだけ上げてから攻撃に移る戦法を取っていた。

その戦い方に文句はなかったが、ニヤついた顔をする一誠に秀次は呆れた様子で息を吐く。

 

「あんのバカは……幼馴染み相手にやろうと考えるかフツー」

 

「……気をつけてください。イッセー先輩は手に触れた女性の服を消し飛ばす力を持っています」

 

「小猫ちゃん!?」

 

洋服破壊を狙っていることに気づいた小猫がイリナに忠告したことで一誠は抗議の眼差しを彼女に向けるが、帰ってきたのは冷たい視線だ。

 

「……女性の敵。最低です」

 

「真面目に戦えや」

 

「これでも真面目に戦ってるよ!」

 

「なんて最低な技なの!イッセーくん!悪魔に堕ちただけでなく、その心までも邪悪に染まって!ああ、主よ。この罪深き変態をお許しにならないでください!」

 

「そんなかわいそうな奴を見る目で見るな!」

 

仲間からの痛烈な批判に続き、敵であるイリナからも憐憫と侮蔑の視線を向けられる一誠。

おおよそ戦闘中とは思えない会話が繰り広げられる横で、祐斗は炎の魔剣と氷の魔剣の二刀流でゼノヴィアに斬りかかる。

 

「『騎士』の軽やかな動き、そして炎と氷の魔剣か。だが甘い!」

 

祐斗の素早さに翻弄されるどころか、ゼノヴィアは聖剣の一振りで魔剣を斬り砕く。

 

「我が剣は破壊の権化。砕けぬものはない」

 

ゼノヴィアが聖剣を振り下ろすと、地面に巨大なクレーターが生み出される。

七つに分かたれたエクスカリバー。彼女が振るう『破壊の聖剣』は名の通り破壊力に秀でている。

その一撃を目の当たりにした一誠たちは驚愕し、祐斗も緊張から表情を険しくさせた。

 

「もう!ゼノヴィアったら、突然地面を壊すのだもの!土だらけだわ!でも、そろそろ決めちゃいましょうか!」

 

イリナもさらに加速して一誠へと距離を詰める。

対する一誠も身体能力を強化し、イリナの剣撃を避けながら彼女の体に触れようとする。

合計四回の倍化による強化に加え、イリナの裸体を拝みたいというスケベ心が一誠の動きをより機敏にさせていった。

 

「女を無力化するって意味ではかなり有効な技だが……いやでも戦闘中に服が破けるなんて普通にあるし……それにいまは服だけだけど今後は武装破壊も視野に入れば……」

 

「シュージ、何をブツブツ言っているの?」

 

「どうやらイッセーくんの『洋服破壊』について真剣に考え込んでいるようですね」

 

「……真剣に考えるほどの技じゃないです」

 

『洋服破壊』の実用性とモラルの狭間で大真面目に熟考する秀次にリアスたちも、兄とは違う方向に何かがズレていると呆れていた。

そして、ついにイリナの動きに追いついた一誠が彼女の喉元に迫る。いやらしい笑みを浮かべながら期待に胸を膨らませて飛び込む一誠。

──が、イリナは触れるか触れないかの瀬戸際で身を屈めて一誠を避けていた。当初の狙いから大きく外れた彼の体は宙を飛び、その先にいるアーシアと小猫のもとへ向かう。

直後、二人の肩に一誠の手が触れてしまい、彼女たちの衣服は消し飛んで丸裸にされた。

 

「っ──!」

 

「いや!」

 

小猫は声にならない悲鳴を上げ、アーシアは恥ずかしさから身を屈める。

まだ幼さの強い二人の裸であったが、一誠は鼻血を噴き出しながら内心で感謝を伝えるほどに喜びを隠しきれていなかった。

その結果、小猫は無言で殺気を放ち始め、一誠は慌てて弁解を始めるが一度怒りに火がついた彼女が許してくれるはずもなく──。

 

「……この、どスケベ!」

 

「ぐっふぅぅぅぅぅ!」

 

どてっ腹に重たい一撃を食らわされた一誠は再び空を舞い、地面に激しく叩きつけられたあとはしばらく立ち上がれなくなっていた。

 

「仲間には使わないとか言ってたくせに……自業自得だな。腹に一撃だけで許してもらってむしろラッキーなんじゃねえの」

 

秀次は呆れたため息を吐き出し、すぐに自分が着ていた上着とワイシャツを脱いで小猫とアーシアに投げ渡す。

 

「あ、ありがとうございます。シュージさん」

 

「…………ありがとうございます」

 

恥ずかしがりながらも感謝を伝えるアーシアと若干の間を開けて礼を言う小猫。

黒のノースリーブシャツになった秀次は何食わぬ顔で準備運動を始めていたが、そんな彼に小猫は無言で近づいていった。

 

「一応確認しておきますけど……先輩も見ましたよね?」

 

「はあ?見たって何を……ああ、塔城とアーシアの裸か。でもさすがにあれは不可抗力だろ。それに安心しろって。俺はアーシアのことをそういう目で見てねえし、小五ロリの裸を見て興奮する変態でもね──」

 

不用意な発言を超えてデリカシー皆無の挑発と捉えた小猫は秀次のどてっ腹にも容赦なく本気の右ストレートを叩き込んでいた。

その場でのた打ち回りながら悶絶する秀次を小猫は絶対零度の視線で見下ろす。

 

「……たとえ不可抗力の事故でも女の子の裸を見たら普通は謝りますよね。それをわざわざ言わなくてもいいことを言って……」

 

「す、すみませんでしたァ……」

 

「チッ……ちょっとは優しいかもと見直しかけていたところですが勘違いでしたね」

 

「し、辛辣ぅ……」

 

悶える秀次から鼻を鳴らしてそっぽを向く小猫。そんな二人を見てリアスたちが呆れ混じりに苦笑いしていると、気合を持ち直した一誠が立ち上がってイリナとの戦いを再開する。

顎を狙った一誠の拳が当たる寸前で空を切ると、イリナの顔つきが変わった。

 

「……ゴメンなさい。あなたを少し見くびっていたようね。いい動きだわ」

 

先ほどまでの信仰に酔う信者の顔は消え、教会の戦士としてのイリナが垣間見えた。

その直後、腹部に走る激痛と体から力が抜け落ちる感覚に一誠は苦しむ。

慌てて体を見てみれば、腹部に小さな傷が刻み込まれており、傷口から微かに煙が上がっていた。

 

「それが聖剣のダメージよ。悪魔、堕天使は聖剣の攻撃をその身に受ければ、力と存在を消されてしまう。たったそれだけの傷でもこれだけのことになるわ。もう少し深く食らっていれば、致命傷だったかもね」

 

一誠とて悪魔になってから戦いの経験は積んでいるが、相手は人間にとって危険な存在を日夜討伐している教会の戦士。くぐり抜けた死線の数も経験も一誠の遥か上を往く。

ほんの少しだけの負傷が致命に繋がる。相手との力量差を把握できずに戦っていた一誠は敗北し、屈辱と痛みに顔をしかめて倒れ込んだ。

そして、残る祐斗とゼノヴィアの戦いも──。

 

「その聖剣の破壊力と僕の魔剣の破壊力!どちらが上か勝負だ!」

 

祐斗はエクスカリバーへの憎悪を形にするように巨大かつ禍々しい見た目の魔剣を創り出した。

しかし、それを一目見たゼノヴィアは落胆の表情を浮かべる。

ゼノヴィアが振るう聖剣は祐斗の巨大な魔剣を一撃で粉々に砕き、続けざまに聖剣の柄頭を祐斗の腹に抉りこんだ。

 

「君の武器は多彩な魔剣とその俊足だ。巨大な剣を持つには筋力不足であり、自慢の動きを封じることにもなる。破壊力を求める?キミの特性上、それは不要なものだろう?そんなこともわからないのか?」

 

刀身の一撃でなくとも聖剣に悪魔が触れてしまえばダメージになる。

血反吐を吐いてその場で膝をつく祐斗にゼノヴィアは冷たい眼差しを送ると、一息入れる間もなく次の相手に剣を向けた。

 

「次は貴様だ。まさかいまの戦いを見て怖気づいてはいないだろうな?」

 

剣を向けられた秀次は無表情のまま、ゼノヴィアの鋭い視線を真っ向から受け止める。

 

「まさか。『吐いた唾は飲めぬ』ってな。やってやるよ」

 

それはまるで、楽しい遊戯(ゲーム)の順番が回ってきた子供のように。

 

それはまるで、腹をすかした獣が獲物を目の前にしたときのように。

 

兵藤秀次は好戦的な笑みを返した。

 


 


 

一誠と祐斗が敗北し、次は秀次が戦う番となる。

 

負傷した二人をアーシアが癒すなか、秀次はニヤニヤと笑いながらゼノヴィアとイリナに訊く。

 

「で、どっちが俺とやる?」

 

「イリナ、ここは私がやろう。あの男と口論を激しくさせたのは私だからな」

 

「どっちが相手でもかまわねえけどな。タイマンで俺がお前らに負けるかよ」

 

秀次の挑発的な態度にはイリナもかなり腹を立てていたが、それはゼノヴィアも同じこと。

なにより、秀次は教会の信仰にケチをつけた。

それはつまり、彼女たちだけでなく教会の信徒全体に喧嘩を売ったことになる。

ここで黙って引き下がれば、目の前の悪魔が助長をすることは火を見るより明らかだった。

 

「ちょっとシュージ!相手の強さはよくわかったでしょう!そんなふざけた態度で戦って、もし大ケガでもしたら……」

 

「大丈夫ですって。それに、部長の眷属がそんなポンポン負けていいわけないじゃないですか。俺が一本、確実に勝ってきますよ。あっとそうだ。結界の強度を上げるのを忘れないでくださいね。さっきの一誠みたいにあいつが結界の外に出て逃げられても困りますし」

 

リアスの忠告も聞く耳を持たない様子で秀次は結界のなかに入ってしまう。

結界内で対峙する二人。ゼノヴィアは未だヘラヘラと笑っている秀次に鋭い視線を刺す。

 

「私たちの強さは信仰の深さと言っていい。それを悪魔ごときに否定されては我慢ならない。だが始める前に一度だけ機会をくれてやる。先の侮辱の言葉を撤回し、詫びるつもりはあるか?」

 

「先の侮辱?……ああ、もしかして信仰の話か?実のところ、俺はそこまで怒ってないけどな。言ったろ?おまえらが何を信じようがおまえらの勝手だって。……だが」

 

「だが?」

 

「おまえは、かわいそうなやつだ。信じたいもののことを何も知らず、考える必要もない。正義の代行者という名のハリボテに仕立て上げられたおまえのことを、俺は哀れに思う」

 

秀次の返答にしんと皆が静まり返るなか、ゼノヴィアは「そうか」と言葉少なく応じる。

構えた聖剣からも。彼女が秀次に向ける視線も。冷たく鋭い殺気に満ちていた。

 

「貴様は一度ならず二度も私の信仰を愚弄し、謝罪の意思も撤回の言葉もないという。ならば手加減は不要だろう。我が聖剣で斬り倒す!」

 

先手を取ったのはゼノヴィア。一気に間合いを詰めて斬りかかっていく。

対する秀次は神器を出現させると、火球を放ちながらバックステップで距離を取ろうとする。

 

「炎を扱う神器か?だが甘い!」

 

向かってくる火球をゼノヴィアは斬り払う。その間に秀次は距離を取っていた。

 

「なるほど。火を放ちながら距離を取り、遠距離から攻撃し続ける。それが貴様の戦い方か」

 

「普段はそうでもないけどな。おまえが相手ならこれが適当だろ」

 

「──私もずいぶんと甘く見られたものだな」

 

ゼノヴィアは軽く膝を曲げると、さらにスピードを上げて秀次との距離を詰める。その素早さは目を見張るものがあった。

だが、目に捉えられないほどではない。祐斗の俊足を見知っている秀次ならば。

一瞬、力を溜めたことで見えたゼノヴィアの進行ルートの先を読み、横薙ぎに振るわれる剣撃を秀次は滑り込むように回避する。さらに追撃を防ぐためにゼノヴィアの足元に火を放った。

地面を這うように燃える火を避けつつ、ゼノヴィアは再び距離を取った秀次を睨む

 

「大口を叩いたわりには逃げることに精一杯か。勝負を挑んでおいて情けなくはないのか?」

 

「悪魔に逃げられてちゃ聖剣使いの名が泣くぞ──って、もう煽るのも面倒せえな。逃げることが情けなくないのかだって?勝つために必要なら恥を飲んで戦うぜ。なんせ悪魔だからな」

 

そう告げた秀次の表情に先ほどまでの悪辣な笑みはなく、途端に真面目な顔になっていた。

秀次は自分の周囲に四つの火球を出現させると、一斉にゼノヴィアへと放つ。

だが、火球が飛ぶ速度はゼノヴィアにとっては余裕を持って対処できる速さ。横薙ぎに払われた火球は火の粉となって散る。

 

「鬼さんこちら、手の鳴るほうへ〜♪」

 

「ふざけた男め……!舐めるな!」

 

手をパチパチ叩きながら煽る秀次。まともに戦うつもりもないのか、鬼気迫る様子で突っ込んでくるゼノヴィアからひたすら逃げ回っていた。

 

「シュージには何か策があるのかしら……?でなければ彼女にはとても勝てそうにないわ」

 

「……先輩も身体能力は優れていますけど、向こうの聖剣使いのほうが確実に強いです。戦闘経験にも差があるのは見てわかります」

 

心配そうなリアスに続いて小猫も二人の実力差を淡々と語る。

秀次とゼノヴィアでは誰の目から見てもゼノヴィアが優勢に見えている。それは事実だった。

しかしただ一人、一誠だけは仲間たちとは違う意見を口にする。

 

「うーん、でもシュージのあの戦い方、どっかで見たことある気がするんだよな……」

 

仲間たちは怪訝な顔となって彼に視線を送るが、一誠自身もその既視感の正体を掴めていない。

そのときだった。秀次とゼノヴィアの戦いに変化が起きる。

突然、ゼノヴィアの足元に火が起こり、彼女は謎の発火現象に訝しげになりながらも回避する。

 

「俺は人としゃべることが苦手だ。特に戦闘中に敵としゃべるなんてことはな」

 

初めは焚き火ほどの大きさだったが、地面に生えた草を燃料としてさらに燃え上がっていく。

 

「だってそうだろ?話しているうちに自分の策やら手札を見透かされるようなバカな真似はしたくねえからな」

 

秀次が話しているうちにも火の手はたちまち周囲にも広がり、さらに最初に燃え始めた場所とは別の場所からも煙が上がり始める。

 

「でも今日は少しだけ話してやる。俺はさっきの戦いをしっかりと見てたんだ。おまえたちのどっちと戦うことになっても必ず勝つために」

 

秀次はゼノヴィアにも見えるように自らの手を眼前に差し出す。その手には水の塊のようなものがふわふわと浮いていた。

 

「こいつは燃える水なんだ。まあガソリンみたいなものだと思えばいい。ここまで言えばもうわかるよな?」

 

秀次はゼノヴィアから逃げ回っている最中、燃える水を気取られないように地面に撒いていた。

そして、火球をあえてゼノヴィアに防がせるように撃っていた。

斬り払われた火球は散り散りになり、小さな火の粉となって燃える水に着火していた。

 

「なるほどな。つまりあえて逃げ続けていたと。私を挑発していたのもその策に気づかせないようにするためだったということか」

 

ゼノヴィアに秀次は静かな笑みを返す。

同時に一誠も秀次の戦い方の既視感に気づいた。

ライザーとのゲームに備えて秀次と模擬戦をしたときのことだ。あのときも秀次は逃げ続け、一誠が攻勢に出たタイミングで手痛いカウンターを食らわせた。

逃げ回りながら淡々と準備を進め、相手が気づいたときにはもうすでに罠にはめている。これが秀次の必勝パターンなのだろう。

観戦していた全員が秀次の勝利を予感した──。

 

「呆れたやつだ。こんな拙い策で私に勝てると思ったのか?」

 

ゼノヴィアは破壊の聖剣を振りかぶり、周囲の地面を薙ぎ払った。

吹き荒れる剣風は周囲の火の手を振り払い、巻き起こった砂塵が消火する。

 

「火は燃えるものがなければいつかは消えるものだろう?私の『破壊の聖剣』なら火も燃えるものもすべてまとめて吹き飛ばせる」

 

秀次にとっては勝利の灯火にも等しいものをゼノヴィアはたった一撃で消し去った。

さしもの秀次も目を見開いて絶句しており、ゼノヴィアは勝負を終わらせようと駆け出す。

袈裟に振り下ろされる聖剣を秀次は額に汗をにじませながら間一髪避ける。

 

「ほう、まだ避けるか。だが策も通じず、攻撃も私には当たらない。どうやって勝つつもりだ?」

 

ゼノヴィアの冷たい問いに秀次は答えられない。

渾身の策を真っ向から潰された以上、返す言葉など当然なかった。

かといって、ゼノヴィアの攻撃を避け続けながら新しい策を練るというのも至難を極めている。

悪魔にとって聖剣の一撃はかすめただけでも致命傷になるため、一度でも当たれば負ける。

しかし、回避に徹していては勝利はない。どこかで攻めに転じなければいけないが、秀次とゼノヴィアの間には明確な実力差がある。

 

「──もう、貴様に勝ち目はない」

 

逃げ続ける秀次の顔に先ほどまでの余裕はない。聖剣のプレッシャーが彼の体力や精神、判断力を凄まじい勢いで削っているからだ。

苦し紛れに地面に火を放ってみるが、攻撃のタイミングを読んだゼノヴィアは防御をせずに火を避けて秀次との間合いを一瞬で潰す。

またも袈裟に振り下ろされる斬撃。秀次は必死の思いで避けようとする。

 

「戦闘経験の浅さ、それが貴様の敗因だ」

 

しかし、それは巧妙なフェイントだった。振り下ろしの途中でゼノヴィアは高速の突きを放つ。

秀次も慌てて半身を引いたものの、完全には避けきれなかったのか脇腹の服が裂けていた。

肉には届かずとも、触れてしまった。その危機感に秀次の動きがわずかに鈍くなる。隙を逃さずゼノヴィアは秀次の懐に侵入し、祐斗に食らわせたように聖剣の柄頭を彼の腹に叩き込んだ。

 

「──む」

 

確実に、叩き込んだと思った。だが聖剣を通じてゼノヴィアの手に伝わる衝撃は柔らかい腹を突いた感触とはまた違ったものだ。

 

「その動きは、さっき見たってなァ!」

 

秀次は腹を聖剣の柄頭で突かれる瞬間、瀬戸際で左手を滑り込ませてガードしていた。反撃に秀次は火の息吹を吐き出す。

ゼノヴィアは回避のために走り出すが、彼女の背を追うように秀次は火を吐き続けた。

 

────。

 

炎の海と化した戦場で二人は静かに睨み合う。

焼け野原を背後に立ち尽くすゼノヴィアの体には傷一つなく、対する秀次は顔中汗まみれで誰の目にも彼の劣勢が伺えた。

 

しかしその直後──予想外の光景に二人の戦いを観戦していた全員の度肝が抜かれる。

 

「うっ……」

 

秀次の拳を避けたはずのゼノヴィアが──膝を屈していた。

その光景にリアスたちは目を見開いて驚き、イリナは困惑した様子で仲間の名前を呼ぶ。

 

「ゼノヴィア!」

 

おびただしい量の汗を流し、苦しげな表情で呻く相棒の姿にイリナは激しく狼狽していた。

 

「ゼノヴィアにいったい何をしたのよ!?ゼノヴィアは確実にあなたの攻撃を避けていた!なのになんで!」

 

苦しみに満ちた表情のゼノヴィアから視線を外さずに秀次は口を開く。

 

「俺たちグレモリー眷属はこの間、初めてのゲームを経験したんだ。しかも相手は不死身のフェニックスの悪魔。正攻法じゃ勝てないと、俺は策を練ったよ。そのときも罠を仕掛けて戦った」

 

秀次の話を聞いて当事者ではないイリナとゼノヴィアはますます混乱する。

だが、リアスたちは知っていた。あの戦いの結果とその後の秀次の気持ちを。

 

「結果は惨敗。相手を罠にかけたところまではよかったが、そいつは不死身なだけじゃなくちゃんと強かった。そんな相手と戦って俺は学んだよ。俺ごときが作った罠なんて、本物の強者には毛ほども通じねえってな」

 

秀次の脳裏に焼きつく敗北感。必死に考えた策を真っ向から打ち砕かれた。さらに自分が人質に取られたせいで主は危機に陥り、兄は腕を犠牲にしてしまった。清々しいほどの負けだ。

 

──清々しい負けなどない。負けは負けだ。

惨めで、無様で、取り返しがつかなくて、反吐をぶちまけたくなる不快な結果──それが敗北。

 

ゆえに、兵藤秀次は勝利を欲する。

勝利とその先にある喜びのためなら、どんな手段も厭わない──そんな、基本的なことを思い出させられた敗北だった。

 

「いくら神さまや天使からのバックアップがあるといっても、おまえは所詮人間だ。俺は火を扱う悪魔。炎熱に耐性がある俺と人間のおまえが火事場でいつまでも戦い続けたなら、どっちが先に力尽きるかは明白だ」

 

位置取りも。戦術も。露骨な挑発も。すべてはゼノヴィアを出し抜くために秀次が用意した罠。

まさに、悪魔のゲームメイク──。

重度の脱水症状と中度の熱中症によって引き起こされた意識障害でゼノヴィアの瞳はもうほとんど焦点が合っていない。

 

「おまえも強かったよ。それなりには」

 

完全に意識が落ちたゼノヴィアを秀次は真顔で見下ろしていた。




無双系主人公よりも、敗北を糧に成長していく系主人公を描いていきたいので、オリ主にはこれからも逆境と苦難の道を歩ませます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。