ハイスクールD×D 終焉に抗う暁の太陽 作:ドラゴン大好きT
投稿主、がんばりたい。書きたい意欲はある。
時間もいまは余裕があるので。
追記・サブタイトルを変更しました。
今朝は兵藤家の歴史においても、もっとも不思議な朝だったと思う。
裸の美少女と裸の息子が同衾していた事実に、母さんと父さんはとても困惑していた。
俺だって、治療だと伝えられていなければ……。
いや、伝えられたあとでも半信半疑だ。だがそんな俺の思惑を吹き飛ばすような出来事を見せられてしまったのだから困る。
一誠との関係を問い詰めた両親を、先輩は謎の力で黙らせてしまったんだ。
まるで催眠術にでもかけられたような両親の姿に俺はかなり恐怖した。俺たちの傷を治療したり、あの人は何者なんだ?
悪魔だと先輩は自称していたが……それは自称ではなく本当ってことか?だとしたら、この世界にはグレモリー先輩のような悪魔がたくさんいるってことじゃないのか。
人間社会に紛れた、別の生き物が。
***
朝の一幕を見せられ、俺は普段とは違う家に居心地の悪さを感じ、いつもより早く登校していた。グレモリー先輩も我が家で平然とご飯を食べるんだもん。両親の様子もおかしいし……。
自分の席に着席した途端、俺は疲労感から机に突っ伏した。
昨日の夜は見知らぬ不審者に襲われ、今朝は先輩と一誠のおかげで家は大騒ぎ。
朝の日差しはやっぱりキツいし、なにより昨日は寝ていない。疲れを感じても当然だ。
だけど寝れる気はしない。冷静になろうとすればするほど、昨日の夜のことを思いだす。
一誠が光の槍に腹を貫かれて、血を流しながら倒れ込む。あんな姿……もう見たくないよ。
昨晩の忌まわしい記憶を思いだしてため息を吐いていると、肩に優しく手を置かれる。
「シュージくん、だいじょうぶかい?」
隣の席に座る祐斗が心配そうに声をかけてくる。俺は体を起こしてぐっと背伸びをし、疲労を表情に出して祐斗に視線を送っていた。
「んん……全然、だいじょうぶじゃない!ここのところ、変なことばっかりだ!一誠に彼女ができたのもおかしいし、それを皆が忘れているのも。そして、昨日の夜も……」
そこまで言いかけて俺はハッとする。俺はなんてことを言いかけたんだ。
翼の生えた不審者にいきなり襲われて、突然現れたグレモリー先輩に助けられましたなんて、当事者の俺と一誠以外に誰が信じるんだよ。
幸いにして、教室にはまだそこまで人はいない。俺の発言をちゃんと聞いていたのは祐斗だけだ。でも祐斗にだって天野さんの話は何度も聞いていたし、知らないと答えられた。
変なやつだと思われているだろうなと気を落としていると、なぜか祐斗まで顔色を曇らせる。
「実はね、秀次くん。──キミのお兄さんの彼女のことを僕は知っていたんだ。この場合、覚えていたというべきなのかな」
……は?
「え、でも……知らないって言ってたよな?」
「部長に隠すようにと言われていてね。今日の放課後、一緒に旧校舎に来てくれないかな。部長がすべてをお話してくれるはずだから」
祐斗の言葉に俺は唖然とする。部長に隠すようにと言われた?祐斗は天野さんのことを知っていたのか。それをなぜ隠す必要が──。
そのとき、俺はようやく気づいた。祐斗は部活動に所属している。『オカルト研究部』という学園内でも珍しい部活動に所属していた。
そして、オカルト研究部の部長は──グレモリー先輩だ。これは偶然の一致ではないだろう。
「何者なんだよ……。グレモリー先輩って」
「それもまだ言えないんだ。ゴメンね。騙すようなことをしてしまって……」
祐斗は申し訳なさをにじませた声を発して、俺の目の前で軽く頭を下げる。俺が天野さんのことをしつこく聞いても、祐斗は知らないと答えた。
隠しこそしたが、突っぱねることもなくちゃんと話を聞いてくれた。だから──。
「気にしてない。といえば嘘になるが、そっちにも事情があるみたいだしな。放課後までおとなしく待つことにするよ」
「そう言ってくれると、僕も助かるよ」
「おう。俺も今日の放課後が楽しみになった」
ここ最近の謎がようやく明かされる。モヤモヤとした気持ちが晴れる。なら文句は言わずにおとなしく放課後まで待とうじゃないか。
祐斗との話し合いが終わったころ、教室にいるクラスメイトたちが急に騒がしくなった。
理由は我が家の変態兄貴こと兵藤一誠と、学園のアイドルのグレモリー先輩が一緒に登校してきたからであった。
男女問わずに人気のある先輩。男女が口をそろえて変態と蔑む一誠。この組み合わせに数々の生徒が悲鳴を上げ、教室の窓に張りついて二人の姿を目で追っていた。
「ははは。皆、注目しているね」
「笑ってる場合かよ。なんだって先輩も、一誠と一緒に登校してきたんだか……」
ニコニコと笑う祐斗に対して、俺は頬杖をついて半目になっていた。早めに登校してよかった。
あんな大騒ぎに巻き込まれるのはゴメンだ。
「秀次くんのお兄さんって、女性関係の噂がなかなかだけど……だいじょうぶかな。部長に手を出したら大変なことになってしまうから」
「お互いに手は出してないって。今朝言ってた。ただ治療と称して、その……」
「あー、うん。わかった。秀次くんはそこまで酷い怪我をしなかったから免れたんだろうけど、大きな傷を受けたら部長の治療を受けることになるだろうね。……僕も一度だけあるんだ」
マジで!?祐斗が苦笑いでこぼした言葉に俺はぎょっとしていた。
その直後、教室の窓に張りついていたクラスメイトたちが俺の机の周りに集まってきた。
皆、そろいもそろって顔をこわばらせ、きょとんとした俺を激しい目つきで睨んでいる。
『どうなってんだ!兵藤弟!』
雷が落ちたかと錯覚するくらいに、一言一句合わさった皆の声が爆発した。その後も大勢の生徒が二人の関係を聞こうと波のように押し寄せ、静かだった教室はあっという間に騒がしくなる。
先生が彼らを怒鳴りつけ、追い払ったころには、俺の疲労感はすでに倍増していた。
放課後、俺と祐斗は一誠がいるクラスまで足を運ぶことになった。廊下で二人して歩いていると、教室から顔を出した女子生徒が祐斗に向かって黄色い声をあげる。
「木場くーん!今日の放課後、一緒にカラオケ行かない?」
「ゴメンね。今日これから部活があるんだ」
イケメンスマイルで彼女たちの申し出をさらりと断ってしまう祐斗。毎度思う。そんなに笑顔を振りまいて疲れないのかと。
女子にはモテモテな祐斗だが、逆に男子からは目の敵にされている。実際にこちらの様子をうかがっている男子たちの目は厳しいものだ。
「けっ、顔がいいからってよ。いいご身分だな」
「バカ、やめろって!隣に兵藤弟がいるだろ」
「俺がいるから……なんだ?」
ドスを効かせた声を発して、ごちゃごちゃ言ってた男子たちを俺は睨む。別にさ。祐斗はおまえたちに何かしたわけじゃねえよな?一誠や松田や元浜みたいに迷惑もかけてねえだろ。
祐斗が女子に人気なのは顔だけじゃねえよ。中身も含めてイケメンだからだ。それを単なる嫉妬心で貶めるようなことを言うってのは……俺も普通にイラつくんだよね。
グツグツと煮えたぎる苛立ちが目にも込められたのか、睨まれた男子だけでなく周りの生徒たちも含めて「ひっ」とたじろいでいた。
「秀次くん、目が怖いよ」
「……はぁ、はいはい。悪かったよ。まあ、祐斗に対して文句を言ってるうちはキミたちに彼女なんか絶対にできっこないって俺は思うよ」
俺も彼女なんかできたことないけどね。
祐斗の注意を受けて俺は片手をひらひらと振る。こういうことを言ってるから、俺は友達が少ないって、それはわかっているんだけどなあ。
そうこうしているうちに俺たちは一誠のクラスに到着し、すぐに目的の人物を見つけた。相手も俺たちが来ていることに気づいていた。
「シュージ……と木場か」
俺から祐斗に視線を移した途端に一誠はおもしろくなさそうな顔をする。ちょっとー。兄貴がそんな反応をしちゃうと、さっきの男子たちに怒った俺の立つ瀬がないんですけど!
「一誠、俺の友人にそんなおざなりな対応しないでくんない?」
「イケメンは俺の敵だ!──って言いたいところだけど、シュージと仲良くしてくれているらしいからな。話くらいは聞く。何の用だ?」
「リアス・グレモリー先輩の使いできたんだ。
シュージくんにはもう話を通しているから、三人で行こうか」
「というわけだ。行くぞ」
俺は早く話を聞きたいんだ。祐斗の先導のもと、俺と一誠は校舎の裏手に移動する。
しばらく歩いていると、俺たちの目の前の間に木造の古い建物が見えてくる。現在は使用されていない旧校舎で、周りを木々に囲まれているため、近寄りがたい独特な雰囲気のある建物だ。
どうやらグレモリー先輩は旧校舎のなかで俺たちを待っているらしい。校舎内はきちんと掃除しているのか、教室も廊下も塵ひとつ見当たらない。
そして、俺たちは目的の場所にたどり着く。戸にオカルト研究部の名札がかけられた教室だ。
「部長、連れてきました」
祐斗は丁重にノックをして、なかにいるであろう人物に声をかける。
「ええ、入ってちょうだい」
先輩の声が返ってくると、俺たちは教室に入っていった。室内はろうそくの灯りのみで、辺り一帯に謎の文字が記されている。目新しいものに俺も一誠も目を丸くして見回していた。
教室の中央には巨大な円陣。漫画とかアニメで出てくる魔方陣みたいだ。あとはソファーとデスクがいくつか配置されていたのだが、ソファーにある少女が鎮座していた。
名前を塔城小猫。俺たちの一つ年下。高校一年生なのだが……どう見ても小学生なんだよ。体型とかじゃなくて身長とかもろもろを鑑みても小学生高学年がいいところだ。
異名は学園のマスコット。可愛らしい見た目と顔立ちだが、いかんせん無表情だ。
「こちら、兵藤一誠くんと兵藤秀次くん」
「……どうも」
黙々と羊羹を食べていた塔城さん。祐斗から俺たちの紹介を聞くと食べる手を止めて、頭を軽く下げてあいさつしてきた。
「あ、どうも」
「どうもはじめまして」
俺たちも頭を下げてあいさつを返す。
しかし、この学園は美少女が多い。男子どもが飽くなき妄想をはかどらせる理由もわかる。
そして、白髪かぁ……。彼女の髪色を見て、遠き日の過去を俺は思いだしていた。
「……私の顔に何か?」
ぼーっとしている俺に塔城さんは訝しげな視線を送ってくる。見つめすぎたな。
「なんでもないよ。食事を邪魔して悪かった」
俺が首を横に振ると、塔城さんは再び黙々と羊羹を食べ始めていた。
この学園には紅い髪をした先輩もいれば、白い髪色の塔城さんもいる。別のクラスだが同じ学年には青い髪や桃色の髪の女の子もいる。彼女たちは普通に生活している。本当に喜ばしい話だ。
そのとき、俺の耳に水を流す音が聞こえてきた。どうやら室内の奥にシャワー室があるようで、誰かがシャワーを浴びている。
俺はすぐに視線を別の場所に移したのだが……。
「くぅー!ここはなんて素敵な部室なんだ!」
隣で一誠が鼻の下を伸ばして、シャワーカーテンに透ける女性の肢体を視線で舐め回していた。
これだからダメ。変態な兄貴はいつもこう。
「……いやらしい顔」
「すみません。うちの野獣が。しつけがなっていないもので」
塔城さんの至極当然なツッコミに俺は軽く頭を下げた。本当に勘弁してくれって。後輩に頭を下げなきゃいけない状況を作るなよ。
「おい!野獣はともかく、しつけがなっていないってのはなんだ!俺は犬ですか!?」
「年中興奮状態なおまえは、野犬よりも手がつけられない存在だけどな!」
ガルルルと真っ向から顔を突きつけて火花を散らし合う俺たちに、祐斗は苦笑いを顔に浮かべ、塔城さんは無視して羊羹を食べ続けていた。
シャワーを浴びていたのはグレモリー先輩。彼女に付き従うようにもう一人、女性が姿を現す。
名前を姫島朱乃。グレモリー先輩と同じ三年生。いまでは珍しい黒髪のポニーテールで、和風感漂う佇まいから大和撫子を体現していると、男女問わず憧れの的になっている先輩だ。
グレモリー先輩と姫島先輩は学園の二大お姉さまとして名を馳せている。学園の有名人が揃い踏みとは。オカルト研究部、恐るべし。
「あらあら。はじめまして、私、姫島朱乃と申します。どうぞ、以後、お見知りおきを」
「こ、これはどうも。兵藤一誠です。こ、こちらこそ、はじめまして!」
「はじめまして、兵藤秀次です。よろしくお願いします」
笑顔で丁寧なあいさつをしてくれる姫島先輩に、俺たちも緊張しつつあいさつする。
水気を髪から拭き取ったグレモリー先輩が部屋の上座に座る。彼女の碧眼が緊張している俺たちをじっと捉えていた。
「私たち、オカルト研究部はあなたたちを歓迎するわ。悪魔としてね」
今回は短め。次話から悪魔の話へレッツゴー。