ハイスクールD×D 終焉に抗う暁の太陽   作:ドラゴン大好きT

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序盤はオリキャラ祭りとなっております。投稿が一ヶ月空いたりしていた理由はオリキャラの設定作りに時間がかかったというのもあって…。


第30話 交渉と対話

 

 

再び大通りに戻った兵藤秀次と銀髪の少女。

出会ったばかりの他人のうえ、秀次は他者とのコミュニケーションがうまく取れないこともあって特に会話が弾むこともなく、目的地である駅近くのファミレスに到着する。

 

「ほら、ここだぜ。俺は先に待たせてるやつらがいるからよ」

 

「うん。私も待ち合わせしてて、皆は先についてるみたいだから」

 

「そうか……じゃあな」

 

「うん。ここまでありがとう。バイバイ」

 

手を振るう少女を見ていると、秀次の胸の奥で感慨深いものが湧き上がってくる。

それは彼自身理解できない懐かしさであったが、不思議と不快ではなかった。

だが、いつまでも店の出入り口で立ち往生しているわけにもいかないと、懐かしさを振り切るように秀次は入店していった。

まもなく銀髪の少女も入店し、自分が待たせていた者たちを見つけて席まで歩いていく。

 

「ごめんね。道に迷って遅くなっちゃった」

 

少女は心の底から申し訳ないと思って謝罪する。彼女の謝罪を受ける者たち。先に席についていた二名の視線が銀髪の少女に向けられた。

 

「あー、やっぱりですか。ほんと、どうにかならないんですかその方向音痴っぷりは。まあ毎度のことだからそこまで気にもしてませんけど」

 

先に席についていた二名のうちのひとり。薄紫色の髪をした美少女は呆れたように銀髪の少女の方向音痴を指摘するが、その顔は笑っていることから本当に気にしていない様子だ。

 

「ファミレスまでの地図も一緒に送ったというのにこれだからな。だから言っただろう。おまえも一緒にこいと」

 

もう一名。黒髪ロングの美少女は無表情で堅物そうな雰囲気を漂わせながら、手に持ったティーカップに口をつけて告げた。

 

「うー、でもこの町のことを少しでも知っておきたいと思ったんだもん。今回は少し長めの滞在になるんだから」

 

「長めに滞在できるといいですけどね。直近に面倒な事案が迫っていますし。これをうまく乗り越えないと私たちの予定も全部ぱぁです」

 

「──堕天使幹部コカビエルに七つに分かたれた聖剣エクスカリバーか。私たちが出張れば特に問題はない相手なんだがな。そういうわけにもいかないのだろう?」

 

「おまえたちは今回の一件で表の舞台に影響が出ないように働く裏方であり、同時に別の舞台で静かに踊る暗躍者だ。きらびやかな劇とはいかず、幕間ほど暇でもない」

 

仰々しい物言いをする少女は席に座る者たちのなかでもより異色の存在感を放っている。

黒い衣服に身を包み、つばが円形になった魔女のようなとんがり帽子を被る金髪の美少女。

知性を感じさせる口調とは裏腹に見た目から察せられる幼さは周りの少女たちよりもさらに幼い。幼女といっても差し支えないほどだ。

 

「めんどいですね。いっそのこと、全部この町の管理者に丸投げしたらどうなんですか?確かこの町を支配してる悪魔って魔王の身内でしたよね。だったら全部任せちゃってもいいんじゃ……」

 

やる気を感じさせない発言をする薄紫髪の少女はそこまで言って自分の発言の意味に気づく。

口に手を当てて少し考え込むと、真面目な表情になって再び話し始めた。

 

「ああ、なるほど……最終的に魔王がこの町に出張ってきて堕天使の幹部と激突。町は崩壊、完全消滅ってオチになります?」

 

「そういうことだ。それに、今後のことを考えてコカビエルの件はこの地を支配する悪魔たちと聖剣を管理する神教側に任せたい。ゆえに私たちは表舞台には絶対に手出ししない」

 

「……でも普通に死にますよね?聖剣を取り戻しにきた教会の戦士も、この町を管理する悪魔も、堕天使の幹部にはとても勝てない」

 

「そこは問題ない。『提携先』も見て見ぬ振りというわけにはいかないからな。尻ぬぐい役はすでに用意している」

 

「なーんだ、準備万端じゃないですか。それじゃ私たちはいつも通りに働くだけ……楽ちんすぎてつまらないです」

 

不平を言う姿すらかわいらしく見えるのだから薄紫髪の少女の容姿は相当だ。

というより、その席に座る少女たちの容姿はアイドル顔負けのかわいらしさで他の客や店員が騒いでもおかしくないのだが、客も店員も彼女たちのことを気にしている様子はない。

薄紫髪の少女は退屈そうな顔のまま、椅子の背もたれに体を預けながらある方向へ目を向けた。

 

「にしても、不用心ですね。周りに変な目で見られてることにも気づいてないのかな?」

 

「悪魔と教会の戦士が同じ席につくとは……見る者が見れば卒倒しかねん光景だな。少しこちら側のことを知っている者ならば気づくだろうが一般人からすれば異常者の集まり程度の認識だろう。私たちも同じようなものだがな」

 

「世間的には私たちのほうが異常者の集まりとして知られてそうだけど……あ、私も何か頼んでいいかな?お腹減っちゃってて」

 

銀髪の少女がそう言った途端、他の少女たちは一瞬身を固めたのちに口を揃えて告げる。

 

「「食べ過ぎ(るなよ)(ないでください)」」

 

「二人とも!?もうっ、そんな言い方しないで!私だって女の子なんだから」

 

膨れっ面になってメニュー表を見始める銀髪の少女の姿を見て、薄紫髪の少女と黒髪ロングの少女は財布の中身を慌てて確認する。

残る金髪の少女は彼女たちに目もくれず、ある一点を見つめながら小さくつぶやく。

 

「未来はすでに動き出している。喜劇になるか悲劇になるかはおまえたちしだいだがな」

 

金髪の少女は自分たちの席から遠く離れた席で話し合う男女を眺め続けていた。

 


 


 

兵藤秀次は自分のことを呼び出した男の姿を見つけて一直線に席に向かう。

そして、向かった先にいた者たちを目の当たりにした瞬間、来てしまったことを後悔した。

 

「……帰っていいか?」

 

「いきなりかよ!?ダメに決まってんだろ!ほら早く座った座った」

 

引き留めようと一誠に席を開けられたことで秀次はため息を吐きながらもその場に留まった。

先に集まっていたのは一誠、小猫、祐斗のグレモリー眷属。さらになぜかシトリー眷属の匙と教会所属のゼノヴィアとイリナまでいた。悪魔と教会の戦士というあまりに異色なメンバーの集まりに秀次は困惑を隠せなかった。

付け加えるなら、祐斗とは現在仲がこじれていることもあって気まずい。ゼノヴィアとイリナは先に喧嘩を売ったことでこれまた気まずい。匙とは出会い頭の一件から再び顔を合わせることもなかったため、現在も継続して関係性は悪い。

つまり、この場には秀次と何かしら因縁を持つ者たちが多く集まっているのだ。

そんななかでの話し合いだというのだから見た途端に帰りたくもなる。呼び出した一誠には八つ当たりのような感情すら向けていた。

 

「それで、なんの用だ?端的かつ手短に用件だけ話してくれると助かるんだが」

 

「少し落ち着けって……あっ、それよりもなんでこんなに遅かったんだよ?秀次は時間にルーズなところはあるけど、約束の時間に遅れるようなことは滅多にないのに……」

 

「それについては悪かった。色々とあったが何を言っても言い訳にしかならないと思うし、個人的な話になるからそのへんは控えさせてもらう。で?この集まりは何で、俺を呼んだ理由は?」

 

道中で女の子を助けて共に店まで来たなんて正直に言うと、一誠が騒ぎそうだと判断した秀次は単刀直入に呼び出された理由を訊く。

一誠も協力してほしいから秀次を呼んだ。心の準備を整えたところで、一誠は秀次の願い通り端的かつ手短に用件を告げる。

 

「ここにいる皆で協力して──エクスカリバーを破壊したい」

 

「……なるほどな。おまえの考えはだいたいわかった」

 

「え、マジで?いまのでわかっちゃったの?」

 

一言で理解したという秀次に衝撃を受け、一誠は思わず疑いの眼差しを向ける。

その間、秀次は両腕を組んで目を瞑り、何かを考えるようにしばらく押し黙っていた。

目を開けたとき、秀次は一誠の助力要請に対する答えを口にする。

 

「わかったうえで、はっきり言わせてもらう。──論外だ。話にならない」

 

「……え?」

 

秀次の答えは冷えきった拒絶。一部の揺るぎもない確固たる意志が秀次の声音からは感じられた。

賑やかに聞こえていた雑踏が一瞬で静まったように感じられるほどの空白を置いて、ショックから立ち直った一誠は慌てふためく。

 

「な、なんでだよ!?イリナやゼノヴィアにはもう承諾してもらってる!それに木場にだって納得してもらってる!」

 

「承諾ね……」

 

一誠の発言を聞き、秀次は疑うような視線をゼノヴィアとイリナに向けた。対する二人も目の前の悪魔に警戒心を強める。

 

「こいつらの目的は聖剣エクスカリバーを堕天使の手から消すこと。それは奪い返すだけじゃなく破壊も視野に入ってる。そこで一誠たちはこいつらの協力者になって争奪戦に参加し、エクスカリバーを祐斗の手で破壊させることで復讐を成就させようとしている……そんなところだな?」

 

「そ、そうだよ……。それでシュージにも協力してもらおうと思って呼んだんだ」

 

「一誠にしては考えたほうだなと思うが、ちょっとリスクがデカすぎる。そもそも今回の一件は聖剣を奪われた教会側の問題で、俺たち悪魔が参戦する理由はないんだよ。それこそ、祐斗の個人的な恨み以外にはな」

 

秀次個人としては祐斗の想いを尊重してやりたい気持ちは大いにある。復讐といっても人命を奪うわけではなく、物体の破壊が目的だからだ。

それが教会にとって貴重な聖剣エクスカリバーであることはこの際無視して。教会の不利益なんて知ったことでもあるまいし。

 

──しかし、問題は悪魔側であるグレモリー眷属と教会側の聖剣使いが手を組むということ。

 

「教会側及びこいつらの上司は今回の一件に俺たち悪魔が関わることを一切許さないとしている。たとえ目的が一致していたとしても、手を貸すこと自体に危険が伴っているんだ。もしこの事実があっちの上役に知られたら最終的な責任は誰に問われると思う?」

 

「それは……えっと……」

 

「──俺たちの主、リアス・グレモリーさまの責任問題になる。しかもここにはなぜか匙くんまでいるときた。責任を問われるのは俺たちの主だけじゃなく、彼の主にもってことに」

 

「そ、それは困る!俺はいきなり呼び出されてわけもわからずここに座らされたんだぞ!それで会長の責任問題になるなんて絶対にダメだ!」

 

巻き込まれただけの匙がそう言うと、秀次の彼に対する認識が少しだけ変化した。彼も主のために働く眷属なのだと理解し、秀次のなかで匙に対する評価が改まった瞬間だった。

なお、このときの匙は主であるソーナに怒られたくないとか、エクスカリバーの破壊に巻き込まれたくないなどの自己保身な考えもあったが。

 

「要するに、おまえは私たちの協力が上の連中にバレることを恐れているということか」

 

「そうだ。俺たちがまず一番に優先することは王の安全、次に身内、最後に駒王町のことだ。おまえらは聖剣を回収するためにこの町に入ってきたが本来は俺たち悪魔とは敵対関係だろうが」

 

「それはこちらも理解している。だから悪魔の力ではなく、そこの赤龍帝のドラゴンの力を借りる──と、おまえが来る前に話していた」

 

ゼノヴィアは一誠を指差してそう言うが、秀次は依然として首を縦に振らない。

 

「そんなトンチみてえな話が許されるわけねえだろうが。むしろ頭の硬そうなおまえがそれで納得したことに驚いたぜ。だがな、柔軟に考えられるのは状況に直面してるやつだけでこの場にいない上役は岩頭ってのが相場なんだ」

 

そこまで言い切ると秀次は深く息を吐き、ゼノヴィアの目を真正面から見て断言した。

 

「正直に言わせてもらうが、俺はおまえらのことがまるで信用ならねえ。だから手は貸さないし、こいつらにも貸させない」

 

「……臆病者のうえに過保護なやつだな。言っておくが、まず初めに協力を求めてきたのはそちらの赤龍帝だぞ」

 

「そうかそうか。だったら保護者権限で今回の件は白紙だ。帰るぞおまえら」

 

話は終わりだと秀次は抵抗なく席を立つ。

だが一誠と小猫と祐斗は協力するつもりで今回の話し合いに参加していたこともあって、すぐに席を離れることができなかった。

彼らの様子を秀次が訝しげに思った瞬間、席に座るゼノヴィアから怒気が放たれる。

 

「もう一度言うぞ。赤龍帝がまず初めに協力を申し出て、私たちはそれを承諾した。それをあとから来た貴様がなかったことにするなど許さない。貴様が臆病風に吹かれて私たちに手を貸すつもりがないのは理解した。ならば貴様だけこの場を去るといい」

 

「いまの発言は教会の戦士(わたしたち)は悪魔に手を貸してもらえなきゃ聖剣を取り戻すこともできねえザコですって認めたってことでいいのか?どうでもいいけどな。こいつらを無理やりにでも協力させようってんなら……俺にだって考えがある」

 

考えがあると言った秀次の顔に先ほどまでの理性的かつ論理的な雰囲気は一切ない。

 

──全身から怒り混じりの殺気を漂わせていた。

 

「次は熱中症じゃすまねえぞ」

 

「いいだろう。あのときは遅れを取ってしまったが今度こそ貴様を斬る。腹ごなしにはちょうどいい運動だ」

 

「ハッ!負け犬の遠吠えにしちゃ出来が悪いな。なら俺も直火でテメェを調理してやるぜ。そこのハンバーグみてえによォッ!」

 

烈火の如く怒る秀次と冷たい殺気を放ちながら傍らに携えていた聖剣に触れるゼノヴィア。

前回の会談でも似たような結末になったことを思い出したグレモリー眷属の面々とイリナは緊迫した面持ちになり、いきなり臨戦態勢になった二名を前に匙は震えだす。

そして、ここは一般の方々も多く集まっている町のファミレスだ。突然喧嘩を始めた二人の男女に周りの人間たちの好奇の視線が集中する。

男女の仲のもつれか、修羅場かと、野次馬のように見ている者も少なくはない。

実際は殺し合い一歩手前の殺伐とした状況だと理解しているのは数名だけであった。

 

「ちょ……!落ち着けって!おまえらはなんで毎回そうなる──」

 

「シュージくん!ちょっといいかな」

 

一誠が喧嘩を止めようと二人の間に割って入ろうと立ち上がったそのときだ。祐斗が秀次の名を呼んでその場の全員の視線を集めた。

 

「シュージくんは彼女たちと協力しないし、僕たちにも協力させない。なぜなら部長に迷惑がかかってしまうから。それはわかったよ」

 

「わかったんならさっさと帰るぞ。これ以上こいつらと会話するのは時間の無駄だ」

 

「──それがそうでもない。これから僕が話す内容を聞けばキミの考えも少し変わるかもしれないからね」

 

「なんだと……?」

 

思わせぶりな祐斗の発言に興味が引かれたのか、秀次の顔に冷静さが少しだけ戻った。

すかさず祐斗は話す。前日、エクスカリバーを持って襲いかかってきた者のこと──フリード・セルゼンにまつわる話を。

 

「フリードだとォ……?」

 

「うん。僕だけじゃない。僕の前に悪魔祓いやら神父を殺し回っていたようだ」

 

「あのイカれ野郎がまだこの町に、それもエクスカリバーを持っていただと……」

 

フリードの名が出された途端、秀次の顔から怒りの感情は綺麗さっぱり消えてしまっていた。

冷静に何かを考えるようにただでさえ鋭い目つきをさらに細めて黙り込む。そんな秀次の姿を見た一誠は密かに安堵の気持ちを強めた。

弟が考えているときは静かに見守る。そうすればこの弟は困り事に対する打開策や解決案を必ず見つけ出すと信じているから。

 

「なるほど……確かに、そういうことなら乗ってやってもいいかもな」

 

「乗ってやってもいい……?」

 

ゼノヴィアだけでなく他の皆も訝しげな視線を秀次に注ぐなか、視線を向けられた本人は仕方ねえなあと一言加えて自分の考えを話し始めた。

 

「前提として、俺たちが優先することは第一に王であるリアス・グレモリーさまのこと。次に身内や仲間たち。その次にくるのが俺たちのなわばりである駒王町のことだ。ここまではさっきも俺が言ったから理解できるな?」

 

うんうんと一誠たちが頷く姿を確認し、秀次は人差し指を立てて説明を続ける。

 

「俺たちのなわばりである駒王町で、エクスカリバーという面倒な代物を持ったフリードっていう害虫が暴れてる。あいつのヤバさ加減は見たやつならわかると思うがはっきり言って異常だ。ほおっておけば悪魔の俺たちだけじゃなく、俺たちのお得意さまや呼び出そうとする人間にも危害を加えるだろう」

 

これは前回、初めてフリードと出会った一誠もよく知るところだ。フリードは召喚先の人間を残虐すぎる方法で殺していた。

 

「そこでだ。駒王町の平和を乱す害虫は俺たちの手で駆除する。その最中に害虫が持っていた変なおもちゃの一本が消えたとしても、気にするやつは誰もいないだろうな」

 

「……虫はおもちゃなど持たんぞ?」

 

「そういうことを言ってんじゃねえッ!バカは頼むから黙ってろ!」

 

例え話の通じないゼノヴィアに怒りながらも秀次は自分の考えを話し終えた。

 

「えーっとつまり……フリードを倒すために俺たちは動く。その際に木場にはあいつが持ってるエクスカリバーを破壊してもらう。そのためなら協力してもいいってことか!」

 

「協力じゃねえ。あくまで目的の一致だ。あいつも元は教会出身のエクソシストだからな。そんな奴が一般人を殺し回っているのを見過ごすような真似はしねえよな?聖剣使い」

 

「ああ、もちろんだ。フリード・セルゼン。奴は教会にとっても処理しなければならない汚点そのものだからね」

 

不成立になるかと思われた悪魔と教会の戦士による共同のエクスカリバー破壊作戦は、フリードという共通の敵によって奇しくも成立した。

話し合いを終えたことでゼノヴィアとイリナは颯爽と消え、彼女たちが食事した分を奢ると約束していた一誠は次の交渉に打って出る。

 

「あー、シュージさん、もしよろしければお金を貸してはくれませんか……?」

 

「はぁ?なんで……まさかテメェ、この話し合いにあいつらを誘うためにこの場は奢るとか約束したんじゃねえだろうな」

 

「そ、そのとおり!いやぁ、やっぱり持つべきものは頭の良い弟だね!奢るって言ったらあいつら手加減なしで飲み食いしてさあ」

 

ヘラヘラと笑う一誠だが、これは何も本心から笑っているわけではない。イリナとゼノヴィアが予想以上に食事したことで財布がピンチなのだ。

悪魔の仕事で多少の稼ぎはあるが、それでも一誠は物欲の強い学生。欲を満たすためには金はとても貴重な消耗品だ。

ゆえに身内である弟に援助を求めたのだが、求められた秀次はぷるぷると震えていた。

 

「なんでッ!何も飲み食いしてねえ俺があいつらの食った分を払わなくちゃいけねえんだクソがァァァァアッ!」

 

激昂した秀次は八つ当たり気味に食事を注文し始め、自分が食べたものと合わせて一誠と割り勘することで譲歩したそうな。

 


 


 

ファミレスを出た一誠、秀次、祐斗、小猫、匙は夕暮れの道を会話もせずに歩いていた。

しばらくして公園にたどり着いた頃、何の前触れもなく秀次が話しだす。

 

「一誠と塔城。それに匙くんも。あとはもう手を引け。ここからは俺と祐斗でなんとかする」

 

いきなりの命令に一誠と小猫は困惑し、いますぐにでもこの場から去りたい匙は突然目の前に垂れ下がってきた蜘蛛の糸に飛びつこうとする。

しかし、匙が秀次の命令に頷くよりも早く一誠が不満の声をあげた。

 

「さっきはフリードを倒すってことで話もまとまっただろ!それなのになんでいまさら手を引けだなんて言うんだ!」

 

「危険すぎるからに決まってんだろうが。相手はあのイカれ野郎だ。それに聖剣エクスカリバーまで持っているときた。そんなやつと戦ったら危ねえだろ」

 

「……そんなのいまさらだろ。戦うんだから危ないなんてことは俺だって」

 

「下手を打ったら死ぬ。死ぬよりも酷い目に遭わされる可能性だってあんだろうが。前回のゼノヴィアやイリナとやった模擬試合とはわけが違う。あいつは確実に俺たちを殺しにくるぜ」

 

反抗していた一誠も食い気味に忠告をしてくる秀次の圧に黙らされる。死ぬという非情な現実を言葉で突きつけられたことで改めて事の危険さを理解したところもある。

 

「危険から逃げることは何も悪いことじゃねえ。引くことが大切な場面は必ずある。絶対に逃げちゃいけない場面も必ずあるがな。今回はそういうわけでもねえんだ。だから──」

 

「いやです。私は逃げません」

 

はっきりとそう口にしたのは小猫だ。一誠には食い下がられると思っていた秀次もまさかの小猫が食い下がる事態に少々面食らった。

 

「意外だな。おまえはもっとこう……さっぱりしたやつだと思ってたが」

 

「……先輩にどう思われていようが知ったことではありません。だけど仲間が危険に飛び込もうとしているなら私もついていきます」

 

「ふーん……そぉかよ」

 

ライザーとのゲームの最中でも小猫はかなり張りきっていたことを思い出した秀次は自分の失言に申し訳なさを感じて顔を背ける。

 

「シュージと木場が戦うって決めたのに、俺だけ不参加ってわけにはいかねえよな。危ないことは改めてよくわかった。そのうえで俺は木場の力になりたい。仲間だからな」

 

「イッセーくん……」

 

仲間であることを強調して改めて決意を口にする一誠に祐斗は憂いのある表情になる。

さらにその顔のまま、今度は秀次を見た。目が合った秀次は訝しげな視線を返す。

 

「……シュージくんはどうしてそこまで?危険なことだって誰よりもわかっているし、教会の関係者と協力することにも否定的だった」

 

「何度も言うが、別にあいつらと協力するわけじゃねえからな。目的地が一緒で、その道中でもしかしたら偶然はち合わせて、たまたま力を合わせることになるかもしれないってだけだ」

 

「……うまくまとまったけれど今回のことで部長には必ず迷惑がかかる。それなのにどうしてキミは僕の復讐を止めようとしない?むしろ手助けしようとしているように思えるよ」

 

なぜ?と目で訴えかけてくる祐斗に秀次は目線を下に落とす。目を合わせているのが気まずくなったわけではなく、自分でもなぜ祐斗の復讐を手伝うのか考えるためだ。

自分の命よりも大事な兄を助けてくれたリアス。彼女のために生きると決めた以上、彼女の利益になることを推進し、彼女の不利益は極力なくす。それが兵藤秀次のリアスへの忠誠だ。

なら祐斗の復讐は止めるべきだ。どうあがいても彼女にとって不利益な結果になってしまう。なのになぜ自分はこうも──。

 

「……別に、俺は仲間の手助けをしたいなんて大それたことは思ってねえよ。それに、祐斗にとって俺は仲間じゃねえみたいだしな!球技大会が終わった日にそう言ってたもんな」

 

そう言って顔を背ける秀次を見て、祐斗は明らかに表情を落ち込ませる。自分の過去の発言が返ってきたことに後悔して。

彼らの話し合いを見ていた一誠と小猫は呆れて深くため息を吐いた。

 

「おまえさぁ……だから友達少ないんだよ」

 

「うるっせえ!黙ってろ脳みそどピンクが!じゃあなんだ!友達だから助けるんだってか!仲間だから助けるってか!俺からすればそんなもんは恩着せがましいってんだよ!」

 

「……ほんと、心底呆れました。世の中にはここまでひねくれたヒトもいるんですね」

 

「やかましいッ!あーもう!だから理由なんかねえよ!祐斗の負担を少しでも減らしたい、だから手伝うだけだ!それでいいだろ、ったく!」

 

ふんっと、これ見よがしに鼻を鳴らして秀次はそっぽを向く。

秀次はずっと考えていた。なぜ祐斗の復讐を止めないのか。なぜ手伝いたいと思うのか。なぜ祐斗の想いが成就してほしいと願うのか。

答えは──でなかった。何を言っても耳障りのいい言葉ばかりで、部外者の自分が祐斗の気持ちに寄り添えるとは思えなかった。

だったら、理由はいらない。言葉も必要ない。

それが兵藤秀次が出した答えであった。

 

「……シュージくん、僕は……」

 

何かを言おうとする祐斗であったが、彼もまた秀次に何と言えばいいのか迷ってしまう。

自分の勝手な行動に手を貸そうとしてくれていることにひとまずは──。

 

「ありがとう。手伝ってくれて」

 

「ハッ」

 

お礼を言う祐斗に対して秀次は鼻を鳴らすだけ。とても和解している様子には見えないが、彼らにとってはそれだけで十分であった。




長い、交渉が。しかもそのあとにオリ主が一誠と小猫を逃がそうとしたもんだから祐斗の過去に触れられてないし…。
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