ハイスクールD×D 終焉に抗う暁の太陽   作:ドラゴン大好きT

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投稿は遅いけど、モチベは燃え尽きてないよ。
投稿が遅いのは全部、崩壊スターレイルとかいうゲームが悪いんだ。


第32話 聖魔激突

 

コカビエル襲来という一大事を寝過ごした秀次を一誠が起こした頃。

駒王学園に先回りしたコカビエルはリアス・グレモリーとその眷属たちを待っていた。

──さらにいえば、その奥に控えている魔王サーゼクス・ルシファーや他の魔王たちが現れてくれることを期待している。

 

「あんなガキどもでは楽しめんだろう。やはり魔王どもだ」

 

コカビエルがエクスカリバーを強奪した理由。

それは──終わってしまった戦争の復活である。

神、堕天使、悪魔の三勢力による長年続いた大きな戦争はとある理由によって終結した。

いや、終結してしまったのだ。コカビエルにとってあの戦争はまだ終わってはいない。

なのに彼の上司と同僚──堕天使の上層部は次の戦争を望まず、さらには敵である聖書の神が作った神器の研究に没頭する始末だ。

だから、エクスカリバーを盗んだ。教会の遺物である聖剣を盗めば天界勢力は必ず参戦するし、魔王の妹を殺せば悪魔側も殺気立つ。堕天使側も否応なしに戦争に巻き込まれるだろう。

 

「平和なぞ、平穏なぞ、望んじゃいないんだよ。俺に必要なのは──闘争だ」

 

狂気に満ちた表情でコカビエルは断言する。彼の脳裏に過ぎるのは遠い昔の戦争の光景。

悪魔と天使と堕天使、それらに従う人間、さらに他種族すら巻き込んだ戦争は多くの血を流させ、死屍累々の地獄を作った。

──仲間も多く死んだ。だがそれでもコカビエルは堕天使の誇りに誓って、戦士としての矜持に誓って、あの戦争に後悔はない。

唯一の心残りは、あの戦争を自分たちの勝利で終わらせられなかったことだ。

 

「俺はもう一度、戦争を起こす。そして必ず、勝利してみせる。この地に住む悪魔どもはそのための贄だ。だが、せいぜい俺を楽しませろ」

 

戦争の再来を望む堕天使は月光を背に悪魔たちを待ち受けていた。

 


 


 

駒王学園のすぐ近くの公園にて、オカルト研究部と駒王学園生徒会のメンバーは集まっていた。

フリードを追っていた木場祐斗とゼノヴィアは依然として姿を現していないが、イリナはコカビエルに負けてエクスカリバーを奪われた。

幸いにも死亡はしておらず、現在はソーナの家で療養させている。さらにコカビエルが待ち受ける駒王学園を生徒会の面々が結界で覆った。

しかし、コカビエルが本気を出せば学園はおろか町すら崩壊するとソーナは予測していた。

 

「攻撃を少しでも抑えるために私と眷属はそれぞれの配置について、結界を張り続けます。できるだけ被害を最小に抑えたいものですから。学園が傷つくのは耐え難いものですが、堕天使の幹部が動いた以上、堪えなければならないでしょうね」

 

自分たちの学園に被害が出ると知り、その場に集まる全員が強い不快感を抱く。

 

相手は過去の大戦を生き抜いた歴戦の強者。学生である自分たちだけでは勝てるはずもない。

 

対処できるのは同じく大戦を生き抜いた魔王。

 

だがソーナはとある事情から、リアスもサーゼクスに頼りきりになることを避けたいと思って二の足を踏んでいた。

 

「すでにサーゼクスさまに打診しましたわ」

 

「朱乃!」

 

そんな主の心情を理解していた朱乃はすでに独断でサーゼクスに連絡を取っていた。勝手な行動をした下僕にリアスは非難の視線を向けるが、怒り顔の朱乃は毅然とした態度を崩さない。

 

「リアス、あなたがサーゼクスさまにご迷惑をおかけしたくないのはわかるわ。あなたの領土で起こったことでもあるものね。しかも御家騒動のあとだもの。けれど、幹部が来た以上、話は別よ。あなた個人で解決できるレベルを遥かに超えているわ。──魔王さまの力を借りましょう」

 

リアスと朱乃の関係は主と下僕だ。──そして無二の親友という間柄でもある。

朱乃の真剣な眼差しの訴えにリアスも折れ、理解した様子で頷いた。

サーゼクスの加勢が到着するのは一時間後。それまでソーナたちは結界の維持を担当し、リアスたちはコカビエルたちと戦って時間を稼ぐ。

 

「……さて、私の下僕悪魔たち。私たちはオフェンスよ。結界内の学園に飛び込んで、コカビエルの注意を引くわ。これはフェニックスとの一戦とは違い、死線よ!それでも死ぬことは許さない!生きて帰ってあの学園に通うわよ、皆!」

 

『はい!』

 

リアスの声かけに彼女の眷属は気合の入った声で返事する。

──だが、なぜか秀次だけは声を発さなかった。

無表情の秀次はいつになくぼんやりとした様子で星々が輝く夜空を仰いでいる。

そんな秀次の様子に気づいた一誠は思わず声をかけていた。

 

「おい、シュージ!ぼーっとしてんなよ」

 

「……」

 

「おい、聞いてんのか?さっきまで寝てたんだからしっかりしてくれよ」

 

「……聞いてるし、おまえに言われずともわかってるよ」

 

ぶっきらぼうな秀次の返答に一誠は訝しむ。

常日頃からそりの合わない弟だし、口調が荒っぽいところもあるのだが、普段の秀次はこういうときに適当な返事はしない。

決戦前だからだろうか。平時よりもピリついている様子だ。

 

「木場のやつ、無事だといいんだけどな」

 

「……そーだな」

 

てっきり友達の不在を案じているのかと思って話題を振ってみたが秀次の反応は薄い。

 

──いまの秀次を満たしているものは自分でも理解できない謎の不快感。

 

(イラつくな。空はこんなにも綺麗なのに)

 

胸のうちから込み上げてくる謎の黒い感情。

ソレを表に出さないよう秀次は必死に自分を落ち着けていた。

 


 


 

正面玄関から堂々と入るグレモリー眷属たち。

一誠は入ったと同時に『女王』にプロモーションして準備万端になるが、異様な光景を目にして言葉を失った。

校庭全体に描かれた巨大な魔方陣の中心で四本のエクスカリバーが神々しい光を発しながら宙に浮かんでいる。さらに聖剣計画の首謀者、バルパー・ガリレイの姿も見えた。

 

「四本のエクスカリバーをひとつにするのだよ」

 

理解不能の光景に戸惑う一誠とグレモリー眷属たちに楽しげな表情のバルパーは告げる。何をしているのか気にはなるがいまは後回しだ。

なにせここにはエクスカリバーよりも危険な超級のバケモノがいるのだから。

 

「バルパー、あとどれくらいでエクスカリバーは統合する?」

 

空中からバルパーに向かって投げかけられる声に一誠たちが慌てて視線を向ければ、宙に浮かぶ椅子に座り込んだコカビエルと目が合った。

 

「五分もいらんよ、コカビエル」

 

「そうか。では、頼むぞ。さて──サーゼクスは来るのか?それともセラフォルーか?」

 

「お兄さまとレヴィアタンさまの代わりに私たちが──」

 

リアスの言葉を遮る風切音。直後に彼女たちの後方から凄まじい爆音が響き渡り、さらに爆風が衝撃波となって背中を押してくる。

爆風に身を叩かれながら一誠たちが見た先にあるのは体育館──いや、体育館があったはずの場所には一本の光の柱が立てられていた。

コカビエルが投げたであろう光の槍が体育館を跡形もなく消し飛ばした。

想像を遥かに超える光景を目の当たりにしたリアスたちはたじろぎ、恐怖に身を固めてしまう。

 

「しっかりしなさいっ!戦わなければ皆、殺されるだけよ!」

 

そう言うリアスだってコカビエルを恐れている。それだけの力の差をいま見せつけられた。

──それでも生き残るには目の前の堕天使と戦うしかない。

自分と眷属の縮み上がる心を奮い立たせ、一度は緩んでしまった気合を引き締め直す。

 

「ほう、さすがは魔王の妹。ならまずはこいつらと遊んでもらおうか」

 

コカビエルが指を鳴らすと、闇の奥から重い足音を響かせて何かが姿を現す。

十メートルはあるだろう黒い巨体に四本の足は木のように太く、生えた爪は鋭く尖っている。

だが何よりも目を引くのは三つの頭だろう。深紅の瞳に犬のような顔から突き出た凶悪な牙。

 

「──ケルベロス!」

 

地獄の番犬ケルベロス。本来は冥界に続く門の周辺に生息する危険な魔物だが、どうやらコカビエルが持ち込んだようだ。

 

「やるしかないわ!消し飛ばすわよ!」

 

「はい、部長!いくぜ、ブーステッド・ギア!」

 

『Boost!』

 

意気揚々とブーステッド・ギアを起動した一誠だったが、その肩にリアスの手が置かれる。

 

「イッセー、今回私たちはあなたをフォローするわ」

 

「力を高めて、俺がトドメですか?」

 

「いえ、あなたはサポートに徹してもらうわ。高めた力を仲間に譲渡するの。ブーステッド・ギアはあなた自身をパワーアップさせる神器であると同時に、チーム戦でメンバーの力を飛躍的に上昇させるものでもあるわ」

 

強力な魔力を扱うリアスや朱乃を譲渡の能力で強化すればコカビエルにも通じるかもしれない。

 

チーム戦において、一誠の存在はかなり重要だ。

 

「やるわよ、朱乃!」

 

「はい部長」

 

悪魔の翼を出して空へ舞い上がるリアスと朱乃。ケルベロスは彼女たちに炎を吐き出すが、朱乃が炎を冷気で一瞬のうちに凍らせる。さらにリアスが追撃に滅びの魔力を放った。

すると、ケルベロスの三つあるうちのひとつの首が炎を吐いて滅びの魔力を迎撃した。さらに残る首もリアスたちに狙いを定めている。

三つの首がそれぞれ独立して動き、互いにフォローして隙を減らしている。一対一なら倒すにも苦労したことだろう。

 

「隙あり」

 

「躾のなってない駄犬が」

 

だが、数の差と連携はリアスたちのほうが上だ。

飛び出した小猫が炎を吐こうとする頭を叩き、駆け寄った秀次がケルベロスの膝を蹴り抜く。

 

「さらにもう一撃あげますわ」

 

ケルベロスの体勢が崩れたところで朱乃が雷を落とし、さらにリアスが再び魔力を撃ち込んだ。

だがそれでもケルベロスは死なず、鋭い眼光がリアスたちを捉えている。三つ首の連携だけでなくタフネスもそれなりにあるようだ。

その直後だった。一誠は自分の背後から聞こえてくる不気味な唸り声に顔を青ざめさせた。

 

「うわぁ!もう一匹出やがった!」

 

振り返った一誠の目の前には新たなケルベロスの姿があった。

咆哮をあげたケルベロスは一誠とその近くにいるアーシアに向かって駆け出す。一誠が迎撃か回避かを逡巡しているとそのすぐ横を黒い影が炎の跡を残して駆け抜けた。

 

「ったく、しょうがねえなぁ!」

 

神器を起動した秀次はすでに足から炎を噴出して飛び出していた。

ケルベロスの目の前で秀次は地面を踏み、飛び上がった勢いを乗せて顎を蹴り上げる。

残る二つの首は宙に浮かぶ秀次を噛み砕こうと襲いかかってくるが、秀次は蹴り飛ばしたケルベロスの頭を踏み台にし、再び足から炎を噴出するとさらに高く飛び上がる。

空中で軽業師のように身を翻し、追撃に炎球を撃ち出そうと目下のケルベロスに手を向けた瞬間──ケルベロスの首のひとつが宙に舞った。

 

「加勢にきたぞ」

 

現れたのは聖剣を持ったゼノヴィアだ。斬り落とされた頭は塵となって消える。

さらにゼノヴィアは駆け出し、ケルベロスの胴体を両断する。斬られた体は先に落とされた頭と同様に煙を上げながら消滅した。

 

「凄まじいもんだな、聖剣ってのも」

 

自分たちがあれだけ手こずっていた相手を軽く消滅させたゼノヴィアに秀次は空中で舌を巻く。

悪魔の翼を広げて速度を落としながら秀次は五点着地で地面に降り立つ。

 

「ほう、まさかあの男……」

 

退屈そうにしていたコカビエルだが、地面に降り立った秀次を見るとわずかに目を輝かせた。何か彼に興味を引かれる要素があったのだろうか。

同時に一誠も倍化の準備が整った。リアスか朱乃に力を譲渡すればケルベロスを倒せると籠手が自動で知らせてくれたのだ。

 

「部長!朱乃さん!ケルベロスを屠れるだけの力を得ました!」

 

倍化した力を受け取ったリアスと朱乃はそれぞれ不敵な笑みを浮かべる。朱乃は雷をまとった指でケルベロスに照準を合わせた。

攻撃を察知したケルベロスがその場から逃れようとした瞬間、地面から出現した無数の魔剣がケルベロスの四肢を貫いて動きを止めさせる。

 

「逃がさないよ」

 

ゼノヴィアに続いて祐斗も現れた。彼の魔剣によって身動きが取れなくなったところで朱乃の雷が振り注ぎ、ケルベロスは消滅した。

 

「くらえ!コカビエル!」

 

グレモリー眷属が揃ったことを嬉しく思いながらその気持ちを一瞬で切り替えたリアスは間髪入れずにコカビエルに向かって魔力を撃った。

倍化の力を受け取ったことで威力も大きさも増大した滅びの魔力。

──だが、コカビエルはそんな滅びの魔力を片手で平然と受け止める。そのまま手のひらを天に向けて魔力の軌道を変えた。

 

「なるほど。赤龍帝の力があれば、ここまでリアス・グレモリーの力が引き上がるか。おもしろいぞ。これは酷くおもしろいぞ」

 

リアスの魔力を受けた手から上がる煙を見て、コカビエルは楽しそうに笑っている。

そのときだ。バルパーが幸喜の顔となり、四本のエクスカリバーが激しく光り始めた。その光景にコカビエルは称えるように拍手する。

神々しい光が校庭を満たした直後──四本のエクスカリバーをもとに一本の剣が誕生した。

 

「エクスカリバーが一本になった光で、下の術式も完成した。あと二十分もしないうちにこの町は崩壊するだろう。解除するにはコカビエルを倒すしかない」

 

コカビエルの衝撃的な発言に一誠たちは絶句し、秀次は苛立ちをあらわにして舌打ちする。

こうなればサーゼクスの増援も意味をなさない。来た頃には町はもう跡形もなく消し飛んでいる。

 

「フリード」

 

「はいな、ボス」

 

コカビエルの呼び声に反応して暗闇の向こうからフリードが歩いてきた。

どうやらコカビエルは一本に戻ったエクスカリバーをフリードに使わせるつもりのようだ。

フリードと聖剣に鋭い視線を向けるゼノヴィアは同じく戦意を発する祐斗に話しかける。

 

「リアス・グレモリーの『騎士』、共同戦線が生きているのならば、あのエクスカリバーをともに破壊しようじゃないか」

 

「いいのかい?」

 

もはや四の五の言っている状況ではない。ゼノヴィアとしてはエクスカリバーの核さえ回収できれば構わないということだった。

──なにより、もとが伝説の聖剣でも、握っている者がフリードの時点で悪の手に堕ちたも同然。伝説の聖剣だからこそ、フリードに握られている現状が許せないようだ。

 

「おまえも文句はないな?赤龍帝の弟」

 

なぜ自分にまで確認を?と、秀次は軽く驚きながらもゼノヴィアの問いかけに肩をすくめる。

 

「俺たちどころか町まで消滅するかもって状況で文句なんか言わねえよ。でも破壊できる自信があるってことは、なんか策はあるんだろうな?」

 

「ふっ、ああ。こんなときのための、秘密兵器を私は持っているからな」

 

「ブラフじゃないことを祈っとくわ。おまえが嘘をつけるタイプとも思えないけど」

 

自信があるのかゼノヴィアは不敵に笑う。

そうこうしている最中にも祐斗はバルパーを睨みつけながら自分の胸のうちを吐き出す。

 

「バルパー・ガリレイ。僕は『聖剣計画』の生き残りだ。いや、正確にはあなたに殺された身だ。悪魔に転生したことで生き永らえている」

 

「ほう、あの計画の生き残りか、これは数奇なものだ。こんな極東の国で会うことになろうとは。縁を感じるな。ふふふ」

 

バルパーは聖剣計画を企てた理由を話し始めた。

彼は幼少の頃からエクスカリバーの虜になっていたらしい。伝記に描かれたアーサー王のようにエクスカリバーを振るいたいと思っていた。

だがしかし、彼に聖剣の適性は無かった。自分には扱えない剣を扱える者たちに対して、嫉妬以上に憧れを抱いたらしい。

そして、自分では聖剣を振るえないと見切りをつけたバルパーは聖剣を扱える者を人工的に創り出すことに没頭した。

聖剣を扱うには『因子』が必要であり、被験者の少年少女たちが持つ因子ではエクスカリバーを扱うには足りなかった。

 

そこで彼は思いついた。──因子だけを抽出し、集めることはできないかと。

 

「──同志たちを殺して、聖剣適性の因子を抜いたのか?」

 

殺意が込められた祐斗の問いかけにバルパーは懐から光り輝く球体を取り出す。どうやらそれが聖剣適性の因子と呼ばれるものらしい。

 

「この球体はそのときのものだ。三つほど使ってしまったがね。これは最後のひとつだ」

 

「ヒャハハハ!俺以外の奴らは途中で因子に体がついていけなくなって、死んじまったんだぜぇ!ダセえよなあ!いや、俺さまが特別なだけか!」

 

いやらしい笑みを浮かべる二人。悪魔の一誠たちでさえ嫌悪を示すほどの邪悪だ。

──と、そのときだった。それまで黙って聞いていた秀次の体から黒紫色の魔力が噴き出した。

秀次が発しているのは間違いなく殺気だ。その場の全員が気づき、仲間たちが一瞬ビクつくほどの怒りが彼からあふれ出していた。

 

「ヒハハハハ!良い殺気出せんじゃん。なになにー?怒っちゃった?怒っちゃったわけ?」

 

「……いや、まーじでキレそうになっちゃった。でも今回は俺の出番じゃないからさ。おとなしくしておくよ」

 

フリードの挑発に秀次は穏やかな笑みを返す。

仲間たちでも見たことがない満面の笑顔だ。

とても、嫌な笑みだ。寒気すら感じる。秀次が抑え込んだ怒りを紛らわすために無理やり作ったのであろうその笑みはとても不気味だ。

 

「……バルパー・ガリレイ。自分の研究、自分の欲望のために、どれだけの命をもてあそんだ」

 

怒りに震える祐斗がそう告げると、バルパーは手に持っていた因子を手放した。

祐斗は屈んで地面に転がった因子を手に取った。

悲しみも、怒りも、憎しみも、愛しさも、すべてがない混ぜになった複雑な思いで祐斗は同志の形見である因子を握りしめた。

 

──そのときだ。祐斗が持つ因子が淡い光を発し始めた。

光は徐々に広がっていき、ついには校庭を包み込むほどに拡大していく。さらに祐斗を囲むように青白い光がポツポツと浮いてきた。

光は少しずつ形を成していき、青白く淡い光を放つ少年少女の姿が現れた。

 

「この戦場に漂う様々な力が因子の球体から魂を解き放ったのですね」

 

いわゆる霊魂、といったところだろうか。

魔剣に聖剣に悪魔に堕天使が存在しているのだ。ありえない話ではないのだろう。

優しげだがどこか虚ろな顔の少年少女たち。

間違いないだろう──祐斗の同じく聖剣計画の被験者たち、処分された子供たちだ。

子供たちの前で祐斗は涙を流しながら、胸のうちにずっと抱き続けた想いを吐き出す。

 

「……ずっと……ずっと思っていたんだ。僕が、僕だけが生きていていいのかって……。僕よりも夢を持った子がいた。僕よりも生きたかった子がいた。僕だけが平和な暮らしを過ごしていていいのかって……」

 

祐斗の言葉に答えるように霊魂の少年が口パクで何かを伝えた。

 

「……『自分たちのことはもういい。キミだけでも生きてくれ』。彼らはそう言ったのです」

 

読唇術の心得がない面々に朱乃が代わりに話している間にも、祐斗の目からは涙がこぼれ続ける。

彼には声も伝わっているのだろう。少年少女たちは口パクで何かを口ずさんでいた。

──どうやら、歌っているようだ。その歌の正体を元シスターのアーシアは知っている。

 

「──聖歌」

 

祐斗も少年少女たちと共に歌を口ずさむ。

今後、祐斗が聖歌を歌う場面はおそらくない。

本来、悪魔は聖歌を聴くだけでも苦しむ。それを歌うことなど普通の状況ではまず不可能だ。

この場には様々な力が集まっている。普通ではない状況が作った祐斗の生で最後の聖歌だ。

 

『僕らは、一人ではダメだった──』

 

『私たちは聖剣を扱える因子が足りなかった。けど──』

 

『皆が集まれば、きっとだいじょうぶ──』

 

少年少女たちの声が、歌が、一誠たちの耳にも聞こえてくる。

 

『聖剣を受け入れるんだ──』

 

『怖くなんてない──』

 

『神が見ていなくても──』

 

温かい、友を思う気持ちが。生き残った同志の幸せを願う優しさが。

 

『僕たちの心はいつだって──』

 

「──ひとつだ」

 

歌となって祐斗の心に伝えられた。

 

少年少女たちの魂は天にのぼり、ひとつの大きな光となって祐斗のもとに降りてくる。

 

優しい光が、生き残った祐斗を包み込んだ。

 

──そして、その神々しい光が祐斗の神器に新たな力を与える。

 

神器は所有者の想いを糧に変化と進化をしながら強くなっていく。

 

さらに所有者の想いが、世界に漂う流れに逆らうほど劇的な転じ方をしたとき、神器は至る。

 

忌々しい外法、禁じられた手、神器の極致。

呼ばれ方は様々だが、その領域に踏み込める者はいまだ数少ない。

 

いまは亡き同志を想う少年に、暗澹に包まれた世界を斬り裂くための力が与えられる。




祐斗の禁手に至るまでの流れはいつ見てもウルッときちゃう…。

……え?オリ主が出る幕?あるかなぁ?
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