ハイスクールD×D 終焉に抗う暁の太陽   作:ドラゴン大好きT

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今回からヴァンパイア編に入っていきます。
アザゼル、サーゼクスなどなど、四巻は大人たちの活躍が多い気がします。


停止教室のヴァンパイア
第36話 疑わしい大人たち


 

 

 自身の執務室にて、魔王サーゼクス・ルシファーは最も信頼している眷属──『女王』のグレイフィアから報告を受けていた。

 

「以上が天界のトップと堕天使の総督アザゼルからの通達となっております」

 

 グレイフィアに手渡された書類をサーゼクスは神妙な顔つきで読み見る。

 

「コカビエルが起こした今回の騒動で私たち悪魔側は対応が遅れてしまった。まだ弱いリアスたちにコカビエルの対処を任せてしまった。彼らから文句を言われても仕方がないね」

 

「それはお嬢さまが判断を誤ったからです」

 

 グレイフィアの発言を聞き、書類に目を通していたサーゼクスは彼女に視線を向けた。

 

「聖剣使いから話を聞き、コカビエルの名前が出た時点で上役に一報を入れなければならないところを、お嬢さまは自分たちで解決しようとした。その結果、下手すれば眷属もろとも死にかねない状況に自ら陥ったのです」

 

「そうだね……今回は本当に運が良かった」

 

 グレイフィアの厳しい物言いにサーゼクスも今回ばかりは頷くしない。

自分の妹は基本的には理知的なのだが、まだ子供ゆえの甘さや抜けているところが目立つ。

そして、それは自分たちが無意識に甘やかした結果でもあるかもしれない。

 

「……お嬢さまはもっと自分の領分を理解しなければなりません。でなければいつの日か、自分も眷属も殺しかねない」

 

「まあまあ、グレイフィア。この話はそこまでにしよう。私たちが陰口を叩いていても問題は解決しない。リアスの成長は彼女自身とその眷属がなし得るはずだ。大人である僕たちはそれを信じ、もし失敗してしまっても助けの手を差し伸べる。それが大人の義務で、魔王の責務だろう?」

 

 厳しい発言を繰り返すグレイフィアの心情を理解したうえでサーゼクスは話をきり上げる。

リアスのことばかりにかまっていられる状況ではなくなりつつあるからだ。

 

「今回の会談で悪魔側は天界側、堕天使側に和平を申し込む。それをなすために悪魔側が抱えている問題は──」

 

「一部の上級悪魔が『悪魔の駒』を使って他種族を無理やりに悪魔に転生させ、その後に反逆が起こり、最終的にはぐれ悪魔へと身を落とす。この問題は教会を率いる天界側も、神器所有者の管理をする堕天使側も見過ごせない問題かと」

 

 この問題は以前から悪魔側としても何とか改善しなければと魔王たちの間で何度も話している。

だが『悪魔の駒』を完全に撤廃するのは現在の冥界情勢では困難なことである。それゆえこの問題の解決は難航していた。

 

「そして、問題はそれだけじゃない。今回の会談で彼らが追及してくる問題があと一つ──」

 

「煌黒龍の神器を宿す少年がお嬢さまの眷属になってしまったこと、ですね」

 

 サーゼクスの言いたいことの先を知っていたグレイフィアは新たな紙束を取り出した。

 

「煌黒龍の神器の現所有者、兵藤秀次についての調査結果をまとめてあります」

 

 グレイフィアから手渡された紙束。一枚目には秀次の顔写真付きで情報がまとめられている。

短く切り揃えられた癖のない黒髪、愛想が感じられない仏頂面、細身な体格をした一見すると普通の少年のように思える。

だがしかし、書類の文字を追うサーゼクスの目が彼の中学時代の経歴で止まった。

 

「ふむ……ジュニアハイスクール時代、日本で言うところの中学生の頃に二回ほど警察から補導されているね。一年生時は夏休みを前にして暴力沙汰を起こして一カ月間の自宅謹慎処分か」

 

 秀次の経歴を見たサーゼクスはしばし沈黙。

その後、軽く目を瞬かせて再び口を開いた。

 

「これは、神器の影響によるものなのかな?それとも彼自身の生来によるもの?」

 

「不明です。調べられたことは、彼は在学中に学校の生徒や地元の不良を相手に暴れ回っていたことだけです。謹慎処分を受けた理由は当時の生徒会長を病院送りにしたと。その後に生徒会長は学校を転校して町からも引っ越しています」

 

「それはまた……」

 

 ずいぶんな暴れっぷりだと、サーゼクスはそう思った。下手すれば学校を辞めさせられてもおかしくなかったのではないだろうか。

 

「彼はどうしてそこまで暴れていたんだろうね」

 

「わかりません。生徒会長に暴行を加えて以降から問題行動が増えたことは確かです。ですが中学二年生の終わり頃になると、ぱったりとそういった行動をしなくなったと」

 

 理由として考えられそうなものは、やはり卒業や進学に関することだろうか。

もしかしたら、彼なりの行動理念があったのかもしれないがそれは本人にしかわかるまい。

そして、中学時代の経歴にばかり目がいってしまっていたが、彼の奇妙な経歴はさらに以前にもあったようだ。

 

「小学生時は、小学一年生の秋頃までは登校していたがその後に不登校になってしまったと。理由は病気によるもので、結局その後は学校には一度も登校せずに卒業か……」

 

「病気は精神的なものだったらしく、学校内での問題が原因かと最初は考えましたが……調べてみたところ、理由は別でした」

 

 そう告げるグレイフィアは痛ましげな表情。

ここ最近では見たことのない彼女の様子にサーゼクスは少々面食らいながらも一枚目を読み終えて次の紙に目を通す。

 

 二枚目は古い新聞のスクラップ。大見出しに書かれた文字を見たサーゼクスの目が細くなる。

 

「駒王町で起きた殺人事件……」

 

 その日、サーゼクスは秀次の過去を知った。

 

彼が虚無の闇を抱くようになった、原点(オリジン)を。

 


 


 

 とある日の深夜。一誠と秀次は悪魔の仕事をこなすべく、依頼者のもとへと自転車を漕いで二人で向かっていた。

 

「こういうの、二人でチラシ配りをしてた頃みたいで懐かしいなぁ」

 

「言うて、悪魔になってからまだそこまで月日は経ってないけどな」

 

 春に悪魔に転生し、いまは初夏の時期。二人とも悪魔としての仕事はすでに一人でこなすようになっているため、今回のように二人揃って行動する機会はかなり減っていた。

 しかし、今日だけは違う。彼らが向かっている依頼者は一誠のことを気に入ったらしく連日のように呼び出している。秀次は今回、一誠のフォローという名目で共に自転車を漕いで一誠を召喚した依頼者のもとに向かっていた。

 

「部長は俺のこと、信用してねえのかなあ……」

 

 自転車を漕ぐ一誠が突然、浮かない顔でそんなことをこぼす。それを聞き逃さなかった秀次は訝しげな顔で反応した。

 

「急にどうした?」

 

「いやだってさ……俺もけっこう悪魔としての仕事をやれるようになってきたのにシュージをフォローに付かせてきたから。もしかして、俺なんかミスしちゃったのかなって」

 

「ああ、そういうことか……違うぞ。部長は一誠のことをちゃんと信用してる」

 

「そ、そうか?それならよかった」

 

 そうこうしているうちに一誠たちは依頼者の家に到着。かなり高級そうな高層マンションの一室にその依頼者は住んでいた。

 

「よー、悪魔くん。今日も悪いなっと……」

 

 扉を空けて一誠たちを出迎えてくれた依頼者は見慣れない顔の秀次を見てニヤリと笑う。

 

「そっちのキミも悪魔かい?」

 

「はい。俺は兵藤秀次と申します。一誠の双子の弟です。今日は一誠のフォローとして付き添いで参りました。連絡もなしに申し訳ございません」

 

「双子?あんまり似てないんだな。まあそっくりな奴らばっかりでもねえか。んじゃ、上がれよ」

 

 いきなりの秀次の参加に依頼者は特に嫌な顔もせずに彼らを家に上げる。

依頼者は黒髪の怪しい雰囲気の男。外国人のようで容姿は彼らの眷属仲間の祐斗と並ぶか、それ以上にも思えるほどに整っている。

だが、その顔つきや醸し出す雰囲気がどことなく悪党っぽい。それもやり手のボスのような。

そんな相手に連日呼び出されていた一誠は思わずため息を吐いてしまう。

 

「おいおい、依頼者の顔を見てため息とかさすがに酷えんじゃねえか?」

 

 一誠の態度に苦言を呈する依頼者に対して秀次は淡々と謝罪する。

 

「申し訳ございません。お詫びは今日の仕事で返させていただきます」

 

「いいぜ。全然怒ってねえし。というか、おまえはちょっと堅苦しいな。もう少し打ち解けてくれてもかまわないんだぜ?」

 

「……努力します」

 

 依頼者が堅苦しさを指摘すると、秀次は口角を少し上げて答えた。笑ってこそいるがその瞳の奥には強い警戒心が覗いている。

秀次は初対面の相手には警戒心を持つ性質ではあるのだが、この依頼者はどうにも怪しい。

なんとなく、雰囲気が苦手だった。過去に何度も見てきた悪い大人を相手にしているようで、どうしても警戒を強めてしまう。

 

「悪魔くんたち、今日はゲームでもやらないか?昼間にレースゲームを買ったんだ。相手がいなくて寂しくてな」

 

 ゲームをしよう。釣りに行こう。パシリのようにこき使われることもあった。この依頼者は連日こんな調子で大した願いでもないのに一誠を毎日のように召喚している。

 

 だがそれはいいのだ。悪魔は依頼者の願いを叶えることが仕事なのだから。

気がかりなのは、悪魔でなくとも叶えられるような願いばかりを言うくせに、高額な報酬を支払っているということだった。

 

 高級な絵画、宝石や金塊など、明らかに願いとは不釣り合いな報酬を毎度のように払っている。

よほどの富豪なのだろうか?いや、違うと秀次の勘は告げている。

 

『その依頼者、確かに怪しいわね』

 

 秀次だけではない。その報告を聞いたリアスたちもまたこの依頼者に疑いの目を向けている。

今日は仕事だけじゃなく、この依頼者に探りを入れることも含めて、秀次は一誠のフォローに付かされていた。

何の疑いもなく仕事を真っ当にこなそうとしているのは一誠だけである。

 

「依頼者さまのお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?今後も一誠や俺たち(悪魔)を召喚してくださるならお名前くらいは知っておきたくて」

 

「あー、そうだな……このゲームで俺に勝ったなら教えてやってもいいぜ?」

 

 ゲーム機が接続されたテレビ画面に映し出されたのはレースゲームのタイトル。

好都合だと思った。この手のゲームは一誠とやっていたこともあってそれなりにやれる。

 

「わかりました。ではやりましょうか」

 

「俺たち、この手のゲームは強いですよ?地元のゲーセンじゃ負けなしっス!」

 

「へぇ、そりゃ、楽しみだ。こっちは初心者だから軽く頼む」

 

 ケラケラ笑う依頼者のお手柔らかにという発言を秀次は軽く聞き流す。

賭け事の乗った勝負で手加減など無用。全力で勝ちにいくに決まっていた。

ゲームがスタートしてすぐは一誠と秀次が依頼者を置いてけぼりにしてトップ争いをしていた。

しかし、数レース目で変化が起きた。

 

「一通り覚えたぜ。そろそろ、追い抜くか」

 

 依頼者が平然と告げた直後、一誠が操る車が追い抜かれた。すぐに秀次が操作している車の背後にまで迫られる。

 

「へえ」

 

 秀次もその光景には軽く目を見開いた。だが驚きは一瞬のこと。秀次は急減速して依頼者が運転する車に自分の車をぶつけてせきとめる。

秀次の妨害によって減速していた依頼者の車に一誠の車が迫っていた。

 

「おいおい。弟が妨害して兄貴が追い越すのを待つってか?あくまでさっきの話は弟悪魔くんが俺に勝てたらって話だぜ」

 

「んな!ずるいっスよ!言ったもんがちじゃないですか!」

 

「それが大人のやり方ってもんだ。まあこのままやられる気もねえけどな」

 

 依頼者はコントローラーの操作スティックを動かして前にいる秀次の車から逃れようとする。

だが、秀次もそれは見越していたと言わんばかりに依頼者の車を妨害し続ける。

そのときであった。秀次は横目でちらりと一誠に目配せし、それに一誠もニヤリと笑う。

 

「じゃあこれならどうですか?」

 

 直後、依頼者の車の背後に一誠の車が衝突。

玉突き事故よろしく、秀次の車は二台分の衝突エネルギーに押し出される。さらに秀次はコントローラーの加速ボタンを押す。

 

「ありゃりゃ、こりゃ一杯食わされたな」

 

 画面に映し出されたWIN!の文字。三人はコントローラーを置いて顔を見合わせる。

 

「どうやら、俺の負けだな。いいコンビネーションじゃないか。さすが双子の兄弟」

 

「いやいや、こんな短時間でマスターしてるそっちもすごいスよ。最後は二人がかりでようやく勝ちって感じでしたし」

 

「でも勝ちは勝ちですので。まさかいまのは二人がかりだったからダメとか言いませんよね?」

 

「言わねえよ。でも意外だな。──煌黒龍は勝負事になると熱くなるタイプか?」

 

 依頼者の一言を聞いた一瞬、一誠と秀次の思考がフリーズする。

だがすぐにショックから立ち直ると、秀次は立ち上がって唯一の出口である扉に後ずさりながら依頼者に鋭い視線を向ける。

 

「アンタ誰だ」

 

「俺の名前が聞きたかったんだろ?アザゼルだ。堕天使どもの頭をやってる。よろしくな、赤龍帝の兵藤一誠。煌黒龍の兵藤秀次」

 

 瞬間、アザゼルと名乗った男の背中から十二枚もの夜空よりも暗い漆黒の翼が広がった。

 


 


 

 次の日、一誠と秀次は部室で自分たちの主であるリアスに昨夜の報告をしていた。

 

「冗談じゃないわ」

 

 彼らの報告にリアスは怒りをあらわにする。

先日の聖剣エクスカリバーと堕天使幹部コカビエルにまつわる事件によって、三勢力のトップたちが駒王町に集まって会談を行うことが決まった矢先の出来事だった。

 

「私のかわいいイッセーにまで手を出そうとするなんて、万死に値するわ!アザゼルは神器に強い興味を持つと聞くわ。きっと、私のイッセーがブーステッド・ギアを持っているから接触してきたのね……。大丈夫よ、イッセー。私がイッセーを絶対に守ってあげるわ」

 

 愛する下僕であり、想いを寄せる年下の男に危険な虫が寄ってきたともなれば、情愛の深いリアスが怒るのも当然だった。

だがしかし、皆の前で膝枕をしながら頭を撫で回すのはいささかどうなのだろうか?少し愛情表現がいき過ぎというか、TPOをわきまえて欲しいと思う秀次は兄と主の姿に嘆息する。

 

「そこまで心配しなくても大丈夫だと思います。確かに堕天使の総督が一誠を呼び出し続けていたのはブーステッド・ギアに興味を持ったからなんでしょうけど、一誠に危害を加えるつもりなら、昨日の時点で一誠のことも俺のことも拉致するなり監禁するなりしていたでしょうから」

 

 部室に今日、自分たちが戻ってこれたのが何よりの証拠だと秀次は判断していた。

 

「そ、それもそうね……でも心配だわ」

 

「まあ警戒するに越したことはないでしょうね」

 

 秀次としてもあの男は気に入らない。ゲームを使って自分の警戒心を緩ませようとしたことも。賭け事で熱くさせて正常な思考を乱す手腕も。

最初に一目見て思った印象通り、まさに悪い大人の典型例だったのだから。

 

「シュージくんは冷静だね。でもキミだって特殊な神器を宿しているんだ。アザゼルは神器に造詣が深いと聞くし、有能な神器所有者を集めているとも聞く」

 

「白龍皇を筆頭にか。アレと同格の奴らが集まっているとなると恐ろしいが……」

 

「でも大丈夫だよ。イッセーくんもキミのことも僕が守るからね」

 

 キラキラと目を輝かせて祐斗がそう言うと、秀次は遠い目となって額に手を添える。

先のエクスカリバーにまつわる事件から一誠と秀次に対する祐斗の様子が少し変わった。というよりもおかしくなってしまった。どうしてそうなったのかと聞いてみれば、先日の事件で自分のことを助けてくれたからとのことだった。

こじれた仲が改善して安堵したのも束の間、友達の変化に秀次は再び頭を悩ませていた。

 

「しかし、どうしたものかしら……。あちらの動きがわからない以上、こちらも動きづらいわ。相手は堕天使の総督。下手に接することもできないわね」

 

「アザゼルは昔から、ああいう男だよ、リアス」

 

 考え込むリアスに答えたのは、その場に集まったグレモリー眷属の誰とも違う声。

声の発生元は美しい紅髪の整った顔立ちの男性。直前まではそこにはいなかった謎の人物の登場に秀次は警戒心を最大にまで引き上げる。

 

「誰だアン、タは……?」

 

 神器を発動して構えた秀次。だがその声は困惑に震えていた。

臨戦状態の自分を前にしても、穏やかな笑みを崩さない男を目の当たりにしたからだけではない。謎の男に仲間たちが一斉に跪いたからだ。

自分と同じく一誠とアーシアとゼノヴィアは困惑した表情のままであった。

というか、よく見てみればこの男の風貌はある人物にとても似ている。特徴的な紅髪も透き通るような碧眼もそっくりだ。

紅髪の男性は自分たちの王のリアス・グレモリーによく似ていた。

 

「お、お、お、お兄さま!?」

 

「痛ッ!」

 

 男性を目の当たりにしたリアスは驚きに満ちた声を上げながら、膝枕していた一誠のことを忘れて慌てて立ち上がる。

 

「くつろいでくれたまえ。今日はプライベートで来ている」

 

 そう、彼らの目の前に現れた紅髪の男性。彼こそが現四大魔王の一人にして『紅髪の魔王』の異名を持つサーゼクス・ルシファーであった。

その隣には当然のことながら彼の『女王』であるグレイフィアも控えている。

 

「やあ、わが妹よ。しかしこの部屋は殺風景だ。年頃の娘たちが集まるにしても魔方陣だらけというのはどうだろうか」

 

「お兄さま、ど、どうして、ここへ?」

 

 魔王であるサーゼクスは非常に多忙な身でこのような場所には滅多に姿を現さない。

それでも駒王学園に足を運んだのは、もうそろそろ授業参観が行われるから。リアスが勉学に励む姿を一目でいいから観るつもりらしい。

だが理由はもう一つ。三勢力のトップたちが集まる会談がこの学園で行われることが決定したからでもあった。つまりは仕事だ。

 

「あなたが魔王か。はじめまして、ゼノヴィアという者だ」

 

「ごきげんよう、ゼノヴィア。私はサーゼクス・ルシファー。リアスから報告は受けている。聖剣デュランダルの使い手が悪魔に転生し、しかも我が妹の眷属となるとは……正直、最初に聞いたときは耳を疑ったよ」

 

 サーゼクスの言葉を聞いてゼノヴィアはまた頭を抱えて自分の判断の正否について悩みだした。

そんな彼女に微笑みを向けるサーゼクス。ゼノヴィアに続いて一誠、アーシア、秀次も悪魔の代表たる魔王にあいさつをする。

 

「は、はじめまして。アーシア・アルジェントと申します」

 

「自分は、兵藤一誠です!リアス・グレモリーさまの『兵士』をやらせてもらっています!」

 

「はじめまして、魔王さま。グレモリー眷属の『戦車』をやらせていただいています。兵藤秀次と申します。先ほどは大変失礼いたしました」

 

 少し言葉を詰まらせるアーシア、勢いと元気を前面に出す一誠、あいさつと共に最初の無礼の謝罪もする秀次と、三者三様のあいさつだった。

 

「三人とも、はじめまして。兵藤秀次くんの警戒は当然のことだよ。むしろ良く反応してくれた。顔すら合わせたことのない相手がいきなり自分の王の前に現れたのだからね。こちらこそ驚かせてすまなかった。赤龍帝、聖剣デュランダルの使い手、『聖母の微笑』を持つ『僧侶』といい、リアスは良い眷属に巡り会えたようだ」

 

「……そう言っていただけて光栄です。今後も精進してまいります」

 

 ぺこりとお辞儀をする秀次。そんな彼の姿をサーゼクスは静かに見つめる。まるで彼の様子を観察するように。彼の本質を探るように。

 

「兵藤一誠くんと兵藤秀次くん。キミたちはリアスとライザーくんとのレーティングゲームでも見事な活躍をしてくれた。魔王ルシファーとしてではなく、リアスの兄として個人的に礼を言っておきたい。妹を助けてくれてありがとう」

 

「お、俺は部長の『兵士』として当然のことをしたまでですから!礼だなんてそんな……」

 

「恐縮です。ですが自分はそこまで活躍できていませんでしたので、次はさらなる活躍とリアスさまのお役に立てるよう努力していきます」

 

 初々しい返事をする一誠とは対照的に、秀次はどこまでも冷静で一歩引いた姿勢を崩さない。

それは、彼がサーゼクスのことをまだ信用していないことの証でもあった。

胸襟を開いて話し合う関係とまではさすがにいかないが、初対面でここまで警戒されているのはサーゼクスとしても予想外であった。

 

 ──というよりも、少し大人っぽすぎないか?

周りが年頃の若い男女だから、余計にそう思えて仕方がない。

 

 最初にこちらに敵意を向けてきたときは打って変わって、のれんに腕押しな大人のような雰囲気を醸し出す子供にサーゼクスは違和感を抱かずにはいられなかった。




レーティングゲームの敗北がなくなったから、一誠たちはサーゼクスと会うのが今回が初めてなんだなって描いてて気づきました。初対面の相手が事前の連絡もなしに転移してきたらビビるどころの話じゃないよね。
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