ハイスクールD×D 終焉に抗う暁の太陽 作:ドラゴン大好きT
原作ではゼノヴィアの子作り発言が印象的ですけど…本作では果たして。
水着がダサいと皆から指摘され、ぷっつんした俺であったがせめてプールで泳ぎを楽しもうとしていた。
なのに……。
「……」
いま現在、俺は犬猿の仲であるはずの塔城の泳ぎの練習を手伝っている。
塔城は俺から見ても運動能力が高い。なのになぜか泳げないらしい。教会出身のアーシアも泳げないようだがこちらは一誠が練習相手になるべきだろうということになり、塔城の泳ぎの練習には俺が付き合うことになってしまった。
直前まで喧嘩していた相手の手伝いということでかなり複雑な気分だ。こういう日にかぎって祐斗は用事があるとかで不在だし。
「……はぁ」
「……すみませんね。私の泳ぎの練習なんて手伝わせてしまって」
うちに溜まった感情を息と共に吐いたと同時、塔城も息継ぎのために顔を水面から上げていた。
「あー、いや……泳ぎの練習は別にかまわないんだけどさ。てか、塔城は気にしないのか?さっきまで喧嘩してた相手だぞ」
「……気にしますけど。でも高校生にもなって泳げないのは考えものだと思って……」
「だから部長に泳ぎの練習を頼んだと?」
俺の問いに塔城はこくりと頷いた。確かに高校生にもなって泳げないのは……別にかまわないような、かまうような気もする。
でも、塔城なりに泳げるようになりたいと思っているってことだよな。それを俺は直前の喧嘩のことを引きずって、真剣に教えられていない。
それは、教える側としては最低だ。そんな奴に教えられる塔城の気分もきっと良くない。部長に任された者として、真剣に泳げるようになりたいと思っている塔城にはちゃんと教えるべきだ。
「うん……よし」
気持ちを切り替えた俺は塔城の泳ぎのサポートをするだけでなく、実際に俺が泳いで見せたりもして真面目に泳ぎ方を教え始めた。
初めはそんな俺に訝しげだった塔城もしばらくすれば泳ぎの練習に集中していった。
三十分も経った頃。俺と塔城は一度プールから上がって休憩していた。
「ずいぶんと泳げるようになったんじゃないか。あの調子なら二十五メートルくらいならすぐに泳げるようになると思う」
プールサイドに敷いたビニールシートの上で休む塔城に俺は近くの自動販売機で買ってきたスポーツドリンクを手渡す。
「ほら水分。悪魔だからそこまで心配いらないかもしれないけど、一応は飲んでおけよ」
「……どうも」
俺は塔城から少し離れた位置に座る。燦然と輝く夏の太陽の陽気を浴びながら、自分用に買ったスポーツドリンクでのどを潤す。
「……先輩は実際に泳ぐのも教えるのも上手いんですね。まさかここまで早く泳げるようになれるとは思ってなかったっていうか……」
「まあ、それなりじゃないか?これでも四泳法からダイビングまでマスターはしているけど。でも塔城がこんなに早く泳げるようになったのは、俺が教えたからじゃなくて、塔城の飲み込みが早いから。塔城が努力したからだよ」
俺がそう言うと、塔城は頬を少し赤らめてそっぽを向いてしまう。あー、やっぱりガラにもないことを言ったのは間違いだったか。
俺は申し訳なさをごまかすように首を掻きながら言う。
「あー、その……さっきは悪かったな。泳ぎの練習も最初から真面目に教えていれば、もっと泳げるようになってたかもしれないし」
「……いきなり優しくならないでくださいよ。普段のデリカシーの無さとの差でこっちも対応に困るじゃないですか」
「お、おう……」
だって女の子に対する接し方なんて知らないんだからしょうがねえじゃん。口の悪さもデリカシーの無さも自覚はあるし、直すつもりがないわけではないけど。
「……でも、今日はありがとうございました」
「ああ、どういたしまして」
「……おかげで少しだけですけど泳げるようになりましたし、楽しかったです」
「それはよかった」
塔城からのお礼の言葉に俺はぶっきらぼうに返事してしまい会話が途絶えてしまう。
──なんか、気まずいんですけど。話す話題が浮かばないんですけど。
また塔城を煽ってこの気まずい空気をぶち壊そうかなとか思っていたときである。アーシアの泳ぎの練習を手伝っていたはずの一誠がいきなり潜水して視線をどこかに向けている。
「なにしてんだあいつ」
一誠が見ているであろう方向に俺も視線を向けると、そこでは部長が高速で泳いでいた。
部長の泳ぎ方は優雅かつ大胆で──それに合わせてたわわな胸も大きく揺れ動いている。ああそういうことかと得心した俺は頭を押さえた。
「……イッセー先輩、最低です」
塔城も気づいたらしく冷たい視線を一誠に送っている。一誠に泳ぎを教えられていたアーシアも気づいたのか、涙目で頬を膨らませて水中の一誠の頬を引っ張り上げていた。
「……兄弟揃ってダメダメです」
「そこで俺とあいつを一括りにするんじゃねえっての」
「……確かに顔立ちとか雰囲気は全然似てませんけど。残念なところを持っているとこはそっくりですよ」
「けっ」
気まずい空気を変えてくれたことだけは一誠に感謝しながら、あのエロ兄貴と一括りにされたことに少しだけ腹を立てる俺であった。
しばらくすると、アーシアの泳ぎの練習も終わったのか一誠と共にプールから上がってきた。
「……きゅぅぅぅ、疲れましたぁ」
「お疲れ、二人とも」
ねぎらいの言葉と共に二人にも買っておいたスポーツドリンクを手渡す。
「ありがとうございます!」
「サンキュー!」
アーシアと一誠もコースを何度も回って練習していたからな。水分補給は忘れずにさせる。
しばらく休憩していた俺たちであったが、途中で一誠は部長の使い魔の紅いコウモリに呼ばれてどこかへ行ってしまった。
「あの、シュージさん」
ビニールシートの上で寝転んで休んでいたアーシアが起き上がって俺に話しかけてきた。
「少し話したくて……」
「どうした?」
「……シュージさんは『
──は?
アーシアからの問いに俺は困惑する。彼女が主と呼ぶのはこの世で──いや、もうこの世にはいない神さまのことだ。
「どうしてそんなことを俺に訊くんだ?」
戸惑う俺が質問に質問で返すと、アーシアはどこか物憂げな雰囲気でぽつぽつと話し出す。
「……ゼノヴィアさんが聖剣のことで部長さんと話し合いに来たときに、シュージさんはゼノヴィアさんに凄く怒っていました。ゼノヴィアさんの信仰は間違っているって」
「ああ、あれは……ゼノヴィアを怒らせるための煽りだよ。信仰者が自分の信仰を否定されたら嫌がるだろうって思っただけだ。だから、特に深い意味はなかったんだが──」
「それだけじゃないですよね」
気づけばアーシアはいつになく真剣な表情となって俺に顔を近づけていた。それは普段のおおらかな彼女の様子とはかけ離れている。
「それだけじゃないって、どういう意味だ?」
「……あのときのシュージさんの言葉には、信仰への強い想いがありました。そうでなければ、あそこまでゼノヴィアさんの信仰を強く否定することはできなかったはずです」
──ああ、そういうことか。アーシアがなぜこんな話を始めたのかわかった。俺に神さまのことを聞いてきた理由もなんとなく理解した。
そして、それは彼女がとんでもない誤解をしているということでもある。
「シュージさんには、主への何らかの想いがあるんじゃないですか?だからあそこまでゼノヴィアさんの、教会の教えを否定して──」
「アーシア、少し落ち着いてくれ」
アーシアの目の奥のすがりつくような光を見抜いた俺は彼女の肩に手を添えて押し留める。
すっかり失念していた。アーシアは神の不在を知って以降、心の均衡が危なくなることがあった。だがそれは一誠と部長に接されたことで落ち着いたはずだった。
しかし、いまだその心の奥底には神さまへの信仰が消えていない。
彼女は元シスター。それも聖女として敬われていたほどの信徒だった。彼女が悪魔に転生したのはかなり複雑な事情が重なったゆえだ。
蘇るときに彼女の意思はなかった。アーシアは悪魔になろうとしてなったわけではない。ゆえに彼女は信仰心を失っていないのだろう。
そこに神さまの喪失だ。信仰に人生の大半を捧げてきた彼女にとって、これほどまでにショックな出来事はない。
「アーシア、聞いてくれ。まず俺は──神さまに対して信仰を捧げたことはないんだ。俺はアーシアたちのように神さまを崇拝していない。俺はアーシアたちとは違うんだよ」
要するにそういうことだ。アーシアは俺が神さまを信仰していたんじゃないかと誤解したんだ。神さまを失った痛みを共有できる同志なんじゃないかとすがりつこうとしたんだと思う。
グレモリー眷属には現在、三人の教会出身者がいる。アーシアとゼノヴィアと祐斗だ。
しかし、祐斗は神を捨てている。ゼノヴィアは信仰心はあるみたいだが、悪魔になったことで迷いながらも心に折り合いをつけようとしている。少なくとも俺にはそう思える。
だからこそ、アーシアは不安なのだろう。自分だけが神さまを失った痛みをこれからも抱え続けるんじゃないかと。
だから神に対して強い想いがあるかもしれない俺と失った痛みを共有しようとした。
──でも俺は信仰者じゃない。
「神を失った痛みは、俺には理解できないよ」
俺の言葉を聞いたアーシアは酷くショックを受けた様子で顔をうつむかせる。
アーシアには悪いが俺にすがりつかれても困る。神がいなくなったところで俺の生活に何か影響が出るわけでもないからな。俺は神の不在を知っても悲しくとも何ともないんだ。
──けどまあ、アーシアになら話してもいい。俺なりの神さまってやつのことを。
「俺は神を崇拝はしていない。けど、神の存在自体は信じてるよ。悪魔になる前も、神が死んだと知ったいまも」
俺がそう言うと、アーシアは顔を上げる。
これから話す内容を聞いて、アーシアの気持ちが少しでも前を向く──なんて、思ってはいない。むしろ後ろ向きになるかもしれない。
だからこれは俺の、身勝手なエゴのようなものにしかならない。
「前提として、俺は信仰者ではない。それにこれから話すことはアーシアたちのような教会の信徒が聞いたら不快に思うかもしれない。だからアーシアが嫌なら話さないし、聞いている最中にやっぱり嫌になったら止めてくれてもいい」
それでもいいかと、一応の確認をしてみればアーシアは小さく頷く。よし、なら話すとしよう。
俺が思う神さまについて。
「ずばり、俺にとっての神は『死後の裁き』だ。人が死んだあと、そいつが悪行を犯したのなら罰を与える。善行をしていたのなら救いを与える。いわば報いそのものだ。つまり俺にとっての神は元から、この世にはいない存在なんだ」
神が実際にいたんですよなんて伝えられても、元からこういう考えをしていた俺にとっては関係のない話。だから神の不在を聞いても俺の心はちっとも揺らがなかった。
「……シュージさんの考え方では、主は私たち信徒が死んだあとでなければ、救いを与えることはないということになりませんか?」
「──ま、そうなるな。現世のことは現世に生きる人々の領分だ。この世にいない神の代わりに、法では裁けない悪を倒し、救いを求める善人を助ける。それが聖職者、神に仕える者たちの教義だと俺は思ってたよ」
でもこれも所詮は俺の身勝手なエゴだ。綺麗事でしかないと思い知らされた。
あのときのゼノヴィアは、俺たちのことは攻撃しないと自分の神に誓って来たはずなのに、無抵抗のアーシアを攻撃しようとした。
自分の神に反したゼノヴィアと教会の教えとやらが俺には許せなかった。薄っぺらい信仰だと思えて仕方がなかった。
「そんなわけで、俺の神さまはまだ生きている」
「え?」
コカビエルの野郎はもう神はいないなんて言っていたが……そんなこと知るかよ。テメェの言う神なんて俺は知らねえし興味もねえ。
「肉の体が滅んだとしても、神さまはいまもどこかにいるし、この世に生きているかぎり俺は神さまに会うことはない。俺に神さまは興味なんて持たないから、俺も神さまのことは気にせずに、俺は自分の良心に従って生きてる。俺は神さまに祈ったこともないから、願いが聞き入れられるとも思っていない。そんな俺に神さまは救いも奇跡も与えない──とまあ、これが俺が思う神さまだ。あくまで俺が思う神さまだから、アーシアはあんまり真に受けないでくれ。こういう考えで生きてる人もいるんだなくらいに思っていればいい」
語り終えた俺はポカンとした表情のアーシアに告げる。
「悪魔になっても信仰を捨てないアーシアのことは正直、俺も異端だと思う」
「っ……」
「でもそれは、アーシアが幸せになっちゃいけない理由には決してならない。アーシアは信仰者であり、グレモリー眷属の悪魔であり、一人の女の子なんだから」
俺の話は矛盾の多いことだろう。そんなことは自分がよく知っている。──それでもな。
俺は、これまで多くの命を助けてきたであろうアーシアには報われてほしいんだ。これからを生きていくうえで幸せになってほしい。
アーシアは俺が知る人々のなかでも、とびきりの善人だと信じているから。
「悲しいことがあるなら言ってくれていい。辛いなら頼ってくれていい。寂しいならそれを紛らわす方法とかも考えてやる。アーシアは幸せになっていいんだ。それはきっと俺だけじゃなく、皆も思っているから。アーシアは独りじゃない」
こんなことを言ったところでアーシアの救いにはならないだろうに。我ながら本当に身勝手でどうしようもない男だと自分でも思っている。
「どうして……シュージさんは、私にそこまでしてくれるんですか……?」
「…………そりゃあ、まあ……同じ家に住んでてほとんど家族みたいな扱いだし。勝手ながらに妹分みたいには思ってるから……」
いきなり妹扱いとか気持ち悪がられるか?自分で言ったことをいざ振り返ってみると、うぬぼれた勘違い野郎に思えて仕方がなかった。
訂正しようと思ってアーシアに顔を向けてみれば、アーシアは瞳を涙で潤ませていまにも泣き出しそうな表情になっていた。
「ご、ゴメン!俺みたいな奴に妹みたいに思ってるとかいきなり言われたら嫌だよな」
「そんなことないです……!」
アーシアは頭を横に振る。その表情に嫌がるような雰囲気は全然なくて、むしろうれしそうに笑っていた。
「ゲームのときも私やイッセーさんや部長さんを守ってくれて。今回みたいに真剣に話を聞いてくれて。私もシュージさんのことはお兄さんみたいだなって思っています」
そ、そうですか……。アーシアの反応を見るに本当にそう思ってくれていそうではある。
けど、俺が妹分だなんて言ったから、アーシアもそれに同調してしまったんだろうな。不用意な発言はしないように気をつけなくては。
そのときである。ドンッ!という激しい破砕音がどこからともなく聞こえてきた。その音にアーシアはビビって身を縮こませる。
「ひぅ!か、雷ですか……?」
「確かにそれっぽい音だったな」
でも空は澄み渡る快晴。雷雲はおろか雨雲一つない青空である。
落ち着いて周囲を見渡せば、ブラを外して胸をさらけ出している部長と副部長が互いにオーラを立ち上らせながら睨み合っていた。
「……頭でも打ったのか?」
とりあえずあの二人を止めなくちゃマズい。
そう判断した俺は慌てて二人のもとまで駆けつけたのだが、この二人のほぼ裸はマズい……。
俺だって男である。美少女な二人の裸同然を直視したら男な部分が反応しかねん……。
部長と副部長は悪魔の翼を生やしていまにも空中戦を始めようとしていた。
「いったい何してんですか!ほぼ裸みたいな格好で空に飛び立たないでください!それもう完全に痴女だから!」
俺は視線を明後日の方向に背け、なんとか理性を保ちながら二人に大声で呼びかける。
「シュージには関係のないことよ。引っ込んでなさい」
「あらあら、女の喧嘩に割ってはいるなんて度胸のあることをしますわね。でもリアスの言う通りよ。邪魔ですわ」
「関係ないとか邪魔とかの話じゃないですから。せっかく掃除したのにあなたたちが暴れたら汚れるどころか修繕が必要になるでしょ。生徒会長が絶対に怒りますよ」
だって俺が怒られてるからな。この前のコカビエルとの戦いで俺は新校舎の半分を吹き飛ばしてしまったのだが、それを知った彼女の怒りはいままで俺が見たなかでも断トツだった。
──って!すでに壊してる!プールの飛び込みとかプールサイドが!
「そ、ソーナに怒られるのは……マズいわ」
顔を青ざめさせる部長。たぶん部長も生徒会長に怒られたことがあるんだろうな。でももうすでにだいぶ手遅れだ。
「……怒られるのは確定だとして、なんでこんなことになったんですか?」
俺がそう問いかけると、青ざめていた部長の顔色が再び怒りに赤く染め上がる。
「それは!朱乃がイッセーを誘惑したから!私がイッセーにオイルを塗ってもらっていたのに、朱乃がイッセーの後ろから抱きついて胸を押し当てたのよ!」
「あらあら、私はかわいいイッセーくんを私なりにかわいがろうとしただけの話ですわ。それにリアスは普段からイッセーくんを独り占めしてるじゃない。こういうときくらい私に譲ってくれてもいいと思うの」
「だからダメだって言ってるでしょ!この卑しい雷の巫女!」
「ッ……!リアスだって節操もなく、胸にもオイル塗りたい?なんてイッセーくんに言ってたじゃない!そんなあなたに卑しいなんて言われたくないわ!この紅髪の処女姫!」
「はいストップ!ストーップ!それ以上の言い合いはやめて!」
俺は止めに入ったことを後悔した。だってこれとんでもない修羅場じゃん。男を奪い合う女の喧嘩とかぶっちゃけ関わりたくない。
あと平然と裸になるのはやめてほしい。学園の敷地内にあるプールだけど、ここ外よ?誰かに見られたり盗撮されたらどうすんの。
「とりあえず両方とも服着てください」
俺がそう言うと、二人は互いに睨み合いながらも水着を着直してくれた。
事情はわかったけど二人とも色々と先走りすぎじゃないか?まだ学生なんだからもう少し節度のある生活を送ろうよ……。
「……というか、副部長まで一誠のことが好きになったんですか?」
「好き、というか、まだ気になる男の子といった感じではありますが……。男らしさとかわいさのあるイッセーくんのことはどうにも気になってしまいます」
「男らしさとかわいさ……?」
兄貴のそんな話を聞かされてもなぁ……。俺のイメージだとバカ、ド変態、熱血、エロくらいしか思い浮かばないんだけど。
人間辞めてモテ期到来とは一誠も想像していなかっただろうな。
「──つーか、その一誠はいずこに……?」
二人の喧嘩を止めるのに夢中で気づけなかったけど、周りを見渡してもどこにも一誠の姿は見当たらなかった。
一誠の不在に気づいた俺はプールにいる皆を呼んで探し回った。そのときになってようやく気づいたがゼノヴィアも見当たらない。
アーシアいわく水着を着るのに手こずっていたらしいのだが、いくらなんでも遅すぎるだろう。
「おかしい……というか怪しい」
そう思った俺は皆と共にプールの更衣室に向かった。だけれどそこには誰もいなかった。
「……用具室のほうから声が聞こえます。イッセー先輩のとゼノヴィア先輩のです」
「でかした塔城」
塔城の耳の良さがここで役立った。でもなんで用具室にいるんだあいつら……。
用具室の前に駆けつけた俺たち。扉の前に立ってみれば、なかにいるであろう一誠とゼノヴィアの声が漏れ聞こえてきた。
「──抱いてくれ。子作りの過程をちゃんとしてくれれば好きにしてくれてかまわない」
「かまわねえわけねえだろアホが!」
聞こえてきたありえない発言に耳を疑いながらも俺は更衣室のドアを蹴破る。なかではブラを外して胸をさらけ出しているゼノヴィアと鼻血を垂らす一誠が向かい合っていた。
そこからは大騒ぎである。一誠に恋する乙女たちは恐ろしい雰囲気で詰問し、その最中にもゼノヴィアは子作りをしようと言う始末。
話を聞けば、今回の問題はゼノヴィアが発端であった。悪魔になった彼女には目標がなく、部長に相談してみたところ、前に俺にも言っていたことを伝えられたようだ。
悪魔は欲を持ち、欲を叶え、欲を望む者。好きに生きてみなさい──これである。
これまで教会の戦士として育てられてきたがために色々と縛られていたが、悪魔となって解放されたゼノヴィアは女としての幸せを求めることにしたらしい。
その結果出た答えが子作りだった。産まれてくる子供は強いほうが望ましいらしくドラゴンの力を宿す一誠を相手に選んだとのこと。
「学生の身で子供を持つ人たちはいる。でもいまのおまえたちは絶対にダメだ」
プールの時間が終わって着替えた俺たち。一誠とゼノヴィアの両方を俺は叱る。ったく、今日は色々と問題が起こりすぎだろう。
「いや、俺は誘われた側なんだって!なんかこう成り行きで断りづらくて……」
「成り行きで済ますな。きっぱり断れてない時点でダメなんだよ」
ゼノヴィア以前に一誠にはもうすでにアーシアとリアス部長がいるだろう。なんならそこに朱乃副部長も入るかもしれん。もはや驚愕を通り越して恐ろしさすら感じるモテ期だな。
「ゼノヴィアも。一誠に子供を作ろうだなんて誘うんじゃねえよ」
「なぜだ。私はイッセーなら問題なしと判断して頼んだんだ。そこにどんな問題がある?」
弱気な一誠とは対照的にゼノヴィアはむしろ強気な態度で言い返してきた。ゼノヴィアが直情で動くタイプなのは薄々気づいていたがいくらなんでも順序をすっ飛ばしすぎだ。
「……海外でどうかは知らないけど、日本では学生で子持ちってのはかなり少数なんだ。それは勉学と育児の両立が難しいことの証明でもあるし、ぶっちゃけモラル的にも良い印象はない」
「ふむ。つまり周りから差別的な態度を取られることになるということか?」
「全員がそうだとは言わないけど、好意的に受け取ってくれる人の方が少ないと思う。いきなり子供を作ろうとするやつを白い目で見るなというほうが難しいな」
まあ、そう言う俺だって子供を育てたことなんてないし、なんなら女性経験もないけど。
にしてもグレモリー眷属の女の子たちって塔城を除いて皆、貞操観念がおかしくないか?それとも高校生ならこれが普通なの?周りより俺が遅れているだけなのだろうか……。
「悪魔の出生率はだいぶ低いと聞いた。だから早いうちから子作りに励んだほうがいいと思ったんだが……」
「そもそも付き合ってもないのになんで初手子作りなんだよ。せめて順序を踏んでくれ」
ゼノヴィアの性的モラルのなさに俺はため息を吐くばかりである。
騒がしいプールでの一日も終わって、校舎を出ようとしたところ──校門の前に立つ濃い銀髪の見知らぬ美少年が視界に映った。
銀髪の美少年は学園を見上げていたが、校舎から出てくる俺たちに気づいたのか微笑みと共に透き通った蒼い瞳を向けてくる。
「やあ、いい学校だね」
「えっと……まあね」
っ──!銀髪の美少年からのあいさつに一誠はさらりと返事したが、俺はその声を聞いた瞬間に自分の体が大きく震えたのを実感する。
「その声……あの白い鎧のやつだな。確か白龍皇アルビオンだったか?」
「覚えていてくれたのか、煌黒龍」
「……え?白龍皇!?」
警戒する俺と動揺の声を上げる一誠の前で白龍皇は自分の胸に手を当てて告げた。
「俺はヴァーリ。白龍皇──『白い龍』だ。ここで会うのは二度目か、『赤い龍』──赤龍帝の兵藤一誠。煌黒龍の兵藤秀次」
アーシアの話は投稿主の独自解釈盛り盛りでしたね。それに対応するようにオリ主の神に対する考え方も盛りに盛られて…どういうわけか筆がよくのったんだよなぁ。