ハイスクールD×D 終焉に抗う暁の太陽   作:ドラゴン大好きT

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前話のサブタイトルを変更しました。だってまだ悪魔になってないもんね。投稿主の気が早まりすぎたがゆえのミスです。


第4話 俺たちが悪魔になった日です

 

 

「粗茶です」

 

「ありがとうございます。頂戴します」

 

「あっ、どうも」

 

ソファーに座った俺たちに姫島先輩がお茶を淹れてくれた。お茶は熱すぎず、冷たすぎず、それでいて綺麗に透き通った緑茶だ。……これは飲む前からわかる。絶対にうまい。

 

「うん、とてもおいしいです」

 

「うまいです」

 

「あらあら。ありがとうございます」

 

俺たちがお茶の感想を伝え終わると、姫島先輩もソファーに座った。テーブルを囲むように配置されたソファーに座るオカルト研究部の部員たち。全員の視線が俺と一誠に集まる。

 

「単刀直入に言うわ。私たちは悪魔なの」

 

にこりと笑って告げるグレモリー先輩。単刀直入すぎて、俺たちは唖然として黙り込んだ。

 

「信じられないって顔ね。まあ、仕方ないわ。

でも、あなたたちも昨夜、黒い翼の男を見たでしょう?あれは堕天使。元々は神に仕えていた天使だったんだけれど、邪な感情を持っていたため、地獄に堕ちてしまった存在。私たち悪魔の敵でもあるわ」

 

グレモリー先輩の話は正直、正気を疑うほどにファンタジーな内容だった。

いわく、悪魔と堕天使は地獄──冥界の覇権を巡って太古の昔から争っているらしい。

二分化された領土を持ち、悪魔は人間と契約を交わして力を蓄え、堕天使は人間を操って悪魔を滅ぼそうとする。さらに神さまの指示を受けた天使も混ざって、三すくみで争っているとのこと。

 

そんな話を聞かされても、人間以外がこの世界に存在していることを知らなかった俺たちは、到底信じられずにいた。

 

「いやいや、先輩。いくらなんでもそれはちょっと普通の男子高校生である俺たちには難易度の高いお話ですよ。え?オカルト研究部ってこういうこと?」

 

「オカルト研究部は仮の姿よ。私の趣味。本当は私たち悪魔の集まりなの」

 

「……シュージ、やべえよ。こういうとき、どう声をかけてやればいいんだ?」

 

真剣な口調で語るグレモリー先輩に、一誠は困り果てた様子で俺に助けを求めてくる。だが待ってほしい。俺だって冷静なわけじゃないんだ。

 

ただ……昨晩のドーナシークと名乗ったおっさんと光の槍。一誠や俺の傷を治療したこと。両親にかけた催眠術のようなもの。あれらをすべて人間がやったというのも、にわかには信じられない。

 

「……とりあえず、最後まで話を聞こう。受け入れるかどうかはそのあとで」

 

「いやいや、受け入れるかどうかって。これはオカルト研究部の設定の話であって──」

 

「──天野夕麻。あの日、あなたは天野夕麻とデートをしていたわね?」

 

あまりに信じがたい話の連続で、余裕がなかった一誠もその名前が出された途端に黙り込んだ。

 

「……冗談なら、ここで終えてください。正直、その話はこういう雰囲気で話したくない」

 

そう言う一誠の声には明らかな不満と怒気が込められていた。

消息不明になった彼女の名前が、先ほどまで現実とは思えないような内容を話していた人の口からいきなり出てくれば、驚きもするだろう。

一誠にとってあの件はおいそれと触れていい話ではないってことだ。いわゆる腫れ物ってやつ。

しかし、俺はむしろそれを聞きにきている節があるので一誠を軽く宥める。

 

「一誠、グレモリー先輩は昨夜、俺たちが襲われたときに助けてくれたんだ。おまえは気絶していたから知らなかっただろうけど」

 

「助けてくれたのは今朝、先輩から聞いてるよ。

けどさ……」

 

なんだ、知ってたのか。それでもあんな反応をするとは……。一誠にとって、天野さんはまだ大切な彼女なんだろうな。

 

「……落ち着いたようね。話を続けるわ」

 

グレモリー先輩は一誠が落ちついたことを確認してから話を再開してくれる。

天野夕麻──彼女は堕天使だった。昨夜、俺たちを襲ったドーナシークと同じ存在。

先輩は天野夕麻の写真を手に取って言う。

 

「この堕天使はとある目的があってあなたと接触した。そして、その目的を果たしたから、あなたの周囲から自分の記憶と記録を消させたの」

 

「目的?それって……」

 

「あなたを殺すため。弟くんはそれに巻き込まれてしまったということでしょうね」

 

……。天野夕麻は、一誠を殺すためだけに近づいてきたってのか。彼女になってまで……!

 

あの日。振り向くことも犯人を確認することもできなかった俺だが、唯一の手がかりがあった。

──声だ。いまになってはっきりと思いだした。確かにあのとき、後ろから話しかけてきた人物の声は天野夕麻のものだった。

 

……そうか。一誠の腹を貫いたのも、俺の胸を光の槍で後ろから貫いたのも、全部──

 

おまえだったのか。天野夕麻。

 

「な、なんで俺がそんな!それに俺、生きてるっスよ!シュージだって!だいたい、なんで俺が狙われるんだよ!」

 

「落ち着いてイッセー。仕方がなかった……いいえ、運がなかったのでしょうね。殺されない所有者もいるわけだし……」

 

「運がなかったって!」

 

グレモリー先輩からの説明に、俺は膝に置いた手を握りしめ、一誠はひどく狼狽していた。

運がなかっただと?ならわざわざ一誠の彼女になる必要はない。これは計画的な犯行だ。一誠を狙った何かしらの理由があるはず……。

その直後、俺の考えを肯定するような内容をグレモリー先輩は語る。

 

「彼女があなたに近づいた理由はあなたの身にとある物騒なモノが付いているかいないか調査するためだったの。きっと反応が曖昧だったんでしょうね。だから、時間をかけてゆっくりと調べた。そして、確定した。あなたが神器(セイクリッド・ギア)を身に宿す存在だと」

 

セイクリッド・ギア。

俺の胸を光の槍で貫いたとき、天野夕麻も確かにそんなことを言っていた。

神器とは一部の人間にのみ宿る特殊な力で、歴史に残るような人物の多くが、その神器と呼ばれる異能を宿していたと祐斗は語る。

現在でも宿している人々はいて、世界的に活躍する著名人たちの多くが神器所有者だと姫島先輩が続いて語ってくれる。

つまり、その神器とやらが一誠には宿っていて、そのために天野夕麻に狙われたと──。

 

「大半は人間社会規模でしか機能しないものばかり。ところが、中には私たち悪魔や堕天使の存在を脅かすほどの力を持った神器(セイクリッド・ギア)があるの。

イッセー、手を上にかざしてちょうだい」

 

ん?グレモリー先輩からの突然の指示に、指示された一誠も俺も戸惑いを覚えた。

しかし、先輩が何度も急かしてくるため、一誠は仕方なそうに左腕を挙げる。

 

「目を閉じて、あなたのなかで一番強いと感じる何かを心の中で想像してみてちょうだい」

 

「い、一番強い存在……。ド、ドラグ・ソボールの空孫悟かな……」

 

……ま、まあ、一誠らしい人選だな。

一誠をその場で立ち上がらせると、先輩は人差し指を顔の前に立てて真剣な表情で言う。

 

「その人物の一番強く見える姿を真似るの。強くよ?弱くじゃダメ」

 

空孫悟の一番強く見える姿……ドラゴン波とか?

ドラゴン波は空孫悟の必殺技で、数々の強敵を打ち倒してきたものだが……。

 

あれをやれと。は、恥ずかしい……!少なくともこんな人前で俺はやりたくない。一誠も羞恥心でしばらくもたついていたのだが……。

 

「ほら、早くなさい」

 

先輩に急かされたことで一誠も腹を決めたのか、開いた両手を上下に合わせて前に突き出し、声を張り上げてドラゴン波のポーズを取った。

 

「ドラゴン波!」

 

一誠は目を閉じてこそいるが、紅潮した頬とピクピクと動く口元を見ればわかる。相当に恥ずかしがっているな。かわいそうに……。

俺は一誠の努力に哀れみの視線を送り、笑い声が漏れないように口元を必死に押さえていた。

 

「さあ、目を開けて。この魔力漂う空間でなら、神器(セイクリッド・ギア)もこれで容易に覚醒するはず」

 

先輩の指示を受けて一誠が目を開けた──瞬間、一誠の左腕が赤く光り始めた!

まもなくして光が落ち着くと、一誠の左腕には赤い籠手のようなものが装着されていた。

凝った装飾に手の甲には宝玉のようなものがはめ込まれている。

 

「な、なんじゃ、こりゃぁぁぁぁぁ!」

 

「す、すげぇぇぇぇ!」

 

突如として現れた籠手を見て、俺も一誠も目が飛び出そうになるほどに驚いていた。

これが神器か。──あっ。でも、これを宿していたがために一誠は狙われたんだっけ……。

 

ズキッ

 

「っ……」

 

一誠の神器を見ていると、少し頭痛がした。額の辺りがムズムズしたっていうか……。

 

「秀次くん?どうかしたのかい?」

 

「え?ああ、いや……一誠の籠手を見ていたら、なんでか頭が痛くなって……」

 

祐斗の訝しげな視線から顔を背け、俺は一瞬痛んだ額をさすっていた。

神器は一度発現してしまえば、いつでもどこでも発動できるらしい。便利なものだ。けど……。

 

「あなたはその神器(セイクリッド・ギア)を危険視されて、堕天使──天野夕麻に殺されたの」

 

俺はその場にたまたま居合わせてしまい、邪魔だったから殺されたというわけか……。

 

だったらなんで、俺たちは生きているんだ?

そんな疑問に答えるように先輩は一枚のチラシを取り出す。チラシに俺は顔を近づけ、訝しげな声で書かれている文字を読み上げた。

 

「あなたの願いを叶えます?なにこれ、胡散くせえ……」

 

「ちょっと!私が考えたものなのに、胡散くさいとはなによ!」

 

正直な感想を口にすると、先輩が口を尖らせて非難の声を上げる。これ、先輩が考えたものだったのか!ゴメンなさいと頭を下げる俺の横で、一誠が得心した顔でチラシを指差す。

 

「あっ!それ、夕麻ちゃんとのデートの待ち合わせ中にもらったチラシだ!」

 

チラシには俺が読み上げた謳い文句と、この部屋にある魔方陣と同一のものが描かれている。

 

「これ、私たちが配っているチラシなのよ。魔方陣は、私たち悪魔を召喚するためのもの。最近は魔方陣を描くまでして悪魔を呼び寄せる人はいないから、こうしてチラシとして、悪魔を召喚しそうな人に配っているのよ。お得な簡易版魔方陣」

 

あのデートの日、たまたまグレモリー先輩たちの使い魔がチラシを配っており、それを一誠が受け取っていた。本来は眷属の姫島先輩たちが呼び出されるところを、一誠の強い願いがグレモリー先輩を呼び寄せたということだ。

 

「一誠は最後に何を願ったの?」

 

「え!?あー、それは……手についた血を見て、先輩のことが頭に浮かんだっていうか……」

 

俺の問いに一誠はしどろもどろになって答える。大方、グレモリー先輩が欲しいとか思っていたんだろうな。俺はただ絶望してたけど……。

 

「召喚された私はあなたを見て、すぐに神器(セイクリッド・ギア)所有者で堕天使に害されたのだと察したわ。問題はここから。イッセーは死ぬ寸前だった。堕天使の光の槍に貫かれれば、悪魔じゃなくても人間なら即死。イッセーもそんな感じだったの。弟くんはすでに死んでいたわ。そこで私はあなたたちの命を救うことを選んだ」

 

そこで一度間を空け、グレモリー先輩は勝ち誇った表情で言葉を続ける。

 

「悪魔としてね。あなたたちは私、リアス・グレモリーの眷属として生まれ変わったわ。私の下僕悪魔として」

 

次の瞬間、立ち上がったオカルト研究部の全員の背中から、バッという音と共にコウモリのような黒い翼が生えた!

そして、俺と一誠の背中にも同じ翼が生えた。マ、マジかよ……。俺たち、もう人間じゃねえってか!悪魔になってしまったと!

 

「改めて紹介するわね。祐斗」

 

「僕は木場祐斗。同じ二年生ってことはわかっているよね。秀次くんとは同じクラスで隣の席だから、いまさら自己紹介するような間柄でもないけど改めて。えーと、僕も悪魔です。よろしく」

 

「……一年生。……塔城小猫です。よろしくお願いします。……悪魔です」

 

「三年生、姫島朱乃ですわ。いちおう、研究部の副部長も兼任しております。今後もよろしくお願いします。これでも悪魔ですわ。うふふ」

 

「そして、私が彼らの主であり、悪魔でもあるグレモリー家のリアス・グレモリーよ。家の爵位は公爵。ふたりともよろしくね」

 

俺たち、悪魔になってしまったようです……。

 


 


 

俺は正直、困惑していた。いや、一誠もだろう。

グレモリー先輩やドーナシークというおっさんが人間じゃないことは薄々察していたが、まさか俺たちまですでに人間じゃないとは……。

困惑しているとグレモリー先輩がウインクしながらこう言ってきた。

 

「私のもとに来ればあなたたちの新たな生き方も華やかになるかもしれないのよ?」

 

俺たちはこの人、いや悪魔である彼女に悪魔として転生させれた代わりに、彼女の下僕として生きていかなくてはならないらしい。

……いやね。一誠を助けてくれて、なおかつ俺を生き返らせてくれた事には感謝している。

だけど下僕て……。

 

「でもね、悪魔には階級があるの。爵位っていうのがね。私も持っているわ。これは生まれや育ちも関係するけど、成り上がりの悪魔だっている。最初は皆、素人だったわ」

 

「どこぞの学校のCMみたいなことを言わないでください!つーか、本当ですか?いまいち信用できない」

 

文句を垂れている一誠にグレモリー先輩が何やら耳打ちする。その直後、一誠の目が光った。

 

「どうやってですか!?」

 

「え?何が?」

 

「やり方によってはモテモテな人生を送れるかもしれないんだって!」

 

「……そう」

 

なんとも一誠らしい気合いの入り方である。

スケベ根性だけで生きてるような男は流石だな。

先輩が言うには昔、悪魔、堕天使、天使による大きな戦争が起こったらしく、その際に純粋な悪魔の多くが亡くなってしまったらしい。

種の存続のためには新しい悪魔が必要。悪魔も性別があって、男女の間に子供も産まれるらしい。

しかし、悪魔は出産率が極端に低いため、自然出生で数を戻すには時間がかかりすぎる。

なので素質のある人間を下僕悪魔として転生させているのだとか。

 

「やっぱり下僕じゃないですか」

 

「もう、そんな残念そうな顔しないで。話はここから。ただそれでは下僕を増やすだけで力のある悪魔を再び存在させることにはならない。

だから、悪魔は新しい制度を取り入れたわ。力のある転生者──つまり、人間から悪魔になった者にもチャンスを与えるようになったのよ」

 

転生悪魔も力を持てば爵位を与えられ、上級悪魔へと昇格できる。上級悪魔になれば自分たちの眷属を持つことができるし、主のもとから独立することも可能とのこと。もちろん、それ相応の努力と年月は必要とされるみたいだが。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!」

 

「うわ!うるさっ!そんなに叫ぶなよ。ましてや部屋のなかで」

 

「だってシュージも聞いたろ!俺が!俺がハーレムを作れるんだぞ!エ、エッチなこともしていいんですよね!?」

 

「そうね、あなたの下僕にならいいんじゃないかしら」

 

「いや、ダメでしょ。倫理観的に」

 

「あら。私たちは悪魔よ」

 

とんでもない理論だな!?悪魔に労働基準法はないのかよ!このヒトのもとで俺はうまくやっていけるんだろうか。心配になってきたな……。

 

「悪魔としてやっていけるか心配?ちなみに、悪魔になるとこんな特典もあるのよ」

 

そう言ってグレモリー先輩は数枚の書類を取り出して俺たちに見せてきた。

 

「意外に福利厚生はしっかりしているんですね」

 

「俺、こういう小難しいのは苦手だ……」

 

悪魔としての業務や、レーティングゲームという競技への参加など、色々なことが書いてある。

メリットは寿命の増加。身体能力の向上。あと悪魔として危険な仕事に参加することもあるから、給料も相当に良いみたいだな。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!悪魔、最高じゃねえか!何、これ!チョーテンション上がってきたよ!いまなら秘蔵のエロ本も捨てられ──いや、エロ本はダメだ。アレはダメだ。俺の宝だ。お袋にみつけられるまではやっていける!それとこれとは別だ。うん、別だ!」

 

だから、いちいち叫ぶなって……。あと女子の目の前で叫べる内容じゃないよね。グレモリー先輩や姫島先輩はおもしろそうに笑ってるけど、塔城さんの顔すごいよ……。もう完全に汚らわしいものを見る目だもん。祐斗も苦笑いしてるわ。

 

「フフフ。おもしろいわ、この子」

 

「あらあら。部長が先ほどおっしゃっておられた通りですわね。『おバカな弟ができたかも』だなんて」

 

「すいません……。ほんとすいません……。うちの野獣がほんとすいません……」

 

もうなんかとんでもなく申し訳ないとしか言いようがない。グレモリー先輩と姫島先輩は問題ないと言ってくれた。塔城さん。そんな可哀想な人を見る目で俺を見ないで……。祐斗はそれどっち?本気で笑ってんの?苦笑い?

 

「というわけで、イッセー。それと弟くん──と呼ぶのもそろそろやめましょうか。私たちもシュージと呼んでもいいのかしら」

 

「どうぞ、お好きなように呼んでください。どう呼ばれようと気にしないので」

 

「ならそうするわ。あなたたちは今日から私の下僕ということでいいわね?そして、私のことは『部長』と呼ぶこと」

 

「部長ですか?『お姉さま』じゃダメですか?」

 

この野獣はまた調子のいいことを言う。手綱を握れる人が増えたことを喜ぶべきなのか……。

……いや、喜んでばかりではいられないな。

 

「部長、お聞きしてもいいですか」

 

「ええ、シュージ、どうしたの?」

 

「俺は一誠みたいに神器(セイクリッド・ギア)を宿していたりはしないんですか?」

 

俺の質問に部長は真剣な眼差しとなる。素質のある人間を転生させるっていうのなら、俺も期待してもいいんじゃないかって思ったんだ。

だが、そんな俺の期待はすぐに打ち砕かれる。

 

「いいえ、シュージには宿っていないわ。宿していれば、神器(セイクリッド・ギア)特有のオーラを感じられるものだけど、シュージからはそれを感じないもの」

 

「……なら、なぜ俺を悪魔に転生させたんですか?」

 

神器もない。特別な力のない俺を、なぜ部長は悪魔に転生させてまで蘇らせたのか。

 

「……期待しているからよ」

 

「期待?」

 

「ええ。人間のころから祐斗と友達で、神器(セイクリッド・ギア)を持つお兄さんがいるあなたに期待した。

そして、私の期待は当たっていたわ。堕天使の光の槍から負傷した家族を身を挺してまで守ろうとするあなたは──優しいもの」

 

優しい、ね。俺にそんな言葉をかけてくれるヒトが兄貴や家族、友人以外にまだいたとは。

なら、その期待に応えられるようにがんばろう。どうせ、人間には戻れないだろうし。

それに俺は人間よりもたぶん……悪魔のほうが性に合っていると思うから。

 

「ハーレム王に俺はなるっ!」

 

「悪魔として精一杯、努力いたします」

 

生き生きとした様子で夢を掲げた一誠に対して、俺は静かに頭を下げる。俺は別にハーレムを築きたいとも思わないし、当分の間は部長のもとで生き返らせてもらった恩を返すつもりだ。

 

なにより、当面の目標が定まった。

 

一誠のことを騙して、彼女のふりをして殺した天野夕麻。おまえだけは決して許さない。

 

強くなって、探しだして……

 

必ず、復讐してやる。




頭を下げて隠していますが、主人公の瞳には怒りの炎が燃え盛っていたことでしょう。3巻の祐斗と同じく復讐心に囚われたわけです。

ちなみに、主人公の神器のオーラが感じられなかった理由はちゃんとあります。が、理由が明かされるのはおそらく真の話に入ってからです。
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