ハイスクールD×D 終焉に抗う暁の太陽 作:ドラゴン大好きT
今話を書いている最中に若干首と腰をやってしまった疑惑がある投稿主…。仕事でしゃがんだりすることが多いからそれかもしれないけど、無難にスマホ首の可能性が高そう。
唐突に現れた白龍皇──ヴァーリ。
赤龍帝を宿す一誠とは宿敵関係だと部長たちからは聞き及んでいる。いまのところ、殺気の類いは感じられないが……。
面と向かって会いにきたということは、そういうことかもしれない。
「そうだな。たとえば、俺がここで兵藤一誠に魔術的なものをかけたり──」
「させねえよ」
不敵な笑みを浮かべたヴァーリが一誠に向けて足を踏み出そうとした瞬間、俺は神器を発動して指先を突きつける。今回ばかりは人の目を気にする余裕もなかった。
「警告するぜ。そこから一歩でも動いたら俺はアンタを攻撃する」
俺の指先には蒼の雷が迸っている。これは禁手に至った際に使用可能になった属性でまだ練度は低いが、攻撃が相手に届く速さは炎や冷気の比にならない。機先を制するにはぴったりだ。
問題は……いまの俺の力ではこいつを押さえられないということ。
「何をするつもりかわからないけど、冗談が過ぎるんじゃないかな?」
「ここで赤龍帝との決戦を始めさせるわけにはいかないな、白龍皇」
そのときだ。今日は不在だったはずの祐斗がどこからともなく現れ、ゼノヴィアと共にヴァーリの首元に剣を突きつけた。
しかし、剣を突きつけられているというのにヴァーリは微塵も動じていない。それどころか聖剣デュランダルを握るゼノヴィアの手と聖魔剣を握る祐斗の手のほうが震えている。
「誇っていい。相手との実力差がわかるのは強い証拠だ。俺とキミたちとの間には決定的なほどの差がある。……もっとも、兵藤秀次とならそこそこは楽しめるかもしれない」
ヴァーリの蒼い双眸と俺の視線が交わる。警戒する俺を見てヴァーリは微笑んでいた。
「俺を目の前にしても震えていないな」
……戦闘は避けたい。禁手を使ったとしても勝つイメージが湧かないし、仮に俺たちが全力で殺し合いでもしたら辺り一帯が吹き飛ぶ。皆や一誠にも確実に被害が及ぶだろう。
最悪は禁手を使って俺に引きつけて皆や町に被害が出ない距離まで逃げるしかない。逃げるのも難しそうだが……。
「俺との実力差を理解して恐怖を抱きながらも、戦意はまったく色あせていない。俺には勝てないと悟りながら、どう戦うかを考えている。死の恐怖を完全に支配していなければそこまで冷静な判断力は持てないだろう」
「なに一人で盛り上がってんだ。気持ち悪い」
「フフフ、冷たいなキミは。コカビエルごときが相手だったとはいえ、奴に本気を出させて追い詰めたキミには少し興味があるんだ」
「野郎に興味を持たれてもうれしくねえ」
あのコカビエルをごとき扱いか。それを平然と言うくらいこいつは強いんだろうな。だけど冷たくあしらわれて嫌な気分になったろ?何もせずこの場から早く消えてくれると助かる。
「まあ残念な点も多かったけれどね」
「……あ?」
ヴァーリの残念という言葉に俺は思わず反応してしまう。
「キミはコカビエルに必殺の一撃を食らわせたあと、大きく隙を晒したな。その後も殺意が消えてしまったせいか、戦いに少しも集中できていなかった。結果、時間内にコカビエルを倒しきれず崩壊の術式が発動した。あれは俺だけじゃなく、誰の目から見ても残念と言わざるをえない醜態だったんじゃないかな」
あの戦いの総評をヴァーリから告げられた俺は直前までの挑発的な態度を引っ込め、バツの悪さから苦い表情を浮かべる。
こればっかりはヴァーリの言う通りだ。俺は怒りで冷静さを失ってコカビエルに挑んだ。そのせいで皆を苦しめたし、結局は時間内にコカビエルを倒しきれずに崩壊の術式が起動した。
「それに関しては返す言葉もない。それと、あのときも伝えたが、術式を止めてくれたことは感謝している。あのときのお礼に何か形のあるものを求めているなら、俺に支払える範囲でお返ししたいと思っているが」
「感謝はいらないとあの場で俺も伝えたはずだ。俺はキミと赤龍帝の兵藤一誠に改めてあいさつしに来ただけさ」
ヴァーリは一誠に視線を向け直す。変な気を起こさないように、起こしてもすぐに対応できるように俺は攻撃の構えを解かない。
「兵藤一誠、キミはこの世界で自分が何番目に強いと思う?」
なんだその質問?一誠は絶対にそんなことを考えたことないぞ。困惑する一誠や俺を意にも介さずヴァーリは話を続けていった。
「この世界は強い者が多い。『紅髪の魔王』と呼ばれるサーゼクス・ルシファーでさえ、トップ10内に入らない。だが、一位は決まっている。
───不動の存在が」
「自分が一位だとでも言うのかよ?」
「いずれわかる。ただ、俺じゃない。兵藤兄弟は貴重な存在だ。十分に育てたほうがいい、リアス・グレモリー」
ヴァーリの視線が俺と一誠から外れ、後方にいる部長へと向けられる。部長の周りには対応に困っている様子のアーシア、臨戦態勢になっている副部長と塔城もいる。
「白龍皇、何のつもりかしら?あなたが堕天使と繋がりを持っているのなら、必要以上の接触は──」
「二天龍と称されたドラゴン。『赤い龍』と『白い龍』。過去、関わった者はろくな生き方をしていない。さらに『破壊の象徴』と謳われた煌黒龍とまで関わっている。──あなたはいったいどうなるんだろうな?」
ヴァーリの発言に部長は言葉を詰まらせる。
つまりドラゴンと関わった者は、ろくな生き方をできないって言いたいのか?
「今日は別に戦いにきたわけじゃない。ちょっと先日訪れた学舎を見てみたかっただけだ。アザゼルの付き添いで来日していてね、ただの退屈しのぎだよ。ここでキミたちとは戦わない。それに──俺もやることが多いからさ」
ヴァーリはそれだけ言い残すと、踵を返してこの場から立ち去っていった。
その日の夜。家に帰った俺は自室で筋トレに励んでいた。悪魔になってからは朝起きてからと、夜にも欠かさずトレーニングしている。今日のようなトラブルに巻き込まれることもあるから、日常的に体を鍛えて備えている。
どうやらヴァーリは宿命のライバルである一誠とドラゴン系神器を所有する俺に興味を持っているらしい。俺なんかに興味を持ったってろくなことにならないと思うけど。
いずれにしろ、ヴァーリと戦う日はそう遠くない気がする。そうなったらマジで迷惑な話だ。それにもし一誠を襲うつもりなら、宿命のライバルとか俺には関係のないことだから止めるぞ。家族を二度も殺されてたまるかってんだ。
だけどいまの俺じゃ、ヴァーリと渡り合うことすら厳しいだろうな……どうしたものか。
『──騒々しいぞ、愚物』
うおっ!びっくりした!突然話しかけてきた声に驚き、俺は腕立て伏せを止める。
まさか、そっちから話しかけてくるなんてな。俺の神器に封じられた存在、全勢力から忌み嫌われたドラゴン。『煌黒龍』アルバトリオン。
コカビエルとの戦い以降は話しかけてくることもなかったため、久しぶりに話しかけられたわけなのだが……相変わらずの低い声。それに威圧感と苛立っている様子が伝わってくる。
「アンタがアルバトリオン、ってことでいいんだよな?」
俺が話しかけてもドラゴンは反応しない。また無視を決め込むつもりか?
「こちとら、アンタを宿したせいで面倒なやつらに目をつけられて大変なんだ。それに聞きたいこともたくさんある。だから無視するのはやめてほしいんだが……」
『騒々しいと言ったはずだ。言葉も礼儀も弁えられんほどの愚か者が』
愚物だの愚か者だの……アンタもとことん俺のことを下に見ていやがるな。
『当然だ。最強の種族であるドラゴン、そのなかでも俺は最上位の強さを持つ古龍だぞ。対して貴様は矮小な人間……いや、いまは下等な悪魔だったか。ともかく、この俺と同じ地平に立つことなど絶対に許さん』
うっわ待って……本当に面倒くさい。際立って高慢な性格してやがるよこのドラゴン。
もしかしなくてもこれから一生こいつと付き合っていくんですか?
「……気難しいなんてレベルじゃねえぞ。どうしたらいいってんだ」
嘆きを口にしながらも、俺はどうしたらこのドラゴンと良好な関係を築けるのか考える。宿してしまったからには関係構築は必要だろう。会話拒否なんてもってのほかだ。
話を聞いているかぎり、このドラゴンはとてもプライド高い。礼節を求めているんだからこっちは相応の態度を取る必要があるか?
「先ほどまでの無礼はお詫びします。さらに無礼を重ねるようで申し訳ないのですが、どうか自分の問いを聞いてはいただけませんか?」
『──ようやく己の分を少しはわきまえたか。貴様が聞きたいのは、あの暴走についてだろう。俺を宿した者たちは皆揃って、同じ問いを投げかけてくるからな』
心底退屈そうにアルバトリオンは俺が聞きたかったことを言い当てた。というか、みんな?皆って誰のことを言っているんだ。
『貴様の前に俺を宿した者に決まっている。俺の魂を封じたこの神器を宿した人間が死ぬと、自動的に次の宿主のもとへと移る。神滅具と称される神器たちも同様だ。その時代に一つだけしか存在しないゆえに並の神器よりも希少性が高い』
それが通常の神器との神滅具の違いか。アルバトリオンが封じられているこの角の神器も神滅具と同じ特徴を持っていると。
『さて、暴走についてだが──俺は話さんぞ』
「……なんでだよ。一番重要なところを話さないとかあんまりじゃないか」
『言ったであろうが。俺と貴様が同じ地平に立つことなど許さんと。貴様の問いに答えるということはそういうことだ。仮に対価を差し払ったとしても話すつもりはない』
あっ!ちょっと待てよ!一方的に話をきり上げて再び引っ込もうとするアルバトリオンをなんとか引き留めようとしたそのときだ。
『最後に忠告をしてやろう。現在の貴様よりも強い気配をいくつか感じる。おそらくはすでにこの町に侵入しているのだろう。もしかすればもうすでに貴様と接触しているかもしれん』
それだけ言い残すとアルバトリオンはうんともすんとも言わなくなってしまう。
こうして、おそらく俺が死ぬまで一生付き合うことになるであろうドラゴンとの初対話は最悪と言っていい印象で幕を下ろした。
授業参観の当日。俺は普段通り一誠たちよりも早く家を出るために手早く準備する。
今日くらいは皆で一緒に登校してもいいんじゃないかと両親や一誠たちは言うが、やっぱりあの三人と一緒に登校するのは気が引ける。
別に三人のことが嫌いなわけじゃない。でも三人と登校すると学校のやつらが騒ぐだろう。それがうっとうしい。
「じゃあ、行ってきます」
「シュージ、あなたが授業を受けている姿もちゃんと見に行くからね」
あいさつをして家を出ようとする俺を父さんと母さんが送り出してくれる。両親も今日は朝から気合が入っていてとても元気だ。
実の娘のようにかわいがっているアーシアの授業風景を特に観たいらしく、写真や動画を撮るためのカメラまで準備している。
しかし、ここで一つ問題点が浮上する。一誠とアーシアは同じクラスだけど、俺は別のクラスだということだ。両方の授業を観るとなると両親もさすがに大変だろう。
「俺のほうはあまり気にしないでいいから。アーシアと一誠の授業を見てきなよ」
どうせ授業参観なんか来年もやるしな。そんなに熱中して見に行くものでもないだろう。俺はそんなふうに思っていた。
だがしかし、父さんと母さんはそうは思っていないらしい。
「息子の授業風景を見に行かないなんて真似できるか」
「お父さんの言う通りよ。だからシュージもサボらずにちゃんと授業を受けていてね。中学校のときみたいに教室にいないなんてことは──」
「あー!わかったわかった。しないよそんなバカらしいことは……」
ったく、昔のことを言わないでくれよ。恥ずかしいったらありゃしないんだから……。
駒王学園の授業参観は他の学校とは少し違うところがある。親だけでなく中等部の学生も見学していいことになっているため、授業参観というよりは公開授業といったほうが正しいだろう。
下級生に見られることもあってか、公開授業の当日は周りの学生たちも結構ソワソワしていた。それでも滞りなく授業は進められ、俺のほうは特に騒動もなく終わった。
お昼休みになったタイミングで俺と祐斗は教材を机にしまいながら話していた。
「シュージくんのご両親、楽しそうだったね」
「……ちょっと恥ずかしかったけどな。わざわざカメラで写真を撮るとは思ってなかった」
「自分の子供が学校でどんなふうに生活しているのか、親御さんなら気になるものなんじゃないかな。写真を撮っていたのも、息子の成長の記録を残しておきたいっていう親心だと思うよ」
そういうものか。公開授業ゆえに学生だけでなく親御さんや中等部の学生も集まっていて今日は学校中が賑やかだ。
だがそのとき、そんな賑やかさとは一風変わった騒がしさを俺は耳にした。なにやら廊下で魔女っ子が撮影会をしているのだという。公開授業日で人が多く集まっているせいなのか。どうやら変人の類いまで集ってしまったらしい。
同じく騒ぎを聞いた祐斗は興味深そうに言う。
「魔女っ子か……少し気にならないかい?」
「意外だな。祐斗にやじ馬根性があるとは」
「……やじ馬って言われると、咎められているようで気が引けるんだけど……」
別に責めているわけではないのだが。俺はそこまで興味も湧かなかったが、祐斗が気になるというので付いて見に行ってみることにした。
道中で一誠、アーシア、部長と副部長と偶然にも合流し、皆で魔女っ子の撮影会とやらに足を運ぶと、騒ぎが特に酷い廊下の一角でカメラを持った男どもがシャッターと激しいフラッシュと共に何かを撮影しまくっていた。
人だかりを抜けて見てみれば、撮影されているのは黒髪をツインテールにした小柄だが出るところは出ている美少女だ。確かにアニメに出てくる魔法少女のような格好をしている。
「ああ、あれ。『魔法少女ミルキースパイラル7オルタナティブ』のコスプレか」
コスプレ美少女を目の当たりにした一誠は得心したようにそう言うが、俺のほうはあまり記憶に残っていないためか思い出せない。
「なんだっけそれ?聞いたことがあるような、ないような……」
「ほら、前に話しただろ。魔法少女に憧れる心は乙女、見た目は漢の俺のお得意さま──『ミルたん』だよ」
ああ、俺も思い出した。前に一誠から話された変人のお得意さまの一人が好んでいるアニメか。そのアニメキャラのコスプレってことか。
自らポージングを決めているあたり撮影されている当人もノリノリのようだが、学校を撮影会場にしている時点で相当の厄介者だ。
「オラオラ!天下の往来で撮影会たーいいご身分だぜ!ほらほら、解散解散!今日は公開授業の日なんだぜ!こんなところで騒ぎを作るな!」
輩のような口ぶりで現れたのは、生徒会役員兼シトリー眷属の匙くん。生徒会の女子生徒も彼と共に人だかりに飛び込んでいった。
どうやら生徒会もこの騒ぎを聞きつけて事態の収束を図ろうとしているようだ。騒ぎまくっていた人だかりも彼らの注意によって蜘蛛の子を散らすようにこの場から立ち去っていく。
この場に残ったは騒ぎの発端となったであろうコスプレ女子と匙くんら生徒会、やじ馬同然の俺たちだけであった。
「あんたもそんな格好をしないでくれ。って、もしかして親御さんですか?そうだとしても場に合う衣装ってものがあるでしょう。困りますよ」
「えー、だって、これが私の正装だもん☆」
匙くんの注意をポージングを決めて反論してくる女性。まったく反省の様子はないし、しかもどうやら親御さんのようだ。
あまり関わり合いにはなりたくないなと思っていると、廊下の奥のほうから生徒会長のソーナ・シトリー先輩が歩いてくる。
さらに彼女に続くようにサーゼクスさまとサーゼクスさまによく似た紅髪の男性──部長たちのお父さまが歩いてきた。
「何事ですか?サジ、問題は簡潔に解決しなさいといつも言って──」
「ソーナちゃん!見つけた☆」
生徒会長は魔法少女のコスプレをした女性を見るなり言葉を失い、コスプレ女性は生徒会長を見るなり喜びの笑顔で生徒会長に抱きついた。
もしかしてこの女性、生徒会長の知り合いか?よく見れば二人の顔立ちは似ている。堅物な雰囲気をまとう生徒会長とコスプレ女性とでは第一印象に差がありすぎるが。
「ああ、セラフォルーか。キミも学園に来ていたんだな」
サーゼクスさまがコスプレ女性に声をかけた。というか、セラフォルー?その名前、聞き覚えがあるんだけど……。
「あの方は現四大魔王のお一人、セラフォルー・レヴィアタンさま。そしてソーナのお姉さまよ」
……マジか。部長の説明を聞いて俺は自らの記憶と目の前の女性を合致させる。確かに現レヴィアタンさまは女性って聞いてたけどさ……!
(これがトップとか悪魔勢力ヤバくね?)
無礼千万と処刑されるのはさすがにアレなので口にするのはやめておいたが心底そう思う。
目の前の女性魔王に驚きすぎて俺と一誠は呆然としてしまったが、その間にも部長は冷静にレヴィアタンさまとあいさつをしていた。
「イッセー、シュージ。ごあいさつなさい」
「は、はじめまして、兵藤一誠。リアス・グレモリーさまの下僕『兵士』をやってます!よろしくお願いします!」
「はじめまして、兵藤秀次と申します。リアス・グレモリーさまの『戦車』です」
部長から命令された俺たちが頭を下げてあいさつをすると、レヴィアタンさまはピースサインを横向きにチェキしながら軽く返事してくる。
「はじめまして☆私、魔王セラフォルー・レヴィアタンです☆『レヴィアたん』って呼んでね☆
ねえ、サーゼクスちゃん。この子が噂のドライグくん?」
「そう、彼が『赤い龍』を宿す者、兵藤一誠くんだ。その隣が兵藤一誠くんの双子の弟の兵藤秀次くん。『煌黒龍』を宿す者だ」
「へえ☆あなたたち、双子の兄弟なのね☆二人とも伝説のドラゴンを宿すなんてとっても仲が良いみたい☆伝説のドラゴン同士、引き寄せ合っちゃったのかもね☆」
なんかもう、レヴィアタンさまの周りにキラキラしたものまで見えてきた気がする。それくらい一つ一つの言動が明るく軽い。
悪魔の王の魔王がこれでいいのかと困惑する俺たちの内心を察したのか、困り顔の部長が説明してくれた。現四大魔王さま方はプライベート時に酷いくらいに軽い調子になるのだと。
そのときだ。プルプルと肩を震わせる生徒会長がレヴィアタンさまに鋭い視線を向ける。
「……お、お姉さま。ここは私の学舎であり、私はここの生徒会長を任されているのです……。いくら、身内だとしてもお姉さまの行動は、あまりに……。そのような格好は容認できません」
「そんなソーナちゃん!ソーナちゃんにそんなこと言われたら、お姉ちゃん悲しい!お姉ちゃんが魔法少女に憧れているって、ソーナちゃんは知っているじゃない!きらめくスティックで天使、堕天使をまとめて抹殺なんだから☆」
「お姉さま、ご自重ください。魔王のお姉さまがきらめかれたら小国が数分で滅びます」
マジかよ。レヴィアタンさまもそんなにお強いのか。強さだけは魔王さまらしい。
前回のコカビエル襲撃の際に生徒会長がレヴィアタンさまを呼ばなかった理由──というよりも呼べなかった理由はレヴィアタンさまが妹の生徒会長を溺愛しすぎているから。下手に呼んでいたらコカビエルを町ごと消していただろうと。
「うぅ、もう耐えられません!」
「待って!ソーナちゃん!お姉ちゃんを置いてどこに行くの!」
とうとう耐えきれなくなったのか、生徒会長は目元を潤ませてこの場を走り去っていった。そのあとをレヴィアタンさまは追っていく。
生徒会長も身内に困らされていたんだな。俺も一誠の問題行動──主に女性関係で頭を悩ませているから少し同情してしまう。
「うむ。シトリー家は平和だ。そう思うだろう、リーアたん」
「お兄さま、私の愛称を『たん』付けで呼ばないでください……」
こっちでも恥ずかしい会話が始まってるよ。
姉妹の姿を見て感化されたのか、グレモリー家のほうまではしゃぎだす始末。
そうこうしているうちに今度は学内を一通り見回ったらしい父さんと母さんまでやってきた。部長のお父さまは俺たちの両親と話したいらしく、案内役に祐斗を抜擢してどこか落ち着ける場所に二人を連れて行ってしまった。
二つの家族の親たちを見送った直後、サーゼクスさまが部長に声をかけた。
「リアス、ちょっといいだろうか。すまないね、兵藤一誠くん。妹を少し借りるよ。朱乃くんも一緒に来てくれるかな?」
サーゼクスさまからの呼びかけに部長と副部長は二つ返事で了承する。
彼女たちを連れてどこかに行こうとするサーゼクスさまはこの場を離れようとする一瞬、ちらりと俺にだけわかるように視線を送ってきた。
(どうぞ)
俺が黙ってうなづきを返すと、サーゼクスさまは何も言わずに二人を連れてこの場を去った。
何を話すつもりなのかは薄々察している。おそらくは俺の過去を話すつもりなのだろう。
話してくれてかまわないと、むしろ部長に伝えてほしいと俺はあの日の夜にサーゼクスさまにそれとなく言ったんだ。止めはしないさ。
祐斗が両親と部長のお父さまと同行してしまったために俺は一人で教室に戻ろうとしたが、途中まで一誠とアーシアと共に戻ることになった。
「あの、イッセーさんとシュージさんは、部長さんのお兄さまや生徒会長さんのお姉さまみたいな雰囲気にはならないんですか?」
廊下を歩くなかでアーシアがふとそんなことを俺と一誠に言ってきた。それを聞いた俺と一誠は顔を見合わせてそれぞれ首を横に振る。
「ナイナイ。ああいう兄弟や姉妹の関係を全部否定するわけじゃないけど、俺と一誠がああいう関係になるのは絶対にない。仲良しエピソードとかに期待してるなら悪いけど皆無だよ」
「まあさすがに俺たちが部長やサーゼクスさま、会長やレヴィアタンさまみたいな関係になるのは想像できねえな。でもシュージだって幼稚園の頃は人見知りが激しすぎて俺の背中に隠れてたぜ。人見知り激しいのはいまもだな」
「アァ?そんな記憶ねえよ。捏造すんな」
記憶にない話をされて、それもどう聞いても俺の恥ずかしい幼少期の話になりそうということもあってキレ気味に反応する俺。
しかし、アーシアは目を輝かせて一誠にその話をするように何度もせがんでいた。本当に勘弁してください……。
一誠とオリ主は喧嘩するほど仲が良いとかではなく本当に無難な距離感の兄弟。双子として育てられているし当人たちも兄弟だと認識はしてるけど他人に「似てないね」って言われても「まあね」と返せるくらいにはドライ。