ハイスクールD×D 終焉に抗う暁の太陽   作:ドラゴン大好きT

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今月中には1巻の内容を書き終わらせたい。ペース早めに投稿していきたい所存(願望です)。


第7話 はぐれ者です

爵位持ちの悪魔の下僕になったが、主を裏切ったり、殺して主のもとを離れた悪魔。それをはぐれ悪魔と称するらしい。

以前、ドーナシークという堕天使は俺と一誠をはぐれ悪魔と勘違いして狙ってきた。それほどまでに主を失った悪魔は危険ということだ。

人間の頃とは比べ物にもならない力を得て、人間や他種族に危害を加えたり、ときには殺して各地で暴れる。まさしく野に放たれた獣だ。

 

見つけしだい、主人もしくはその地を管理する悪魔が消滅に動くとのこと。

今回は部長が管理する駒王町。つまり、俺たちが住む町にはぐれ悪魔が逃げ込んだため、討伐してほしいと上役の悪魔から依頼が届いた。

 

これも悪魔の仕事の一つだ。とはいえ、もとは俺たちと同じ人間。正直、殺すというのはやりすぎなんじゃとも思ってしまう。

 

「もとは人間でも、いまは悪魔。それもとても危険な輩ですわ。もう同じ悪魔と呼ぶこともはばかられるほどに」

 

「悪魔の力を持ちながら、主のもとを離れて好き勝手に生きようとする彼らは、身も心も醜悪に変化してしまうんだよ」

 

「……今回のはぐれ悪魔も人をおびき寄せて食べているという話です」

 

……ということらしい。目的地に向かうまで仲間たちから聞かされた話だ。

時刻は深夜。着いた廃屋は不気味な雰囲気に包まれている。侵入者である俺たちを拒むように辺りには殺気と敵意が漂っていた。

 

「イッセー、シュージ、今日は私たちの戦闘をよく見ておきなさい。そうね、ついでに下僕の特性を説明してあげるわ」

 

部長が語りだした話はこの間、無藤さんから聞かされたものとだいたい同じだ。

 

悪魔、堕天使、神側による三つ巴の戦争。数百年前に終結したが、いまでも小競り合いは続いているのだとか。

 

戦争によって軍勢と力を失った悪魔は、他種族を悪魔に転生させる『悪魔の駒』を作った。下僕の悪魔はボードゲームのチェスに使う駒と同じ特性を持っているらしい。

 

これがチェスというゲームを好んでいた悪魔には大好評だった。下僕の悪魔を率いて上級悪魔同士が競い合うゲームまで生まれてしまった。

その名も『レーティングゲーム』というもので、駒の強さ、ゲームの強さが、悪魔の地位や爵位にまで影響を及ぼすほどに流行っているらしい。

 

その結果、『駒集め』なんていう悪趣味なものまで行われるようになったらしいが。無理やり人間を悪魔に転生させて、下僕とする怖い上級悪魔もいるようだ。優秀な下僕は爵位持ちの悪魔にとってもステータスになるからと……。

 

無藤さんが言っていた『悪魔の駒』が生みだした悲しみとはこれのことか?

部長は俺と一誠を生き返らせるために駒を使ってくれたようだが、他の悪魔はそこまで優しいわけではないのかもしれないな。

 

そのときだった。話しながら歩を進めていた俺たちだが、廃屋に立ち込めていた敵意と殺気がよりいっそう強くなったことで立ち止まる。

 

直後、俺たちに近づく気配と共にドスンと地面に響く足音が聞こえてきた。

 

「不味そうな臭いがするぞ?でも美味そうな臭いもするぞ?甘いのかな?苦いのかな?」

 

不気味な低い声と異様な笑い声を辺りに響かせながらそいつは俺たちの前に姿を現した。

上半身裸の女性。その両手には槍のような得物を手にしている。

しかし、目を引くのは下半身のほうだ。人間の体じゃない。毛に包まれた四足獣の体だった。

ライオンよりも太い足に鋭い爪を生やしている。蛇のような尾は独立して動いていて、創作物に出てくるキメラのような見た目だ。

大きさにして五メートル以上。はぐれ悪魔バイサーは部長と激しく睨み合う。

 

「主のもとを逃げ、己の欲求を満たすためだけに暴れまわるのは万死に値するわ。グレモリー公爵の名において、あなたを消し飛ばしてあげる!」

 

「こざかしぃぃぃぃ!小娘ごときがぁぁぁ!その紅の髪のように、おまえの身を鮮血で染め上げてやるわぁぁぁ!」

 

それが開戦の合図だった。部長の指示を受けて祐斗が飛びだす。

 

「祐斗の役割は『騎士(ナイト)』、特性はスピード。

『騎士』となった者は速度が増すの」

 

徐々に速度を上げていく祐斗の姿を俺は目で追うこともできなかった。

距離を詰められたバイサーも槍を振るって応戦しているが、まるで当たらない。

 

「そして、祐斗の最大の武器は剣」

 

一度減速した祐斗の手にはいつの間にか、西洋剣のようなものが握られている。

鞘から剣を抜き放ち、祐斗は再び動きだす。あまりの速さに消えたかと錯覚してしまうほどだ。

困惑するバイザーの眼前に祐斗は姿を現し、抜き身となった剣を振るう。

直後、けたたましい断末魔と共にバイサーは肩口から鮮血をまき散らした。槍を握ったままのバイサーの両腕を祐斗が斬り落としたんだ。

 

「これが祐斗の力。目では捉えきれない速力と、達人級の剣さばき。ふたつが合わさることで、あの子は最速のナイトになれるの」

 

血に塗れた剣を振り払う祐斗の姿を見て、俺は息を呑んでいた。友達の裏の顔……みたいなものを見てしまったような気がする。

 

悪魔としての祐斗の姿を俺はそのとき、初めて見たんだ。

 

両腕をなくしたバイサーは足元にいる塔城に視線を移した。塔城は普段と何ら変わらない無表情でバイサーを見上げている。

 

「小虫めぇぇぇぇぇぇっっ!」

 

バイサーはその巨大な足を上げ、塔城を踏み潰そうとする。なのに塔城はその場から一歩たりとも動こうとしない!なにやってんだあいつは!

 

俺は焦ってその場から飛びだしたが、駆けつけるよりも速くバイサーの足は塔城を踏みつける。

思わず目を見開いて唖然とする俺の視界に──とんでもない光景が映しだされた。

 

バイサーの太い足を塔城は受け止め、少しずつ持ち上げ始めたのである。

 

「えぇぇぇぇ……?」

 

「『戦車』の特性はシンプル。バカげた力と屈強なまでの防御力。無駄よ。あんな悪魔の踏みつけぐらいでは小猫は沈まない。潰せないわ」

 

あ、なるほどです。部長の言葉に俺は頬をヒクヒクさせて顔中から汗を流していた。

塔城はバイサーの足を持ち上げてどかすと、空中に跳び上がって腹に鋭い拳の一撃を入れる。

途端、バイサーの体は廃屋に置いてある物品を破壊しながら吹っ飛んでいった。

え?俺、あんな馬鹿力を持った相手に煽ったの?俺の手はよく無事だったなぁ!

 

「シュージ、小猫ちゃんと喧嘩してるんだよな?早く謝ったほうがいいんじゃ……」

 

一誠が俺の肩に手を置いて心配してきた。先日の口論を塔城が根に持っていた場合、俺は死ぬ!

 

「ふぅー。よし、とりあえず今度、ケーキでも買ってきて深くお詫びするとしよう!」

 

聞こえるように声を張り上げて俺は宣言する。

じろりと睨んでいた塔城もそれを聞いた途端、ふんと鼻を鳴らしてそっぽを向いた。

 

「がぁぁぁっ!調子に乗るなぁぁぁぁっっ!」

 

そのときだ。瓦礫の山に埋もれていたバイサーが復活してきた。怒り混じりの吼え声をあげて、俺と一誠のほうに向かってくる!

 

「うわ!こっちにきた!」

 

「ッ!離れとけ!」

 

「あっ!」

 

動揺している一誠を突き飛ばし、地響き打って突進してくるバイサーを前に俺は立ち尽くした。

 

「シュージ!逃げろぉぉぉぉっ!」

 

一誠の悲鳴のような叫びが響く。俺は緊張感に体をこわばらせながらもなんとか身構えた。

バイサーと接触する直前、両腕をクロスして防御しようとする。

 

けど、相手は五メートル以上の巨体。俺がいくら構えたって、ダンプカーみたいな相手にぶつかられたら死ぬ──。

 

と、思っていたのだが。ドンという衝撃が体を襲いこそしたが、俺は両足を踏んばってバイサーの巨体を受け止めていた!え、どういうこと!?

突進を受け止めた俺も、受け止められたバイサーも面食らっているなか、部長の声が届く。

 

「シュージ、あなたも小猫と同じ『戦車(ルーク)』よ。

今日は見てもらうだけと思っていたのだけど、仕方ないわね。グレモリー眷属として、力を振るうことを許可するわ!」

 

部長からそう言われた瞬間、体の奥底から力が湧き上がってきた。『戦車』だと自覚したからか。うちに宿る駒の特性が発動したんだと思う。

拳を握りしめると、制服の腕部分が弾け、俺はバイサーの体に一発打ち込む。

 

ドゴンッ!とバイサーの体は再び後方へ激しく吹き飛んでいった。すっげえ!俺も馬鹿力じゃん!今後は力加減を気をつけなきゃだ。

 

「最後に朱乃ね」

 

「はい、部長。あらあら、どうしようかしら」

 

副部長は微笑みながら、吹っ飛んでいったバイサーのもとへ近づいていく。

 

「朱乃は『女王(クイーン)』。私の次に強い最強の者。『兵士(ポーン)』、『騎士(ナイト)』、『僧侶(ビショップ)』、『戦車(ルーク)』、すべての力を兼ね備えた無敵の副部長よ」

 

いまだ動くバイサーを見て、副部長の笑みが深くなる。少し怖いなぁ……なんて思ったり。

副部長が手を天井に向けると、どこからともなく雷雲が現れ、バイサーに雷が降り注いだ。

 

そして、俺の恐怖心は正しかった。

雷を浴びたバイサーは激しく感電し、全身黒焦げになってしまったが、副部長は何度も雷を落とし続けた。バイサーの苦悶の叫びを聞くたびに、副部長の笑み……もとい嘲笑は深くなる。

 

「朱乃は魔力を使った攻撃が得意なの。雷や水、炎などの自然現象を魔力で起こす力ね。そして何よりも彼女は究極のSよ」

 

う、うわぁ……どおりで。副部長はどう見ても、楽しみながらバイサーを痛めつけている。普段の優しい笑みからは想像できないほどに、恐ろしい本性を隠し持っているお方だ。

 

オカルト研究部の女子部員って皆怖すぎ。逆らわずにおとなしくしておくほうが吉だな。

数分間、続いた雷の暴力が終わり、完全に戦意を失ったバイザーのもとへ部長が近づく。

 

「最後に言い残すことはあるかしら?」

 

ボロボロのバイサーを冷徹な視線で見下ろし、部長は手のひらを向けて訊いた。

 

「殺せ」

 

「そう、なら消し飛びなさい」

 

……命乞いもなしか。潔いというか、もう助からないと諦めているのか……。

バイザーの一言を聞き、部長は手元に出現させたドス黒い魔力を撃ち出した。魔力の塊は包み込んだバイサーの体を消滅させる。

 

「これで終わりね。みんな、ご苦労さま」

 

先ほどの冷たさはどこへやら。普段の朗らかな笑みを浮かべて部長はそう言うと、部員たちも普段の様相へと戻っていた。でも戦闘中は皆、まじめで剣呑さに満ちた雰囲気を漂わせていた。

 

でも、戦いっていうのはそういうものだ。特に命のかかったものならば。俺も早く慣れよう。

 

こみ上げる吐き気と背筋が凍るような感覚に必死に抗いながら俺は息を吐く。はぐれ悪魔討伐の仕事も終わって、帰ろうとしていたときだ。

 

「部長、俺の駒……っていうか、下僕としての役割はなんですか?」

 

一誠は片手を挙げて恐る恐る問いかける。

えっと……朱乃副部長が女王。塔城と俺が戦車。祐斗が騎士。残るは僧侶と兵士の二種類だ。

でも、戦車と騎士はチェスのルールだと二つあったはずだ。僧侶もそのはず。なら……。

 

「『兵士(ポーン)』よ。イッセーは『兵士』なの」

 

部長はにっこりと微笑んで断言する。

兵士の駒といえば、将棋でいうところの歩の駒。

つまり雑兵扱いの駒だ。それに気づいた一誠はかなりのショックを受けたようで、帰り道も沈んだ顔で家路についていた。

 


 


 

次の日の深夜。悪魔の仕事の時間となり、部員は皆、部室に集まっていた。

しかし、俺や他の部員は召喚されることもなく、一誠のみが呼び出しを受けて出払っている。こういう日もあるんだろうな。

 

昨晩、部長から駒の説明を受けて、一誠はかなり落ち込んでいた。自分が兵士なのに、弟の俺が戦車だったことを気にしているのか、また目を合わせなくなったほどに。

 

「でもさ。『兵士』の駒って、将棋でいうところの歩兵と同じなんだよな?」

 

「ボードゲームとしての違いはあるけど、特性は似ているよね」

 

チクタクという時計の音を聞きながら、俺を含めた部員たちは自由に過ごしている。部長は副部長と共に紅茶をたしなみながら談笑しているし、塔城はいつも通りにお菓子を食べている。

俺はといえば、祐斗とチェスをしている最中だ。悪魔の駒が人間界のチェスを参考にしていると聞いて、俺もルールを知っておこうと思い、祐斗に教えを請いながら手合わせしてもらっている。

 

「歩兵は敵の陣地三段目以内に入ると、と金に成る。つまり『兵士』の駒も似たような効果があるんじゃないかなーって、俺は思ったんだけど」

 

「うん。正解だよ」

 

祐斗は爽やかに笑って兵士の駒の特性を教えてくれた。これを知ったら、落ち込みきった一誠も多少は気を取り直してくれるだろう。

 

「それにしても、シュージは勉強熱心ね。成績も確か、学年で上位に入っていたわね」

 

ふと部長がそんなことを言った。俺の学業の成績は悪くない。それなりに良い部類に入る。

まあ、隣の席に文武両道なイケメンがいるから目立つこともないけどな。

 

「イッセーは正直、おバカな印象が強いわ。もちろん、それもあの子の魅力ではあるけどね」

 

「二人は双子の兄弟と聞いています。これまでも比べられることは多かったのでは?」

 

「まあ……そうですね。比べられるし、一誠にまつわる噂はけっして良いもんじゃない。それも一誠がやってきたことが原因だから、仕方ない話ではあるんですけど」

 

俺と一誠は双子の兄弟だけど、はっきりいって似ていない。それは性格もだし、見た目もだ。

バカでスケベだけど素直な兄。まじめでまともだけど皮肉屋な弟。他の人から見た俺たちは印象はきっとそんなところなんだろう。

でも、一誠が不出来なわけじゃない。むしろ俺のほうが不出来なんだ。あとは俺、学ぶことが好きだからさ。勉強もスポーツもゲームも学ぶことはだいたい楽しい。

 

悪魔になったからには、悪魔の世界についても知りたい。俺は部長にあることを訊く。

 

「部長、悪魔っていまでも堕天使や天使と争っているんですよね。そのために力が必要だって聞いています。──堕天使って具体的にどれくらい強いんですか?」

 

俺の質問を聞いて、部長の顔色が変わる。

 

「昨日のはぐれ悪魔よりは格段に強いわ。光は悪魔にとって毒。まともに食らえば『戦車(ルーク)』の特性を持っているあなたでもダメージは確実よ。中級以上の堕天使なら、あなたを消滅させられるくらいの光の槍を使ってくるでしょうね」

 

「消滅……つまり無に帰るってことですね」

 

「わかっていると思うけど、もし堕天使に会ったとしても一人で戦おうだなんて思わないこと。

会ったら絶対に逃げなさい──」

 

さっきまでの和やかな雰囲気から一転、真剣な顔つきとなって部長が窓の外に視線を向ける。

他の部員たちも同じように外を見つめていて、明らかに空気が変わっていた。

 

「これは……やられたわね」

 

「部長、何かあったんですか?」

 

「……イッセーが何者かに襲われているわ」

 

はぁ!?あまりに唐突な報告に俺は口が開きっぱなしになるが、皆はすでに立ち上がっていて、部室の中央にある魔法陣へ移動している。

一誠は依頼主のもとに行っているはずだ。救助に向かうために俺たちは転移するってことか。

 

クソ!平和な時間ってマジで長続きしないよな。俺も慌てて魔法陣の上に立つ。襲われている一誠のもとまで、俺たちは転移していった──。

 


 


 

転移した先は家のリビング。ソファーやテレビ、テーブルなどが置いてある普通の部屋だ。だが普通じゃないものが一つあった。

おそらく家主で依頼主だろう。男性が上下逆さまで壁に貼り付けられている。両手足と胴体に釘を打ち付けられて、斬られたのであろう腹部からは臓器がこぼれてしまっていた。

 

「うぶっ……ひどい」

 

男性は苦悶の表情を浮かべて絶命していた。

あまりに凄惨な現場に吐き気が込み上げるが、仲間たちと一誠の危機を前にして、吐いている暇なんてないと無理やり抑え込んだ。

 

「兵藤くん、助けにきたよ」

 

「一誠、無事……じゃねえみたいだな」

 

「あらあら。これは大変ですわね」

 

「……神父」

 

俺たちが現れると、一誠は安堵の表情となる。

一誠は両足から血を流しながらも、白髪の神父服の男と向かい合っていた。

 

神父服の男は若く、いわゆる美少年であったが、その美しい顔を狂気的な笑みで歪ませている。

両手に銃と光の剣を持っていることから、こいつは神父──それも悪魔祓いなのだろう。

 

おそらく一誠の怪我の理由はこいつだ。だが両足を撃ち抜かれてもなお、一誠は誰かを庇うように神父と立ち向かっている。

妙だと思って一誠の背後に視線を送れば、そこには見知った金髪の美少女がへたり込んでいた。

 

「アーシア!?なんでこんなところに!」

 

「シュージさん!……ということは、お二人とも悪魔だったんですね……」

 

なぜかいたアーシアに俺は驚きの声をあげ、アーシアも俺を見て驚いている。だが、その目は憂いに満ちていて、目端には涙が浮かんでいる。顔には殴られたような痣まであった。

 

「まさか二人の悪魔と知り合いかよ!とんだ尻軽シスターさんですこと!まあいいや!全員まとめてぶっ殺してやらあ!」

 

予期せぬ再会に衝撃を受けている最中にも、戦いは始まってしまう。神父は光の剣を振り上げ、俺たちに襲いかかってきた!

 

「させないよ」

 

そう言うと、いつの間にか剣を手元に出現させた祐斗が斬り込んでくる神父の剣を受け止める。

 

「悪いね。彼は僕らの仲間でさ!こんなところでやられてもらうわけにもいかないんだ!」

 

「おーおー!悪魔のくせに仲間意識バリバリバリューですか?悪魔戦隊デビルレンジャー結集ですか?いいねぇ。熱いねぇ──っと!」

 

祐斗とつばぜり合っている隙を突こうと、俺は拳を握りしめてその場を飛び出していた。舌を出して挑発する神父の顔面目掛けて拳を振るう!

 

「ふっ飛んでろよ、イカれ神父が!」

 

「ヒュウー!豪快なパンチですことー!けど空振りだよバァァァァカ!死ねよ!クソ悪魔が!」

 

顔を引いて俺の拳を避け、神父は剣を握っている手とは逆の手で銃を撃つ!

音もなく撃ち出された光の弾丸は俺の額に直撃。衝撃に俺は頭をのけ反らせ、当たった額からは煙が上がる。痛え!けど、死にはしねえよ!

 

「およ?死んでないの!頭に光の弾丸食らって死なないとか、なかなかタフだねえ。だったらキミも斬り裂いて殺してあげる!」

 

「させないって言ったろ。シュージくん、防御力があるからって無茶をしてはいけないよ」

 

「なんだいなんだい!そっちのクソ悪魔くんとデキてんのかと思ったら、こっちの悪魔とデキてんのかい?悪魔は手当たりしだいって噂は本当みたいだねえ!」

 

「……下品な口だ。とても神父とは思えない。

いや、だからこそ、『はぐれ悪魔祓い(エクソシスト)』をやっているわけか」

 

「ふーん。悪魔祓いにもはぐれがいるのか。確かに本物の聖職者がこんなに品のない言動をするわけないな」

 

ヒリヒリと痛む額を押さえ、俺はイカれ神父を睨みつける。おまえだろ。アーシアを殴ったのは。それに一誠の足に弾丸も撃ち込みやがって。

 

そのとき、怒りの感情を燃えさせているのは俺だけではなかった。一誠の怪我を確認した部長がはぐれ神父の後方に魔力を撃ち出した。

魔力の弾が当たった家具は消し飛び、部長は突き刺すような視線をはぐれ神父に向ける。

 

「私は、私の下僕を傷つける輩を絶対に許さないことにしているの。特にあなたのような下品極まりない者に自分の所有物を傷つけられることは本当に我慢できないわ」

 

部長の全身から魔力のオーラがあふれ、視線を向けられていない俺まで震え上がる。周辺の空気が歪んで見えるほどの部長の圧力に、はぐれ神父も苦しい笑みを浮かべて一歩引き下がった。

しかしその直後、はぐれ神父は壁の向こう側に視線を送っていやらしく笑う。さらに副部長も硬い表情で警戒するように辺りを見回す。

 

「部長、この家に堕天使らしき者たちが複数近づいていますわ。このままでは、こちらが不利になります」

 

「……朱乃、イッセーを回収しだい、本拠地へ帰還するわ。ジャンプの用意を」

 

挑発するように笑う神父を睨みながら部長は指示を出し、副部長は呪文を唱え始める。転移のための準備だろう。

 

「部長!あの子も一緒に!」

 

一誠が言っているのはアーシアのことだ。自分の眷属が傷つけられて、あそこまで怒った優しい部長なら、きっと一緒に連れていってくれる。

そう、俺も一誠も思っていたんだ……。

 

「無理よ。魔法陣を移動できるのは悪魔だけ。

しかもこの魔法陣は私の眷属しかジャンプできないわ」

 

「そ、そんな……」

 

「なんとか、なんとかできないんですか!?」

 

俺も必死になって訊いてみるが、部長は首を横に振る。俺たちの淡い期待は、ハッキリと否定されてしまったんだ。

本当にアーシアをこんな場所に置いていくのか?あの子は……怪我をして泣いている子供を、見過ごせないくらいに優しい女の子なんだ。

仲間であるはずの神父に、暴力を振られているシスターなんだぞ。きっと、ろくことにならない。なのに見捨てるなんて……俺には……。

 

『助けてほしいなんて、私、言ってない!あなたに助けなんて求めてない!』

 

っあ……。俺はある記憶を思いだし、アーシアに伸ばしかけていた手を逆の手で押さえた。

 

「アーシア!」

 

「イッセーさん。また、会いましょう」

 

一誠の呼び声に笑って答えながらも目の端に涙を浮かべているアーシア。

 

それが、俺が最後に見た光景だった。

魔法陣が光りだし、視界に映る景色が変化する。

 

次の瞬間、俺たちは部室に戻っていた。転移は無事に成功したんだ。だけど、部室に戻った一誠は自分の無力さを嘆くように床を叩き、俺もショックからその場にへたり込んでしまった。

 

俺たちはアーシアを助けられなかった。いや、見捨ててしまったんだ……。




現在、活動報告にて主人公のヒロインについてご意見を募集中です。反映できるかはわからないので返信はしない方向で進めますが、全部確認していますので気軽に書いていただければなと。
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