ガンガディアの弟   作:赤ワイン

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原作が手元にないのでエミュが難しい。
なのでガンガディアのセリフは少ないのです。

今回もオリ設定もりもりで。


足りない物だらけ

スピリット

 

 

 スピリット、実に良い名前を与えてくれたものだ。魂や霊魂を意味すると同時に、酒の区分でもある。デスパワーを持ったトロルバッコスである私に、実に合致しているといえよう。

 

 そんな私ではあるが、今は畑を耕している。そう、畑だ。

 

 魔界の荒れた土地で農耕ができるものかと思えば、普通にやったのでは逆立ちしたって無理である。固く、粘土室で、痩せていて、毒を持っている。おまけに水は少ない。その上、ろくに品種改良された作物もない。割と原種じみた植物ばかりだ。

 

「ジバ系呪文が欲しい。」

「また知らない名前を……一体どこから聞いてくるのです?」

「天啓ということで。」

 

 詳しく言ったところで、役に立つ訳でもない。私が知るはずのない知識を口走るのはよくあることであるからして、ガンガディアも慣れてしまったようだった。

 

「地爆呪文と書いてジバリア。魔法陣を設置してしばらく後にドカンと大地が隆起します。応用すればクワより効率的に耕せるかと……」

 

 が、この世界の呪文体系は知っているからといって使える訳ではない。精霊と契約しなくてはならないのだ。そのための魔法陣が存在しない以上、私が何度ジバリーナと唱えようと意味はない。管轄は『重圧呪文(ベタン)』系列の精霊と同じだろうか? ただ、そのベタン、下手をすればまだ発明されていない可能性も高いが。

 

 同じ理由で私はバギムーチョをいきなり唱えることもできない。バギクロス二つを合成する必要がある。もし、バギムーチョの契約魔法陣を入手し契約できたならば、合成をへずともいきなり極大呪文を放てるだろう。イオナズンやベギラゴンのように……

 この場合イオグランデやギラグレイドがどうなるかは気にしないことにする。今の私では文字通り腕が足りない。やまびこの陣で二つ作っても極大呪文の保持には両手が必要。今のやり方でも、やまびこなしでも、腕がもう2本いる。

 

 *

 

 さて、多少は柔らかくなった土地の上に、枯れ木やら死骸やらを積み上げる。焼いた灰を肥料にするのだ。

 あとは、もう一つの極大呪文の実証試験も兼ねている。

 

「やまびこの陣展開。」

 

 敵と戦うわけでないので早詠みはいらない。魔力を込めた石ころを置いて四角形を基準にした魔法陣を生成する。

 

「メラゾーマ!」

 

 私がそう唱えると、たちまちやまびことなってこだまし、2つの火球が生み出される。

 両腕で一つずつ保持し、そして胸の前で一つに合わせる。

 

「うあっつつつ!」

 

 瞬間、凄まじい熱量が発生し、私はびっくりして呪文の保持を止めてしまった。

 

「ううぅむ。流石に極大焼失呪文(メラガイアー)……油断していると術者自身も焼き尽くさんとしますか……」

「焼失? 極大火炎呪文ではないのですか?」

「……これは私の説に過ぎないのですが、炎の極みとはなんでしょう?」

 

 極大とは発展が終わった、極まった系統を指す。

 

「極大の炎とはなんでしょう? 温度であれば、おそらく上限は限りないか、あるいは高過ぎて届かないか。明るさ、であれば炎でなくとも松明呪文(レミーラ)で十分。」

「そう言われてみれば……だから焼失、ですか!」

「燃焼の作用に特化させる形で発展の先に辿り着いた。ゆえにメラ系ではあれど火炎呪文と冠さない。私はそう解釈しています。」

 

 似たような性質の発展をした呪文は、暗黒の呪文でありながら最上級は極大融合呪文(ドルマドン)になるドルマ系なども挙げられるか……

 

「しかし、そうであるならば焼畑に適さないのでは?」

「?」

「灰すら残さず焼失するほどだとすれば、無駄働きですよ?」

 

 私はあほであった……よく考えたらそうじゃん……

 

「メラストーム……」

 

 適当に火炎呪文をばら撒いて、今日はお開きにしよう。片手の指一本一本にメラミの火球が五つ、やまびこでさらに五つの系10こが、積み上げた諸々に着弾、炎上した。

 

「見事なものですね。」

「適当にばら撒くことしかできませんから、実戦ではあまり役に立ちませんがね。」

 

 ゲームのそれと同じく、狙った相手ではなく、射程内の敵にランダムに飛んでいく。その上、ゲームと違いこの世界の呪文は一部を除いて必中ではない。

 

 *

 

 ガンガディアもまた沢山の呪文を身につけたが、やはり極大呪文は苦戦している。契約魔法陣が希少ゆえに、極大呪文は私のように呪法を絡めた合成による擬似再現ということになるが、ガンガディアの戦闘スタイルとマッチしないように思える。

 同系統、同格の呪文同士を合成して擬似的に未契約、未修得の上位呪文を再現する合成呪法であるが、まぁ、手間がかかる。そもそも左右で呪文を同時使用=1ターン2回行動ができるのなら合成より、攻撃と補助や回復と攻撃というふうに使い分けた方が良い。

 魔法使いだからと魔法だけにこだわる必要はない。ガンガディアに倍力呪文(バイキルト)加速呪文(ピオラ)2段階、効果呪文(スカラ)2段階積んで即攻をかけた方が早い。これも立派な魔法使いの戦術だ。

 

「というわけで兄者にはこれから覚えている限りの補助呪文名を教えるので、魔法陣を見掛ければ片っ端から契約して下さい。」

「急ですね、随分……」

「なぁに、兄者の戦闘スタイルはやはり物理を主軸に魔法を補助に絡めて立ち回るアタッカーが一番と思い至った次第です。現状極大呪文はロマン砲ですからね。費用対効果が釣り合わない。」

「スピリットがそう言うのならそうなのでしょうね。」

「あるいは呪文の威力を倍化する特技というのもあります。ただのイオがイオラ並みの破壊力に化けますね。」

「そんな技術が!」

 

 『魔力覚醒』というやつである。攻撃呪文の威力が単純に倍になる。

 こんな便利なものならなぜ原作で誰も使わなかったのか……メタ的な話を抜きにすれば、おそらく大魔王やらハドラーやポップ、マトリフはデフォルトで使っていたのではないか、と考える。臨戦体制をとった時点で自然とそうなっているのではないか、というわけだ。

 魔法力の制御を密に特訓し、無駄なく扱えるようにすれば同じだけの消費MPでも威力は上がるだろう。

 

 他にできることと言えば、魔法力の量ではなく質を鍛える。原作連載時にはなかった概念だ。つまりパラメータでいうところの『こうげき魔力』『かいふく魔力』である。原作では最大MPで呪文の威力が決まっていたが、それはどちらかというと同じ呪文にどれだけのMPを注ぎ込めるか、という話だったのではなかろうか?

 

 最大MP1000の存在が5%の魔法力で呪文を放てば消費MPは50だ。

 しかし最大MP100の5%では5。同じ5%でも単純計算威力10倍の差になる。

 

 この世界の魔法使いは呪文の消費MPをパーセンテージで決めているのではないだろうか? そもそも固定値と考えるにはどうやって数値化するのだ、ゲームではないのだから、という問題もある。体感で消費MPを決めるのなら割合が一番やりやすいというのは私もそうだがガンガディアもまたそうらしい。

 

「魔力量は魔法を使い続ければ自然と鍛えられ、上がっていくでしょうから、今度は質を鍛えてみるというのも良いでしょう。」

 

 小手先の技術ばかりではなく、また基礎を鍛えるところに戻ってくるべきであろう。

 

 *

 

 畑を耕し、遅いくる魔物を蹴散らし、修練をしているうちに、思い至ったことがあった。

 

「闘気を全く鍛えていない!」

 

 由々しき事態であった。私自身の防御力が低いように感じていたら、闘気の不足ではないかということになった。

 やはり幼児期の栄養失調は危険である。闘気は生命エネルギーであるからして、まずは健全な肉体が必要だ。

 私はトロル族にしては細すぎる。魔法使いだから痩せていていいというのは言えない。ポップだって腹筋は割れているのだ。

 

「と、いう訳なのです。」

「なるほど。」

「確かに闘気と魔法の同時使用はできませんが、自力を鍛えるのであれば闘気にも焦点を当てるべきでした。」

 

 私はトロルにあるまじき体質として、脂肪が非常に付きにくい。私もガンガディアもダイエットは成長期を終えてからではあったが、私は成長期を終えても身長は普通手のトロルに届かず、腹回りも半分ほどしかなかった。そして脂肪が付きにくいせいで体重が増やしにくく、絞っても大した筋肉量にならない。

 闘気は生命エネルギーゆえに熱をもつ。つまりは冷えているとうまく働かないのではないか、という説を上げたい。体が冷えるとうまく動かせないのと同じだ。

 

「私は筋肉量も脂肪量も低いので冷えやすいんです。アルコールの血を持っていなければ件の氷龍には勝てなかったでしょう。命とは温度ですから、今のままでは十分な闘気を身につけられるか……」

「闘気……そういえば君の言うデスパワーはどうしたのです? あれは暗黒闘気の一部なのではないですか?」

 

 すっかり忘れていた。私はデスパワー使いだ。ダイ大的な表記をするならば、『死念気(デスパワー)』とでも言うべきだろうか。

 

「あれは、確かに暗黒闘気に近いですが……しかし闘気ではないかと。そもそもあれは死者の情念だとか怨念だとかそう言うものです。命あるものが発するそれではない。」

 

 例えばバルトスのように死体ながら暗黒闘気を使うものもあったが、あれはおそらく元を辿ると作り手の闘気であろう。つまりはハドラーのような生者だ。

 

 一方でデスパワーは徹頭徹尾死者のものだ。死んだ後のそれだ。

 何より暗黒闘気は怒りや憎しみといったマイナスの感情、呪いじみたそれに端を発する闘気だが、死念気は死者の思いだ。恨みつらみだけでなく、残した子供や家族を想う気持ちや、世の行く末を憂う気持ちも当然混じっている。必ずしも闇のものではない。

 

 と言うより私からしてみれば闇=悪で、光=正義という価値観は受け入れ難い。闇で持って闇を制する正義の味方があってもいいではないか。ドラクエ10の魔剣士みたいに。正義の怒りを燃やしたっていいだろう。

 

「デスパワーそのものは鍛えるという点にはないですね。器を広げるというのも、結局は肉体を鍛えるという点に収束するでしょうし。」

 

 何より魔界は死の数が尋常ではないのでデスパワーの供給に困らない。その上現状使い道も『呪詛』もどきの技だけだ。死霊を召喚したり深淵の契りを結んだり、自己蘇生呪法をかけたりといった芸当はできない。やり方がわからないからだ。

 特に『深淵の契り』は攻撃呪文と回復呪文の威力を倍化した上で一度だけ即死を免れる効果もあるという、私にうってつけの特技と言えるが、そもそも深淵とはどこなのか、誰と契りを結ぶのか分からない。

 

「深淵の覗き窓はどこか知りませんか?」

「覗き返されますよ。」

 

 なぁに、大魔王バーンだとか冥竜王ヴェルザーだとかに比べれば深淵なんぞなんぼのもんじゃいというやつである。

 

 でも『とてつもなくおそろしいもの』=サンは勘弁していただきたい。

 





 次回はまた新トロールを出そうかな、と。
 女の子です。はい。


 なお現在スピリットとガンガディアの群は魔界のヴェルザー領に隣接したあたりにいます。逆にバーン領からはやや遠いです。
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