俺の青春が田舎へ流された。   作:龍造寺

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原作開始前12話です。


原作開始前ー13ー12話ー八幡、手製のマフラーを作り始めて、そして。

2010・12・11・☃️/☁・20:30・八十神アパート・2ー1・静江の部屋・リビング

 

俺は叔母さんが商店街の巽屋って店から買ってきた毛糸を手に持ってる。赤の毛糸の玉と青の毛糸の玉だ。…これ、なんか高そうに見えるんだけど、気のせいか?巽屋って、昔ながらの手芸店っぽい店だけど、こんな上質な毛糸を扱ってるんだな。

 

【この毛糸でマフラーか手袋か編んであげたらどうかしら?】

 

叔母さんがニヤニヤしながら言う。…って、ちょっと待て。

 

【編むって…俺、編んだことねえぞ?】

 

【まあ、焦らずに私が編み方を教えるから、それでやってみなさい】

 

【…というか、叔母さん、編み物できたのかよ!?】

 

俺が驚くと、叔母さんは苦笑いしながら答えた。

 

「こう見えても私は相手に尽くすタイプよ。学生時代、当時付き合ってた彼氏に手編みのマフラーをあげたわ」

 

【へぇ~、そうだったんだな。でもその彼氏はどうなったんだよ?】

 

【まあ、高校卒業と同時に自然消滅かな。あいつ、関西の大学行くっつって、それっきりだからさ】

 

叔母さんがそんな過去話をしながら、編み方をちゃんと教えてくれる。…叔母さんって、意外とこういう家庭的な一面もあるんだな。俺、裁縫はまあまあ得意な方だから、見よう見真似で編み始めることに。

 

 

叔母さんが巽屋から買ってきた青い毛糸の玉を手に持つ。…吹寄に似合いそうな色だ。俺は編み物なんてやったことねえけど、吹寄に喜んでもらいたい一心で挑戦することにした。静江が『私が編み方を教えるから』って言うから、俺はリビングのテーブルに毛糸と棒針を並べて、叔母さんの指導を受けることにした。

 

【まず、基本の編み方から教えるわね。棒針編みのマフラーなら、シンプルな『メリヤス編み』がいいと思うわ】

 

叔母さんが棒針を手に持つ。棒針って、2本の細長い針のことだ。…俺、これでどうやって編むんだよ?静江が俺の困惑した顔を見て、ニヤッと笑う。

 

【まずは『作り目』からね。毛糸をこうやって指に巻いて…】

 

叔母さんが毛糸を左手の親指と人差し指に巻きつけて、棒針を右手に持つ。毛糸を引っ掛けて、クルッと輪っかを作る。…何だこれ、めっちゃ器用だな。

 

【この輪っかを棒針に通して、ギュッと締める。これが1目ね。マフラーなら、幅は30目くらいがちょうどいいかしら】

 

叔母さんが次々と輪っかを作っていく。…俺も見よう見真ねでやってみる。毛糸を指に巻いて、棒針で引っ掛けて…。…って、むず!指が絡まって、毛糸がグチャグチャになっちまった。

 

【…俺、これ無理じゃね?】

 

【焦らないの。最初は誰だってそうよ。もう1回やってみなさい」

 

叔母さんが優しく言う。…ったく、俺、裁縫は得意な方だけど、編み物は全然勝手が違うな。静江に手を取られながら、何とか30目の作り目を完成させた。…手が疲れた。

 

【次は本番の編み方ね。メリヤス編みは『表編み』だけでいいわ。まず、右の棒針を左の棒針の1目に前から刺して…】

 

叔母さんが実演してくれる。右の棒針を左の棒針に刺して、毛糸を右の棒針に巻きつけて、左の棒針から目を外す。…何だこれ、単純そうに見えてめっちゃ難しい。

 

【毛糸のテンションが大事よ。きつすぎても緩すぎてもダメ。均等になるように意識して】

 

俺もやってみる。右の棒針を左の棒針に刺して、毛糸を巻きつけて…。…って、毛糸が棒針から外れた。…くそ、俺、めっちゃ不器用だな。

 

【比企谷八幡、集中!吹寄さんのために編むんでしょ?】

 

叔母さんに叱られて、俺はハッとする。…そうだ、俺、吹寄のために編んでるんだ。吹寄が喜んでくれるなら、こんな編み物くらい、ちゃんとやらなきゃな。俺、気合いを入れ直して編み始めた。

 

何度も失敗しながら、1段目をなんとか編み終えた。…けど、目がガタガタだ。静江が『最初はこんなもんよ』って笑うけど、俺、めっちゃ悔しい。もっと綺麗に編みたい。

 

【編み物のコツは、リズムよ。手を動かすリズムを一定にすると、目が揃ってくるわ】

 

叔母さんのアドバイスを聞いて、俺はリズムを意識しながら編み始めた。右の棒針を刺して、毛糸を巻きつけて、目を外して…。何段か編むうちに、少しずつ目が揃ってきた。…お、ちょっとマフラーっぽくなってきたぞ。

 

【マフラーの長さは、150センチくらいが目安ね。首に巻いて、両端が胸くらいまで来る長さよ】

 

150センチって…めっちゃ長いな。…でも、吹寄がこのマフラーを巻いて、バスケの後に首に巻いてくれる姿を想像すると、俺、頑張れる気がしてきた。…って、俺、めっちゃ妄想してんな。顔が熱い。

 

何度も失敗しながら、ちょっとずつマフラーを編んでいく。叔母さんが『いい感じになってきたじゃない』って褒めてくれるけど、まだまだガタガタだ。…でも、吹寄のために編むって決めたんだ。ちゃんと完成させるぞ。

 

 

休憩時間に俺は叔母さんに巽屋のことを聞いてみる。

 

 

【ところで、この毛糸…巽屋から買ったって言ってたけど、商店街の店って寂れてなかったか?】

 

【巽屋は別よ。天城さんの旅館に卸してたり、都会の方にも卸してるからね】

 

【なるほど、お得意様持ってるわけか】

 

…巽屋、侮れねえな。稲羽市って田舎だけど、こういうしっかりした店もあるんだな。俺が毛糸を手に持って感心してると、叔母さんがまたニヤニヤしながら聞いてきた。

 

【吹寄さんとの仲はどうなったの?ちょっとは進展したわけ?】

 

【そんなわけねえだろ!】

 

俺、即座に否定するけど、顔が熱くなる。…くそ、静江のこのニヤニヤ、ほんとやめてくれ。

 

【あんたのことだから、そんなこととは思ったけどさ。男見せる時は見せなさいよ、ちゃんと】

 

【い、言われなくても分かってるよ!】

 

…って、簡単に言うけどさ。俺、吹寄にプレゼント渡すだけでも心臓バクバクなのに、告白とか…まだ想像しただけで緊張する。…でも、叔母さんの言う通りだ。吹寄にちゃんと気持ちを伝えるなら、男見せなきゃいけねえよな。

 

俺は休憩後も何度も失敗しながら、ちょっとずつマフラーを編んでいく。…これ、吹寄に似合いそうな青い毛糸で編もう。吹寄がバスケの時とかに使ってくれたら嬉しいな。…って、俺、めっちゃ真剣に考えてんな。吹寄に喜んでもらいたいって気持ちが、こんな行動に繋がるなんて…。俺、ほんと吹寄にやられてるな。

 

 

2010・12・18・☁・20:15・八十神アパート・2ー1・静江の部屋・リビング。

 

 

 

手編みのマフラーを編み始めてから、もう1週間が経った。学校じゃさすがに人目があるから編み物なんてできねえ。…クラスメイトに見られたら、絶対からかわれるだろ。だから、家に帰ってきてから、晩飯の支度や洗濯物を片付けた後に、毎晩マフラーを編み続けてる。

 

24日まであと6日。なんとしてでも完成させなきゃ。今日は土曜日だし、結構遅くまでやっても、明日が日曜日だからなんとかなるだろ。俺、黙々と棒針を動かして、青い毛糸を編み上げていく。…吹寄がこのマフラー巻いてくれる姿、想像するだけで頑張れる。…って、俺、めっちゃ真剣だな。

 

 

 

2010・12・20・☀・20:25・八十神アパート・2ー1・静江の部屋・リビング。

 

クリスマスまであと4日。マフラーの完成まであと少しだ。土曜日と日曜日にかなり頑張って編んだから、だいぶ仕上がってきた。長さは静江が言ってた150センチに近づいてる。あとはラストを編み上げるだけだ。

…でも、正直、疲れた。編み物って、地味に集中力いるな。目がガタガタにならないように、リズムを意識して編むのが結構大変だ。でも、吹寄に渡すものだと思うと、手を抜きたくねえ。…俺、こんなに何かに真剣になること、初めてかもな。

 

 

2010・12・21・☁・22:25・八十神アパート・2ー1・静江の部屋・リビング。

 

 

やっと手編みのマフラーを編み上げたぞ!最初はどうなるかと思ったけど、静江のアドバイスと、吹寄に対する思いが俺をここまで突き動かしてくれたんだ。青い毛糸で編んだマフラー、ちょっと目はガタガタだけど、俺なりに頑張った。…吹寄、喜んでくれるかな。

昔の俺なら、こんなこと絶対思わなかっただろうな。思いが人を動かすなんて…。総武高校の時なんて、『リア充爆発しろ』って呪いをかけてた俺が、今じゃ手編みのマフラーを編んで、好きな子に渡そうとしてる。…なんだか遠いところに来ちまった気分だ。

 

【八幡、お疲れ様!ちゃんとやり遂げたじゃないの!】

 

叔母さんが笑顔で褒めてくれる。

 

【まあな。叔母さんの教え方が良かったんだよ】

 

【それはありがとう。でもね、あんたが元々持ってた才能じゃないのかな。こういうことが得意なのは、これから先も役に立つから】

 

【…叔母さん、ありがとう。裁縫が得意とか、誰も褒めてくれなかったからさ。母さんは褒めてくれたけど】

 

俺、裁縫が得意なのって、小町のためにやってたからで、クラスの奴らには『女々しい』って馬鹿にされてた。でも、叔母さんがこうやって認めてくれると、なんか報われた気分になる。叔母さんがニヤニヤしながら、

 

【これで告白の準備ができたわね。あとはクリスマスイベントで!】

 

【…!!今からなんだか緊張してきた】

 

【そうか。あんた、告白とかしたことないもんね。初めてならそら緊張するか】

 

【…告白なら1回だけ。中学の時に】

 

俺、苦笑いしながら叔母さんに話した。

 

【へぇ~、あんたが告白してたとは!?それで?】

 

【見事に撃沈爆死だな。翌日クラスの笑い者にされたし、学年中か…。身の程知らずって言われ続けたな】

 

俺がそう言うと、叔母さんの顔が少し曇った。

 

【……そんなことがあったのね。アンタはいい男だよ。家事も洗濯も、その他もやってくれるし、いざとなったら動いてくれるんだから。少なくともこのクラスの女子達は、あんたのことを好印象に思ってるんだから。もちろん吹寄さんも】

 

…確かに、稲羽に来てからのクラスの女子の目は、総武高校の時とは全然違う。昔はいつも蔑んだ目か、気持ち悪いものを見る目だった。それが今は真逆の好意的な目だ。…最初は戸惑った。どう反応していいか分からなかったぜ。

 

今思えば、由比ヶ浜の目も好意的な目だったのかもしれねえ。でも、あの時の俺には受け取れなかった。修学旅行のあの一件で、全部壊れてしまったわけだし…。

 

【俺、こっちに来て正解だったよ。叔母さんや雪柳先生、花村達とも出会って、俺自身なんだか変われた気がするんだ…。本物…これが本物の思いなのかって、しみじみ思うようになったからさ】

 

【八幡…】

 

叔母さんが何も言わずに俺を抱きしめてくれた。…吹寄が俺を照らす光なら、叔母さんは俺の進むべき道を示してくれる人間だ。叔母さんって、母さんってより、歳の離れたお姉さんって感じだな。…俺、叔母さんには感謝してもしきれねえ。

 

叔母さんの励ましもあって、俺は静かに24日を迎える準備をした。

もう一度、アンケートを取ります。鳴上悠のヒロインは誰がよろしいですか?

  • 1ー里中千枝
  • 2ー天城雪子
  • 3ー久慈川りせ
  • 4ー白鐘直斗
  • 5ー小沢結実
  • 6ー松永綾音
  • 7ー海老原あい
  • 8ー雪柳綾奈
  • 9ー麦野静江
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