2010・12・24・☁・12:50・稲羽市内・鮫川河川敷。
学校から歩いて、気づけば鮫川河川敷まで来ちまった。…無意識にここに来てしまうな。鮫川って、なんだか嫌なことを流してくれる川だ。
稲羽に来たばかりの頃、まだ色々なことに慣れなくて、鮫川の流れを眺めてたな。総武高校であった嫌なことを水に流してる感じ…心が綺麗になるような感覚だった。あの頃は、稲羽に来たことすら後悔してた。田舎なんて嫌だ、早く千葉に帰りたいって、心のどこかで思ってた。
でも、雪柳先生や吹寄が、こんな俺でも手を差し伸べてくれたのが何より嬉しかった。叔母さんは、こんな俺を支えてくれた。…最初は田舎なんてって思ってた自分がいたけど、この田舎で、本物ってものを掴んだ気がする。仲間、信頼、…そして、吹寄への恋。
【今の俺は、これっぽっちも向こうに戻りたいとは思わねえ】
鮫川の流れる水の音が、俺の心を洗ってくれる。…もし吹寄と付き合えたら、俺は彼女を幸せにしたい。だから、色々頑張るつもりだ。…バイトも考えてみようかな。花村のコネでジュネスでバイトできねえかな。…って、総武高校にいる頃の俺なら、こんなこと絶対考えなかっただろうな。好きな子のためにバイトするなんて…。俺、ほんと変わったな。
冷たい風が吹く中、俺は空に向かって手を伸ばした。
【俺はもう腹を決めた。あとは告白するだけだ】
俺はこの後、ジュネスに向かうことにした。今さら家に帰っても落ち着かねえし、先に行ってリラックスするのもありだろ。鮫川河川敷で時間を潰してたら、風邪ひいちまうしな。
2010・12・24・☁・13:30・稲羽市内・ジュネス
私は一足早くジュネスに来ていた。ジュネス側との最終調整とか、最終確認とかあるからね。花村と一緒に、クリスマスイベントの準備を進めてる。
【全員分のフライドチキンやポテトも、ちゃんと17時半までに届くようになってるからな】
花村が確認しながら言う。
【うん、確認できてる。それで、天気予報はどうなってるの?】
「この感じだと雪が降るかもしれんな。ま、雨にならないことだけは確かだが」
【雪か…ホワイトクリスマスって感じでいいのかな】
【ホワイトクリスマスか?その方が雰囲気あっていいじゃないのか?特に、お前にしてはな】
花村がニヤニヤしながら話してきた。
【なんで私だけ限定なのよ?】
【うん、なんとなくな】
【なんとなくって何なのよ?全く!】
…寒いはずなのに、私の身体が熱い。別に比企谷君のこと言われたわけじゃないのに、なんだか身体が熱くなってる。…私、比企谷君のこと、意識しすぎてる。
【吹寄?大丈夫か、顔が赤いぞ?】
花村が心配そうに聞いてきた。
【べ、別に赤くないわよ!そんなことより、さっさと準備するわよ!】
【はいはい】
私と花村は、ジュネスでクリスマスパーティーに向けての準備を着々と進めていた。…でも、心の中では、比企谷君のことばかり考えてる。イベントの後、比企谷君に『大事な話』って言っちゃったけど…私、ちゃんと気持ち伝えられるかな?…緊張してきた。
2010・12・24・☁/☃️・17:15・稲羽市内・ジュネス内
俺は13時過ぎにはジュネスに着いてた。時間を持て余して、1階の雑誌コーナーで時間を潰してたんだけど…手に取ったのは、総武高校にいた頃の俺なら絶対に読まなかったような雑誌だ。『恋人たちのクリスマス特集』なんてタイトルの本を、俺、ずっと読んでた。…俺、こんな雑誌読むような奴じゃなかっただろ。
告白のタイミング、プレゼントを渡すタイミング、相手が告白に応じるかどうかの仕草とか、色々書いてある。…読んでると、緊張感が増してきて、心臓がバクバクしてきた。クリスマスの次の特集は正月か。…もし吹寄と付き合うことになったら、正月の初詣も一緒に行けるよな。…って、俺、めっちゃ先のこと考えてる。まだ告白もしてねえのに。
【総武高校にいた頃の俺なら、正月もこたつに入ってミカンでも食いながら、テレビの初詣中継見て『爆発しろ』とか呟いてただろうな…】
平塚先生、今の俺を見たらどう思うかな?まさかこの俺が、告白しようとしてるなんて、思いもしないだろうな。
『お前のその腐った根性を叩き直してやる』
って、奉仕部に無理やり連れて行かれたのが、はるか昔のようだ。雪ノ下には罵倒されたっけ。最初は犯罪者を見るような、ゴミを見るような目で見られたけど…。それから色々あって、由比ヶ浜のクッキー作り、材木座の小説、戸塚のテニス特訓…。それからも色々あって、文化祭、修学旅行…。
でも、あの辛い経験があったから、今の俺がいるんだよな。あれがなかったら、俺は稲羽に来てなかったし、吹寄や花村、雪柳先生とも出会ってなかった。…どっちがいいかって言われたら、俺はもう迷わず今を選ぶ。稲羽に来て良かったって、心から思う。
腕時計を見ると、もう17時20分を過ぎて、そろそろ17時30分になろうとしてる。…18時までまだ少し時間があるから、ジュネスを一通り回って、時間が来たらフードコートに向かおう。外を見ると、曇り空からチラチラと雪が降り始めてる。…ホワイトクリスマスになるのか?…なんか、告白の雰囲気としては悪くねえな。
2010・12・24・☁/☃️・17:35 ・稲羽市内・ジュネス・フードコート
花村陽介たち1ー2組のクラスメイトたちは、ジュネスのフードコートでクリスマスの飾り付けに励んでいた。実は、飾り付けは16時30分から始まっていた。八幡と制理には「17時が店の終了時間」と伝えていたが、実際には16時からすでにフードコートを貸し切り状態にしていたのだ。これは花村が計画したことだった。
八幡と制理が中心となって企画したクリスマスイベントに、花村たちはさらにもう一つの『作戦』を加えた。2人に元の時間を伝え、クラス全員が花村の作り変えた時間に合わせて動いていたのだ。それは、八幡と制理をどうしてもくっつけてあげたいという、みんなの願いからだった。クラスメイトたちは息を合わせて、2人が自然と2人きりになれる状況を作り出すために動いていた。
【比企谷君と制理をうまくくっつける。それが私たちの使命なんだよね】
千枝が目を輝かせながら言う。雪子も頷いて、
【うん、雪柳先生にあんな話を聞いた以上、比企谷君には絶対に幸せになってほしいからね】
【俺達はおせっかいって言われようが、あいつらのために頑張るって決めたからな】
花村が力強く言った。雪柳先生から聞いた八幡の過去――総武高校での辛い経験、いじめ、文化祭や修学旅行での悪役を演じたこと――を知った彼らは、八幡に幸せになってほしいと心から願っていた。制理との恋が、八幡の新しい一歩になるようにと、みんなで協力していたのだ。
フードコートの窓の外では、ちらほらと雪が降り始めていた。ジュネスの屋根付きのフードコートにも、風に乗って小さな雪が舞い込んでくる。
【告白のシチュエーションができつつあるな】
花村が空を見上げて呟く。里中も笑顔で頷いた。
【そうだね。雪、めっちゃ雰囲気出る!】
【ホワイトクリスマスだね】
天城が穏やかに言う。八幡と制理を除いたクラス全員で飾り付けをした結果、フードコートは見違えるほど華やかになっていた。クリスマスツリーの飾り付け、キラキラ光る電飾、カラフルなモールやオーナメント…。フードコートは完全にクリスマスイベントの会場と化していた。
千枝がフードコートの中央にあるクリスマスツリーを見て
【このツリー、めっちゃ可愛い!比企谷君と制理、喜んでくれるかな】と呟き、花村が
【絶対喜ぶって!俺たちの頑張り、見せつけてやるぜ】
と笑いながら言った。
あとは、18時にクリスマスイベントが始まるのを待つだけだ。
2010・12・24・☁/☃️・17:45・稲羽市内・八十神アパート・2ー1・静江の部屋・リビング。
静江はリビングの窓を開け、冷たい空気と共に白い雪が舞い込むのを眺めていた。外はすでに薄暗くなり、雪がチラチラと降り積もり始めている。彼女はジュネスの方向を向き、静かに呟いた。
【八幡、告白のシチュエーションができつつあるわね】
静江は穏やかな笑みを浮かべていた。八幡を送り出す時、彼女はすでに心の中で決めていた。告白が成功しても、失敗しても、八幡の味方でいることに変わりはないと。八幡が吹寄に気持ちを伝えるために、手編みのマフラーを手に持つ姿を見送った時の、少し緊張した表情が頭に浮かぶ。…あの子、ちゃんと気持ちを伝えられるかしら。
静江が八幡を送り出す際のことを思い出す。
『…叔母さん、俺、ちゃんと気持ち伝えられるかな』
と呟いたのを思い出し、
『大丈夫よ、八幡。あんたならできる』
静江はそう言って八幡の背中を押したのだ。
雪が降る中での告白――クリスマスイベントの中でも、最高のシチュエーションになるだろう。静江には、八幡にそういう運が味方しているように見えた。過去に辛い経験をしてきた八幡だからこそ、今、幸せな瞬間が訪れるべきだと、彼女は心から願っていた。
静江が窓を閉めながら
【吹寄さん、八幡の気持ちを受け止めてあげてね】
静江はそうつぶやいたのであった。
もう一度、アンケートを取ります。鳴上悠のヒロインは誰がよろしいですか?
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1ー里中千枝
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2ー天城雪子
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3ー久慈川りせ
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4ー白鐘直斗
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5ー小沢結実
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6ー松永綾音
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7ー海老原あい
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8ー雪柳綾奈
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9ー麦野静江