原作開始前ー2ー1話ー稲羽市へ。
2010・10・11・☀・16:40・八十稲羽駅・駅前
声のした方へ振り返ると、駅前の駐車場にSUVが停まっていて、その横に女性が立って手を振っていた。母さんの妹、つまり俺の叔母である麦野静江だ。
叔母さんは仕事帰りらしいパンツスーツ姿で、長いゆるふわな髪が少し乱れている。それでも、ゆるい笑顔で俺を迎える。
【ようこそ、八幡。長旅で疲れたでしょ?】
【は、はぁ、初めまして、比企谷八幡です】
…やべ、噛んだ。自己紹介で噛むとか、俺の青春、すでに終わってるな。
【ふふっ、緊張してるの? 初めましてじゃないよ。私は麦野静江、あなたの母さんの妹。小さい頃、姉貴が連れてきたあなたのお世話もしたんだから】
どうやら俺が赤ん坊の頃、叔母さんがオムツ替えやミルクをやってくれたらしい。…そんな記憶、1ミリもないけどな。
叔母さんのSUVの後部座席に荷物を放り込むと、ちらっと車内が見えた。雑誌や書類が散乱してる。
【なんか、めっちゃ散らかってません?】
【細かいこと気にせず、助手席に乗りなさい】
まぁ、雑誌くらいならどうでもいいか。俺は助手席に滑り込み、シートベルトを締める。叔母さんはそれを確認すると、SUVを発進させた。八十稲羽駅の駐車場を抜け、寂れた駅前商店街を通り、幹線道路へ出る。
2010・10・11・☀・16:50・稲羽商店街・ガソリンスタンド。
幹線道路をしばらく走ると、『稲羽商店街入り口』と書かれた看板が見えた。叔母さんのSUVはその下をくぐり、すぐそばのガソリンスタンドに滑り込む。
【ガソリン切れそうだから、ちょっと寄るね】
叔母さんがそう言うから、俺に異議を唱える理由もない。頷くと、すぐに店員が2人やってきた。白髪の老人男と、若い女の店員だ。
【ガソリン満タンで。レギュラーね】
叔母さんが女の店員に言うと、彼女は軽く笑って応じる。
【どこかお出かけですか?】
【いや、千葉から甥っ子を迎えに行っただけ】
【へぇ、千葉からですか】
女の店員はそう言いながら、ガソリンを入れ始める。叔母さんは上着のポケットに手を突っ込み、
【ちょっと一服してくる。八幡、好きにしてて】
【ああ、了解】
叔母さんはガソリンスタンドを出て、商店街の歩道にある灰皿のとこへ。タバコを吸い始めたみたいだ。遠目に見る叔母さんの姿に、なんか既視感がある。…ああ、平塚先生だ。あの人も美人なのに彼氏がいないとか言ってたな。メンヘラメール送ってくるような性格じゃ、そりゃ彼氏も逃げるか。
平塚先生、最後に雪ノ下や由比ヶ浜の件、イジメの件で謝ってくれたっけ。母さんが提案した転校も快く受け入れてくれた。あの中二病全開のセリフも、今思えばちょっと懐かしい。
そんなことをぼんやり考えてたら、目の前にいつの間にかあの老人の店員が立ってて、急に話しかけてきた。
【ようこそ、旅の者よ。この町には不思議な運命が待っているようだな、イヒヒ】
【は? 不思議な運命? 俺、オカルトとか信じねぇんだけど】
【君は孤独を求める者だ。だが、その心にはまだ見る力が眠っている。今はまだ目覚めの時ではない。いずれその時が来れば、また…】
【何だよ、その怪しい勧誘。宗教か?】
思わずデカい声が出ちまった。叔母さんがそれに気づいて、灰皿がある場所から戻ってくる。
【どうしたの、八幡? 急に大声出して】
【いや、このジジイが変なこと言ってきてさ。宗教勧誘っぽいっていうか…】
俺は老人の話を叔母さんに説明する。すると、叔母さんは軽く笑って、
【八幡、失礼でしょ。まぁ、面白い店員さんだね】
老人がまた口を開く。
【いずれ運命が君たちを試すだろう】
【試すって何だよ。つか、俺、オカルト嫌いっつってんじゃん】
【レギュラー、満タン入りました!】
女の店員の声がガソリンスタンドに響き、俺が振り返ると、老人の姿が消えてた。
【あれ? ジジイ、どこ行った?】
【さっきまでいたよね?】
女の店員に老人のことを聞いてみるが、『最初から私1人ですよ』とキッパリ。まじかよ。じゃあ、あのジジイは何だったんだ? あの目、なんか俺の全部を見透かしてるみたいで、ゾッとした。孤独を求める者? 見る力? 何だよ、それ。
この町、なんかヤバいもんでもあるのか? 俺は巻き込まれるために来たんじゃねぇ。平穏に暮らせりゃそれでいいんだよ。叔母さんも、なんか考え込むような顔してた。
2010・10・11・☀・17:15・八十神アパート・2ー1・静江の部屋。
ガソリンを入れ終わり、叔母さんのSUVはアパートの駐車場に滑り込む。目の前に、築30年は軽く超えてそうな古びたアパート。八十神アパート、叔母さんの家だ。1LDKらしいけど、こんなとこで暮らすのか、俺。
【今日からここがあなたの家でもあるよ】
叔母さんがそう言って玄関を開けると、なんかプーンと匂いが。…何これ、ゴミ?
【な、何この匂い!?】
叔母さんは気にせずズカズカ部屋に入っていく。いつまでも玄関に突っ立ってるわけにもいかず、俺も後を追う。…うわ、すげぇ。部屋の中、ゴミだらけ。洗濯物、カップラーメンの容器、雑誌、なんかがグチャグチャ。壁には新聞の切り抜きがベタベタ貼られてる。それだけじゃねぇ、叔母さんの色とりどりの下着が散乱してる。
【初っ端から俺の青春、下ネタで汚染された気分だな…】
【八幡、何か言った?】
【いや、何でも…】
【まぁ、適当に座ってよ】
適当に座れって、下着の海にダイブしろってか? さすがにこれは無理だ。俺、専業主夫目指して家事スキルはそこそこ磨いてきたつもりだ。ため息をつきながら、荷物を比較的マシな場所に置き、まずは下着と服を洗面所の洗濯機にぶち込む。洗う順番を決めて、洗濯機を回す。次は部屋の掃除だ。
叔母さんはスーツからラフな部屋着に着替えて、
【ありがと、八幡。洗濯物、溜まっちゃって…仕事が忙しくてさ】
【忙しいって、どんな仕事?】
【新聞記者。社会部】
【社会部って、政治家とか追い回すやつだろ】
【う、嫌味な言い方ね。まぁ、そう言われても仕方ないけど】
叔母さんと喋りながら、テーブルのゴミやキッチンの汚れを片付ける。キッチンがマシになったら、リビングのゴミも一気にやっちまおう。自分の家になるんだ、汚ねぇままじゃ住みたくねぇ。
リビングを徹底的に掃除し、送られてた荷物を解く。布団、八十神高校の制服、着替え一式。居候の身だし、図々しくなるつもりはねぇ。掃除を続ける。
2010・10・11・☀・18:30・八十神アパート・2ー1・静江の部屋。
ある程度片付けたところで、今日はもういいか。外はすっかり暗くなってる。
「長旅の後に掃除とか、俺、何やってんだ…」
そういや、叔母さんの姿が見えねぇ。掃除の途中からいなくなったけど、どこ行ったんだ? 窓を開けて駐車場を見ると、SUVが消えてる。
【どこか出かけたのか?】
その時、駐車場の方でドアが閉まる音。階段を登る足音が近づき、部屋の扉が開く。
【八幡、掃除終わった?】
【叔母さん、どこ行ってたんだよ】
【ジュネスで買い物。あなたの歓迎会も兼ねて、ちょっと奮発したの】
【歓迎会って…別に】
叔母さんの両手には、ジュネスの袋がパンパン。テーブルに並べられたのは、「ジュネスお寿司セット」2パック、軍艦巻き、稲荷寿司のパック。飲み物はジュースとお茶、叔母さん用に缶ビール。
全部並べ終わると、叔母さんは苦笑いで、
【食べようか】
【【いただきます」】】
【本当は外で食べたかったんだけどね】
【スーパーの寿司でも十分っすよ】
【嬉しいこと言うね。誕生日とかは外で食べようか?】
【……今年の誕生日、もう過ぎてますけど】
【あ、8月8日だったわね】
母親や小町以外、俺の誕生日なんて覚えてる奴いないと思ってた。叔母さんが知ってるとは。
【俺の誕生日、覚えててくれたんすね】
【当たり前よ。あなたが生まれた時、私も立ち会ったんだから】
叔母さん、32歳だろ。俺が生まれた時って、15、6歳。女子高生か。ちょっとその姿、想像しちまった。
【八幡、なんでニヤニヤしてるの?】
【い、いや、何でも…】
【まぁ、いいわ。明日から八十神高校ね。変な時期の転入だから、詮索されるかもしれない。何かあったらすぐ私に言いなさい】
10月の途中での転入、確かに目立つかもな。詮索されるのも嫌だが、俺が詮索する側になる可能性もある。総武高校での経験を活かし、初っ端から陰キャムーブかませば、勝手に離れていく。よっぽどのお節介野郎じゃなきゃ、近づかねぇだろ。
ここには平塚先生も奉仕部もない。何にも縛られず、気楽にやれる。
【まぁ、適当に頑張るだけっす】
そう言って、ジュネスのマグロ寿司を頬張る。マグロの味が口に広がり、ほんの少し幸せな気分。この瞬間だけは、何も考えず寿司を食うことにする。叔母さんも何か言いたげだったけど、それ以上は何も聞いてこなかった。
こうして、慎ましやかな歓迎会は幕を閉じた。
叔母である麦野静江。
普段は穏やかでゆるふわな雰囲気が特徴だが、怒らせると鋭く怖い一面を持つ。仕事モードではキャリアウーマンらしいクールさと鋭い洞察力を発揮するが、プライベートではだらしなく、部屋は散らかっていることが多い。
外見: 長くてゆるふわな茶髪にふわっとしたカールが特徴。仕事着はパンツスーツで、シャープな印象を与えるが、プライベートではスカートやカジュアルな服装にスイッチ。瞳は黄緑色だが、プライベートではやや眠たげで緩やか。
もう一度、アンケートを取ります。鳴上悠のヒロインは誰がよろしいですか?
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1ー里中千枝
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2ー天城雪子
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3ー久慈川りせ
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4ー白鐘直斗
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5ー小沢結実
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6ー松永綾音
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7ー海老原あい
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8ー雪柳綾奈
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9ー麦野静江