雪柳綾奈Side
2011・04・15・☔・13:50・稲羽市・稲羽商店街付近(車で走行中)。
八十神高校は、早々に全校生徒を帰宅させることにした。…当たり前ね、市内で山野アナの殺人事件に続いて、八十神高校の3年生・小西早紀さんまで殺されてしまったのだから。
小西さんは、山野アナの遺体の第一発見者だった。だからマスコミに取材され、色々聞かれたのだ。それを知った犯人が、彼女を危険視して警察に喋られる前に口封じをしたんじゃないかという世間の見方が強い。…でも早紀を知ってる人間たちからしたら、男に殺されたんじゃないかと噂も立ってた。なぜそういう噂が立ったかといえば、彼女が過去に起こした前例があるから。…八十神高校の教職員も安全面を考慮し、早期帰宅することになった。校長と教頭と担任教師は通夜に参加することになってて、夜に斎場へ向かう予定。
私自身は、小西さんが毎日暮らしていた場所、稲羽商店街の中を車で走ってる。少しでも彼女が生きて見ていた景色を自分の目で収めておきたいから。…稲羽商店街の中に入ってすぐに霧が出てきた。その霧は濃くて、前が見えなくなるほどだ。
【稲羽の霧は、日常的だけど……ここまでの霧が出るなんて……】
これじゃあ、先に進むことができないわ。来た道を引き返す?反対の方を見る。…だけど反対側、私が車で来た道も霧で覆われていた。
【え?こんなこと……今までなかった…一体何が?】
…私は無料駐車場に車を停めて、携帯で情報収集しようとしたけど、『圏外』と表示されてる。
【圏外って!?】
このまま車の中でいても埒が明かないので、霧の中の外へ出てみる。…方向も何も分からないわね。さて、本当にどうしたものかしら?…すると、どこかからか声がしたのだ。
【え?声?誰かいるの?】
私の問いかけに誰も答えない。声がしたのは気のせいだったのかしら?
『ふふっ』
【え?誰?】
『誰って…私はアナタが一番分かってるよね?』
【わ、私!?】
霧の中からひょっこり現れたのは、学生時代の私の姿だった。あれは……高校の時の姿!?なんなのこれ!?
『無事に教師になれて、理想通りの生き方になれたわけか…でもそれでアナタは幸せになれたのかしら?』
【な、何が言いたいの?私は幸せよ】
『…アナタ……本心からそう言えるのかしら?』
【本心よ。私は教師として幸せに生きてるから】
『……真面目が取り柄の面白みのない女…今でもそれは変わらない…』
【……そ、それは…】
『生徒に偉そうなこと言ってるけど、私自身が優柔不断なのは変わらない…だからあの時もあの頃も壊してしまう』
高校の時の文芸部の出し物のことで部が揉めたこと…私がどちらにもいい顔したせいで、どちらも対立が激化して文芸部自体が分裂してしまった……。あの事は未だに私の心の中で引っかかってる。あの時、もっと他に動き回れたのではないか。片方だけに味方して、何とか文芸部を維持できたのではないか……
『それだけじゃないけどね、大学時代にできた男にも最終的に重いだの、面白みのない女と言われて捨てられた…惨めな女…』
【フラれたからって、別に私は…】
『気にしないふりしてても内心ではかなり答えてたよね?』
…学生時代の姿をした私が、私の耳元でそう囁いてきた。
『教師使命に燃えてるか知らないけど、それで小西早紀の事を悲しんでるみたいだけど、彼女はアナタのことウザいと思ってたみたいだよ』
【そ、そんなことないっ!彼女がそういうこと言うなんて】
『果たしてそうかしら?』
学生時代の私がそう言った途端に小西さんの声が聞こえてきた。
『雪柳先生、前々から言いたかったことがあるんです』
【こ、小西さん!?この声はどこから?】
『私、雪柳先生のこと…』
【私の事?】
『正直言ってウザいです。生徒の為にやっているって言っても自身の評価のためですよね?そんなことのために私を利用するのは、本当に迷惑だったんです!先生だけじゃなく、いちいち口出してくる親も花ちゃんも商店街のみんなもみんな消えてしまえば良いのに……』
【小西さん…私の事が迷惑…】
小西さんの声にそう言われて、その場で座り込んでしまう。濡れるのも構わず座り込んでしまう。小西さんの声だけじゃなく、学校のみんなの声も罵声のように聞こえてくる。
『ねえ、分かったでしょ?自分自身の自己満足でしかないって。本当は分かってるんでしょ?アナタが思ってるほど世間はろくなものじゃないって』
【……ち、違う…】
『違わない…』
【違う……私はそんなことを思っていない。生徒1人1人に寄り添うような教師を……】
『それが重苦しいって何で分からないのかな?』
【え?】
『重苦しい、真面目だけの女…そう言われることに本当は嫌なんでしょ?妹の春奈みたいにやりたいんでしょ?』
【思ってない、春奈みたいに…】
『大学時代に男と付き合ってたのも春奈みたいにやりたかったからだよね?』
【!!】
大学時代に春奈に憧れて、大学の先輩の男性と付き合った…向こうからの告白だったし、すぐに返事して付き合った…。でも半年も持たなかった……。
彼から私の行為が重いと言われた……。私はそれまで異性と付き合ったことがなかったから、付き合う=結婚まで行くものだと考えてた。だから彼に将来のこととかを言ったりしてた。だけど彼は、付き合う=結婚って考えの持ち主じゃなく、ただ身体の方の目的も含んでたみたい。…つまり体のいい性欲の捌け口が欲しかっただけ。
私と別れた後にすぐに別の、私と正反対の彼女を連れて、大学の構内を歩いてたのを見たのが最後だった。
しばらくして、大学の先輩は大学を辞めたって同期の人間に聞いた。あの彼女を妊娠させたらしく、大学を辞めて働かなくちゃならなくなったって。
その時の私は、それを聞いてもなんとも思わなかった。別れた直後は、かなり泣いて何もする気にもならなかったのに……。今に至っては何とも思わない。思わないから。春奈の真似しても何も良いことはなかった……
『小西早紀の話しを聞いていて、忘れてたあの男の事を思い出したんだよね。自分自身よりも若い女子高生が男の話しをしていることに嫉妬してたんだよね?』
【私は、そんなこと思ってない……私は教師、教師なんだから】
『私はアナタなんだよ?なんでもお見通しなんだよ?』
【…アナタなんか私じゃない!私はそんなこと思ってない!私は違う!】
『ふふっ、そうね……今までは……表裏一体。でもこれからは違う!私がアナタに成り代わって生徒たちを導いてやるわ!』
学生時代の私は、それまでの姿から気持ち悪い何かへ変身したかと思ったら、何かの姿に変わった。
『我は汝、真なる我…私はもう我慢しない、重い私、そんなのからおさらばよ。まずは、偽物の私を消さないとね!』
何かの姿になった私が、私の方に腕を伸ばしてきて、首を掴んで軽々と持ち上げた。首を掴まれたことで、息ができない。私はジタバタ暴れる。暴れるけど、何かの姿の私にはなんの効果もない。
『ジタバタしても意味は無いよ。さっさと楽になりなさい。アナタも先の女2人と同じに現実世界で死体で見つかるから』
あの2人のように…あの2人って山野アナ、小西さんのことよね……。あの2人も私の今の状態のようになって、もう1人の自分自身に殺されたってこと?
『余計なことは考えなくてもいいから、さっさと楽になりなさい!』
考える私にそうはさせないと力をさらに入れてくる何かの姿になった私。力が増したことで、首がさらに締まって考えることができない。ジタバタしても意味がない。意識がだんだん遠のいていく。…そして今までのことが走馬灯のように流れてくる。…これが死ぬ前に見ると言われている走馬灯なの?私は死ぬの?…嫌よ、まだ私は教師として未熟。助けを求めている生徒たちを救えていない!…でも無慈悲に私の首を締め付けるもう1人の何かの姿をした私。
もうダメだと諦めかけたその時
【ベンケイ!あの敵を射抜け!】
あれは……比企谷君?なんでこんなとこに?そう思った時には首を締め付けていた腕は離れ、私自身は投げ出されたけど、
【スワヒメ!雪柳先生を受け取って!】
吹寄さん!?貴女も?それにその2人が操ってるそれは何なの?今はそれより…酸素が欲しいわ!咳き込みながら酸素を吸って、少しは楽になる。
【雪柳先生!大丈夫か?】
『私たち、雪柳先生の声を聞いてここまで来ました』
【わ、私の声?】
『邪魔が入ったわね。孤独を求める者と指し手なる者…』
何かの姿のした私が再び現れる。孤独を求める者、指し手の者?それってこの2人のことなの?
【制理、山野アナの残留思念と同じようなものでいいのか?】
【うん、残留思念とは違うけど、雪柳先生の内面から出てきたモノ…で間違いないと思う】
残留思念?私の内面から出てきたモノ…まさかこの2人って!?
【比企谷君、吹寄さん、私の声を聞いたって…」
「俺からは何とも……】
【……雪柳先生もいろんな悩みを抱えて……それでも私たちのために身を挺して頑張ってるんだなって…】
【雪柳先生、詳しい話はこの状況を抜けられてから話す】
【雪柳先生は安全なところに避難してて下さい】
比企谷君と吹寄さんは、そう言うと守護霊みたいなモノを再び呼び出し、何かの姿をした私と対峙したのだった。
今日は昼投稿です。
今回は雪柳綾奈Sideでしたが、次回は八幡Sideに戻ります。
もう一度、アンケートを取ります。鳴上悠のヒロインは誰がよろしいですか?
-
1ー里中千枝
-
2ー天城雪子
-
3ー久慈川りせ
-
4ー白鐘直斗
-
5ー小沢結実
-
6ー松永綾音
-
7ー海老原あい
-
8ー雪柳綾奈
-
9ー麦野静江