俺の青春が田舎へ流された。   作:龍造寺

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小西早紀殺人事件編3話です。


小西早紀殺人事件編ー37ー3話ー雪柳綾奈の葛藤。②

 

2011・04・15・☔・??:??・稲羽市・稲羽商店街付近?

 

俺と制理は、霧の中へ走り込んだ。…足元には霧が向こうの方から流れてくる。すでにここは現実世界じゃなく、異世界に入り込んだってことになる。

 

【稲羽商店街…まさかここが異世界になるとは思わなかったが……】

 

【ジュネスの衣服売り場で異世界に入り込んだんだから、そこまでビックリはしないわよ】

 

【まあ、確かにそうだけどよ……向こうの方へ行けば、叔母さん家や制理の家だってあるからよ…】

 

…商店街から右に曲がる道があり、そっちの方に進んでいけば叔母さん家や制理の家がある道へ続く。…けど今はそっちは関係ねえ。この先にあると思われる小西酒店を目指すつもりだ。もしかすると山野アナみたいに残留思念があるかもしれねえからだ。

 

そう思って歩みを進めてると、稲羽商店街から景色ががらりと変わった。

 

【は?なんだ…ここ?稲羽商店街?】

 

【え?】

 

俺たちは寂れた商店街を通ってたはずだ。それが異世界が作り出したと分かってても、寂れた商店街だったはずだ。…けど今、俺たちが見てる。その商店街は人々が集まり、賑わってる商店街になってる。俺と制理は顔を見合わせる。

 

「これって稲羽商店街が賑わってる頃の風景だよな?」

 

「うん、私も小さい頃にしか賑わってる商店街見たことないから…こう賑わってたんだろうね」

 

「……でもなんでこんなものが?」

 

これって小西先輩の残留思念?小西先輩も寂れていく商店街を心のどっかで寂しく思ってたのか?…俺たちは確かに便利な方に向いてしまうよな。八百屋に肉屋に酒屋、それぞれ別れてるより、1つの場所で全部買えるようなスーパーマーケット系が便利だって気づいてしまったからだ。

 

だから昔ながらの商店街はどんどん潰れていくしかねえ。…そんなのは時代の流れなんだからしょうがねえと言ってしまえばそれまでなんだが、そういうことだけじゃ片付けられねえのが田舎なんだろう。

 

栄えてた商店街がだんだん時代の流れによって1つ閉店になり、だんだん閉店の数が増えていく。そんな風景を俺たちは見せられてるのか?…そんな中、高校生と思われる人物たちが歩いてきてる。いたって普通の田舎の男子2人組。高校生のようにも見える。

 

『商店街の店、だんだん潰れていくな』

 

『そうだな、バブル景気が弾けて…不景気になったんだろ』

 

『そういえば肉屋の大介、あんま学校に来なくなったけど、あいつどうしてんの?』

 

『大介…アイツっ宅の肉屋、経営がやばいらしい、だから、アイツ学校辞めるかどうか考えてるらしいよ』

 

『なんだよ。それあいつ頭いいんだからさ。大学行くべきだと俺は思ってんだよ』

 

『俺はそう思うんだけどよ、アイツ両親思いだから……両親の肉屋を助けるために学校を辞めるかも…』

 

『俺たちがどうこうできる問題じゃねえ……』

 

残留思念と思われる。男子高校生2人は俺たちの目の前を通ると消えていった。消えていった先には〇〇肉屋って建物があり、肉屋の看板はすでに錆びまくってて字が見えねえほどだ。

 

【さっきの…商店街の残留思念なのか?〇〇肉屋って…ここのことか…】

 

【〇〇肉屋、小さい頃、ここの肉屋からお母さん肉買ってた記憶があるわ】

 

【そうなのか……。近くにこういう個人商店があったら仲良くなったりすると1つおまけにくれたりするんだよな】

 

俺も小さい頃に母親の買い物について行ってたりして、個人商店のおばちゃんとかにお菓子とかなんかを貰ってた記憶がなんとなく残ってる。スーパーマーケット系と違ってなんだか温かみがあったような気もする。…こういう個人商店が人と人とのつながりはあったと思う。

 

でも人間は便利のいい方に傾いていってしまうのだから、こういう繋がりが希薄になったのかもしれねえ。

 

制理が不安そうに俺の制服の袖を引っ張りながら、

 

【八幡、私たちって、商店街の記憶を見せられてるの?】

 

【俺にも分からねえ。異世界が商店街の記憶を見せてんのか、俺たちをこっち側に引き入れた何者かがそれを見せてんのか……】

 

何にしても過去を見せられてることには変わりねえ。俺と制理は様子見ながら歩みを進める。この過去の風景が俺たちと何か関係あるのかと思ってるうちに、ある場所から風景が変わる。

 

【え?何?今度は何なの?】

 

【分からねえ、俺たちに何かを見せようとしてんのは変わらねえだろう】

 

【商店街…………?ううん、商店街じゃないよ…稲羽市の中心の方?】

 

【中心……?】

 

俺と制理は、変わった景色をキョロキョロしてるうちに、女子高生の集団が俺たちの方へ近づいてきた。グレーのセーラ服……スカート丈が膝下まであるぞ。…けど、あんな制服、この辺じゃ見ねえような気がするぞ。

 

制理は女子高生の集団見て、

 

【あの、制服…私たちが着てる制服の1つ前の八十神高校の制服だよ……】

 

【そうなのか…】

 

去年の10月にこっちに来た俺はそんなことは知らねえからな。制理たちが着てる制服も古くはねえのだが、総武高校や海浜総合高校の制服から見れば、古くさく見えるのも無理はねえかもな。…するとどこかからか、ヒソヒソ話しが聞こえてくる。

 

『綾奈のやつ、どういうつもりなのかな。どっち派閥にもいい顔しちゃってさ』

 

『そうだよね、雪柳は優等生だから点数がほしいんでしょ?』

 

『内申書のために?うわっ、それ、ひくわ〜』『文化祭の出し物について張り切ってたのも内申書のため…』

 

これって、雪柳先生が前に話してくれた部活の…文芸部の文化祭の出し物で、内部分裂して収拾つかなくなったって話してくれたやつか?

 

内申書、そりゃあ内申書気にする人間もいるだろ。全然気にしねえやつなんているのか?制理も嫌な顔して聞いてる。…今度は後輩らしい声が聞こえてくる。

 

『雪柳先輩、どちらにもいい顔しないでください。そんなんじゃいつまでたっても決まりませんよ?』

 

『そんなことはないよ、ちゃんと話し合えば妥協点だって見つかるから』

 

『妥協点?私たちだって真剣に考えてからの意見なんですよ?それを向こうと合わせるために妥協って…よくそんなことが言えますね!』

 

さっきから小西先輩の話じゃなく、雪柳先生の話というか過去話が聞こえてくる?

 

【まさか…雪柳先生が商店街の方に来てるんじゃ?】

 

【……だよな、雪柳先生も小西先輩の自宅訪れるのはおかしくねえ。生徒会顧問だしお線香上げるのはおかしくねえか】

 

【そうだよ、お焼香しに小西先輩の酒屋訪れようとして!……まさか雪柳先生、この霧に巻き込まれたんじゃ?】

 

【ああ…巻き込まれた可能性は十分にある。なら小西先輩の酒屋目指せば会えるかもしれねえ】

 

「うん、そうね」

 

俺は制理の手取ると、霧が濃いエリアの中を歩き出す。先程とは違う景色が再び映り出す。今度は稲羽の風景じゃなく、東京のどこかの大学らしき風景が映り出された。…そこには、雪柳先生の大学時代の姿と思われる人物がいて、どうやら男と一緒にいるみたいだが……。

 

『綾奈ちゃんさ、俺たち付き合ってるんだよね?』

 

『うん、付き合っていますよ』

 

『付き合ってるんならさ、そろそろホテルか俺の家に行こうよ?』

 

『そ、それは……そういうことはその…』

 

『綾奈ちゃん、キミ、本当にカタいよ。マジでそういうとこがつまらない』

 

『つ、つまらない!?』

 

『学校の教師目指してるんだっけ?カタい綾奈ちゃんに果たして務まるのかね…』

 

なんだ、コイツ…雪柳先生の彼氏なら応援したらどうなんだ?コイツ…チャラチャラした見た目通りのやつってことか。…雪柳先生の話しじゃ、唯一付き合ってた彼氏と別れて言ってたな。まあコイツのことなんだろうけど。

 

今度は、雪柳先生の教育実習の時の話が出てきて、先生自身が教育実習生って身分なのに、生徒たちに寄り添うような感じで生徒たちと距離詰めようとしてるみたいだけど、なかなかうまくいかねえみたいだ。それでも諦めずに、生徒たちと向き合う感じに。…そんな中、クラスに馴染めねえ生徒(いじめられっ子)を発見し、雪柳先生は積極的にその生徒に関わる。最初は生徒から余計なお世話と拒絶されるが、根気強く話聞き、クラス全体でその生徒を受け入れる環境作ることに成功したような風景を見た。

 

この経験が雪柳先生の『教師として生徒の心に寄り添うこと』の重要性を再認識させ、現在の優しい姿勢の礎になったんじゃねえかと俺は思えた。

 

制理も俺と同じ事考えてたみたいだ。雪柳先生も苦難と志と現実で苦しんでるな、それは今となっても悩み続けてるってことだな。…雪柳先生の心の声と思われる声がこの辺りで響きだした。

 

『私は私なのよ!』

 

『綾奈姉さん、優等生ぶって真面目にしなくて、私のように自由にすればいいのに』

 

『私は将来学校の先生になることにしてるの』

 

『学校の教師って…ホント、つまらないよね、綾奈姉さん』

 

『つまんないですって!あなたこそ、フラフラしないで将来のこと考えてんの?』

 

『はぁ!?なんでそんなこと綾奈姉さんに心配されなきゃいけないわけ?』

 

『遊んでばかりいるから、お父さんやお母さんも心配してるのよ。そこをアナタはわかってるの?』

 

『……昔っから親のご機嫌取りが得意だったもんね、綾奈姉さんは…そうやって親の言う通りにしてればいいよ。私には関係ないし』

 

……こんな姉妹ケンカ…聞いてていい気分にはなれねえな。でも俺もなんとなく分かってしまうな。親父は俺より小町大事だからな。俺の言うことなんて聞いてもくれなかったしな。そのかわり、母さんが話聞いてくれたし……。

 

おそらくの話だが、雪柳先生のところも似たようなもんだったのだろう。この春奈って妹は、親からの愛情というかそういうもん受けてねえように思える。

 

『私ってそんなに堅物なの?』

 

『私が、私の優柔不断さが文芸部を壊してしまった…』

 

『私は心のどっかで春奈を憧れてる?』

 

『私は教師、生徒のピンチにはちゃんと守れないでどうするの!』

 

これって雪柳先生の心の叫びなのか?…そんな中で何かが崩れる音がした。霧の向こう側で雪柳先生が化け物、いやシャドウに襲われてるのが見えた。

 

【制理、あれって!】

 

【ゆ、雪柳先生!雪柳先生がシャドウに襲われてる!】

 

【あれは雪柳先生の残留思念?くそっ、山野アナや小西先輩のようにさせてたまるか!制理、雪柳先生を助けるぞ!】

 

【もちろんよ!】

 

俺と制理は、雪柳先生が襲われてる方へ走り出したのだった。




すいません、約一ヶ月ぶりの投稿になりました。

もう一度、アンケートを取ります。鳴上悠のヒロインは誰がよろしいですか?

  • 1ー里中千枝
  • 2ー天城雪子
  • 3ー久慈川りせ
  • 4ー白鐘直斗
  • 5ー小沢結実
  • 6ー松永綾音
  • 7ー海老原あい
  • 8ー雪柳綾奈
  • 9ー麦野静江
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