2011・04・16・☔・12:45・八十神高校・空き教室。
今日もいつも通り制理を迎えに行って登校したら、いきなり生徒会長に呼ばれて緊急会議。小西先輩が殺されたんだ、そりゃ当然だ。
この前まで『マスコミが騒ぎすぎ』とか言ってた役員も、今日は珍しく神妙な顔で黙ってた。人一人死んでるのにまだ軽口叩けるなら、その人間性は完全に終わってる。生徒会長も、いつものノリは完全に封印してた。
第2の犠牲者を出さないためにも、やるべきことはやるしかない。
緊急の生徒会新聞を作って全校配布することになり、会議は終了。クラスに戻ると、案の定、天城がまだ来てないことでざわついてたが、里中が本人に連絡取って『団体客が入って手伝いが抜けられない』とのこと。
月曜には来るらしい。……やっぱりあいつらも昨日のマヨナカテレビを見てるな、と確信した。休み時間に制理と目配せして『鳴上たちに話すのは雪柳先生と話してからにしよう』と決めた。
つまり、月曜日だ。
そして今、約束の空き教室。
生徒会室のすぐ横だけど、人目は少ない。俺たちが入って10分ほど経ったところで、雪柳先生がそっと扉を開けて入ってきた。
【ごめん、2人とも待ったかな?】
【いいえ、別に待ってませんよ】
【はい、私たちもさっき来たばかりなので】
先生は埃まみれの椅子を引き寄せて窓際に座る。俺たちも適当に椅子を取って向かい合った。
【……それじゃ、昨日の約束通り、ちゃんと話してくれるよね?】
ため息混じりに切り出す先生に、俺は肩をすくめた。
【俺たちも全部わかってるわけじゃないんです。ただ、現実とは違う世界があるってことだけは確かです】
【現実とは違う世界……つまり異世界ってこと?】
【たぶん。俺たちは3月に甲府に行った時に初めて巻き込まれて、それから色々……声が聞こえたり、向こう側に引きずり込まれたり】
【甲府? 春休みに2人で?】
【バイト代貯めて小旅行のつもりだったんですけどね】
先生は目を丸くして、それから苦笑いした。
【正月の時、八幡が急に大学のこととか言い出したってごまかしてたけど……やっぱりそういうことだったんだ】
【……あの時は制理に心配かけたくなかったんで】
【ふふっ……まあいいわ。で、昨日の私のことも、その一連の流れってこと?】
【たぶんそうです。俺は❝孤独を求める者❞制理は❝指し手なる者❞って呼ばれてて……】
【孤独を求める者、指し手なる者……?】
説明しても結局❝向こうの声が勝手にそう呼んでるだけ❞って話にしかならない。
❝扉を開く者❞もいるらしく、それが鳴上悠の可能性が高いことも伝えた。
【鳴上君が……?】
【確証はないですけどね】
先生は少し考えて、静かに頷いた。
【あまり教えてあげられなくてごめんね】
【ううん、逆に話せる相手がいるだけで助かるわ。私、昨日なんて誰にも言えなかったもの】
そこで俺と制理は目を見合わせて、もう一つ話すことにした。
マヨナカテレビのことだ。
【マヨナカテレビって知ってますよね?】
【運命の人が映るって都市伝説のやつ? まだ試したことないけど】
【俺も最初は都市伝説だと思ってました。でも実際に映るんです。……で、映るのは運命の人じゃなくて、これから殺される人なんじゃないかって】
先生の表情が一瞬で凍った。
【……どういうこと?】
【小西先輩が殺される前、マヨナカテレビに映ってたんです。それが映った後に……】
沈黙が落ちる。
【……普通なら信じないわ。でも私は昨日、自分のシャドウに『お前も山野アナや小西と同じ末路を辿る』って言われた。だからわかるわ。あの2人は誰の助けも得られず、自分の内面に殺されたのね。……比企谷君、吹寄さん。本当に、命の恩人だわ】
【私たちは当然のことをしただけです。ね、八幡?】
【ああ】
先生はふっと息を吐いて、優しく笑った。
【私はあなたたちの味方よ。何でも相談して。それに……私も同じ力に目覚めたんだから、一緒に戦わせて】
大人の味方ができた。しかも車持ちの大人だ。行動範囲が一気に広がる。
【そうだ、雪柳先生。県立図書館に連れてってくれませんか?市立図書館じゃあまり資料がなかったから】
【私のペルソナ、諏訪姫のことがもっと知りたくて】
「俺も弁慶のこともっと調べたいしな」
先生は即答した。
【いいわ。ちょうど事件解決まで残業もないって決まったし、今日行きましょう】
2011・04・16・☔・14:10・??県・??市・県立図書館。
稲羽から車で約1時間。
雨の土曜日だからか、館内はガラガラだった。俺たちはそれぞれ弁慶・諏訪姫・山本勘助の資料を引っ張り出して読み漁ったが、出てくるのは教科書レベルの話ばかり。
裏設定とか奥義とか、そういうのは当然載ってない。司書さんに『もっと専門的なものは?』って聞いたら『専門なら専門施設へ』と言われたが、そんなわけにいかねえ。
結局収穫ゼロで、雨の中をトンボ返り。
先生が俺と制理を家まで送ってくれた。
【今日から私もマヨナカテレビ見るわ】
【……すみません、先生にまで】
【いいの。私も当事者なんだから】
2011・04・17・☔・00:00・稲羽市・八十神アパート・2ー1・静江の部屋・リビング。
午前0時。
いつものようにテレビをつけた。……が、画面が違う。今までみたいにボヤけてない。
完全にカラー。鮮明だ。
【どういうことだ……?】
次の瞬間、ピンクのドレスを着た女が映った。俺は一瞬で理解して、背筋が凍った。
【天城……!?】
【こ、こんばんは~! えっと今日、天城雪子がナンパ&逆ナンに挑戦してみたいと思います!題して❝やらせなし突撃逆ナン★雪子姫の王子様探し!❞もう超本気っ!見えないとこも勝負仕様~ハートみたいな〜私用のホストクラブ建てるくらいの勢いで、じゃあ行ってきま~す!】
……は?
頭の中がクエスチョンマークで埋まった。天城雪子がこんな下品なこと言うわけがない。
半年しか知らないけど、それだけは確信できる。即座に制理に電話。
向こうも一発で出た。声が震えてる。
【は、八幡……あれ、雪子だよね!? でも雪子絶対あんなこと言わない!】
【落ち着け。俺も今見た。……完全に別人だ】
【ホストクラブって……男漁りって……雪子が言うわけないよ!】
【とにかく明日、雪柳先生にも話す。ジュネスで11時に集合だ】
【わかった……千枝にも連絡する】
【俺は先生に連絡する。おやすみ、制理】
【……うん、おやすみ】
次に雪柳先生へ。
【比企谷君、私も今かけようと思ってたところ】
【やっぱりマヨナカテレビですか】
【ええ……あんなバラエティ番組みたいなのだったの?】
【今までボヤけてたんです。今日初めて鮮明になって……映ってたのは天城で、ホストクラブ建てるって……】
【天城さんがそんなこと言う子じゃないのは私も知ってる。でも……】
【……先生の時みたいに、内面の、秘めてる部分が暴走してるってことですか?】
【確証はないけど……その可能性は高いわ】
先生に明日11時にジュネスで3人でまた話すことを約束して通話を切る。
時計はもう0時30分を回ってる。
【……俺も寝るか】
布団に入りながら考える。天城雪子。お前がそんなこと考えるわけねえ。
でも、もし本当に心の奥底で思ってたとしたら……
それを全部受け止めて、お前を助けるのが友達ってもんだろ。かつてお前たちが俺を受け入れてくれたように。
明日から本気で動く。俺は目を閉じた。
雨音が遠くなり、意識が落ちていった。
もう一度、アンケートを取ります。鳴上悠のヒロインは誰がよろしいですか?
-
1ー里中千枝
-
2ー天城雪子
-
3ー久慈川りせ
-
4ー白鐘直斗
-
5ー小沢結実
-
6ー松永綾音
-
7ー海老原あい
-
8ー雪柳綾奈
-
9ー麦野静江