倒したことによって、天城のシャドウはおとなしくなり、倒れた場所で佇んでいる。これは里中や雪柳先生の時からのパターンだとすればおそらくは…
佇む自身の影のシャドウの元へ歩みよる天城。
「逃げたい…誰かに救ってほしい…そうね…確かに、私の気持ち。あなたは、私だね」
天城は自分自身は受け入れ、それが天城の自身のペルソナへと変化する。
それと同時に天城は疲労困憊な状態であるのは変わらない。一刻も早くここから脱出して自分の家に帰してやらなきゃな。色々と聞きたいことは山のようにあるのだが、今はそうも言ってられない。それは鳴上たちも納得したようで、こんなところ、さっさと脱出するに限るぜ。
テレビの世界から脱出した後、雪柳先生と制理と里中が自宅まで連れて帰るようだ。こういう場合、雪柳先生がいてくれて助かる部分はあるからな。
俺と鳴上と花村は、天城が元気になってから改めて聞くことにして、今日はここで解散することになったのだった。
2011・04・19・☁・18:30・稲羽市・八十神アパート・2ー1・静江の部屋・リビング。
今日は本当に疲れた。
叔母さんはまだ帰ってきていないようだ。1人分の食事でも作るか。そう思って台所に立とうとした瞬間、駐車場に車が停まる音が聞こえた。
「あの音、叔母さんの車か?」
朝、出がけに「今日は帰れないかもしれない」と言っていたが、無事に帰ってきたらしい。
なら晩御飯も一人分じゃなく二人分用意しないとな。準備を始めていると、すぐに叔母さんが部屋に入ってきた。
「ただいま。今日の晩御飯は何?」
「帰ってきてすぐそれかよ。今日は親子丼にするつもりだけど?」
「親子丼、久しぶりかも」
「と言ってもインスタントだけどな」
「いいよ、インスタントで」
叔母さんはそう言って自分の部屋へ下がっていった。インスタントならすぐにできる。叔母さんもいろいろと忙しいだろうし、早く出せるようにしておこう。
2011・04・19・☁・19:00・稲羽市・八十神アパート・2ー1・静江の部屋・リビング。
俺と叔母さんは、テレビのニュースを見ながら親子丼を食べていた。その時、叔母さんがぽつりと言った。
「天城さんが行方不明になってたの、知ってたよね?」
「あ、ああ」
「天城さん、見つかったみたいよ。どうやら雪柳先生と制理ちゃんと里中さんが見つけたらしいわ」
「そうなのか……あいつら、すごく心配してたからな。自分たちで探し回ってたのかも」
本当は俺たちが助け出したのだが、そんなことは叔母さんに言えるわけがない。適当に誤魔化すしかない。
「……ただ、本人はいなくなった後の記憶が曖昧で、よく覚えていないって言ってるらしいのよ」
ああ、雪柳先生や花村たちが「警察に聞かれたら記憶がないって言え」とアドバイスしていたな。本当のことを言っても信じてもらえるはずがないし、記憶がないことにした方が無難だ。
「警察は、天城さんの行方不明についてはマスコミに公表しない方向で動いてるみたい」
「それじゃあなんで叔母さんが知ってるんだ?」
「堂島さんと軽く話した時に聞いたの。記事にはしないって約束でね」
堂島さん……鳴上の叔父さんで刑事か。叔母さんが事件記者を兼ねてるから、そういうつながりで顔見知りなんだな。
「警察内部では、天城さんを疑う声もあるみたいよ」
「は? 天城がなんであの二人を殺す必要があるんだよ? 鳴上からも聞いたけど、山野アナが天城の母親をいびってたって話は聞いた。でもそれで母親が倒れたからって、天城が仇討ちで山野アナを? そんなことする理由がねえだろ」
「私に言われても困るわよ。警察の一部が言ってるだけなんだから」
「警察は疑ってかかる組織だからな」
「そうね……天城さんは山野アナの件があるから、疑われてもおかしくはないんだけど……」
「天城は犯人じゃねえ。他に犯人がいるはずだ」
「わかってるわ。私も天城さんがそんなことするなんて思っていないもの」
犯人……天城や山野アナ、小西先輩をテレビの中に放り込んだ奴。結果的に山野アナと小西先輩は死んだ。それでも天城は助けられた。俺たちが助けた。
しかし犯人がまだ捕まっていない以上、安心はできない。天城が何か手がかりを知っていればいいんだが……。
「とにかく、アンタも気をつけなさい。犯人が捕まっていないんだから」
「わかってる」
天城が回復するまで、しばらくは待つしかないようだな。
ー綾奈Side
2011・4・19・夜・☂️・22:00・稲羽市・稲羽マンション5-8・綾奈の部屋・寝室。
私は寝室の机に向かい、今日の出来事を日記帳に書き込んでいた。
ジュネスのテレビの中から異世界へ入り、『雪子姫の城』と呼ばれる、天城さんが心に生み出したと思われる場所に彼女が囚われていた。鳴上君、比企谷君たちと共に助けに行き、無事に連れ帰ることができた。
本当に……奇跡的な結果だったと言える。
一歩間違えれば、私たち全員が山野アナや小西さんのように命を落としていた可能性も高かった。本来なら、教師である私は彼らを止めるべきだった。
自分の生徒たちをあんな危険な場所へ行かせるなど、絶対に許されないことだ。けれど、私は彼らに助けられた。命の恩人なのだ。
彼らの力添えがなければ、今ここに私はいない。そして私自身も、あの世界でペルソナに目覚めた。きっと、彼らと共に人々を救うために目覚めたのだと思う。
こんなことは、他の誰にも相談できない。あの世界を知る彼らとしか、共有できない秘密だ。
「もちろん、学校の上層部に報告なんてできないわ……警察や新聞社にも、ね」
ふとカーテンを開け、窓の外を見る。雨に濡れた稲羽の夜景が、静かに広がっていた。都会の派手な夜景とは違うけれど、これはこれで美しい。
「こんな夜景の下で、あんな凄惨な事件が起きているなんて……」
犯人がまだ捕まっていない以上、警戒を解くわけにはいかない。でも今夜は、天城さんが無事に助かったことを素直に喜んでもいいはずだ。
「天城さんが回復して学校に来たら、ちゃんと話を聞かないといけないわね」
さて、明日の準備もしないと。感傷に浸るのはここまで。
2011・04・20・☁・13:30・稲羽市・八十神高校・2ー2組。
昼飯を食った後、ちょっと眠くなってきたな。そんな中、現代文の細井先生がパペットマペットのパチモンみたいなノリで俺たちを笑わせに来ている。この学校の教師は、雪柳先生と一部を除くとキャラが濃いというか、無駄に個性を前面に押し出してくる。
「はーいはい、静かにしんしゃーい。授業始めるかんなー。現代文担当の『細井』やで。今年はみんな楽しいやろな。どうせ受験なんかしーへんやろ? わざわざ稲羽で頑張らんでもええやん。都会の連中と競うことなんかないで。田舎が一番、一番や! んじゃ、最初の授業やし、お手並み拝見するっぺ。ってことで……『拝見します』の敬語の種類はなんや? ほい! 敬語が苦手そうな花村っち!」
花村が突然指名された。まあ、普通に考えれば簡単だろ。謙譲語だ。
「うお!? や、そりゃ得意じゃねえけど……悪い、教えてくれ鳴上!」
「謙譲語」
「えーと、謙譲語です」
「おお、花村っち見直したわいな! ちゃんと敬語できる子やったんやね。『見る』の謙譲語が『拝見します』なんよ。自分の動作をへりくだって表現することで、相手への敬意を表すんや。ちなみに『見る』の尊敬語が『ご覧になる』、丁寧語が『見ます』や。覚えときなっせ」
「ふ〜……鳴上、助かった。お前スゲーな」
花村、バイトで客商売やってんだから、そのくらい覚えとけよ。
そんな感じで、細井先生の現代文の授業は続いていった。
もう一度、アンケートを取ります。鳴上悠のヒロインは誰がよろしいですか?
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1ー里中千枝
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2ー天城雪子
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3ー久慈川りせ
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4ー白鐘直斗
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5ー小沢結実
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6ー松永綾音
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7ー海老原あい
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8ー雪柳綾奈
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9ー麦野静江