ハッテン、ボクの町編ー52ー1話ー雨の前の一時。
2011・05・13・☁・20:00・稲羽市・八十神アパート・2ー1・静江の部屋・リビング。
夕ご飯を食べ終わり、叔母さんと一緒にくつろいでいると、テレビで特番が始まった。
『静かなる街を脅かす暴走行為を、誇らしげに見せつける少年たち……そのリーダー格の1人が突然カメラに向かって襲いかかった!』
『てめーら、何しに来やがった!』
「これって、まさか……!?」
叔母さんが声を上げた。
画面の中の暴走族のリーダーらしき人物が、カメラに向かって威圧的に迫っている。
「うん? どうしたんだ、叔母さん?」
『見世物じゃねえぞ、コラァ!!』
「完二君……まだこんなことを……!?」
「叔母さん、あのテレビのやつ、知ってるのか?」
「……八幡、うん、ごめん。一応、仕事上というかプライベートでも知り合いになるのかな。この場合は堂島刑事も含まれるんだけど。彼の名前は『巽完二』。喧嘩が得意で、中3の頃にはこの辺りの暴走族をまとめて締め上げてた……いわゆる問題児ね。私も人のことは言えないけど」
叔母さんはため息をついた。
「それにしても、完二君のお母さんから『高校に上がった』って聞いてたのに……」
学校に暴走族がいるという話は聞いていたが、まさか八十神高校に通っている可能性があるとは……。
「どこの学校に通ってるのか、わからないのか?」
「そこまでは聞いてないわ。でも、この番組……制作スタッフに問題があると思うのよね。モザイクは入ってるけど、知ってる人間からすれば一発で分かる。もう少し配慮ってものがないのかしら」
「制作スタッフは面白おかしく作ってるだけだろ」
「うん、その辺りは否定できないわね。ったく、私も人のことは言えないけど……完二君のお母さん、また悲しむわよ。この子の実家は老舗の染物屋なの。あの頃も、お母さんが夜に寝られないって泣いてたから、毎晩走ってた暴走族を1人で潰してしまったことがあるの」
「母親のために、か……それで暴走族潰したっていうのか…」
「お母さんのためという動機はともかく、暴れすぎたのよね。結局お母さんが頭を下げて回ることになってしまったけど」
「そいつ、根は悪いやつじゃねえのか。暴れたのはともかく……母親のためにそこまでできるなんて、すげえやつだと思うぜ」
「そうね……完二君、小学生の頃はあんな子じゃなかったのに。私がこっちに戻ってきた頃、色々稲羽も変わってわからなくなってた時、完二君は私に色々教えてくれたのよ。ボタンが取れそうになってた服を縫ってくれたこともあるしね」
「そうなのか」
巽完二……見た目からは想像もつかないが、母親思いで裁縫が得意なやつか。
「完二君、こんな番組、観て欲しくないわよね」
「本人からしたら、いい気分になるわけねえよな」
暴走族の特番が終わると、天気予報に切り替わった。明日から雨になるらしい。
ー綾奈Side
2011・05・13・☁・20:15・稲羽市・稲羽マンション5-8・綾奈の部屋・リビング。
暴走族の特番を見終えて、私は小さくため息をついた。師岡先生が職員室で騒いでいたテレビ局の番組というのは、これだったのね。顔にはぼかしが入っていたけれど、あれでは知っている人には一目で分かってしまう。
ほとんどモザイクの意味をなしていないと思う。それに、画面に映っていた制服は明らかに八十神高校のものだった。学校関係者や近隣住民なら、すぐに気づいてしまうだろう。
「あの子が……学校側に問題視されている巽完二君ってことになるのね」
諸岡先生は『分かり次第即刻退学処分だ』とかなり意気込んでいたわ。気持ちはわからないでもないけれど、テレビ局の情報だけでそこまで決めつけてしまうのは、少し早計すぎる気がする。
「彼はなぜ暴走族になってしまったのか……。そういうことには、必ず原因というものがあるはずなのに」
私は巽完二君のことをほとんど知らない。先生たちの間では『中学時代からやばい生徒だった』と聞かされたけれど、実際に自分の目で確かめ、話してみないことには本当のところはわからない。
「1年生の授業の際に、彼のクラスを横を通るぐらいして、顔を確認するくらいはできるわよね」
ただ、彼はあまり学校に来ていないという話も聞いている。来てくれることを祈るしかないけれど……。
私はリモコンを握ったまま、テレビの画面を見つめたまま考え込んだ。
(事件の影がまだ残っているこの時期に、暴走族の特番まで……。本当に、稲羽は落ち着く暇がないわね)
巽完二君が本当にあの暴走族のリーダーだとしたら、生徒会としても早急に対応を考えなければならない。
教頭先生からも頼まれていることだし……。
私はノートパソコンを開き、明日以降の生徒会活動の予定をメモした。
彼とちゃんと話す機会を作れるといいけれど……。
2011・05・14・☂️・23:55・稲羽市・八十神アパート・2ー1・静江の部屋・リビング。
前回のマヨナカテレビの時は叔母さんがまだ帰っていなかったので、音量を気にせずに見られたが、今回は隣の部屋で寝ている。少し気をつけないといけないな。それにしても、今回も誰か映るのか。映ったら今度は誰なんだ……。
「……テレビに映ってからじゃないと動けないのが、俺たちがどうしても後手に回る理由だよな……」
時計の針がカチカチと音を立てる。59分になった。あと数十秒で0時だ。そして、午前0時ちょうどになった瞬間、消えていたテレビがぼんやりと光り始めた。
マヨナカテレビ……が映り出した。やはり誰か映っている。まだはっきりとはわからないが、どうも男のように見える。女には見えないな。
制理たちも今頃見ているだろうが、誰だかわかったやつはいるのだろうか?
一応、制理に電話をかけてみるか。いくら彼氏とはいえこんな時間に電話するのは非常識だとわかっているが、緊急事態みたいなものだしな。携帯を取り出して制理の番号を押すと、すぐに繋がった。
「八幡、ちょうど良かった。私も今かけようとしていたところ」
「制理もマヨナカテレビを見たよな?」
「ええ、見たわ。ただ、誰なのかまではわからないけれど……」
「俺も誰だまではわからなかったが、どうも男だと思う」
「うん、私もそう思う。あの体つきは女性にはちょっと見えないかなって」
「ただ、確証は持てないからな。あくまで可能性ってだけで」
「そうね」
「明日、みんなで雪柳先生も含めて話そう」
「わかった。とにかく今夜はもう寝ましょう。おやすみ、八幡」
「おやすみ、制理」
通話を終えて、俺は布団の中に入った。まだ完全に男だと言い切れるわけではないが、大方男と見て間違いないと思う。とにかく明日みんなで話せばいい。今日はもう休むか。
ー綾奈Side
2011・05・15・☂️・0:10・稲羽市・稲羽マンション5-8・綾奈の部屋・リビング。
鳴上君から『午前0時に、電源のついていないテレビを見てほしい』と言われた通り、私はリビングのテレビの前にいた。
そして、本当に映った。
雨の日の午前0時に、マヨナカテレビが。私は初めて生でその現象を目にした。都市伝説などではなく、紛れもなく画面が光り、ぼんやりと人物のシルエットが浮かび上がった。
誰なのかはわからない。ただ、私の勘では男の子のように見える。体格や雰囲気から、女の子には少し見えないところがあった。もちろん100%男の子だとは言い切れないけれど……。
(鳴上君や比企谷君たちは、あの映像をどう思っているのかしら?)
2人の電話番号は知っているけれど、こんな時間に教師が生徒の携帯にかけるのはさすがに気が引ける。
明日、みんなで話すことにしましょう。
学校は休みだから、ジュネスあたりで集まることになるかもしれないわね。
それにしても、雨が降って朝には霧が出るのでしょうね。
その霧の朝に、山野アナと小西さんは……あんなことに遭ってしまった。
天城さんは助けられた。あのマヨナカテレビに映った人だって、きっと助けられるはず。
鳴上君や比企谷君たちと一緒に、必ず。
この力が目覚めたのも、そのためだと思うから。私はそっと決意を固めて、明日に備えることにした。
昼間投稿です。
もう一度、アンケートを取ります。鳴上悠のヒロインは誰がよろしいですか?
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1ー里中千枝
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2ー天城雪子
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3ー久慈川りせ
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4ー白鐘直斗
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5ー小沢結実
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6ー松永綾音
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7ー海老原あい
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8ー雪柳綾奈
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9ー麦野静江