2011・05・16・・15:30・稲羽市・八十神高校・自称特別捜査隊の部室の教室。
俺たちは自称特別捜査隊の部室となっている教室に集まった。雪柳先生も顧問として同席している。
やはり鳴上たちも里中たちも雪柳先生も、昨日のマヨナカテレビの映像を見て❝巽完二❞に行き着いていた。
巽完二——染物屋の息子。見た目はああだが、中身はかなりの母親思いで、裁縫が得意ときた。全く、見た目から想像できないな。そんな中、里中が話を切り出した。
「昨日の彼、やっぱり彼だよね」
「❝巽完二❞か……見るからに絡みにくそうだよな」
「てか、すっげー怖い人なんじゃないの? この前の特番、見た?」
「あー見た見た」
「あの暴走族の特番だろ。俺はあれ、何だかなあと思ったがな」
「私もそう思ったわ……あれだとすぐに誰かと特定されてしまう」
「暴走族の番組? それ、私も見たよ。あの子、小さい頃はあんな風じゃなかったのにな」
天城がぽつりと言った。叔母さんと同じことを言っている。
「天城、俺も叔母さんから聞いた。巽完二、あんな見た目をしてるが、母親思いのやつのみたいだぞ」
「比企谷の叔母さん、新聞記者だよな。仕事関係とかで知り合ったのか?」
「叔母さん、巽完二がまだあんな風じゃない頃に助けてもらったらしい。それから付き合いがあったみたいだ」
「なるほどな……」
「私は昔は話してたけど、今じゃ全然会話はないかな。あの子の家、染め物屋さんなんだけど、ウチ、昔からお土産品を仕入れてるの。だから今も、完二君のお母さんとはたまに話すよ」
「巽君の実家は商店街の染物屋なのね」
「ええ、雪柳先生。あ、染物屋さん、これから行ってみる? 話くらいは聞けるかもしれないし」
「天城さんのツテでお話が聞けるなら、行った方がいいわね」
「そうだね。最近なんか変わったことはないとか。雪子や比企谷君の話を聞いても、やっぱり本人に直にコンタクトするのは怖いけど……さすがに自分家の店先なら暴れないっしょ」
「よし、じゃあ今から行ってみるか」
「私は行けないから、後で報告よろしくね」
「はい、雪柳先生には俺から報告します」
鳴上が雪柳先生にそう言った。リーダーだから当然か。
「危なくなったら、男衆ヨロシク」
「危なくなったら逃げるしかねえだろ……暴走族を潰した相手に、俺たちが勝てるわけねえ」
「あっちの世界ならともかく、こっちの世界じゃ勝てるわけないだろ」
「危なくなったら逃げるしかないな」
危なくなったら逃げる——この戦法で行くしかないだろう。昔はそうじゃなくても、今は不良であることに変わりはないのだから。そんな感じで、俺たちは巽完二の実家の染物屋へ向かうことにした。
2011・05・16・☁・15:50・稲羽市・稲羽商店街・巽染物屋。
俺たちは警戒しながら、巽完二の実家の染物屋にやってきた。店に入ると、先客がいた
。「あら、雪ちゃん。いらっしゃい」
「それじゃあ、僕はこれで」
「あんまりお役に立てなくて、ごめんね」
「いえ、なかなか興味深かったです。ではまた」
小柄な男が俺たちのそばを通り過ぎようとしたとき、ふと俺の方を見た。
「あなた、ひょっとして比企谷八幡さんですか?」
「は? なんで俺の名前を!?」
俺は驚いた。この男が俺の名前を知っている。名乗った覚えはないのに。
「ちょっとお話があります。外に出てもらえませんか?」
「八幡に話って、なんのつもりだ?」
花村がそう言うと、鳴上も続いた。
「話ならここですればいい」
「そういうわけにはいかないのですよ。
千葉からだと!? 一体誰が……!
「悪いな、みんな。話はみんなで聞いていてくれ。俺はこいつから話を聞かねえわけにはいかねえらしい」
「いいのか?」
「八幡、大丈夫?」
「ああ。俺も逃げるわけにはいかないからな」
花村と制理にそう言って、俺と小柄な男は店の外に出た。
2011・05・16・・16:05・稲羽市・稲羽商店街・巽染物屋前。
「単刀直入に言います。総武高校のある生徒から、八幡さん宛てに手紙を預かっています」
「総武高校のある生徒!? それって誰だよ?」
「僕の方から言うことはできません。ですが、手紙の中には名前が書いてあるでしょう。僕が稲羽に用があると言うと、手紙の主がどうしてもあなたに渡したいと頼み込んできたんですよ」
手紙の主……一体誰が?
平塚先生なら住所を知っているから、直接送ってくるはずだ。母さんも同じ。生徒と言っているから、その2人は外れる。
雪ノ下や由比ヶ浜たちではないことだけはわかる。今のあいつらが俺に手紙をよこすとは思えない。あいつら生徒会に入って、いろいろイベントをやっているらしいしな。そんな暇はないか。
だとすると戸塚や材木座、川崎……あたりか?あいつらは最後まで俺の味方をしてくれていたからな。
今思うと、あいつらに黙って出てきたことは、ちょっと後悔している。
「まだ名乗っていませんでしたね。僕は白鐘直斗、東京の方で探偵をしているものです」
「探偵ね……手紙の主はあんたに手紙を託したってわけか」「はい、そうです」
「しかし、手紙の主はよく探偵のあんたを探したもんだな」
「総武高校の方で、ちょっとした問題が起こったんですよ」
「問題だと?」
「詳しくは教えられませんが、今回、生徒会がやっていたことにアクシデントがありましてね」
生徒会がやっていたこと……以前のニュースで、小学校のイベントか何かをやるとか言っていたような気がする。
「それで調査チームの一員として、僕が派遣されたというわけですよ」
「一ついいか? 総武高校の生徒会の問題が、俺に関係あるのか?」
「総武高校の今の問題は、あなたには関係ないでしょう。ですが、調べていくうちに、去年の問題も浮き彫りになりましてね」
「去年の問題だと?」
「それはあなたが一番わかっていることではないでしょうか」
まさか……文化祭や修学旅行の件で、後から俺に対して起きたイジメの問題か?
「あの時、学校側はあなたの問題をわかっていたのに、放置していたことが浮き彫りになりました」
「今更そんなことを問題に出されてもな……」
「あなたには訴える権利があります」
訴える? 雪ノ下や由比ヶ浜、親父や小町を? あのイジメに加担したやつら全員を?
昔の俺ならすぐに訴える方向で動いただろう。でも今の俺には、怒りや憎しみよりも、制理や鳴上たちと稲羽の事件を解き明かすことの方が大事だ。
「別にあいつらのことを許したつもりはねえ。ただ、興味も関心もない。それだけだ。だからこれでどうなろうが……俺にとってはどうでもいい話だ」
「そうですか。あなたがこれでいいのなら、僕はこれ以上言いません」
「用件というのはこれだけか? なら俺はあいつらの元に戻るぞ」
「ええ、構いません。僕も会う人がいますから」
「そうか。あと、手紙の主に『ありがとな』と伝えてくれ」
「わかりました」
俺は白鐘に軽く会釈をすると、巽染物屋へ戻った。
2011・05・16・・16:20・稲羽市・稲羽商店街・巽染物屋。
戻ってきた俺に、鳴上たちは外で話していた内容を聞いてこなかった。こいつら、❝千葉❞という単語で❝聞いてはいけないもの❞と判断したんだろうな。今までならそっとしといてくれと思っていたが、今の俺には別に聞かれたとしても何も感じなくなっている。それだけ成長したってことなのか。
鳴上たちが染物屋でわかったことは、生前の山野アナがスカーフをオーダーメイドしたことだった。
男物と女物の二つ。ただ後から『片方しかいらない』と言われて、もう片方を売りに出していると、巽完二の母親から聞いたらしい。スカーフのことで、巽染物屋と山野アナの繋がりがわかった。
だが、スカーフで人を狙ったりするものなのか?
わからん。
そんな話をしていると宅配便が届いたようで、巽完二の母親はそちらへ行ってしまった。俺たちも話は終わったということで、外に出ることにした。
もう一度、アンケートを取ります。鳴上悠のヒロインは誰がよろしいですか?
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1ー里中千枝
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2ー天城雪子
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3ー久慈川りせ
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4ー白鐘直斗
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5ー小沢結実
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6ー松永綾音
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7ー海老原あい
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8ー雪柳綾奈
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9ー麦野静江