俺の青春が田舎へ流された。   作:龍造寺

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ハッテン、僕の町編4話です。


ハッテン、僕の町編ー55ー4話ー張り込み。

 

ー綾奈Side

 

2011・05・16・☁・22:30・稲羽市・稲羽マンション5-8・綾奈の部屋・リビング。

 

鳴上君から、巽完二君の実家である染物屋のお母さんから聞いた話を報告してもらった。多くのことは分からなかったけれど、山野アナが染物屋に男女のスカーフをオーダーメイドしていたこと、そしてある時に『片方しかいらない』と言ったこと——きちんと繋がりがあったわけね。

 

不倫がバレる前にオーダーしたのでしょう。男女ものを頼んだというのも、それで説明がつく。

 

あと、謎の小柄な少年が染物屋に来ていたことも聞いたけれど、そちらの方がわからないわね。小柄な少年と言われても、直接見たわけではないから何とも言えない。

 

ただ、比企谷君のことを知っていたみたいで、二人で外で話したらしい。その小柄な少年が『千葉』という地名を口にしたみたいで、それで比企谷君が反応したそうよ。

 

千葉といえば、彼がこちらに来る前にいた場所。そこで色々あって、こちらに移ってきたわけだけど……そちらから何か連絡があったということなのかしら?

 

連絡なら私の方にも入るはずなのに、帰らなかったところを見ると、彼のお母さんや平塚先生からのものではないことだけはわかった。

 

そういえば全国ニュースで、千葉県のとある学校でイベントの問題が起こったという報道があったけれど、モザイクがかかっていたとはいえ、あの学校は比企谷君が通っていた総武高校のはず。生徒会の不備で小学生に多数の怪我が起こったとニュースになっていた。それ以外のことも何かあると含みを持たせた言い方だったけど、私が思うに……比企谷君の問題が関係しているのではないかと思う。

 

私は以前にも言ったけれど、平塚先生から彼がここに来るまでの経緯は聞いている。彼がこのニュースを見たら、色々と複雑な気持ちになるでしょうね。

 

彼は口では『千葉のことは大丈夫だ』と言っているけれど、内心ではどこかでまだ何か抱えているのだと、私は思っている。

 

「彼はここに来た時よりも、確実に成長している。それでもまだまだ危なっかしいところもあるから、見守る必要があるのよね。吹寄さんもその辺りは分かっているみたいだし」

 

比企谷君のことも大事だけど、巽完二君のこともちゃんとやらなきゃね。彼はまだこちらの世界にいる。だからこそ、犯人が彼を連れ去る前に捕まえなければならない。

 

明日の張り込みには、私も参加するわ。運よく明日は早めに帰れる方だから、彼らと一緒に行動しないとね。一応は部活動の顧問ということになっているし。明日に備えて、今日は早く寝ないと。

 

2011・05・17・☁・15:40・稲羽市・八十神高校・校門前。

 

俺たちは雪柳先生も含め、巽完二の動向を探っていた。午前中はやつはいなかった。というか、登校していなかった。

 

昼休みになってから弁当を持って、重役出勤や社長出勤よりも遅い登校である。花村は巽完二がトイレに入るのを確認し、色々とそわそわしている状態まで報告してきたが……いちいちそんなことまで言う必要はないんだが。そして今に至るわけだが。

 

なぜか俺たちは校門前で、巽完二と白鐘の待ち合わせを待つことになった。俺、鳴上、花村、制理、里中、天城、雪柳先生……と7人も集まればかえって目立つような気もするが、部活をやっているみたいに見られているのか? まあ、雪柳先生もいるからな。それにしてもターゲットと近すぎるような気もするが、今更言っても始まらないか。

 

白鐘と巽完二、一体何を話すつもりなのか? 白鐘は探偵だから、一応事件のこととか聞くつもりなのか。学校の方から巽完二が出てきて、向こうから白鐘がやってきて話を始めた。

 

「ごめん、待たせちゃったかな」

 

「や、オ、オレも今、来たトコだから……」

 

そのまま2人は向こうの方へ歩いて行ってしまった。さっきの会話……どう見ても男同士の会話とは思えない。普通に恋人同士の会話に聞こえてしまうんじゃねえのか。

 

花村たちもその辺を疑問に思っているようだ。あの2人との距離がだんだん開いていく。このままでは見失う。それがわかった花村と里中、雪柳先生があの二人を追うために走っていった。俺たちは巽完二の実家の方へ向かうために歩き出した。

 

2011・05・17・☁・16:00・稲羽市・稲羽商店街・巽染物屋付近。

 

俺たちは巽完二の実家の染物屋を挟むようにして、両サイドから見張ることにした。鳴上と天城、俺と制理の組み合わせだ。制理が飲み物を買ってきてくれたので、受け取って飲み始める。

 

「千枝たち、うまくやれてるのかな?」

 

「まあ……雪柳先生もいることだし、おかしなことにはならないと思うが」

 

「だよね……あの2人の雰囲気、なんだか変だと思って」

 

「男同士だからか」

 

「それもあるんだけど、巽君……なんだか緊張しているようにも見えたし」

 

「確かにな」

 

この辺りはあまり踏み込んではいけない領域だと俺は思う。制理もそれは分かっていたようで、話題を変えた。

 

「八幡、犯人来ると思う?」

 

「今までのパターンなら絶対来るだろ。来たら鳴上と協力して捕まえてやるさ」

 

「八幡……あまり危ないことはしないでね。それにしても犯人、どんな人間だろ?」

 

「イカれた人間だろ。あの世界に人を放り込めば、死ぬことが分かったはずなのに、それを続けているわけだからな。イカれた人間としか言えない」

 

「そうだよね……平穏だった稲羽を恐怖に陥れているんだから」

 

「春先に現れたヤツが関わってるのかどうかわからんが、関わってるとしたら、俺たちはいつも以上に引き締めなきゃいけないな」

 

「うん、私のペルソナ、スワヒメもそう言ってる気がする」

 

「ああ、俺のペルソナのベンケイもそう言っている気もするな」

 

なんにせよ、巽完二が狙われると分かった以上、みすみす犯人に連れ去られてたまるかってんだ。

 

「巽完二と白鐘のほうに行った花村たちは本当に大丈夫なのか」

 

「花村と千枝だけなら……でも雪柳先生がいることだし、なんとかなるでしょ」

 

「そうだといいんだが……」

 

そんなやり取りをしていたら、向こうの方から花村たちがとぼとぼと帰ってきた。鳴上たちも合流するみたいなので、俺たちも合流する。

 

2011・05・17・☁・16:30・稲羽市・稲羽商店街・巽染物屋付近。

 

花村たちは真っ先に謝罪をしてきた。それにしても雪柳先生の顔が赤いのが気になる。花村が何かしたのでは?そう思っていた矢先、鳴上が花村に聞いた。

 

「花村、見つかったのはわかったが、なぜ雪柳先生は顔が赤いんだ?」

 

「それはだな……」

 

「……花村君、言わなくていいからね」

 

「千枝……何かあったの?」

 

「え!? あ、雪子……うん、何と言うか説明していけない気がする……」

 

「雪柳先生、花村に何かされたとか……?」

 

「俺は何もしてねえよ……巽完二のヤツが、雪柳先生のスカートの中に顔を突っ込んだんだよ……」

 

あ〜いわゆるラッキースケベってやつだな……まさか雪柳先生のスカートに頭を突っ込むとか、どうしてそうなったんだよ。そこがもう驚きだ。

 

「花村君っ!」

 

「花村……言っちゃったよ……」

 

「雪柳先生のスカートの中に頭からだと……なんて羨ましいやつだ」

 

「鳴上、お前はお前で何を言ってるんだ……」

 

俺は頭を抱えながらそう言った。こいつイケメンのくせに、おっさんみたいなこと言うな。

 

制理が花村と里中に聞いた。

 

「……不幸なアクシデントはあったわけだけど、何か聞けた情報とかないの?」

 

「いや……何も聞けてねえ……」

 

「右に同じく」

 

「……コホン、私が聞こえた範囲では、学校の話とか、事件の話とか、そんな感じだったかな」

 

「学校の話や事件のことか……探偵が聞きそうなことだな」

 

確かにそうなんだが、あの白鐘は、巽完二が次に狙われると踏んでの行動なのか? それとも偶然なのか、それはわからない。ただ、目の付けどころの鋭さはやはり探偵なんだと感心してしまう。そしてそんなことをしていたら、巽完二自身が戻ってきて、

 

「さっきのバカップルと……あ……」

 

「バカップルじゃねえし」

 

「巽君、私を見て赤くならないでよ……」

 

「……あっもう〜どうなってやがるんだ、といつもこいつも! ……ハァ……や、まあ、オメェらがなんか❝悪い❞ってんじゃねえけどよ……あークソっ! ハァ……」

 

「巽、なあちょっといいか? 最近なんか変なこととかなかったか?」

 

鳴上、いきなり聞き出すのかよ。まあそれしかねえが。

 

「ああ? ……変?❝変❞だと!? このオレが変だっつーのか!?」

 

「は? 鳴上はそんなこと言ってないだろ!?」

 

「テメーら……今すぐ失せねえとシメんぞ。キュッとシメッぞ!」

 

「ちょ……なんでそうなるんだ!?」

 

これは聞き方の問題だろう。巽完二にはその言葉は地雷と同じなんだ。小学生の頃から❝変❞だと言われ続けてきたんだろうからな。俺もそういうことは人一倍わかる。

 

「マジやんぞ、コラアアァ!」

 

俺たちは巽完二に追い払われるように、その場から全力ダッシュで逃げることになった。

 

2011・05・17・☁・16:50・稲羽市・稲羽商店街・総菜大学付近。

 

総菜大学付近まで走ってきた俺たちは、巽完二が追ってこないことを確認すると、その場で立ち止まった。こんなに全速力で逃げたのって、いつ以来だろうか。みんな息を切らせて、改めて話をすることに。

 

「う……今日走り過ぎたよ……」

 

「まさかこんなに走るなんて思わなかったわ」

 

里中と雪柳先生がそう言って、花村が続ける。

 

「まあ、今日のところは何も起きなかったし、それでいいか」

 

「まあな。あんな状態では何も話してくれなさそうだからな」

 

「けど……あいつがテレビに映ってからもう何日も過ぎてる」

 

「天城の時を考えたら、起こる時間の問題だろう」

 

「気が抜けないね。明日また様子を見た方がいいかも」

 

「私もそう思うわ。巽完二君を守れるのは私たちしかいない」

 

毎日毎日見に来るのは大変だが、雪柳先生の言う通り、あいつを守れるのは俺たちしかいない。互いに俺たちは頷いた。

 

「とにかく今日はもう帰ろ。もーホント、疲れた……」

 

「私も今日は早上がりだからお家に帰れるわ。あなたたちも寄り道せずに帰ってね」

 

「今更寄り道なんかするような気力がねえっす。バイトもないし、家に帰ってゴロゴロするか」

 

こうして俺たちは今日はここで解散することになった。何せよ、今日もマヨナカテレビを見ないといけないだろうな。

 

もう一度、アンケートを取ります。鳴上悠のヒロインは誰がよろしいですか?

  • 1ー里中千枝
  • 2ー天城雪子
  • 3ー久慈川りせ
  • 4ー白鐘直斗
  • 5ー小沢結実
  • 6ー松永綾音
  • 7ー海老原あい
  • 8ー雪柳綾奈
  • 9ー麦野静江
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