2010・11・25・☀・08:10・八十神高校・1ー2組。
俺が教室に入って、自分の机に座ってぼーっとしていたら、吹寄が教室に入ってきた。自分の机に鞄を置くと、俺のところへやって来る。
【比企谷君、わざわざありがとう。雪柳先生、急に用事ができたって聞いてたから助かった】
吹寄がそう言って、俺に笑いかけてくる。俺はちょっと照れながら答えた。
【別に大したことねえよ】
【ううん、雪柳先生も電話で感謝してたわ】
【頼まれただけだからな】
吹寄って、ちゃんと感謝するタイプだな。総武高校のアイツら…例えば相模みたいな自己中な奴とは全然違う。俺がやってきたことをちゃんと見てくれる。こういう真面目さ、嫌いじゃないな。
【今度、何かお礼させて】
【別に、礼をされるような…ことはしてねえ】
【比企谷君って本当に謙虚ね。私、そういう人好きよ】
吹寄がそう言うと、自分の席に戻ってしまった。…ちょっと待て、俺、今「好き」って言われた?いや、嫌いじゃないって意味だろ?でも、吹寄がそんな風に言うなんて、なんかドキッとしちまったじゃねえか。俺、変か?
そこへ、花村がやってきてニヤニヤしながら話しかけてきた。
【八幡!お前、いつの間に吹寄と仲良くなったんだ?】
【花村、別に仲は良くないぞ】
【吹寄があんな表情するの、見たことないぞ】
あんな表情って何だよ。俺は首をかしげながら答えた。
【叔母さん絡みでよく話すことがあるからな。それでじゃねえのか?】
【叔母…静江さんか…大人の女性だよな~】
【あ、そうなのか?】
【八幡、お前は大人の女性の魅力がわかってねえ!】
花村が変なジェスチャーをしながら熱弁してくる。いや、俺にはさっぱり分からん。そもそも、俺にとって叔母さんは『だらしない叔母さん』以外の何でもねえぞ。
【わかってねえというか、小西早紀先輩じゃねえのかよ?】
俺がそう言うと、花村が
【それはそれ、これはこれだよ】
と訳の分からんことを言う。花村のジェスチャーを見ながら、俺は授業の準備を済ませることにした。…でも、吹寄の『あんな表情』って何だ?気になっちまうな。
2010・11・25・☀・16:10・八十神アパート前。
学校が終わって、俺は叔母さんのアパートの階段を登ろうとした時、誰かに話しかけられた。
【あ、昨日姉ちゃんに書類を届けに来た方ですよね?】
振り向くと、中学生の制服を着た男が立っていた。昨日、姉ちゃん、書類…あ、吹寄の弟だ。
【あ、ああ、そうだったな】
【昨日は姉ちゃんのみっともない姿をお見せしてすいませんでした】
吹寄の弟が頭を下げて謝ってきた。いや、こんなことで謝られるなんて思ってもみなかったぞ。
【いや、別に気にしてないぞ。俺もその苦労、分かるぞ】
【え?】
俺は吹寄の弟に、叔母さんが下着姿でうろついたり、部屋に下着が散乱してたり、俺がそれを洗濯する羽目になる苦労を話した。
【そうだったんですか…お互いに大変ですね…】
【そうだな。学校のヤツからは羨ましがられるけどな】
【ええ、それも分かります】
何故か、吹寄の弟(名前は制治、14歳、中2)と意気投合してしまった。俺も静江に、吹寄弟も姉ちゃんに振り回されてる同士って感じだな。俺たちはしばらく立ち話をして、別れた。…なんか、妙な縁ができちまったな。
2010・11・28・☀・13:10・鮫川河川敷
今日は土曜日で、午前中だけの授業。帰り道、俺は何をしようか考えながら歩いてた。どうせ、帰ったら静江の洗濯物を洗ったり、部屋を掃除したり、晩飯を作る作業になるだけだ。いつも通りのルーティンだな。
鮫川河川敷を歩いていると、下の方(釣り場があるあたり)から、ウチの男子生徒が悲痛な表情で走り去っていくのが見えた。商店街方面に走っていったな。…何かあったのか?俺が河川敷の下の方を見ると、そこに吹寄がいる。そして、目が合ってしまった。
【あ、比企谷君…今の見てた?」
「あ、いや…男子生徒が下の方から来た時にすれ違っただけだから、見たってわけじゃ…】
【そうなんだ…あ、そうだ、比企谷君、ちょっと付き合ってよ】
【え?は?】
何だよ、よく分からんが、吹寄に腕を引っ張られて、商店街の中華料理店「愛家」に連れてこられた。俺たちはカウンター席に座る。吹寄が牛丼(並)を注文してから、俺も同じく牛丼(並)を注文した。
【そろそろ話してくれねえか?俺を愛家に連れてきてまで話したいことがあるんだろ?】
本当はメンドくさいことには関わりたくねえんだが、吹寄には文化祭やバスケで世話になったし、俺も書類を届けることで吹寄を助けたことがある。さっきの男子生徒と何かあったのは分かるんだが…。
【……さっき、比企谷君がすれ違った男子生徒、彼から告白されたんだ】
【ふ~ん】
まあ、あの男子生徒の表情からして、吹寄が振ったのは間違いねえだろうな。俺から見ても、さっきの男子生徒ってイケメンの部類に入るんじゃねえか?吹寄、モテるな。
【初対面でいきなり呼び出されて、河川敷で告白…。告白自体は悪くないんだけど、私のどこが好きなのか聞いたら、とにかく好きだと言われたからさ…】
【それで断ったのか?】
【まあ、そうね。抽象的に好きだと言われてもさ、私は嬉しくないんだよね。私はちゃんと私の内面を見てくれる人が良いんだ】
【内面ね】
吹寄の言葉を聞いて、俺は書類を届けた時のことを思い出す。下着姿で家の中を歩き回る吹寄…ぶっ、ちょっと待て、俺、何考えてんだよ。そこらのAVプロモーションやグラビアのプロモーションよりもエロい…って、いかんいかん、俺、頭おかしいのか!?
吹寄は淡々と話し続ける。
【……見た目だけで好きって言われても、私には響かない。ちゃんと私の努力とか、クラスのために頑張ってる姿を見てほしい】
そう言えば俺、ずっと吹寄の努力を見てきたな。俺が転入して間もない頃から何気に話しかけて、気をかけてくれたり雪柳先生と一緒にクラスにうまくなじめるようにしてくれたりしてくれた。
クラス委員長って上辺な肩書きだけならこんなことはしないだろう。本当に誰にでも優しく接するのが、吹寄なんだなと思う。
文化祭のときでもただ指示するだけではなく、自分も率先して役割をこなしていた。総武の相模みたいに適当に指示してあとは任せたみたいなのと違う。
リーダーとしての格が違う。だからクラスの連中が本当に慕っているのがわかるぐらいだ。
なんだかんだ言っても俺自身も吹寄や雪柳先生に絆されたのかもしれない……。
あと叔母さんもだな。
吹寄が俺の方を見て、急に聞いてきた。
【比企谷君は…告白されたことある?】
【は?…】
俺、生まれてこの方、告白されたことなんて1回もねえ。中学の時、俺が何を勘違いしたのか、アイツに告白したことがあった。でも、次の日にはクラスの笑いもの、学年の笑いものだ。アイツが俺の告白をみんなに言いふらして、それからイジメが始まったんだ…。今となっては遠い過去の話だけど、思い出すだけで胸が苦しくなる。
【……告白されたことないけど、告白したことは1回だけある。ただ、見事に爆死したけどな…ははっ】
何で俺、こんな黒歴史を喋っちまったんだよ。吹寄も笑うかと思ったけど、意外な反応が返ってきた。
【…その女子、かわいそうな子よね…】
【え?可哀想?】
【だって比企谷君って、うちのクラスの女子に評判も人気があるんだよ】
【俺なんかが人気?何かの間違いじゃねえのか?】
【間違いじゃないわ。千枝も雪子も頼れるって言ってるし…】
確かに、文化祭が終わってから、クラスの女子が俺を見る目が少し変わった気はしてたけど、まさかそんなことになってるとは…。
【文化祭の件とか、俺は与えられた仕事をこなしただけにすぎねえんだぞ】
【そうかもしれないけど、与えられた仕事さえできない人はいるんだから。それにあのオムライスを作っていた比企谷君はキラキラと輝いていたから】
…キラキラ輝く?俺が?そんなこと、生まれて初めて言われたぞ。いつも「死んだ魚の目」とか「悪いドス黒いオーラを纏ってる」とか言われてきた俺が…。何だよ、目に涙が…。おかしいな、俺…なんだか涙腺がゆるいぞ?
【比企谷君、どうしたの?】
吹寄が心配そうに俺を見る。俺は慌てて答えた。
【い、いや、そんなこと一度も言われたことなかったから、どう反応していいのか…分からなくて…】
【比企谷君…本当にあの時はお疲れ様】
吹寄が何故か俺の頭を撫でてきた。同世代、ましてや女子に頭を撫でられるなんて、俺の人生で皆無だ。…何だこの感覚、俺、変か?
その後、愛家のおっちゃんから牛丼を受け取って食べたけど、味を全然覚えてねえ。吹寄と話しながら食べてたけど、頭の中がごちゃごちゃで、味なんて感じなかった。
もう一度、アンケートを取ります。鳴上悠のヒロインは誰がよろしいですか?
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1ー里中千枝
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2ー天城雪子
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3ー久慈川りせ
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4ー白鐘直斗
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5ー小沢結実
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6ー松永綾音
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7ー海老原あい
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8ー雪柳綾奈
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9ー麦野静江