ローズの受難   作:ラットマンΣ

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最後の仕事

 ———蒼葉邸地下 模擬戦闘室

 

「さて……準備できたか?」

 

「今回は抜かりない」

 

 そう抜かりない。

 ケイトとのマジの戦闘、それは死を意味する。

 だから私の全霊を賭ける。

 どんな手を使ってもだ。

 

「さてさて、おっ始めようか。弟子……いや、ローズ!」

 

 ケイトはゆっくりと歩いてくる。

 いつもの初見殺しはしない。

 なら……

 

「アキルさん! 8番!」

 

「はいよー」

 

「は?」

 

 ケイトは間抜けな声を出し。

 直後に空間に裂け目が現れガトリングガンが落ちてくる。

 それをしっかりキャッチして掃射する。

 

「おいおい?! 流石にそれずるい———

 

「私はなんだってする! 使えるものは全部使う! とりあえず死ね!」

 

「だぁぁあ! アキル後で覚えておけよ!」

 

「アンタが生きてたらね」

 

 ガトリングガンの掃射を的確にケイトに向けて放つ。

 流石のケイトも逃げるので精一杯の様だ。

 そろそろ弾切れする。

 なら……

 

「アキルさん! 10番!」

 

「お任せあれ」

 

 次に取り出したのはデザートイーグル。

 とにかくケイトを近づけさせない。

 ケイトの間合いに入ったら死ぬ。

 なら遠距離で殺しに行く。

 

「お前……本当に学習しないな、その程度なら弾けるんだよ!」

 

 確かにケイトなら弾けるだろう。

 けど狙いはそこじゃない。

 デザートイーグルを壁に向かって乱射する。

 弾丸は特別製、跳弾に特化した弾だ。

 

「訂正、少しは学習するじゃねぇか」

 

 ケイトの四方八方から弾丸の雨が降る。

 ケイトの球弾きはあくまで一つのルートから限定、なら複数ルートから打ち込めば……

 

「確かに球弾きは出来ねぇけど……こう言うことだってできるんだぜ?」

 

 そう言ってケイトは弾丸を全て素手で掴み取った。

 しかし代償に掌はぐちゃぐちゃ、もう素手で殺すことはできない! 

 カートリッジを再装填して再び壁に弾を打ち込む。

 これで……

 

「ローズ、何か勘違いしてねぇか? 別に掌が使えなくても殺しは出来るんだぜ?」

 

 そう言ってケイトは掴んだ弾丸を指で弾く。

 私の打った弾の起動が少しズレる。

 そこからドミノ式に弾丸同士がぶつかり合い起動が私に向かう。

 

「……ッ!」

 

 すんでのところで回避する。

 しかし、ケイトに動く隙を与えてしまった。

 

「まぁ、頑張った方だよ。ローズ、そんじゃあな」

 

 強烈な蹴りが私の腹部を襲う。

 そのまま私は壁に激突した。

 

「くぅ……」

 

 肋骨がやられた。

 肺に刺さってる。

 息をするたびに苦しい。

 

「マジか、本気で蹴ったんだけどなぁ? まだ生きてるか。なら顔面潰して終わりにしよう」

 

 ケイトがゆっくり近づいてくる。

 それでいい! 

 それがベスト! 

 近づけ、私の間合いに入れ! 

 

「……やっぱやめた。お前の目は諦めたやつの目じゃねぇ。何かしら策のあるやつの目だ。だから安全に殺す」

 

 そう言ってケイトは掌に握っていた弾丸を指で弾く。

 そのスピードは拳銃のそれと大差ない。

 両足が撃ち抜かれる。

 

「つぅ……」

 

「ローズ、最後に確認だ。死ぬ覚悟は出来てるか?」

 

「……あぁ、もちろん」

 

「そか、1年弱の付き合いだったが悪くなかったぜ。じゃあな」

 

 そう言って放たれた弾丸が私の額のど真ん中を貫く。

 あぁ、本当に———

 

「ケイト、マジで殺したの?」

 

「さぁな? とりあえずお前は仕置きだ、アキル」

 

「……魔術で応戦……も考えたけど。しょうがないわね……さぁて、煮るなり焼くなり好きにしなさい!」

 

「んじゃデコピンで」

 

「ふぎゃ?! めっちゃ痛いじゃない! 血出たんですけど!」

 

「はっはっは! ザマァみやがれ! 契約上あんまりやりすぎると不味いからな! 今回はこれで勘弁———

 

 瞬間、私はケイトの背中を刺した。

 

「グフッ……あぁ、やっぱり手加減するんじゃなかったな……バカ痛えわ」

 

「ケイト!」

 

 アキルさんが叫ぶ。

 ケイトの弾丸は確かに私の頭を貫いた。

 脳の隙間を縫って。

 昔聞いたことがある。

 脳を撃ち抜かれても右脳と左脳の隙間を貫かれたら死なないって話だ。

 ケイトは意図的にそれをやった。

 

「……ケイト、最後まで本気を見せなかったのがお前の敗因だ。あと優しすぎる」

 

「んー、それはお互い様かな? 急所外してるじゃんお前。アタシを殺すのが使命だろ?」

 

「……分からない。なんでか最後に殺したくなくなった。だから急所を外して刺した。けど痛いだろ?」

 

「まぁ、バカ痛いわな。二十代になって久々に負けた感覚を味わってるわ」

 

「何それ、アタシが初めてじゃないの?」

 

「そこな魔皇様が最初だよ。今はただの魔術師だけどな!」

 

「ねぇ、これツッコミ入れた方がいいやつ? 私だいぶ困惑してるんだけど……」

 

 アキルさんは返り血を拭きながらそう返す。

 

「別に気にしなくていいぜ? とりあえずお互い満身創痍だし此処は一つ相打ちってことにしとかないか?」

 

「ん、そうする。正直肺がバカ痛い」

 

「こっちはナイフで刺されたとこがバカ痛い……と言うかナイフ抜くなよ?」

 

 こうして私VSケイトの殺し合いは引き分けで終わった。

 いや、正確に言えば九割私が勝ってた。

 多分。

 

「まぁ、つうことでこれからもよろしくなローズ。精々本気のアタシを殺せる様に頑張れや」

 

「言われなくてもいつか殺す、必ず」

 

 そうしてまた同じ様な日々が始まった。

 私の新しい居場所、性格の悪い師匠とその仲間たち。

 かけがえのない私の大切なものを手に入れた。

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