夢を見た、惨殺される夢を。
手足をもがれ達磨にされたあとじっくりと殺される夢を見た。
ケイト・リードは笑っていた。
「はっ!」
そんな悪夢で目が覚める。
不快で仕方ない。
横ではケイト・リードが無防備に眠っている。
……いや、やめておこう今は戦いたくない。
……私は本当にコイツを殺せるのだろうか?
昨日の化け物じみた戦い方、普通ならあり得ない、あり得てはいけない。
コイツは一体どんな地獄を見てきたんだ?
思えば私はコイツのことをよく知らない。
ただの敵としてしか見ていない。
本当にそれは正しいのか?
……わからない。
「んぁ? なんだよ、もう起きるのかよ……もうちょい寝かせて……」
「ケイト・リード、お前の過去を聞かせろ」
「なんだよ急に、やだよ話したくもない」
「聞かせろ」
「……黙れ」
「……ッ」
ケイト・リードは強い殺気を放つ。
まるで全身を切り裂かれる様な強い殺気、悪意はなくただ純粋な殺意が込められた殺気。
「つうか、人のプライベート覗こうとするな! はい、お終い! アタシはもうちょい寝るから!」
そう言っていつものおちゃらけた態度に戻る。
……コイツは過去に何があった?
◇◆◇
「わからない……」
屋敷の中庭で1人呟く。
私はどうやら少しおかしくなっているらしい。
ケイト・リードのことをもっと知りたいと思ってしまっている。
それは殺意からかけ離れた行いだ。
だが、気になる。
いかにして「紅い獣」が生まれたのかを、いかな地獄を見てきたのかを……
「あら、ローズじゃない。中庭で日向ぼっこ中かしら?」
「アキルさん」
「アキルでいいわ、それより悩み事? ケイトが殺せないとか?」
「いや、実は……」
「なるほどねぇ、ケイトの過去が気になる、っと。そう言えば私にも話したことないわねアイツ。長い付き合いなんだけどねぇ」
「私は気になってしょうがない。昨日の……あの光景を見てからずっと」
「あぁ、ケイトの殺し方でしょ? アレは私が思うに仕返しなのよ」
「仕返し?」
「そう、仕返し。自分に向けられた……いや、大切な人に向けられた悪意への仕返し。それが誰彼構わず振りかざされてるだけ」
「よくわからない」
「まぁ、要はストレス発散? みたいな感じよ。そのストレスがどれだけ莫大なものかは私にもわからないけど」
「…………」
「私が思うに、ケイトはね、人として形作る為の大切な何かが壊れちゃってるのよ。だからこそ異常なまでに強くて痛々しいのよ」
「痛々しい、とは?」
「アイツ、殺す時笑ってるでしょ? アレ多分染みついた癖みたいなものよ。剥がせなくなった仮面みたいなもの。本心はそれこそ本人しかわからないけど、好きで笑ってるんじゃないと思うわ」
「…………」
「なんて、それっぽい事言ってみたけど正直私にも点で分からないのよね、アイツのこと。だけど、ここに来てすぐの頃よりはだいぶ丸くなったと思うわよ?」
「確かに、アイツはいつもおちゃらけた態度をとっている」
「アレも本心かはわかんないけどねぇ、ま、考えるだけ無駄よ。それよかケイトを殺す鍛錬でもした方が良いんじゃない?」
「…………そうする。シュミレーター室、借ります」
「はいよ、じゃあ頑張ってね」
不思議だ、友達が殺されるかもしれないのに全く動じて無い。
そもそもこの屋敷の連中はみんなそんな感じだ。
……いや違う。
絶対的な信頼があるんだ。
ケイト・リードは死なない、と言う絶対的な信頼が。
事実、私もアイツが死ぬビジョンが浮かばない。
じゃあ、私の意味って何?
……分かりたく無い。
何のために産み出された/ケイト・リードを殺すため。
何を為すべきか/ケイト・リードを殺せ。
じゃあ、その後は?
私は何の為に生きているの?
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