天導物語・永劫輪廻   作:天魔 無骸

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時系列ある程度無視した怒りの日のスピンオフです。
何なりとお楽しみください。


回帰の刻

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どれだけ求め続けたのだろう。どれだけ願い続けたのだろう。

どれだけ争い、どれだけ愛し、そして、どれだけ死に続けてきたのだろうか……

 

永劫という単位をさらに永劫倍、そのさらに永劫倍は繰り返したその最果てに、彼は毎度の結末へと辿り着こうとしていた。

 

大牙「はぁ……」

 

瞳に映るは、砕け散る万象の欠片……

煌めく星々のような輝きに包まれて、俺は擦り切れた笑みを浮かべる。

 

大牙「やっぱりというか……結局、今回もこうなったか……」

 

ここに来る度に自分の度し難い間抜けさに痛感する。そうした呆れの念さえも、もはや何度目の既知かも分からない。

 

大牙「違う、違うのだよ、零瑠……俺とお前が争ったところで既知が晴れることは永劫にない。ここが俺の、俺達の回帰点だ。何も成せず、成そうともせず、己が自滅の癌と喰らい合い、共に消える。それが気に食わないと言って、また同じことを何度も繰り返す。全く、我ながら懲りんな。予感は、あったんだけどね……」

 

卵が先か、鶏が先か、俺の既知感が何処より始まったものなのか。

その答えは、全知全能と謳われた俺でさえ分からない。

分からないからこそ、何度も同じ過ちを繰り返す。

 

ある日気づけば、世界は既知に満ちていた。新鮮な驚きなど何一つなく、知り尽くした道の上を歩いていると自覚したのはママの胎内だったかもしれない。

だから足掻いた、足掻き続けた。何の為に?それさえも、とうの昔に忘れ果てた。

 

時間なら腐るほどあった。天導家の中でも歴代最高とも謳われた神童であったが、万年も生きれば超越するがど道理だろう。

かつてカールにも言ったことがある。止まらず走り続けていれば世界の一周や二周は回れて然りと。

 

万象を悟った。カールと出会い、前世の……ラインハルト・ハイドリヒとしての記憶を思い出し、“座”の概念を思い出して自身に起きている不可解な現象を推論だが見極めた。

その結果……

 

大牙「馬鹿馬鹿しい……」

 

ああ、馬鹿馬鹿しいとも。万能感に酔う少年の日どころではない。

まさしく誇大妄想に他ならず、狂人を兆倍にも京倍にもした思い上がりと蒙昧ぶりと言うべきだろう。

 

この結末が気に食わないから、やり直したい。

この狂おしい思いが消えぬ限り、俺の旅路は永劫に終わらない。

 

大牙「諦めることが出来たら、良いんだけどね……」

 

もう良い、飽きた、止めにしよう。

そんな諦観を許容できたら、このまま朽ちるのもできるだろうに……

 

大牙「もう一度、あと一度だけでも……」

 

この愚かな思いが捨てられない。

 

大牙「口惜しいのだ。次こそはと言う妄執を切り離せない」

 

故にこれより、都度何度目になるか分からない、カールの流出による永劫回帰が始まる。

この結末を回避するために、再びママの胎内へ還るのだろう。

既知の毒に苛まれながら……

 

大牙「クク、アハハ、アハハハハ……」

 

まるで道化だな。またしても絶望と苦痛に満ちた苦難の道を歩もうとしているのだから。

いい加減に擦り切れればいい。

いい加減に目を閉じればいい。

ああ、あるいは、自分と同じく今もこの場を漂っているであろう“彼”と、永劫戯れ続けるのも、また一興ではないのか。

 

大牙「何処にいる、零瑠。今のうちに俺とカールを殺さねば、元の木阿弥だぞ?俺を殺すのだろう?殺してくれよ!自分では死ねないのだから。俺はつまらぬ男なのだ。行く道が地獄でしかないと知りながらも歩みを止められない。故に、なあ、頼む。早く俺を……」

 

永劫続くこの苦しみから助けて欲しいと思いながらも、しかしカールの流出は始まりかけている。

更なるやり直しは、もう止められない。

 

大牙「無為か……では、次の世界でまた逢おう。俺はお前を見つけ出す。故にお前も俺に気づいてくれ。次に我が計画が失敗した時、今度こそは殺してくれよ」

 

そう、願いながら……

 

大牙「ああ、ごめんね。許してくれ、ひより……次こそは必ず、お前を……」

 

砕け散る身体と共に、瞳を閉じ……

 

カール『Acta est fabula.(未知の結末を見る)

 

カールの永劫回帰が始まった。




次回:決意と覚悟、そして決別
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